2006年02月26日
【DVD】七里ガ浜オールスターズ『はばかるな』07/20-25明石スタジオ(2005年)
昨年末から今年1月にかけて、すっかりイキウメと七里ガ浜オールスターズのファンになってしまい、公演の記録DVDを拝借して観させていただきました。
『はばかるな』はイキウメの前川知大さんの脚本で、七里ガ浜オールスターズの瀧川英次さんが演出・出演されています。
イキウメは2/28からの若手演出家コンクールに出場し、3/15(水)からは番外公演が始まりますね。瀧川英次さんは3/11(土)開幕のチェルフィッチュ『三月の5日間』に出演されます。
小劇場的豪華キャスト(ゲストがすごい)でなんとなく得体が知れなかったため、そして劇場が明石スタジオだったので、あの時は観に行かなかったんですよね・・・。あぁ後悔・・・だってすごく面白かったんだもの!脚本が緻密です。役者さんの演技についてもこの規模の公演にしては大満足ですね。
公演は終了していますので、ネタバレします。
≪あらすじ≫ 劇場サイトに公演紹介文あり。
核爆弾を切り札に、日本から独立した国家を作ろうとネット上で呼びかけた男・三浦。彼の元に7人の同志が集まった。高円寺の隠れ家でひっそりと新生国家ウラヌス(天王星)は産声を上げるが、果たして思惑通りにことが進むのかどうか。さっそく一人の身元が謎の人物にバレてしまい・・・。
≪ここまで≫
小さな舞台で役者が喧々諤々(けんけんがくがく)しゃべりまくる会話劇でした。セリフのキャッチボールがポンポンとすばやく行き交います。登場人物一人一人のバックグラウンドがしっかりしていますし、役者さんもちゃんと役柄の演技をしています。そしてストーリーが面白い。「これから一体どうなるの!?」とわくわくどきどきしながら最後まで集中して楽しめました。
ただ、日替わりゲストについては・・・まあ、日によって当たり外れがあるでしょうね。
舞台を凹型に客席が囲んでいます。明石スタジオでこの客席だと、舞台は相当狭いのではないでしょうか。客席と舞台がすごく近いので、臨場感があっただろうな~。
オープニングで面を被って顔を隠した人達が叫びまくり、かなり引いちゃいました。「何が起こっているのだろう?」と想像するよりも、「うるさくって不快」という状態だったんです。どなり声で早口でしたからね。のっけからこういう演出というのはちょっとリスクが高い気がします。もうちょっと観客フレンドリーで柔らかい方がいいのではないでしょうか。
でも、オープニングのシーンは物語の時系列的にはもっと後で起こった出来事で、さらにスーツの男(瀧川英次)もまだ居るはずのない人物だと判明してからは、こだわったシーン構成に唸りました。
主婦や占い師、未成年の少女など、集まったメンバーはごく平凡な若者ばかりですので、独立国家なんてそんなにうまくいくわけはありません。少しずつ、ひとつずつ、きれいに編みあがるはずの国家がほどけていき、ボロが出始めます。
謎の男(瀧川英次)がウラヌスの隠れ家に侵入してきた時はゾクっとしましたね。大御所衆議院議員の娘が同志の中にいて、謎の男とはその衆議院議員の息の掛かった議員だったというのもすんなり受け入れられました。核爆弾がなかったというオチにも納得。まったく、練りに練られた脚本って素晴らしいですよね~。「同志」「非国民」などの言葉を使って、集団が陥る排他性を示したのも良かったです。
三浦は自殺系サイトにばかり書き込んで呼びかけをしていました。だから集まった同志はみな自殺志願者もしくは自殺に興味を持つ若者ばかりだったのです。もう死ぬしかないという限界まで来た若者が、絶対的なもの(=核爆弾)を切り札に自分の存在をアピールし、「生きている」と感じながら生きるんですね。このクソッタレ日本に向かって「俺は生きている。そして、日本が大嫌いだ」という意思表示をすることだけで美しいです。みんなと一緒にいられなくても。独立できなくても。
岩本幸子さん。書記役。そつない演技で安定してらっしゃいます。自殺願望のあるナーバスな人物かと思いきや、ものすごくアグレッシブに堂々と発言することもあり、キャラクター的に少々破綻していたように感じてしまいました。
帯金ゆかりさん。最年少だと思われるアマノ役。大御所の衆議院議員の娘だったとわかってからの爆発が良かったですね。でもそれまでは少々からまわりな印象。
大森智治さん。軍部役。気弱な軍隊っていうのが可愛らしい役どころでした。でも怒鳴り声でセリフがはっきりと聞こえないところが多かったのが残念。
瀧川英次さん。若手衆議院議員タチバナ役。演出もされているからか最初と最後にだけ登場するのですが、素晴らしいスパイスになっています。がっちがちのいけ好かないエリート・トークの中で、フっと力が抜けるセリフがあり、それがリアルで心地よいです。
※日替わりゲスト(タチバナが隠れ家の前に待たせていたタクシーの運転手役)は、ゲストによってかなり当たりハズレがありそうです。DVD版では清水宏さんでした。清水さんには思いっきり笑わせていただきましたが、ストーリーがすごく面白いので、ネタで流れをぷっつりと切られてしまうことには閉口です。集客のための制作的戦略としてはよくある方法ですし、動員数で成果を上げたなら(追加公演があったようです)主催者側としては成功ということになりますね。でも、まあ、ちょっと・・・ね。できれば私は日替わりゲストがない方がいいですね。作品として楽しみたいので。
タイトルの「はばかるな」は今作では「遠慮するな」「気がねするな」「躊躇するな」の意味ですね。
出演=市子嶋しのぶ(カムカムミニキーナ)/岩本幸子(イキウメ)/佐藤玲子(殿様ランチ)/帯金ゆかり(北京蝶々)/野口雄介(神様プロデュース)/田中伸一(開店花火)/熊本統伸(SQUASH)/大森智治/瀧川英次
日替わりゲスト=清水宏/中嶋比呂嗣(P.E.C.T.)/鶴牧万里(reset-N)/小野健太郎(StudioLife)/ 爺隠才蔵(劇団上田)/西田シャトナー
作=前川知大(イキウメ) 演出=瀧川英次 楽曲提供=くものすカルテット
合計10ステージ(追加公演あり) 前売¥2,500 当日¥2,500
公式=http://stars.moon.st/
明石スタジオ内=http://page.freett.com/AkashiStudio/calendar.files/gekidan.files/2005.files/2005-0704.html
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
●●●人気blogランキングに参加中!ポチっとクリックしていただけると嬉しいです。●●●
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
★メルマガを発行しております。過去ログはこちら。
毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
ぜひご登録ください♪
『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)
↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。

『まぐまぐ!』から発行しています。
2月文楽公演『御所桜堀川夜討』『関取千両幟』02/11-26国立劇場 小劇場
文楽を観たのは高校生の時以来です。国立劇場はいいですね~、落ち着いたムードがあって。半蔵門って好きです。
第一部を拝見しました。間に25分の休憩を挟んで『御所桜堀川夜討』『関取千両幟』の2本です。脚本(底本?)の字幕があるとは知らず、感動。
超詳しいレポート⇒演劇◎定点カメラ
高校の時よりはちゃんと観られたと思いますが、まだまだ私はオコチャマでした・・・あぁわからない~と思った途端、うつらうつらと・・・。すみません。もっと大人になってから馳せ参じます。
●『御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)』弁慶上使の段
弁慶が生涯にただ一度だけ肌を重ねた女がいた、という架空の設定のお話でした。その設定自体がロマンティックだしかっこいいですよね。
それにしてもどんどん自害するのが迫力。弁慶(人形)が大きな動きをするのに見とれました。
●『関取千両幟(せきとりせんりょうのぼり)』猪名川内より相撲場の段
大阪の掘江に住むお相撲さんのお話ということで、太夫ががんがん関西弁だったのがすごく楽しかったです。あぁこういうの、残ってるんだな~。
主人公の正義漢の力士と、見るからに悪人の力士との対比。ここにもやはり尋常じゃない健気さの女が登場。お金とか権力とか、昔からそれなりに大事だったみたいだけど、人間のあるべき姿とか、美しい生き様とか誇りとか、目に見えなくて形にならないものの存在が大きかったんだなって思います。
三味線の曲弾きというのがあって、バチを竿に挟んで投げたり(表現が下手ですみません)、曲芸披露状態。娯楽でした~っ。
出演者=竹本住大夫/鶴澤寛治/吉田玉男/吉田簑助/吉田文雀/ほか
16ステージ 1等席5700円(学生4000円)/2等席4700円(学生2400円)/3等席1500円(学生1100円)
公式=http://www.ntj.jac.go.jp/performance/24.html
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
●●●人気blogランキングに参加中!ポチっとクリックしていただけると嬉しいです。●●●
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
★メルマガを発行しております。過去ログはこちら。
毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
ぜひご登録ください♪
『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)
↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。

『まぐまぐ!』から発行しています。
映画「スクラップ・ヘブン」(配給:オフィス・シロウズ=シネカノン)
主演は加瀬亮×オダギリジョー×栗山千明ってことで。脚本・監督は『69 sixty nine』の李相日(リ・サンイル)さん。本編117分ですが体感時間は裕に2時間以上でしたね。
私が映画好きだったのは今から20年ぐらい前です。その頃からこういう“溜まった鬱憤吐き出したい系”の若者映画って多かった気がするんですが、今も作るんですね。
こう、作品全体から不平不満が吹き出してるというか・・・。発散するだけじゃなくてちゃんと軽く作られてますし、ラストにはにくいメッセージもありましたけどね。
すっきり爽快はできないし、じっくり人生について考えるほどのアイデアや問題提起ももらえないし、明日の糧になる希望なんてもちろんないです。だから見終わってから「良かったな~」と思ったシーンを数える努力をしました。
役者さんは皆さん上手かったのではないでしょうか。しらけることがほぼゼロでしたね。オダギリジョーさんがキネマ旬報映画賞・主演男優賞、ヨコハマ映画祭・主演男優賞を受賞されていますが、私的には加瀬亮さんの方がずっと良かったです。栗山千明さんはポスターなどの静止画でしか見たことなかったんですけど、きれいだし面白いですね。バスジャックのシーンは犯人役の田中哲司さんばっかり見てた(笑)。池田鉄洋さんが冒頭に出てきたのも嬉しかったな~。
ここからネタバレします。
良かったのは、警察官のシンゴ(加瀬亮)と薬剤師のサキ(栗山千明)のラブシーンがなかったこと。うっとりとしてコピー機の前に立っているシンジを見れば、前夜に二人がヤったんだってことがすぐわかりました。スマートでグー!
映画って・・・「ありえないよ!」って思った瞬間に激冷めしますよね。あ、演劇でも同じか。
シンジが殺人事件の被害者の一周忌に行くシーンで、子供が刑事(柄本明)の持ってるケーキを叩き落し、それを足でふんずけるんですが、見ながら「ありえねーっ!!」って叫んじゃいました。受け取らないとか、放るとかはアリかもしれないけど、落とした上に、さらにケーキの箱を足で踏むなんて・・・(笑)。
あとで思い出したんですが、オダギリジョーって既にバスで死んでたんですね。夢オチ?いや、夢オチって言い方はダメですけど。(2006/02/27追記)
で、勝手に5つ星評価。
★☆☆☆☆ お薦めできない
★★☆☆☆ 好みじゃないけど観てよかった
★★★☆☆ 面白かった
★★★★☆ お薦めです
★★★★★ 人生変わるほど感動!
「スクラップ・ヘブン」は★★☆☆☆です。
"SCRAP HEAVEN" 2005年/日本/117分
出演=加瀬亮/オダギリジョー/栗山千明/光石研/森下能幸/田中哲司/鈴木砂羽/団時朗/山田辰夫/柄本明/池田鉄洋/ほか
監督・脚本=李相日(リ・サンイル) 撮影=柴崎幸三 照明=市川元一 録音=柿澤潔 美術=仲前智治 編集=今井剛 音楽=會田茂一 エンディング・テーマ曲「唇気楼」(東芝EMI)=フジファブリック 製作=オフィス・シロウズ 企画=佐々木史朗 配給=オフィス・シロウズ=シネカノン
公式=http://www.scrapheaven.jp/
情報=http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=5193
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
●●●人気blogランキングに参加中!ポチっとクリックしていただけると嬉しいです。●●●
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
★メルマガを発行しております。過去ログはこちら。
毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
ぜひご登録ください♪
『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)
↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。

『まぐまぐ!』から発行しています。