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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年10月07日

佐藤佐吉演劇祭参加・乞局『廻罠(わたみ)』10/04-09王子小劇場

 佐藤佐吉演劇祭2006のトップバッターは、下西啓正さんが作・演出される乞局(こつぼね)。私は4度目の観劇になります(過去レビュー⇒)。

 東京の地下深くの下水道が舞台。リアルにゴミ溜めなステージの視覚的印象から、私は食べ物の腐臭やカビ臭さ、人間の汗臭さなど、想像できる限りのあらゆる悪臭を疑似体感しちゃったので、とにかく息苦しくってつらかったです(涙)。
 でも、舞台装置はちゃんと清潔なものを使ってらっしゃるので(確かめました)、匂いは観客の想像に過ぎません。これからご覧になる方は、どうぞ私のように無防備になりすぎないよう(苦笑)お気をつけ下さい。上演時間は約1時間45分。
 ⇒BACK STAGE REPORT

 ※公式レビュアー3人(私を含む)、公募モニター4人のレビューが、初日からどんどん上がっています。こまめにチェックして観劇の参考になさってください!
 ⇒佐藤佐吉演劇祭2006レビューブログ

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 ≪あらすじ≫
 下水道で暮らさざるを得なくなった人々。ゴミ溜めから腐った食物をひろって食べ、汗や尿を飲んで生きつないでいる。地上へ逃げ出そうと出口を探しているが見つからない。数ヶ月、もしかしたら数年間、閉じ込められているのかもしれない。彼らは自ら地下に来たのか、それとも誰か・何かに強いられたのか。
 ある日、また一人、新入りが降って来た。
 ≪ここまで≫

 意図的に、際限なく気持ち悪い、乞局ワールド。とにかく今回はゴミ!!・・・でした(汗)。私は開演後30分で限界に達し、普段の感覚で舞台を観られなくなりました。その後はなるべく匂いや湿気を感じないように、感覚を閉じる努力しながら観劇しました。・・・なんて本末転倒な芸術鑑賞なんだっ(笑)!

 笑えるところが少なかったのが本当に残念。どんなに暗くても汚くてもお下劣でも、ある飽和点に達し、さらにそれを軽く飛び越えた時、プッと吹き出し笑いができることがあります。それが乞局作品の他にはない持ち味で、私にとっては最大の魅力なのです。

 匂いや外見の汚さなどを極力排除して人間の姿にフォーカスしてみると、下流社会が明らかに生まれつつある、今の日本に重なるように思いました。“実力社会”“弱肉強食”などという言葉がそのまま通用してしまう資本主義社会。臭いものに蓋をして、無かったことにしてしまう人間関係。非効率的で課金価値の低いものを捨て去り、見捨ててそのまま放置する世界。

 それにしても、タイトルや登場人物の名前に尋常じゃない漢字を使っているのは、毎度のことながら笑えてしまいます。今日も帰りの電車で当日パンフレットのキャスト表を眺めながら、にやにやしてしまいました。だって“似人(にっぴ)”て、おい(笑)!

 ここからネタバレします。

 ゴミゴミゴミって、ゴミのことばかり書いてしまいましたが、壁の質感や赤いパイプへの汚しの入れ方など、リアルにしっかりと作られた美術でした。劇場の天井の高さとキャットウォークを効果的に使っており、臨場感抜群。それも不快感を増徴させた原因でしょう(苦笑)。

 落ちてきた女子大生・通枝子(つえこ:津田湘子)に向かって、破れたスーツ姿の刑辺(おさかべ:田中則生)がつぶやきました。
 「出られると思ってる?」「当分無理だよ、捨てられたんだから。」(セリフは正確ではありません)
 この“捨てられた”というのは、通枝子が警備員の萬田(まんだ:下西啓正)につき落とされたという意味でもあり、このまま見捨てられるという意味でもあります。さらに私は、社会からつまはじきにされ、関心を払われない、つまり存在しないものにされたという意味もあると思いました。こんな風に扱われている人、いますよね。私達も無自覚にそうされている、いや、そうしているかもしれません。

 開演から約1時間後に、警備員の一人・サト(秋吉孝倫)が落ちてきて急展開を迎えます。人間関係に過激な変化が生まれるので楽しめました。でも、そこから終演までは長く感じましたね。

 女子大生の女の子たちが妊娠させられて、放置されるのですが、あのお腹の大きさはたぶん妊娠5~6ヶ月じゃないかと思います。そんなに長い期間、あんな方法で生き延びられるのかな~。それに、そんな長時間を経た服装には見えなかったです。
 落ちてきた警備員のサトを捕虜(?)にして、中縞(なかじま:石井汐)が腹いせに暴力を振るっていた期間はいったい何ヶ月?出口を見つけた荏崎(えのき:仗桐安)を、中縞が殴ったのはいつ?「中縞がひどいことをしてすみません」と、班長の梯田(はしだ:酒井純)が荏崎にお詫びを言うのは一体どのタイミング??・・・という風に、最後の数シーンについては時系列が不明瞭で、腑に落ちませんでした。
 ※妊娠ではなく栄養失調だったそうです(2006/10/13加筆)。

 結局、自ら進んで地下の生活を満喫している荏崎が、班長の梯田に投げ捨てるように言うセリフで、地下の人々の状態がわかります。
 「何がしたいの?お前ら。」「歩き回って、もうここのことは全部わかってるんだろう?(出口を知ってるのに、出る気がない)」「道を探すことが日常になっちまってる。」(セリフは正確ではありません)
 いやだいやだと言いながら与えられた状況をそのまま受け入れ、今の自分の環境を全て他人のせいにして、不平不満を垂れ流しながら、自ら変化する気持ちは全くないという、愚かな人間の姿が露わになりました。でも、作・演出の下西さんはそれを愚かだと思っているかしら?きれいだと思っているのかも・・・。 

出演=秋吉孝倫/地獄谷三番地(劇団上田)/下西啓正/仗桐安(RONNIE ROCKET)/田中則生/三橋良平/五十嵐操/石井汐/酒井純/津田湘子(経済とH)/古川祐子
作・演出=下西啓正 舞台美術=袴田長武(ハカマ団) 照明=谷垣敦子 音響効果=平井隆史(末広寿司) 演出助手=田中兄弟(田中則生・元一) 舞台監督=岩田和明 衣裳=中西瑞美 宣伝美術=石橋淳子 WEB管理=柴田洋佑(劇団リキマルサンシャイン) 制作=阿部昭義(R-style rofect)/大谷美有希(クロカミショウネン18)製作=乞局(コツボネ)
(日時指定・全席自由)前売り・予約:¥2500 当日:¥2800 学生割引:¥2000(要学生証提示) 喪服割引:¥2000(劇団予約のみ・予約は前日まで受け付けています)(喪服もしくは喪服に準ずる服装でお越し下さい)
公式=http://kotubone.hp.infoseek.co.jp/
佐藤佐吉演劇祭2006まとめ=http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2006/0830030836.html

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Posted by shinobu at 2006年10月07日 23:12 | TrackBack (0)