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2007年04月26日

【インタビュー】『CLEANSKINS/きれいな肌』脚本家シャン・カーンさん(後編)04/19新国立劇場応接室

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Shan Khanさん

 『CLEANSKINS/きれいな肌』の脚本を書かれたシャン・カーンさんのインタビューの後編です(⇒前編)。ただいま新国立劇場で上演中!4/28(土)までです。お見逃しなく♪

 稽古場レポート⇒〔〕〔〕〔〕〔〕〔〕〔
 ⇒初日のレビュー
 ⇒シャン・カーンさんのインタビュー(新国立劇場)動画あり!
 ⇒シャン・カーンさんのインタビュー(前編)(後編・このページです)
 ⇒演劇「CLEANSKINS/きれいな肌」お客様の声(新国立劇場)
 ⇒CoRich舞台芸術!

≪後半≫
しのぶ:今回の作品についてお聞きしたいんですが。今作は世界初演ということで、日本人の出演者・スタッフで作られたわけですね。率直に、初日をご覧になっていかがでしたか?
シャン:楽しませていただきましたし、素晴らしいと思いました。自分が書いた活字が舞台になって命を吹き込まれているのを観ると、若干奇妙な感じがするのは、おわかりいただけますよね。でも自分と違う人々が少しずつ、いかに違った風に解釈してくれるかを観るのは、いつも楽しいです。「これがあなたが心に描いていたことでしょ?」と言われて、実はそれが自分の意図と違っていても、舞台で演じられるのを観たら素晴らしいなと思うのです。言葉(日本語)が理解できなくても、まあ、私は何が起こるかを知っているので意味ははっきりわかっているんですが(笑)、とても良かったと思います。キャスト・スタッフがチームとして団結して、素晴らしい仕事をしてくれました。

しのぶ:三人の出演者について、感想をお聞かせいただけますか?お母さんのドッティーはどうでしたか?
シャン:彼女(銀粉蝶さん)はとても良かったですね。彼女はキャラクターのアーチ(弧)を、そのように私は呼ぶんですが、それをうまく体得していたと思います。一目観て、少しお馬鹿さんな感じでしたよね。ドッティーという名前が表すところの“ドッティー”をちゃんと演じてくれたように思います。ドッティーというのはドロシーのニックネームで、名前の設定にそもそも“ぼんやりさん”、“うっかりさん”、“ちょっとお馬鹿さん“という意味があるんです。彼女は少しぼーっとしていて、混乱やすい気質であるところをよく表現してくれていました。彼女の外見や身体の在り方(physicality)も良かったです。ドッティーはとても大きな暗い秘密を子供達に隠していますよね。でも彼女の表情や動き、表現からは、たとえ彼女が妙に見えたとしても、大きな秘密を隠していることを最後の最後まで観客に疑わせなかった。

しのぶ:お姉さんのヘザーはどうでしたか?彼女は改宗したイスラム教徒ですよね。
シャン:彼女(中嶋朋子さん)はあの役をよく演じてくださったと思います。あのキャラクターは、常に威厳を保っていることが大切だと私は思います。彼女はその点を非常によくとらえていました。おそらくヘザーは、これは脚本には書かれていないのですが、父親が戻るように言ったから家に戻ったんですよね。これは私の考えですが、父親は彼女に「もし帰るなら、息子が私に会いたがっているかどうかを聞いてきてほしい」と言ったんだと思います。それが、ヘザーが家に戻った主な動機だと思うのです。中嶋さんはその側面もよく演じていました。彼女は非常に良い女優だと思います。

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ジョークが絶えないシャンさん(笑)

しのぶ:サニーはどうでしょう?
シャン:サニーは・・・サニーを演じた彼、北村有起哉さんは面白い人ですよね(笑)。サニーの役には難しいところがありまして、いっぱい汚いことば(四字言葉)が入ってくるんですね。「畜生」とか「クソ野郎」とか。それは翻訳の先生にも言われたんですが。あの役は、やりすぎてしまうといけないんです。我々はそういう演技をoverplayに対してunderplayと呼ぶのですが、北村さんは押さえ気味に、うまく制御していたと思います。サニーを演じていない時の北村さんは明るくって元気のいい方で、それは舞台の上の彼とは全く違いましたよね。まるで違う皮膚をかぶったように。その身体(Physicality)がとても良かったです。
 サニーという役は孤立していて醜いキャラクターですよね、人種差別主義者だし、乱暴な言葉遣いをするし。でも、それでいて彼が人々の共感を呼ぶのは、彼が自分の信念に忠実だからです。人々が彼の信念に同意だろうが反対だろうが、彼は自分が信じていることに非常に情熱的で、その点を北村さんはよくとらえていました。

シャン:3人の俳優が一体となって良い演技をしてくださったので、私には彼らが本当の家族であると信じられました。もちろん演出の栗山さんの力も大きかったんだろうと思います。あなた(しのぶ)は何度もリハーサル(稽古)をご覧になったんですよね?リハーサルはとても面白いと思うんですよ、あなたが目にしたあの舞台成果がいかにして達成されたのかを見られるんですから。俳優や演出家をはじめとするこのチームの方々の方法論が、幻想(Illusion)をうまく作り出したんだと思います。むしろそれがリアリティですよね。

しのぶ:日本語の脚本を読ませていただいたんですが、脚本には書かれていないことが舞台で起こっていますよね、まあ当然のことなんですが、印象に残ったのはドッティーが頻繁に鍵を閉めるところでした。脚本には特に「ここで鍵を閉める」とは書かれていないですよね。
シャン:それは演出ですね、栗山さんが沢山のことを追加されたのでしょう。脚本はプロセスの始まりにすぎなくて、俳優、演出家、照明デザイナー、衣装デザイナーなどの皆さんが、書いてあることを大きく発展させていく。それがこの仕事のとても素敵なところだと思います。
 他のことも栗山さんのアイデアから沢山生まれていましたよね。例えばドッティーがいつも棚の上の缶に向かって走って行くところとか。あの行為は彼女にとってほとんど麻薬のようなものになっていて、悪いことが起こった時、彼女は自分の気持ちを落ち着かせるために缶へと手を伸ばします。あれは良い効果でしたね。栗山さんが脚本に書かれているよりも回数をもっと多くしていました。とても良かったです。

シャン:これも告白することになるんだけど、自分が書いたものが外国語に翻訳される時に少し奇妙に感じることが他にもあるんです。事実上、翻訳すればわずかに意味が変化しますよね。たとえば私は方言も入れて書いているんですが、日本語がわからないからどういう風に変化しているのかが全くわかりません。そういう心配から逃れられてラッキーでしたよ(笑)。
 (翻訳をされた)小田島恒志さんのことはよく存じておりまして、彼はとても良い翻訳をしてくださったと思っています。戯曲作家と翻訳家の間には当然のことながら大きな信頼が必要ですからね。彼は新しい言語で皆さんに申し分なく表現してくださったと思います。そこは確かに信頼しています。どんなに良い翻訳だったかわかるためには、私が日本語を流暢に話せるようにならなきゃいけないですね(笑)。
しのぶ:じゃあ私も英語を勉強しなきゃ(笑)。
シャン:そうですね(笑)。

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Posted by shinobu at 2007年04月26日 14:17 | TrackBack (0)