2012年08月19日
劇団ガプリヨツ『おやすみ、母さん』08/16-19ギャラリーLE DECO 5F
新国立劇場演劇研修所4期生(修了生)の女優さん2人が劇団を旗揚げされました。劇団名がガプリヨツって…ロゴの絵も直球で「どすこい!」な(笑)。
『おやすみ、母さん』は1983年度ピューリッツァー賞受賞作で、先日、白石加代子さんと中嶋朋子さんの豪華キャストで上演されていました。残念ながら見逃したので、今回観られて幸運でした。演出は新国立劇場演劇研修所アソシエイト・ディレクターの田中麻衣子さん。上演時間は約1時間30分。
⇒CoRich舞台芸術!『おやすみ、母さん』
≪あらすじ≫
年老いた母(斉藤まりえ)と娘(日沼さくら)が2人で暮らすアパート。母はお菓子を食べながらテレビを見ている。いつもの平穏な夜のはずだった。
≪ここまで≫
女優2人のがっつり会話劇。お芝居自体も1時間30分間のお話です。戯曲をしっかり読み込んで演技を組み立てていかれたのであろう、真摯な態度が見て取れました。
母が動、娘が静というコントラストがはっきり。娘役も感情の振れ幅をもっと大きくした方が面白いんじゃないかと思いました。
ルデコの空間にソファやテーブルセット、台所と棚、そして沢山の食料品が並べられています。小道具が細かく揃えられているのに感心しました。
今月、新国立劇場演劇研修所の修了生による公演を観るのは2度目です(⇒1度目)。3月に観た3期生による作品はイギリスの学生演劇フェスティバルに招聘され、いくつか賞を受賞されました(⇒新国立劇場のニュース)。修了生はいい戯曲を選ばれているのが頼もしいですし、観に行くのが楽しみです。
ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。
母は60歳、娘は40歳。娘はてんかんの患者で、いわゆる一般の社会人のように働くことはできません。夫が出て行き、息子が非行に走り、娘は母の家に引き取られました。考えに考えた結論が自殺。娘の「今日、自殺するわ」との告白から幕が開きます。
母は娘の自殺を止められるのか。娘は本当に自殺する気なのか。もしかすると娘は母を殺すのではないか。母を殺して自分も死ぬのではないか。最後の銃声がした後、自殺に失敗した娘がひょっこりドアを開けて出てくるのではないか…。観客は結末を知りませんから、そういったさまざまな想像ができるように、もっと激しく、小刻みに気持ちを変化させてもいいのではないかと思いました。
劇団ガプリヨツ旗揚げ公演 "Night mother"
出演:斉藤まりえ 日沼さくら
脚本:マーシャ・ノーマン 訳:酒井洋子 演出:田中麻衣子(Theatre MUIBO) 舞台監督:森下康之 音響:信澤祐介 照明:中島一 宣伝美術:杉崎壮一 制作:松永彰子
【発売日】2012/07/10 ¥2,800税込(全席指定、日時指定)
http://www.gapriyo2.com
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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ACT commune「航跡」『セイム・タイム・ネクストイヤー』08/07-09 APOCシアター
『セイム・タイム・ネクストイヤー』はある男女の25年間のお話。加藤健一事務所公演で拝見したことがあります。とてもいい戯曲なんですよね。今回は新国立劇場演劇研修所5期生(修了生)のお2人が出演される公演なので伺いました。
小さな劇場での無名の俳優の二人芝居で、前売り3000円(ワンドリンク付き)は、ちょっと高い目だな~と思ったのですが、観終わった時にはそのお値段に納得でした。上演時間は約2時間30分(途中休憩10分を含む)。
⇒CoRich舞台芸術!『セイム・タイム・ネクストイヤー』
≪作品紹介≫ 公式ブログより一部抜粋。
このセイムタイムネクストイヤーという作品は、とある男女が一年に一度だけ
ある場所で会い、24年間に渡る歳月を五年ごとに二幕六場で上演します。
≪ここまで≫
舞台はあるホテルの一室。中央にベッド。奥にソファ。転換時はギターの生演奏があります。
ジョージ(梶原航)とドリス(北澤小枝子)というアメリカ人の男女の約25年間を描きますので、2人とも場面ごとに年を取り、衣裳も演技ももちろん変化します。手ごわい2人芝居ですが、最後までまったく退屈することなく観られました。その場のその気持ちに嘘がないので、言葉づらだけの、とりつくろったような演技がないのがいいんですよね。
ジョージはコミカルなキャラクターが好感度大。ドリスは各場面ごとにもっと過激に変化してもいいだろうと思いました。彼女はジョージよりも波乱ぶくみの人生ですし、女性は外見(服装)の変化によって歩き方も言葉づかいも節操なく変わるんじゃないかしら。衣裳が全体的に地味だったせいもあるかもしれません。
ここからネタバレします。
お互いに結婚もしていて子供もいるけれど、毎年1度、同じホテルの1室で会う2人。場面は1951年、1956年、1961年、1965年、1970年、1975年という5年ごとの6場から成ります。
それぞれの求めるもの、目指す夢が変化して、会う度にズレが生じます。正直に気持ちを確かめることから始める2人の貪欲さが唯一無二の信頼関係を築いたのだと思うと、人間のコミュニケーションに希望が持てます。
稼ぎまくっていたジョージが金に興味を失った時、ドリスは自分の店を拡大しようとビジネスに没頭しているなど、2人のすれ違いがとても面白いです。いい戯曲ですね。また違うカップルでも観てみたいです。
梶原航プロモーション公演 "same time next year"
出演:梶原航 北澤小枝子(FMG) 生演奏:寺中名人
脚本:バーナード・スレイド 翻訳・演出:小山裕嗣(CPProject) 舞台監督:渡邊歩 照明:塩田和行 照明オペ:井上雅照 宣伝美術:三上毅 衣裳:大澤久美子 北澤小枝子 制作統括:梶原航 後援:梶原航私設応援団「オーナーサポーターズ」 主催:ACT commune「航跡」
【発売日】2012/07/07 前売り・当日共に3,000円 。ワンドリンク付
http://apoc-theater.net/?m=20120807&cat=3
http://ameblo.jp/actcommune/entry-11316211168.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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