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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年02月12日

AND ENDLESS『西遊記~百花繚乱~』02/08-13全労災ホール/スペース・ゼロ

 アンドエンドレス(通称:アンドレ)は西田大輔さんが作・演出、そして出演している劇団です。紀伊国屋サザンシアター、俳優座劇場など大きな劇場に進出されているので、いつか観たいと思っていました。今回は新宿のスペース・ゼロ(今作品の客席数は330席/1ステージ)。
 “千変万化”、“百花繚乱”の2バージョン公演で、私は“百花繚乱”を拝見しました。2つとも新作で、上演時間は休憩15分を含む3時間。物語の時系列的には“千変万化”が先で“百花繚乱”が後になるそうです。

 『西遊記』ですので、三蔵法師、孫悟空、猪八戒、沙悟浄らが登場します。天竺への道中、年を取らない(同じ時間が繰り返されている)国でトラブルに巻き込まれて・・・。盛り込まれたテーマは友情、恋愛、家族愛、勧善懲悪など。何度も何度も突然に始まるダンスタイムと大人数の殺陣シーンに圧倒されました。胸から火花が飛び散ったり、剣から火柱が立ったり、最後に出てきた巨大な物体にはびっくり。ギャグもわんさかありましたね(孫悟空役の西田大輔さんがいつも飛ばしてました)。そういえば映像もチラリと。
 面白いこと、楽しいことが盛り沢山のアクション・エンターテインメント・ショー、と言うのが適当かしら。アニメの舞台化ってよくありますが、こんな風に仕上がるのかも。将来サンシャイン劇場に進出しそう。

 客層が『セーラームーン・ミュージカル』に似ている気がしました。固定ファン層をしっかり獲得しているんですね。ファンクラブがあり、開演前のロビーでは会員証にスタンプを押してもらっている人や、役者のブロマイド的なポストカード(1枚150円)を何枚も買っている人がいました。きっと1人の観客が何度も観に来られるんでしょう。お話に関係ない人物がいきなり現れて、明らかにもう片方のバージョンを宣伝しているシーンが多々ありました。こういうのがあるとファンなら観たくなるのかな。

 私が行ったのは2/10(金・祝)の夜公演で、ロビー開場のまま劇場に入るまで20分待ち、開演は10分以上遅れていました。どうやら昼公演と夜公演の間が短すぎるようです。それにしても3時間の新作を2本作るってすごいと思います。たしか前もそういう公演だったと思うので、アンドレといえば1つの作品で6時間ってことなのでしょうか。いろんな意味でパワフル、でした。

作・演出:西田大輔
出演;西田大輔 岡崎司 加藤靖久 窪寺昭 佐久間祐人 田中覚 村田雅和 村田洋二郎 八巻正明 大森裕子 木村智早 菅原麻子 田中良子 中川えりか 渕上善一
岡本勲(劇団ショーマ) 梶武志(Team AZURA) 小林洋貴(epitaph) 谷口賢志 塚本拓弥 町田誠也(R:MIX) 秋野ひとみ(T1 Project) 後藤藍(東宝芸能ダンスセクション) 南口奈々絵(劇団ショーマ)
舞台美術:深海十蔵 照明:千田実(CHIDA OFFICE) 音響:前田規寛(M.S.W.) 楽曲提供:vague イリュージョンプロデューサー:ANXRA 映像:影乃造 衣装:増田晶 ヘアメイク:村田さやか 東京モード学園 メイク・ヘア学科 振付:松尾耕(M.K.M.D.C) 浅井みどり(THUG LIFE) 殺陣指導:清水順二(Team AZURA)梶武志(Team AZURA) 舞台監督:下柳田龍太郎 撮影:colors imagination 舞台写真:土屋勝義 宣伝美術 サワダミユキ 題字:八巻明 印刷 ㈱トレーノ 制作:小比賀祥宣 安井なつみ プロデューサー:下浦貴敬 企画・製作:AND ENDLESS 主催 :(株)Entertainment Capital 協賛:(有)ルーポプロジェット 株式会社グローバルホットライン
公演サイト:http://www.andendless.com/special/saiyuki/index.html

Posted by shinobu at 23:40 | TrackBack

fringeの「劇団員に誰かお知り合いはいませんか」撲滅運動に賛同します

 小劇場演劇を支援するサイトfringefringe blog記事より。劇場の受付で、当日券のお客様に受付の人が尋ねるセリフ「劇団員に誰かお知り合いはいませんか」を、fringeでは「絶対に禁句」としています。理由はこちら

 先日、前売りチケット(当日精算券)を予約して、ある小劇場劇団の公演を観に行ったのですが、受付で「半券にお名前をお書きください」と言われました。「なぜですか?」とたずねたら、「劇団員にお客様のことを知っている人間がいるかもしれないので」というお答えでした。私は「知り合いは居ません」と返事して、名前を書くことを拒否しました。

 東京に旅公演に来ていた劇団だったから、こういう驚くべき対応があったのかもしれません。これも劇団員のノルマを数えるためですよね。劇団員のノルマ確認のためにお客様の名前を聞く(書かせる)なんて、前売りだろうが当日だろうが、とってもヘンです。前売り券を買って映画館に行った時、もぎりの方に名前なんて聞かれませんよね。その映画の関係者に知り合いがいるかどうかを聞かれても・・・困ります。

 私は演劇ファンがもっともっと増えて欲しいと願っていますので、fringeの「劇団員に誰かお知り合いはいませんか」撲滅運動に賛同します。

Posted by shinobu at 22:34 | TrackBack

ポケットシアター『動物園物語より』02/22,26,27サイスタジオ小茂根B

 古川悦史さんと助川嘉隆さんによるエドワード・オールビーの『動物園物語』です。再々演ということで息のあった楽しい二人芝居を見せてくださいました。

 公園のベンチに座って読書をしているピーター(助川嘉隆)に、見知らぬ男・ジェリー(古川悦史)が話しかけてきます。
 ジェリーがつっこみで、ピーターがボケだったかな?とにかく漫才みたいにめちゃくちゃ笑えました。
 ジェリーがピーターに何度も「ごめんねー」って謝るのが、良かったです。

22日,26日,27日の『Visions of Tokyo』or『knob』終演20分後にポケットシアターを上演。
作=エドワード・オールビー「動物園物語より」 出演=古川悦史・助川嘉隆
企画・制作:吉田 悦子・Happy Hunting Ground 主催:サイスタジオ 協力:文学座企画事業部 サイ(株)スタジオ事業部
公演サイト:http://www.saistudio.net/html/studio_performance_vol14.html

Posted by shinobu at 02:56 | TrackBack

サイスタジオ主催・Happy Hunting Ground『Visions of Tokyo』02/10-27サイスタジオ小茂根B

 reset-Nの夏井孝裕さんの脚本を文学座所属の演出家、俳優が上演。『Visions of Tokyo』はreset-Nのシアタートラム初進出作品でした。

 サイスタジオって有楽町線小竹向原から歩いてすぐなんですね。可愛らしいカフェや雑貨屋さんと同じビルの2階なので、開演前にウィンドウショッピングしてゆっくりお茶しちゃいました♪

 劇場の壁がほとんど露出したままの殺風景な舞台には、積み上げられた土嚢(どのう)の山が一つ。その場所(部屋?)を訪れる男、男、男。静かで恐ろしい4人芝居です。

 reset-Nによる初演(2002年1月)に比べると、全体的に軽いタッチで作られているように思いました。登場人物の一人一人があまり気持ちの上で交わらないで、それぞれが自分の世界を保ったまま、その中で葛藤している状態で、観客に対しても現実世界に対しても、ちょっと距離を感じさせる仕上がり具合だったのではないでしょうか。一人一人についてはなるほどなぁと納得だし、素敵だなぁと思ったりできたのですが、作品全体のパワーとしては想像していたよりは弱かったように思います。
 でも、やはり脚本が素晴らしいので見ごたえはあります。今月末までです。

 ここからネタバレします。

 放射性物質(プルトニウム等)を土嚢の下に隠していた2人の研究員(クラモト:高橋克明、フジタ:細貝弘二)は、彼らなりに悩んだ結果、致し方なくプルトニウムを持ち出したという解釈に取れました。初演では冷徹無比、人殺しなんて朝飯前&四六時中OKのような人物だったクラモトですが、今作では人間味のある人物でしたね。クラモトの部下のフジタ(細貝弘二)も、自分のミスのせいで地下50mのコンサートホールに危険物質を隠すハメになったけれど、必死で安全処理をしようとする善意の若者でした。
 最初はちょっとしたきっかけでしかなかったのであろうクラモトの欲が、雪ダルマ式に大きな野望となり、部下のフジタを巻き込んで猛スピードで闇へと突っ走り、決して消えない罪へとなっていった様子が目に見えるようでした。そこは初演とかなり違う印象で面白かったです。

 放射性物質の扱いについての演出に少し疑問を感じました。例えばラストでジュラルミンケースの蓋を開けて、5kgと5kgのプルトニウム同士を近づけていたようなのですが、照明が光っていただけで爆発等は起こりませんでした。たしか2つを近づけると「東京が吹っ飛ぶ」と言っていた気がするんですが・・・。また、蓋を開けるだけで「いや~な死に方をする」のでしたら、彼らと同じ空間(客席)に居た私も「あぁ、その蓋を開けないで!私は“いや~な死に方”をしたくない!」って思いたかったですね。蓋を開けるシーン、プルトニウムを近づけるシーンの両方が、サラっとしすぎていたんじゃないでしょうか。
 ※脚本家の夏井さんからご指摘をいただきました。プルトニウムそのものは爆発せず、臨界反応を起こして強烈に放射線を出すそうです。「壊滅」という台詞が使われていたようで、私のうろ覚えでした。ごめんなさい。

 2人の研究員と、ホルン奏者の女の子に恋をしたヴァイオリン奏者のニカイドウ、ずっと自分の死に場所を探していたヤザキ(浅野雅博)という4人が、「死」を目の前にして自分自身について深く考え、行動を起こしていく様には感情移入できましたし、発する言葉にもそれぞれのにリアリティがありました。でも、この作品は登場人物一人一人についての群像劇に納まるものではない気がしている私にとっては、ちょっと物足りなかったかもしれません。
 4人の俳優と40名ほどの観客、そしてプルトニウムという圧倒的な破壊力を持った決死の危険物質が同時に存在する空間で、人間、地球、命、という大きなテーマを感じたかったです。プルトニウムが入った禁断の箱を開ける瞬間、恐怖と歓喜が入り混じった、言葉では表現できないような高揚した感覚をヤザキは身体で感じたと思うのですが、観客の私もそれを共有したかったですね。

作:夏井孝裕2作品連続公演『Visions of Tokyo』,『knob』
※『knob』は1999年に第四回劇作家協会新人戯曲賞を受賞。
【出演】Happy Hunting Ground(ハッピーハンティンググランド)
「knob -ノブ- 」:加納朋之・古川悦史・川辺邦弘・亀田佳明・斉藤裕一・征矢かおる・添田園子
「Visions of Tokyo -ヴィジョンズ・オブ・トーキョー-」:高橋克明・浅野雅博・石橋徹郎・細貝弘二
「動物園物語より」(ポケットシアター) : 古川悦史・助川嘉隆
作 夏井孝裕 エドワード・オールビー「動物園物語より」  演出:高橋正徳 美術:乗峯雅寛 照明:中山奈美 企画・制作:吉田 悦子・Happy Hunting Ground 主催:サイスタジオ 協力:文学座企画事業部 サイ(株)スタジオ事業部
公演サイト:http://www.saistudio.net/html/studio_performance_vol14.html

Posted by shinobu at 01:19 | TrackBack