REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2007年03月20日

スロウライダー『Adam:ski(アダムスキー)』03/16-25三鷹市芸術文化センター 星のホール

 スロウライダーは山中隆次郎さんが作・演出される劇団です(過去レビュー⇒)。「CoRich舞台芸術まつり!2007春」審査員として初日に伺ってきました。三鷹市芸術文化センター 星のホールを天井高く、狭く建てこんだ舞台と客席でした。私は最後列の高いところから眺める位置での観劇になったのですが、いや~・・・いつもの星のホールの面影ゼロで、面白い体験でしたね。

 静かに、じわじわと真相に迫っていく生々しい心理ホラー作品でした。2003年初演作品の再演ですが、脚本は大幅に変更されているそうです。上演時間は2時間弱でした(初日時点)。

 千秋楽が3/25ですから、およそ2週間の公演なんですね。三鷹でロングランって凄いなと思います。

 ⇒CoRich舞台芸術!『Adam:ski

Adamski%20034%20web.jpg
舞台写真・主催者より提供

 ≪作品紹介・あらすじ≫ 劇場サイトより。
 民俗学、国文学の研究者“故・折口信夫”とその弟子との交流をモデルに、他者の理想と自らの現実の狭間で煩悶する、人間の弱さと脆さを骨太に描き切る!

 生前、その民俗学者は「怪物」とさえいわれた。膨大な知識と神懸かり的な直感で、「先生」はこの世界とあの世をつないでみせた…。その奇妙なカリスマに引き寄せられ、周囲にはいつも男たちが集まっていた。「先生」の死後。彼を愛し、集まっていた門弟の男たちは、書きかけの自伝を皆で完成させ、出版する計画を立てる。しかし「先生」についての証言は、彼らの間で大きく食い違い、かつ「先生」の恋人だったと名乗る男の来訪によって、はたして「先生」とは誰だったのか、「先生」にとって自分は誰だったのか?男たちは激しい混乱に陥っていく…。
 ≪ここまで≫

 レビューはCoRich舞台芸術!に書きました。
 下記は自分の備忘録のための記録です。ここからネタバレします。

 一人の記者(數間優一)がある学者(=先生)のことを調べようと、その学者のかつての弟子・白崎(山中隆次郎)の家を訪れるところから開幕します。白崎が自分と同じく先生の弟子だった男・徳田(夏目慎也)から聞いたことを伝える形で、物語が進みます。

Adamski%20088%20web.jpg

舞台写真・主催者より提供

 舞台は先生と弟子たちが暮らしていた大きな洋館の書斎。柱やドアは洋風で床は大理石(っぽい)なのに、書斎スペースだけは畳の間で、畳の上に赤いじゅうたんが敷いてあり、家具は和洋折衷です。全体的に薄暗~くて、鬼のような仮面の民族衣装が柱に吊るされていたり、なんとも不気味な、居心地が良いとは決して言えない部屋。しかも常に何らかのノイズが鳴り続けています。『トカゲを釣る』の効果音ほどではありませんが(苦笑)、決して心地よいとは言えない音でした。ガの羽音だったのかな・・・・。

 徳田の夢の中の世界(月の精霊が登場する)が描かれることで、「先生」に対する徳田の執着心の大きさが描かれたのかなと思いました。でも、最後の最後まで私は意味がわかってなかったんだけど。人が死んでいくことに「ええっ!」と驚いたぐらい、ホラーだという認識がなかったので(汗)。怖いというよりは、弟子たちの行動を淡々と追っていくことで、その人たちの心の動きを探るのが楽しかったんですよね。

Adamski%20155%20web.jpg
舞台写真・主催者より提供

 役者さんは皆さん、すごく自然で良かったです。キャラクターを際立たせようと大げさに動いたり、何らかの突飛な特徴で目立とうとしたり、そういう小手先のことが全くありませんでした。主人亡き後の洋館に取り残された若者たちを、静かに覗き見するように(笑)、楽しませていただきました。

 興奮したところ→春洋(はるみ・日下部そう)が“もどき”だとバレたところ/別府(竹井亮介)の肩を小さく揺らすクセ/着物を着た吉松(金子岳憲)が「先生」になって生萩(はまはぎ・山口奈緒子)をひっぱっていくところ/白崎が「ありがとう、生萩」と妻(渡辺いつか)に向かって言うラストシーン、そしてその暗転

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:タニノクロウ(庭劇団ペニノ)/山中隆次郎(スロウライダー)

 お二人のトークは、観ているだけで楽しめちゃうような一風変わった時間でした。だって動きと話し方が面白いんだもの、まるでチェルフィッチュ公演みたいに(笑)。
 タニノさんはしきりに「いい話だった~」とおっしゃってました。

 タニノ「何が怖いって、僕はポスト・パフォーマンス・トーク(の時間が来るの)がめちゃくちゃ怖かった(笑)。」

出演=山中隆次郎、數間優一、日下部そう(ポかリン記憶舎)、夏目慎也(東京デスロック)、渡辺いつか、金子岳憲(ハイバイ)、板倉チヒロ(クロムモリブデン)、村上聡一(中野成樹+フランケンズ)、山口奈緒子(明日図鑑)、竹井亮介(親族代表)
作・演出=山中隆次郎 舞台美術=福田暢秀(F.A.T STUDIO) 照明=伊藤孝(ART CORE design) 照明操作=三浦詩織 音響=中村嘉宏(atSound) 音響操作=井川佳代 舞台監督=西廣奏 舞台監督補佐=シロサキユウジ 宣伝美術=土谷朋子(citron Wroks) 宣伝・記録写真=西田航 記録映像=トリックスターフィルム WEB運営=栗栖義臣 制作補佐=坂本明 制作=三好佐智子 企画・製作=有限会社quinada(キナダ) 主催=(財)三鷹市芸術文化振興財団
発売日2007/02/16 全席指定 一般前売:2,800円 一般当日:3,000円
公式=http://www.slowrider.net

※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2007年03月20日 18:51 | TrackBack (0)