2006年03月10日
【ポストパフォーマンストーク】PME『生殖行為によって家族は作られる 』03/09-10東京キネマ倶楽部
PME終演後のポスト・パフォーマンス・トークを聞きました。レビューはこちら。
出演者はジェイコブ・レンさん(PME演出)、岡田利規さん(チェルフィッチュ)、鴻英良さん(舞台批評家)、そして通訳は内野儀さん(演劇批評家)でした。豪華ですね~っ。
トークは1時間ぐらいありましたね、長くて充実していました。
なぜ岡田さんがこのトークにゲスト出演されることになったかは、チェルフィッチュブログ2参照。メモって覚えている限りのことを書きます。以下、敬称略。
岡田「2003年3月15日、アメリカ軍によるイラク空爆直前に、PMEの「Unrehearsed Beauty」という作品を見ました。出演者が話したいことを話すという内容で、当然のことながらそのステージではイラク空爆の話が出ていて、内容もさることながら(自分の考えに)共通するものがあって、僕を刺激してくれる、思考を回転させてくれるようなタイプの演出でした。今回を含めて複数回PMEの作品を観られて、よくわかりました。」
岡田「今作品で使われた言葉で言う「平凡」について。この「平凡」というのはポジティブな意味です。平凡さに留まるということは難しい。美しくしていくことは、むしろ留まることよりも決して難しいことではないのではないか。自分は塗り固めていくタイプの作り手だ。自分に対しての戒め(というほどのことでなくてもいいけれど)にしたいので、Jacobさんにお聞きしたい。コーヒー、トーストなどの平凡(日常)を舞台に上げることについて、「そんなことをわざわざ舞台上でする必要はないのではないか?」という批判が出てくる。それを肯定する(その批判に対して反論する)ロジックをJacobさんがもしお持ちなら、教えて欲しい。」
Jacob「(この場合の)平凡というのは英語でcasualです。casualというのは凡庸ではない。アート(芸術)はそれ自体だけでは退屈です。日常と接続した時点で面白くなる。人間は生活からは逃れられない。日常に居ながらどのようにアートと関われるのかが重要。パフォーマンスでは日常的な振る舞いができる。だから日常とアートが出会える。」
Jacob「今、私達がこうして舞台で話したり、コーヒーを飲んでトーストを食べて、西洋式の豊かな生活をしている間にも、危機は続いている。エチオピアでは子供が餓死し、イラクでは爆撃による殺戮が起こっている。自分の履いている靴についても、第三世界の子供が1時間3セントの時給で奴隷のように働かされて作ったものかもしれない。全く違う生活水準が同時に存在している。Everyday life is pure crisis. 危機意識を持って何かをやることが重要。」
Jacob「15年前は舞台で人が叫んだりする演技はなかった。今はそこに怒りがある。でも劇場の外ではジョークを言って笑ってたりする。完全にイカれてる(completely insane)。そこを意識しないわけにはいかない。」
岡田「靴がどのようなプロセスで作られているのかを知ったとしても、日常の中では、我々は忘れてしまう。やっぱり安いものを買ってしまうし、スターバックスでコーヒーも飲む。だからそれをパフォーマンスで表現し、危機意識を喚起させて、自分の中に取り入れていかなければいけない。契機は何でもいい。パフォーマンスは有効なものだと思う。」
岡田「今回は子供の話が出てきましたが、実は僕もちょうど前作で子供の話をやりました。パクってるわけじゃないんですが(笑)、びっくりしました。僕にも子供がいて、その意味で興味もあるのでお聞きしたいのですが、後半でパソコンに話させていたロジック『皆さん、子供を持つのをやめましょう』について。Jacobさんは反論できますか?」
Jacob「あのパソコンの言っていた論理は、まさに私の考えです。もちろん賛同する人が極端に少ないであろうことは否定しません。私の親は私を愛してくれたし、大切にしてくれている。でも私は両親が嫌いです。生まれた子供が必ず両親を愛してくれるなどということはありえない。ロックンロールにしたって、親に反抗するという音楽ですよね。」
Jacob「靴を買うことも、子供をつくることも、自殺をすることも、究極の選択。子供を持つのは当たり前のように言われてるが、それに疑義を示したい。」
Jacob「子供に対して一番過保護なことは、子供を生まないこと。」
岡田「たしかに「生むべきかどうか」というところに居ることができない状態ではありますね。僕は子供が居るから反論したいんだけど、どうにもできそうにない(笑)。」
Jacob「これだけはひとつ、言っておきましょう。私がこんな主張をしたとしても、人類は続きます。人類にしかないエネルギー、力(など)は確かに存在していて、そこに、ある種の真実がはらまれている。」
鴻「これはオイディプスの話ですよね。出産の逆説です。また、ユダヤ人のエピソードも出てきました。」
Jacob「実際、自伝的です。私がきらいなことを劇にしました。家族劇、メロドラマ、ソープオペラ(昼ドラ)などの、「どうか私の話を聞いてよ~」と訴えかけるような(不恰好な)ものを作ってしまうのではないかと恐れました。しかし、その恐怖に対面して、その結果を楽しみにしようじゃないかと思ったのです。
Jacob「自分がユダヤ人であることやセックスについてなど、作品に放り込んでみました。この15年間ではじめて(もしくは2度目)のことで、(観ていて)最も暗くなる作品だったかもしれません。」
出演=ジェイコブ・レン(PME演出)×岡田利規(チェルフィッチュ) モデレーター=鴻英良(舞台批評家) 通訳=内野儀(演劇批評家)
公式=http://precog-jp.net/2006/01/224331_postmainstream_performi_1.html
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
●●●人気blogランキングに参加中!ポチっとクリックしていただけると嬉しいです。●●●
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
★メルマガを発行しております。過去ログはこちら。
毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
ぜひご登録ください♪
『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)
↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。

『まぐまぐ!』から発行しています。
PME『生殖行為によって家族は作られる 』03/09-10東京キネマ倶楽部
PMEは、カナダはモントリオールのパフォーマンス・グループです。チェルフィッチュブログ2の引力で観に行くことにしました。原題は“Families are formed through copulation”です。う~ん、タイトルの意味は露骨ですよね(笑)。
ポスト・パフォーマンス・トークで舞台評論家の鴻英良さんが「チェルフィッチュの作品に(が?)構造的に似ている」とおっしゃっていましたが、確かにそうだなと思いました。
東京キネマ倶楽部(←音が鳴ります)は元キャバレーだった会館で、すっごくムードのある空間でした。あそこに行けただけでも楽しかったですね。鶯谷(うぐいすだに)はちょっと遠かったですが。
明日(3/10)の20時の回で千秋楽です。
3月はこのポストメインストリーム・パフォーミング・アーツ・フェスティバル2006と平行して東京国際芸術祭2006も開催中で、海外の舞台芸術に触れられる機会がとても多いですよね。できれば全部観たい!って気持ちなんですが、スケジュール的に難しくって・・・・悔しいなぁ(涙)。
ここから概要を書きます。読んでから観に行かれても支障はないと思います。
さて、今作は男1人と女2人が出演するパフォーマンスでした。大枠として第1部~第5部に分かれており、さらにその中にいくつかのパフォーマンスがあります。3人ともTシャツにジーンズという感じのラフな衣装で、どちらかというと日常的な体の状態で、舞台の上に居ます。普段の現代人のようにだらんとしてたり、ゆらゆらしてたり。マイクを持って客席に向かって告白をしたり、2人もしくは3人で動いたり踊ったり、レコードをかけたり楽器を演奏したり。
読まれるテキストの日本語訳が舞台奥の大きなスクリーンに映し出されます。これがけっこうな量で読むのがちょっと大変なんですが、刺激的で、だけど納得できる意見ばかりでとても面白かったです。何かと皮肉っぽいんだけど、説得力があるんですよね。
役者さんの舞台での存在の仕方は、演じている自分を演じている、というような、何をするにしてもしないにしても、常に客観的な視点を保った状態でした。「役を演じる&振付どおりの動きをする、ということを客観視する演技」をしているというか(説明が下手ですみません)。私にはそのあり方がすごく心地よくて、彼らが話す言葉がものすごくスムーズに私の心に届いてきました。だから字幕も英語もスポンジのように吸収できる気がして、そのシャワーを浴びるのが気持ちよかったです。ただ、言葉がない時の動きや演奏の時はちょっと眠くなったりもしましたけどね。
ここからネタバレします。内容は覚え書き程度です。
第1部■親はサンドバッグ、子供は暴君。
・ヒッチハイク。むりやり○○○ジョブさせられた友達が自殺した。
水をスポイドで目および顔にたらして涙を表現。
・自分はユダヤ人。ナチスの子孫である彼女を攻め立てた。
でも彼女の親(ナチス)も、家族のために(ユダヤ人虐殺を)やっていた。
・悪いのはすべて親。子のせいではない。
・下手で箒(ほうき)が釣り下がっている。揺れる。
第2部■家族セラピー
・相互確証保障。ニヒルでぶっきらぼうなセリフのやりとり。
・巻尺で縄跳び。
第3部■皆さん、こどもを作るのをやめましょう。"People, Stop Having Children."
・上手のごみ袋が揺れる。がさがさ、もぞもぞと音が鳴る。
・ノートブック・パソコンが語る「子供を作るべきではないロジック」。
・私達が世界をだいなしにしてしまわないように祈る時間が必要だ。
・生まれてこないのは楽勝です。
第4部と第5部についてはタイトルを忘れました。分かれ目も曖昧。
・親に対して20ページの手紙(親を非難する内容)を送ったら、親から詫びてきた。
・下手の階段の上で、親が子供の腕に風船のようなものを丁寧につける。
「子供は飛行機で、それをうまく飛ばそうとする親」のよう(私の個人的な感想)。
でも子供は風船(=救命胴衣)を自分でどんどんはずしてしまう。
・透明プラスティックのグラスを高く積み上げていく。てっぺんのグラスに液体を入れる。
その液体に何らかの薬(?)を足すと、液体が一瞬だけ青い光を放ち、すぐに消える。
家族の共同作業かなと思いました。一瞬だけど、えも言われぬ奇跡のような美しさがそこにある。
客席には演劇業界人(っていうのかしら)がいっぱい。ポスト・パフォーマンス・トークの出演者が豪華なのもあるでしょうが、このフェスティバルが注目されているからかなと思いました。トークの内容はこちら。
Postmainstream Performing Arts Festival 2006
創作・出演=ゲタン・ナド/ロー・オットマン/トレイシー・ライト
【PME側スタッフ】作・演出=ジェイコブ・レン(Jacob Wren) 美術・映像=ジャン=ピエール・ゴウチエ 振付=マルタン・ベランジェ 技術監督=マシュ・シャトゥラン 舞台監督=イザベル・ボドゥリ プロデューサー=リシャール・ドゥシャーム/シルヴィ・ラションス/ジェイコブ・レン
【日本側スタッフ】舞台監督=尾崎聡 技術監督=関口裕二(バランス) 字幕・翻訳=新井知行 字幕オペレーション=桑原綾子 プロデューサー=丸岡ひろみ/小沢康夫 制作助手=塚口麻里子 主催=国際舞台芸術交流センター(PARC)
前売り3.000円 当日3.500円 ワンドリンク付き
3月9日(木)アフタートークあり。出演=ジェイコブ・ウォレン(PME演出)×岡田利規(チェルフィッチュ) モデレーター=鴻英良(舞台批評家) 通訳=内野儀(演劇批評家)
公式=http://precog-jp.net/2006/01/224331_postmainstream_performi_1.html
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
●●●人気blogランキングに参加中!ポチっとクリックしていただけると嬉しいです。●●●
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
★メルマガを発行しております。過去ログはこちら。
毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
ぜひご登録ください♪
『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)
↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。

『まぐまぐ!』から発行しています。