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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年09月03日

シアターナインス『シェイクスピア・ソナタ』08/30-09/26パルコ劇場

 松本幸四郎さんが1997年から始められた現代演劇の企画の第6回です。今回の作・演出は第4回『夏ホテル』に続いて岩松了さん。

 あぁ、私もやっと岩松さんの世界を少しはわかるようになったんだな~・・・としみじみ。初めて「めちゃくちゃ面白い!」って思ったのは、たぶん2005年の岩松了3本連続公演(⇒)の時です。あれは貴重な体験でした。

 前半はひっそりしてるところで1人でガハガハ笑い、休憩前のシーンではボロボロ泣いていました。でも後半はやっぱりよくわかんなくなっちゃった・・・(笑)。上演時間は約2時間45分(20分の休憩を含む)。ちょっと空調が寒かったですね。東京はもう秋になったかも。

 ⇒CoRich舞台芸術!『シェイクスピア・ソナタ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。※読んでから観に行く方がわかりやすいかもしれません。
 沢村時充(松本幸四郎)はシェイクスピア役者との異名をとっている。『ハムレット』、『マクベス』、『リア王』、『オセロー』の四大悲劇を演目に旅廻りを中心とした活動をして、演劇界でも独自の地位を築いている。彼の率いる一座は彼の先妻との結婚を機に、成長したといえるだろう。長年連れ添った先妻は八ケ月前に亡くなったのだが、女優としても、それぞれの劇で重要な役を務めていた。
 一座の成長の裏には、先妻の父たる菱川宗徳の財力があった。菱川家は、石川県能登市で、造り酒屋をして財をなす資産家で、娘婿である沢村時充のため経済的援助を惜しまなかったのだ。
 一座は、年に一度の旅廻りの最後には必ず石川県能登市を訪れ、菱川家の広い庭先で,四大悲劇を演じることを常としていた。それは地元民の楽しみであり、菱川宗徳の誇りとするところでもあった。そのために菱川家では、毎年その時期になると、庭に私設の劇場を設置して、一座を待っていたのだ。
 が、今年の公演には、沢村時充の妻が、すなわち菱川宗徳の娘がいない。しかも沢村は、妻が亡くなって一年にもならないのに、一座の二番手女優だった松宮美鈴(緒川たまき)と結婚し、言ってみれば、先妻の後釜に座らせていたのだ。
 沢村時充にとって、この度の能登行き、そして菱川家公演は、少なからぬ緊張を強いられるものではあった。沢村たちを一見暖かく迎えた菱川家ではあったが、沢村の先妻の妹である夢子(伊藤蘭)や、菱川家の入り婿として、夢子とともに造り酒屋<能登舞>を副社長として切り盛りする友彦(高橋克実)の心中が穏やかなはずはなかった。
 それは沢村時充と先妻との息子である一座の若手男優・沢村美介(長谷川博己)にとっても複雑であり、一座の中堅俳優・二ツ木 進(豊原功補)、山田隆行(岩松了)、横山 晶(松本紀保)たちの思いもそれぞれである。
 菱川家の客間の正面にはテラスに出る開き戸があり、そのテラスは、広い庭に面している。その庭にある仮設劇場で公演は行われる。
 かくして、表向き平静を装って公演は幕を開けたが、菱川家の長たる菱川宗徳が座るための客席中央の席だけがぽっかり空いたままであった。沢村はもちろん一座の面々は、この段になっても宗徳が現れないことが来ないことが気が気でならない。

 果たして一座は、毎年恒例のこの地での公演を無事終ることが出来るのか、そして一座は例年のように幸せな夏の終わりを迎えられるのであろうか・・・。
 ≪ここまで≫

 誰もが知っていることを前提に登場人物が劇中の人物の名前を呼ぶので、観客には名前を判別するまでにかなり時間がかかります。てゆーかよくわからないまま話が進んでしまいます(笑)。私は探りながら見るのが好きなので前知識無しで観に行くタイプですが、登場人物のバックグラウンドなどをしっかりわかって味わいたい方は、あらすじを読んでから行かれると良いと思います。読んでも全くネタバレにはなりません。何しろわかりづらいですから(笑)。

 やっぱりダメダメな人たちが出てきて、ダメダメなことばかり起こります。不意に出る言葉や行動が突飛で脈絡がないように見えますが、実は人間ってそんなもんですよね。自分1人の中では筋道が通ってるつもりだけど、端から見たらてんでバラバラで、意味不明なことばかりやっちゃってるのだと思います。

 岩松さんの世界で起こることは、私には予想できないことばかり。突然発せられた言葉にハっと魅せられたり、さりげない動きに爆笑したり、走り去る姿とその人が見えなくなった景色に、ドキドキするほどの恋のトキメキを感じたり。今作では着替える小部屋の中や引き戸の後ろなど、人が隠れられる場所に相当わくわくしました。

 「わおっ、なんて素敵な・・・!」と思う言葉がいっぱいありました。でもほとんど忘れちゃった(笑)。私にはいつものことなんですよね、岩松さんの作品では。それぐらい微妙な空気なのが、かっこいいと思ってます。
 今回、思わず書きとめたのはこの言葉。沢村時充(松本幸四郎)が亡き妻・加代子に向けて言ったセリフです。※完全に正確ではありません。
 「愛することは願うことだ。」「(お前は)愛することの代わりに俺に絶望を負わせたんだ。」

 終盤で、松本幸四郎さんの語り口にどうしても入っていけず、ラストがよくわかりませんでした。んー、私が苦手なだけかも。
 豊原功補さん。“不実”な(笑)二ツ木役。10年以上前にテレビドラマで見て好きだった俳優さんです。舞台でお見かけするのは『LOVE LETTERS』(1999/8/24。お相手は岩崎ひろみさん)以来?嬉しかったです。

 歌舞伎のお客様であろうお着物姿のマダムが、上演中によくおしゃべりをされるんですよね・・・。「あれが岩松さんよ!ご自分も出る方なのよね~!」「あらま~、そうですの~」とか。まあ仕方ないですかね。隣りの席ではなかったので注意できず。

 ここからネタバレします。

 夢子(伊藤蘭)を間に挟んだ三角関係にある副社長(友彦=高橋克実)と二ツ木(豊原功補)が、なぜか2人っきりになるシーンが多く、ものすごい気まずい空気の中で一緒に居なきゃいけないのが可笑しくてたまらなかった。
 他にもいっぱい笑っちゃうところがあったんですが、すごく細かいところばっかりなので(笑)、ここまでで。

 美介(長谷川博己)が最後に会長(美介の祖父)を刺そうとした理由がよくわかんなかったな~。色んな感情があふれちゃったのだろうとは思いますが。祖父が父(時充=松本幸四郎)とその新しい妻(美鈴=緒川たまき)との結婚を認めたのがいやだったのかな~・・・。あぁ、こうやって書いてしまうと陳腐だな。すみません。

8/30(木)はプレビューオープニング
出演=松本幸四郎 高橋克実 緒川たまき 松本紀保 長谷川博己 豊原功補 岩松了 伊藤蘭
作・演出=岩松了 美術=磯沼陽子 照明=沢田祐二 衣裳=前岡直子 音響=藤田赤目 ヘアメイク=河村陽子 舞台監督=藤原秀明 藤崎遊 企画=寺川知男 企画=シアターナインス 制作協力=松竹株式会社 企画・製作=株式会社パルコ
【発売日】2007/07/07 9,000円(全席指定・税込)〈プレヴュー料金/8,500円(全席指定・税込)〉上演時間 約2時間30分(休憩含む)
http://www.parco-play.com/web/play/shakespeare/
http://www.parco-play.com/web/page/information/shakespeare/

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Posted by shinobu at 2007年09月03日 23:02 | TrackBack (0)