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Shinobu's theatre review
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REVIEW

2005年11月30日

reset-N『DUST』11/28-12/06bar drop

 reset-N(リセット・エヌ)は夏井孝裕さんが作・演出される劇団です。私は大ファンなので賛助会員になっています。
 『DUST』3年ぶりの再演はA、Bのダブルキャスト公演で、会場は初演の中野ザ・ポケットから吉祥寺のバー・ドロップへ。もともとクラブを舞台にした作品なので、今回の方がずっと臨場感がありました。もー・・・男優さんがかっこ良すぎて大変!目移りして、どこを見たらいいのか迷っちゃったよ(笑)。※私が拝見したのはAキャストです。Bキャストは12/3~。

 ☆千秋楽ソワレにもう一度観に行きます♪

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 開演の1時間前からDJタイムが始まります。私はクラブという文化に触れない方の人間なので、カウンターでお酒をいただきながらまったりとしていました。お芝居の雰囲気を開演前から味わっておくと良いと思うので、少し早い目のご来場をお薦めします。また、開演直前に来ると見づらい席になる可能性があります。一番前の席がお薦めです♪

 ≪あらすじ≫ 踊る芝居好きのダメ人間日記に初演VS再演のキャスト一覧表あり。
 明け方のクラブ。帰らずにソファでぐだぐだしているカップル(篠原麻美&瀧川英次)。フロアに寝そべる黒い服の男(原田紀行)。DJや店員はいつもことだと思いつつ、客にやんわりと帰るように促す。カップルの女の方は相手の男を置き去りにして、黒い服の男と消えた。
 置いてきぼりになった男はそれから毎日のようにクラブに現れる。あの夜以来、女が消えてしまったからだ。そこに再び黒い服の男がやってきて・・・。
 ≪ここまで≫

 初演よりずっと面白かったです。場所が良かったのが一番の理由でしょう。あとは黒い服の男のセリフがちゃんと心に響いてきたのが大きかったかもしれません。そして、男優さんがすべからくカッコ良かった・・・私好みの人が揃っている(笑)だけじゃないと思います。演技が素晴らしい。
 ただ、全体の完成度の点ではまだまだ上を目指せると思いました。12/6までの13ステージ公演なので、良くなっていくのではないでしょうか。

 ここからネタバレします。

 クラブを切り盛りするのはハルカ(長谷川有希子)とキョウコ(丸子聡美)。飛び入りお手伝いのモモ(町田カナ)はちゃらんぽらんな店長(鶴牧万里)の昔からの友達。店長に呼ばれてきた元人気DJのミコシバ(平原哲)と、客だったが今はDJ志望の若い男ヤシロ(綾田將一)。彼らの日常に侵入してきたのが、不気味な黒い服の男(原田紀行)。
 登場人物は自らを「変態」だと言います。同性愛とか異常性欲とかが出てきますしね、確かにちょっと変わってます。社会的にはマイノリティーに属するであろう若者たちのお話。

 黒い服の男は「太陽」から逃げてながら生きています。つまり昼間は寝て夜に動いています。人間および地球全体に無条件に愛を注ぐ太陽を恐れ、避けているのに、無条件に自分を受け入れてくれる人(聴力を奪われ平衡感覚を失った女)を求めて夜を彷徨っているのです。
 また彼は、生まれたことや誰かを好きになること等、人間の存在や行動に理由なんてないと主張するのですが、“自分を無条件に必要としてくれる誰か”を切望しています。その“誰か”がすなわち自分が生きていることの“理由(拠り所)”になるわけで、「理由なんてない」と言いながらやはり理由を求めるという矛盾をはらんでいます。
 命がけで何かを求め、あがいている人間っていうのは、完全に矛盾していても光るものなんですね。可哀想な奴だなぁと思いつつ、目は釘付けでした。

 ゲイのモモ(町田カナ)は、店長(鶴牧万里)のことが好きだったので、店長のために性転換をしました。前からモモのことを好きだった定員のキョウコ(丸子聡美)は、モモがプラットフォームから転落死した後に「女になってからのモモの方が好きだったかも」とつぶやきます。そしてモモが元・男性だとは知らずに彼(彼女)に一目ぼれしたのはヤシロ(綾田將一)。報われない恋心が交錯しているんですよね。それぞれの一方通行の恋の切なさがあまり感じられなかったのが残念。
 また、ここから逃げたいのに逃げられないでいて、最後もやっぱり出て行けなくなってしまった実質店長のハルカ(長谷川有希子)は、現代人をよく表していると思います。だからもうちょっと切実さが欲しかったかな。

 黒い服の男が女(客の女とキョウコ)を強く抱きしめながら耳を刺すっていうのが、すごく矛盾をはらんだ動きでセクシーです。襲ってるくせに「危ないから動かないで!」と言うのもひどい矛盾(笑)。あぁ思い出すだけでプチ興奮。

 実質店長のハルカ(長谷川有希子)とDJミコシバ(平原哲)のキスシーンが最高に良かった!ソファで眠っているミコシバにハルカが静かに寄っていってそっとキスをします。ミコシバが寝たままハルカを抱こうとするとその両腕をハルカが上から押さえる。それも3回!なんてセクシーなんだ!これだからreset-Nはやめられないんスよ。

 町田カナさん。性転換したモモ役。足きれーーーっ!!黒い服の男に向かって殴りかかるのが迫力(笑)。ただ、静かな会話の演技は堅かったですね。視線が迷っているように見えました。
 原田紀行さん。黒い服の男役。そこに、居ました。本気で。目と顔に嘘がないのです。長いセリフもきっちり聞かせてくださいました。
 平原哲さん。DJミコシバ役。演技が上手いなー、ほんとに。取巻きがいるほどの人気DJだったことを全く鼻にかけていない様子が良かった。キスされてびっくりする表情もリアルでした。
 鶴牧万里さん。店長役。いつもかっこいいですが、今回はゆらゆら動いているのにどっしりとした存在感があって貫禄を感じました。
 瀧川英次さん(七里ガ浜オールスターズ)。フラれる男役。チェルフィッチュの常連役者さんで『目的地』ではセクシーな猫役だったのですが(笑)、今回はマジメ優等生のような短髪に黒ぶちメガネでイメージ一新。大声で怒鳴る度に笑いが起こっていました。面白かったー!

A、Bのダブルキャスト公演。11/29のDJは石山雄三さん(nest)。
出演=町田カナ/篠原麻美/原田紀行/平原哲/綾田將一/長谷川有希子/丸子聡美/鶴牧万里★/ますだいっこう(客演)★/瀧川英次(七里ガ浜オールスターズ) ★ダブルキャスト出演 A:鶴牧万里 B:ますだいっこう
作・演出=夏井孝裕 グランドデザイン=massigla lab. 制作=秋本独人/河合千佳 主催=eset-N  協力=ステージオフィス / にしすがも創造舎(豊島区文化芸術創造支援)
日時指定・全席自由 前売・当日共に3,000円(1drink付)
公式=http://www.reset-n.org/jp/dust2005/index.html

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Posted by shinobu at 14:11 | TrackBack