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Shinobu's theatre review
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REVIEW

2007年03月21日

KUDAN Project『美藝公(びげいこう)』03/16-21ザ・スズナリ

 『くだんの件』、『真夜中の弥次さん喜多さん』(百人芝居もありました)に続くKUDAN Projectの二人芝居・最終章(という噂)に、「CoRich舞台芸術まつり!2007春」審査員として伺いました。
 『美藝公』は筒井康隆さんの小説ですが、何も知らずに観に行っても大丈夫だと思います(私がそうでした)。上演時間は約1時間40分。

 ⇒BACK STAGEの稽古場レポート
 ⇒CoRich舞台芸術!『美藝公

 レビューはCoRich舞台芸術!に書きました。こちらにも転載します。備忘録あり。

■映画の愛と、演劇の愛と

 映像と演技の見事なコンビネーション、舞台に張り巡らされた面白い仕掛け、創意工夫を凝らした二人の対話など、KUDAN Projectならではの演劇を楽しませていただきました。最後のシーンでは涙が出そうになりました。ただ、これまでの作品を拝見していて期待が大きかったせいもあり、「ミタコトモナイ≪演劇≫」を堪能するまでに至らなかったのは少し残念でした。

 ここからネタバレします。

 “美藝公”とは、日本一の映画俳優キタヤマ(小熊ヒデジ)のこと。いっこうに脚本が書けない脚本家ヤジマ(寺十吾)は天野天街さんご自身のことかしらと頭に浮かんで消えませんでした(苦笑)。※役の名前はうろおぼえです。

 映画の撮影現場でポカをやらかした(炭鉱でダイナマイトを爆発)キタさんは映画界を追い出され、一緒に仕事をしてきた脚本家ヤジさんも仕事を失い、演劇の世界へと落ちぶれます(笑)。「映画に戻りたい」と嘆きながら演劇の世界を生きる二人。「演劇なんて」とぼやきながら、演劇だからこそできる演出が次々と繰り出されます。まさかタップダンスまで披露していただけるとは驚きました。

 演劇の中に映画があって、その中に演劇、その中に映画・・・という入れ子構造から、映画と演劇の両方を心から大切に、愛している気持ちが伝わってきました。小さな障子紙にヤジさんとキタさんの映像が映ったラストシーンで、身体がじーんと温まりました。

 ここから備忘録です。

 登場するのは脚本家のヤジマ(寺十吾)と日本一の映画俳優“美藝公”キタヤマ(小熊ヒデジ)の二人。やっぱり“ヤジキタ”なんですね(笑)。

 真っ暗だ→ここはどこだ?→炭鉱だ→何も見えないよ→本当に?・・・と、暗闇で問答。二人の生声の他に時々マイクを通した録音声も聴こえます。「あぁ、弥次さんだ、喜多さんだ、懐かしい!嬉しい!」と思っている自分がいました。そして何もなかった舞台に現れた装置が『真夜中の弥次さん喜多さん』の時とほぼ同じ和室だった時、がっかりしちゃったんですよね・・・全く予想も付かないような新しい世界を期待してしまっていたんです。ごめんなさい。

 ヤジさんが脚本を書くためにこもっている旅館が舞台です。ダイナマイトに火をつけたのはキタさん。もしかすると彼は既に死んでいるのかもしれません。


≪名古屋、東京≫
出演:小熊ヒデジ&寺十吾
原作:筒井康隆 脚本・演出:天野天街 
※1月27日(土)発売開始 前売・予約:3,400円 当日:3,800円 高校生以下:2,800円
公式=http://www.officek.jp/kudan/

Posted by shinobu at 2007年03月21日 01:52 | TrackBack (0)