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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年10月21日

佐藤佐吉演劇祭2006・smartball『My Legendary Girlfriend』10/20-24王子小劇場

 佐藤佐吉演劇祭2006の3公演目は、名執健太郎さんが作・演出・主宰されるプロデュースユニット、smartball(スマートボール)です。名執さんのことは伊トウ本式公演ポツドール公演で役者さんとして拝見したことがあります。
 なんと来年9月の次回公演(ユニットとしての第二回公演)は、三鷹市芸術文化センター・星のホールのMITAKA "Next" Selectionに参加されるんですね。

 さて、作風はポツドールに似ていると噂に聞いていました。確かに役者さんの肌の露出度の高さという点では、印象が重なるかもしれません。は、激しかった・・・(笑)。お好きな方は上手前方の席がお薦めですよん。
 2時間5分強の上演時間は長く感じました。

 ※佐藤佐吉演劇祭2006レビューブログ公式レビュアー3人(私を含む)、公募モニター4人のレビューが上がっています。こまめにチェックして観劇の参考になさってください!

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 ≪あらすじ≫
 “愛人バンク”などの出会い系(?)ウェブサイトを運営する会社。深夜バイトが出勤すると、オフィスが荒らされている。「移転のための引越しが始まっているのかな?」と待機するが、一向に社長(アントニオ本多)からの指示はない。実は社長は愛人(石澤彩美)のアパートに逃げ込んでおり、社員の岡崎(岩瀬亮)はある裏社会の窓口から、社長を高飛びさせようと画策し始めていた。どうやら会社は相当ヤバイ状態らしい。
 ≪ここまで≫
 
 ジャンルとしては静か目の現代口語劇で、起承転結のあるストーリー芝居です。小さな声でぼそぼそと日常に近い会話が続いたり、激しいケンカや生々しいからみもあります。サドの変態とか、オプション付きのフィリピン・リゾートの旅とか、聞くに堪えない(かもしれない)話題が、当然のことのようにサラリと語られ、どんよりと暗い気持ちにもなりましたが、最後まで退屈せずに拝見できました。

 人物も設定も顛末も、人との出会いや係わり合い、そして社会に対する視点も面白いと思います。かっこいいなーと思うセリフもシーンも沢山あり、名執さんの独特な世界があると思いました。だからこそ、もったいないと思うことが何度もありましたね。たとえば暗転して「あ、これがエンディングかな」と思うことが数回・・・。

 見ごたえの有る舞台装置でしたね~。天井の高さが特徴の王子小劇場なのに、間口が広く見えたのは嬉しい驚きでした。ただ、中央にオフィス、下手に中華料理店、上手に愛人宅という具合にきれいに三分割されていたのは、舞台の効果としてあまり良くなかった気がします。私は上手側の席でしたので、下手のシーンがすごく見えづらかったんですよね。反対に上手がよく観えたっていうのは、私にとってはちょっとマイナス・・・(笑)。

 ここからネタバレします。

 社長は社員の岡崎(岩瀬亮)と組み、今の妻(白神美央)や大社長(米村亮太朗)、取引先(=警察の女・真壁)と縁を切ってとんずらしようとしていました。だから移転なんて嘘で、バイトも社員もオフィスで待ちぼうけになります。それが警察の女にバレて・・・修羅場になるのです。
 基本的に岡崎とその恋人の中国人(小倉ちひろ)との会話で、話の裏が明かされていきます。説明的なセリフに頼りすぎな気がしました。もっと色んな人との様々な会話や、言葉でない演出も観たかったですね。

 女の子も男の子もセックスシーンで裸になります。これは私には、つらい・・・(汗)。私は裸を観るのが苦手なので、うつむくしかないシーンもあって・・・。特に女の子のブラをはずすのは不快でした。胸に触るにしても、もっと笑えたりドキドキしたりできる工夫をしてもらいたいなと思います。それこそ「もっとやっちゃえ!!」って観客がノっちゃうようなこと、できるんじゃないでしょうか。

 童貞のバイトくん達(松本慎平&荒木拓)と社長の愛人とのセックスなんて、普通は観られない貴重な場面だと思います(笑)。微笑ましく可笑しく見られたら良かったのですが、何かと長すぎたり、過剰だったり。狙いは面白いのに、それを伝えられていないように思います。

 暗転したまま会話が続くことが何度かありました。回数的にも時間的にも多すぎる気がします。場面転換のための時間なのかな?と邪推したりしてしまいました。ただ、中華料理店で警察の女・真壁の声が最後に聞こえたのは効果的だったと思います。

 社長と取引をしている警察の“ヘンタイ”女・真壁(原田優理子)は、豊乳の女が好きな極度のサドで、気に入った女を素っ裸にしてブタと一緒に豚小屋で飼い、三度の食事には残飯に自分の大便を混ぜ合わせたものを与えるという・・・おぞましい設定です。彼女の“プレイ”の内容はとても文章にはできません(汗)。で、そんな女には見えなかったんですよね・・・これはすごく残念。彼女がちゃんと鬼畜に見えないことには、作品全体の説得力が弱くなってしまうんですよね。

 社長と大社長はお互いをバースゲーリーと呼び合う、いわば竹馬の友でした。でもそんなに仲良しには見えなかったです。ラスト近くのシーンでしか二人の対話がなかったし、それまでに二人の関係を匂わすような演出もなかったし。最後に大社長がつぶやく「(社長の)女は俺が何とかする」というセリフがもっと生きて欲しかったですね。

 社長の妻が良いセリフを言うことが多かったです(セリフは正確ではありません)。
 「金とファンタジーの他に何がある?他に売れるもんはない。」
 ある企画で「観た人が死にたくなるような芝居を作りたい」とおっしゃっていた名執さんですが、この作品においては、そこまでの絶望を描こうとしているようには感じませんでした。登場人物は結局救われないけれど、そこに至るまでのケンカ、セックス、悪あがき、後悔、開き直り(あきらめ)などから、可愛らしくて憎めない人間が見えました。
 
 鳴り終わったら耳がキーンとなっちゃうぐらいの、大音量の音楽で幕開けでした。これは刺激的だったな~。かっこいいと思いましたが、実際に“耳がキーン”状態になったのはチとつらかった(苦笑)。全体の選曲もけっこう好きでした。

サブタイトル:誰か、あの雌豚を殺してくれないか?
出演=小倉ちひろ/アントニオ本多/白神美央/原田優理子(トリのマーク〔通称〕)/石澤彩美/岩瀬亮/松本慎平/荒木拓/米村亮太朗 (ポツドール)
作・演出=名執健太郎 美術:松本翠(翡翠空間) 照明:伊藤孝(ART CORE design)  音響:中村嘉宏(atSound) 音響操作:和田匡史 小道具・衣装:大橋路代(パワープラトン) 舞台監督:西廣奏 宣伝美術:冨田中理(SelfimageProducts) 宣伝写真:曳野若菜 WEB:松井一朗 モデル:小倉ちひろ、原田優理子、石澤彩美 協力:フラッシュアップ、マッシュ 制作助手:安田裕美(タカハ劇団)、福留由記 制作:山田恵理子 製作:Y.e.P
2006.9.10(日) 発売開始 前売2300円/当日2500円【日時指定・整理番号付・全席自由席】高校生以下 2000円(要学生証・Y.e.Pのみ取扱)
公式=http://smartball.yep-web.com/
佐藤佐吉演劇祭2006まとめ=http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2006/0830030836.html
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Posted by shinobu at 2006年10月21日 15:10 | TrackBack (0)