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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年01月29日

ヒンドゥー五千回『僕らの家、僕らの海』01/27-02/06下北沢OFF OFFシアター

 いつも奇抜なチラシでちょっと怖いなぁと思っていたヒンドゥー五千回。今回のチラシはノーマルな形で、海で撮影したきれいな写真がメインビジュアルだったので、行きたい気分になっていました。
 静かなお芝居でした。劇団名からアクション・エンタメ系かなぁと想像していたので、意外でした(客って勝手ですよねぇ)。

 高校時代の仲良し男子5人組が10年ぶりに出会って同居を始めた。毛利(成川知也)と青木(爺隠才蔵)はサラリーマン、丸尾(結縄久俊)はフリーターというように、それぞれ違う進路をたどっており、すれちがい気味の同居生活は始まってまだ半年足らず。高校時代の思い出話ばかりする丸尾に、忙しく働いている毛利や青木はイライラしている。

 言いたいこと(表現したいこと)まで行き着くために、ストーリーやセリフが無理やり積み上げられているように感じました。何をしゃべっていても、それは次の、次の、その次のセリフのための前フリのよう。

 時間は、過去→現在→未来という順番に流れていることになっていますが、果たして本当にそうなのか?そう思っていて良いのか?という問いかけがあります。昔、私の知り合いが言っていたのですが、人間が体感できる順番は、現在→過去→未来なのではないか、その方が正しい認識なのではないか、と(渡辺真知子さんの“迷い道(いきなり音楽が鳴ります)”という歌の歌詞を例に出してよく話をしたんです)。
 今(現在)を生きている自分が、自分の生きてきた過去を振り返り、そして未来を展望する。過去も未来も、眺めているのは現在の自分です。というか、過去も昔は現在だったし、未来はいつか現在になりますよね。どっちにしろ全ては現在に集約されるのです。つまり、過去と未来の両方をしっかり見て、実感して生きることこそ、「今(現在)を生きる」ということなのではないか。
 だから、過去を振り返らず、自分の身の回りのこと(現在)もなるべく見ないようにして、前(未来)ばかり向いているサラリーマンの毛利と青木も、過去ばかりで現在と未来を見ていないフリーターの丸尾も、どちらも「現在」を生きられていないのではないか、だから、お互いにわかりあえないのではないか、と。私にはそんな風に映りました。

 この作品では過去に強く焦点が当てられ、過去から現在を眺める視点だったように思います。その方向からだけでは、ドラマ成立には不十分な気がしました。でも、最後にみんなで一緒に出かけますよね?もしかすると、その、出かけるシーンで何かが起こっているのかもしれません。できれば私はその辺りを観せていただきたいなぁと思います。

 同居人以外の登場人物には激しい個性のキャラクターが多く(丸尾の兄、出会いあっせん会社の女・渡辺など)、静かで暗い目の世界に華を添えていました。

 女の同居人(家政婦?)、渕上良枝役の西田夏奈子さんと、可愛らしい“先輩”役の榎本純朗さんの演技がどっしりと落ち着いていて、役柄をしっかり捕らえたリアクションが良かったです。
 渡辺さんにアタックする村越くん(久我真希人)も可愛らしかったですね。できれば「付き合ってください!」って告白して欲しかった。

 構成・演出の扇田拓也さんは役者さんでもあります。青島レコード公演でよく拝見しておりました。『FAT OLD SUN』がすっごく良かったな~。赤いつなぎの“鳥”が忘れられない。あれ、扇田さんでしたよね?

 えと、これはつぶやきです。ヒンドゥーってヒンズースクワットのこと?スクワット5000回って、私なら・・・死ぬ。

構成・演出=扇田拓也
舞台監督:岡嶋健一 舞台美術:袴田長武(ハカマ団) 照明:宮崎正輝 菊池伸枝 音響:井川佳代 宣伝写真:降幡岳 宣伝美術:米山菜津子 WEB:成田憲保 制作:関根雅治 山崎智子 企画・製作・主催:ヒンドゥー五千回
出演:谷村聡一・久我真希人・結縄久俊・向後信成・藤原大輔・西田夏奈子・中尾あや(青島レコード)・水野顕子・榎本純郎・爺隠才蔵(劇団上田)・大原裕人・成川知也
ヒンドゥー五千回:http://www.h5000.com/

Posted by shinobu at 2005年01月29日 01:05 | TrackBack (3)