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2005年10月08日

少年社中『リドル-Liddell』10/06-09青山円形劇場

 少年社中は毛利亘宏さんが作・演出される早稲田大学出身の劇団です。サブタイトルは「廃墟に眠る少年の夢~the Lost Adventure~」。
 青山円形劇場の完全円形舞台の良さを十分に生かせる小劇場劇団といえば、まず少年社中ではないでしょうか。

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 ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を題材に作られた、ちょっと男くさい(笑)、メルヘンチック・アクション・ファンタジーでした。

 いつもどおり照明は素晴らしく、衣裳も工夫があって豪華。オリジナル音楽もムードがあり、舞台を縦横無尽に走り回るスピーディーなステージングも見事です。でも、出演者が多いせいか存在意義を見出せないキャラクターが居たり、特に必要性を感じないセリフのやりとりがあったり、上演時間はちょうど2時間でしたが長く感じました。

 役者さんの演技が最も大きな問題だったと思います。「こんな風な演技をしろ」と演出家から指定されているのか、“少年社中っぽい演技”というものがあると勘違いしているのか、原因はわかりませんか、「それらしき何か」に自分をはめこもうとしている方がほとんどでした。

 サーカス団見習い兄弟のケンタウロス役(着ぐるみ)の井俣太良さんと、天上界のバケモノ3人衆の一人、眠りネズミのヤマネ役の山川ありそさんは、とても良かったです。それぞれの役柄になりきっており、自分のセリフがない時や、照明を浴びていない時も、ずっとその役柄で、一心不乱に舞台上にいらっしゃいました。・・・つまり、他の役者さんは時々しらふになっていたというか、演技をしている時にいかにも「今、演技してます!」と伝わってくるような状態でした。

 先述しましたが、今、青山円形劇場を文句なく使える小劇場劇団というと、第一に少年社中だと思います。次回公演もこの劇場だそうですので、また期待したいと思います。

出演=井俣太良/大竹えり/田辺幸太郎/堀池直毅/森大/廿浦裕介/加藤良子/長谷川太郎/杉山未央/小松愛/末冨綾 GUEST=松下好(エルカンパニー)/加藤敦(ホチキス)/芳賀淳子(Ele-C@)/山川ありそ/荻原もみぢ(劇団上田)/春日井一平(劇団上田)/地獄谷三番地(劇団上田)/花小路男D(劇団上田)/ 細身慎之介(劇団上田)/江戸川卍丸(劇団上田)※6,7のみの出演/爺隠才蔵(劇団上田)※8,9のみの出演
作・演出=毛利亘宏 照明=斉藤真一郎(A.P.S.) 音楽=YODA Kenichi 衣装=村瀬夏夜 舞台監督=杣谷昌洋 演出助手=井上淳 音響/PA=佐藤春平 照明操作=石井紀行 ヘアメイク=沖島美雪 スチール=金丸圭 イラスト=井俣太良 宣伝美術=武田和香/真野明日人 WEB=田中祐子 制作=サイキックエイト 吉野礼・加藤妙子 提携=こどもの城 青山円形劇場
前売¥3,000/当日¥3,300(全席指定) 【Enterprise TICKET Campaign】新三部作開始を記念して三種類のスペシャルプライスチケットをご用意。4枚一組の団体割引(一人当たり2500円)、学割(高校生まで1000円)、リピーター割引(1500円)。
公式=http://www.shachu.com/

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Posted by shinobu at 22:55 | TrackBack

さんだる『重松清・さかあがりの神様』10/06-07キッド・アイラック・アート・ホール

 ハラホロシャングリラ山本佳希さんの朗読企画。演出は板垣恭一さん。音楽は小林章太郎さん。このお三方で“さんだる”という朗読をするユニットのようです。これまでは『薮の中』などの古典を取り上げてこられましたが、今回は山本さんのお気に入りの作家、重松清さんの短編集からの一遍です。

 山本さんの朗読と3人組のバンドThree Dew(スリー・デュー)の生演奏とが一緒になったライブ空間でした。

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 ≪あらすじ≫
 さかあがりが出来ない小学2年生の娘と、それを見守る父親のある日曜日の昼下がり。小さな弟が生まれて母親は大忙し。長女はそれなりに寂しい思いをしている。さかあがりの練習を見てあげながら、父親は自分も同じように校庭に残って練習をしていた小学生の頃を思い出す。あの時、僕はさかあがりの神様に出会ったんだ。
 ≪ここまで≫

 山本さんのお人柄の良さが、今の日本のごく平凡な家族の、ちょっぴり寂しいお話にぴったり。負けん気の強い娘と心優しいお父さんの会話を一人で言葉にする山本さんを見ていて、微笑ましくって、じーんとなつかしくて、ホロリと来ました。

 さかあがり、必ず小学校2年生でやりましたよね(って、私の時代はそうでしたが)。まぶしい夕焼けの中、鉄のにおいがしみついた手を見つめて、だんだんと心細くなってくる・・・という自分の経験とバッチリ重なって、始まってすぐにガンガンに感情移入してしまいました。
 父親が自分のおいたち、経験をじっくりと思い出しつつ娘と向き合っていく姿に、人間はいつも、誰もが困難な人生を懸命に生きているのだなぁと思いました。こういう身近な、だけど真剣な気持ちを共有できるのって幸せです。

 照明がものすごく凝っていました。小さな劇場だけれど天井が高いので効果も大々的に表れます。夕焼け色が良かったな。

 お話の区切りでバンドの生演奏が入ります。ギター、ハーモニカ、鉄琴、ハミングの可愛らしいポップス寄りの音楽は、緊張でつまりがちになる朗読の空間を軽く和らげていました。

 Three Dew(スリー・デュー)は姉、妹、弟の実の3人兄弟バンドで、末っ子の小林章太郎さんがいつも楽曲提供をされているようです。音楽の印象としては淡い、心温まるポップス、という感じ。
 次女の方のヴォーカルが良かったですね。のびのびとしていて、声にも姿勢にも無理がなくて。打楽器を持ってハミングしている様子を見ていて、体から音楽に溶け込んでいる感覚がありました。長女さんは緊張してらっしゃったようで、美人なのにしかめっ面でちょいガチガチ気味。弟さんはバンドのリーダーのようですね。「メンバーをあんまり信じてられていないのかなぁ」と感じる顔が何度か見受けられました(長女が演奏を間違う度にジロっと見ていたから)。Mr.チルドレンのヴォーカルに似た歌い方で、静かな声はいいのですが、高い音をはりあげて歌うと聞き苦しかったです。真似しないでご自分のスタイル(を見つけて)で行かれた方が良いのではないかと思いました。

新潮文庫『日曜日の夕刊』重松清著より
朗読=山本佳希 音楽・生演奏=Three Drew(小林章太郎・小林佐和子・小林佑子)
演出=板垣恭一 制作=宮田さゆり 制作協力=池田風見
全席自由・日時指定・要予約。2000円。ワンドリンク付き。
公式=http://www16.ocn.ne.jp/~base/01.html

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Posted by shinobu at 17:40 | TrackBack

東宝『ツキコの月 そして、タンゴ』10/05-30帝国劇場

 森光子さんと東山紀之さんの“ゴールデン・コンビ”を初めて拝見するべく、帝劇にお邪魔致しました。演出が栗山民也さんですし、何か私に響くものをくださるだろうと期待して。

 ぐ~、やっぱ退屈だなぁ・・・と思った途端に素早くてかっこいい転換が用意されていたり、ものすごく普通の新劇っぽい世界だなぁ・・・と思ったら突然何かを象徴するダイナミックな演出が現れたり。結局、途中で帰らずに最後まで飽きずに居られました。

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 アルゼンチンから命からがら日本への帰国を果たした日本人移民の姉(森光子)と弟(東山紀之)の悲劇。姉のツキコは女優を目指し、弟はタンゴ・ダンサーを夢見ます。
 大正、昭和の東京を舞台にしており、いわゆるアカ狩り(共産主義者への厳しい取締り)も描かれます。プロレタリアート演劇への弾圧シーンには胸が苦しくなりました。

 最近強く感じるんです。言論の自由や思想の自由ってすごく大切だって(当然のことなんですけどね)。それは憲法や法律で定められているのだから、国が守るべきだというのはもちろんなのですが、一般の人間が常にそれを気にかけていないと、無意識に自分がそれを破ってしまっていることがあるんじゃないかと不安を感じています。まずは自分自身から、日々気をつけていたいです。

 ここからネタバレします。

 森光子さん。少女役もこなしてらっしゃいまして、やはり可愛らしい方。ツキコは舞台女優になって成功してからも、脚本・演出家の河合(石田純一)と弟(東山紀之)を一途に想っているという設定でしたが、恋心のようなものが感じられませんでした。
 弟が死んだことを気づいたシーンでは、見えない弟に向かって名前を呼びながら「私のそばにいて」とにっこり笑って言い、その直後に「あーーー!」と叫び声を上げたのが凄かった。あの、不幸な時にニコっと笑うのがセクシーなんですよね、『櫻の園』の時もそこがかっこ良かったんです。

 東山紀之さん。テレビで見ていたのと同じイメージでした。背が高い。
 石田純一さん。脚本・演出家の河合役。優しくて繊細な感じだったので共産主義運動をしてそうには見えなかったですが、真面目でまっすぐな姿勢は良かったです。

 雛形あきこさんと馬渕英里何さんはいつもの感じでした。馬渕さんは恋人(東山紀之)が死んでしまったシーンの叫び声がよかった。雛形さんは神経質すぎたかな、と。もうちょっとゆとりが欲しかったですね。

 1920年生まれの森光子さんが舞台に出ているのを目撃できるだけで、私は文句は無いです。休憩30分を挟んで3時間ある芝居の主役で、しかも昼&夜の2ステージある日もあります。もー超人。
 ただ、そういう個人への尊敬などは抜きで考えると、あまりお薦めできる作品ではないですね。ラストシーンで死んでしまった弟と、残されたツキコが2人でタンゴを踊るのですが、森さんが踊れるところだけ2人一緒に踊って、他は東山さんが一人で踊ってました。しかも「上手くなったわね」って姉が弟を褒めるんです。そりゃないでしょう。いくらファンサービスといえども不自然すぎるよなぁと思いました。

出演=森光子/東山紀之/石田純一/中田喜子/雛形あきこ/馬渕英里何/野村昭子/山本學 ほか
原作=伊集院静 演出=栗山民也 脚本=堀越真 演出補=鈴木ひがし 装置=堀尾幸男 照明=勝柴次朗 音楽=福井峻・周水 効果=秦大介 衣裳=宇野善子 単語振付=フェルナンダ・ギ/ギジェルモ・メルロ アクション=渥美博 ステージング=田井中智子 製作=白杵吉春/岡本義次 主題歌=竹内まりや(作詞)/山下達郎(作曲)
S席12000円 A席7500円 B席3500円
公式=http://www.toho.co.jp/stage/tsukiko/welcome-j.html

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Posted by shinobu at 16:44 | TrackBack