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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年07月15日

蜻蛉玉『たいくつな女の日』07/13-17プーク人形劇場

 蜻蛉玉(とんぼだま)は島林愛さんが作・演出される劇団です。私は『ニセS高原にて』を拝見しただけで、劇団の本公演は初見。
 プーク人形劇場の舞台備え付けの器具をうまく使った美術でした。上演時間は1時間10分ほど。

 ⇒CoRich舞台芸術!『たいくつな女の日

スイカとトマトが生っている不思議な場所。上手奥にらせん階段。階段で上に行ったり下に行ったりする女たち。

 不思議カワユイ系の衣裳&空間で、女の子たちが「水がほしい」とか「上に行きたい」とか、隠喩めいたセリフをとぼとぼと口にします。詩のような言葉が多かったですね。

 静かで単調で、観客へのアピールも敢えてしないような演技および演出だったように見えました。私が自ら進んで劇中に入っていきたくなるような魅力は感じられず、また、芝居の方からも観客の方に近づいてくる気配がなかったので、全体的に寂しい観劇時間になってしまいました。プロセニアム(額縁)の舞台を小さなベンチ・イスから見上げる状態だったのも、舞台が遠く感じた一因かもしれません。

 シトミマモルさんは男性なのに、普通に、当たり前のように女の役で、それが面白かったです。

 ここからネタバレします。

 「スリジャヤワルダナプラコッテ」はスリランカの首都ですね。中学校の時、必死で憶えたな~。名前の響きは面白いですが、なぜヘビの名前にしたのかしら。インドの横の島国のことを連想する必要はなかった気がするので、できれば実在しない名前をつけた方が良かったんじゃないかな~。まあ、あのヘビを溺愛していた女の子が、ペットに付けた名前だと思えば解決ですかね。

 終演の時に、プーク人形劇場の小さくてかわいらしい緞帳が下りるのが、ムードがあって良かったです。

出演=打田智春 神林裕美 北村延子 安村典久 伊藤羊子 熊埜御堂彩 坂本絢 シトミマモル 墨井鯨子 武田力 島林愛 
作・演出:島林愛 舞台監督:藤本志穂(うなぎ計画) 舞台美術:松村知慧(青年団) 照明:富山貴之 企画・制作:蜻蛉玉
【発売日】2007/06/12 前売り・当日ともに 2,500円(日時指定・全席自由・整理番号付き)※早割りあり(劇団予約のみ)6月12日?6月19日までご予約・入金の方は2,200円
http://www.tonbodama.org/

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Posted by shinobu at 18:42 | TrackBack

青年団若手自主企画Vol.33『スネークさん』06/20-25アトリエ春風舎

 ツキムラニホさんの戯曲を木崎友紀子さんが演出される芝居ダンス演劇企画の第1弾です。1年以上のワークショップを経て作り上げられた、演劇ともダンスともカテゴライズできない作品でした。

 途中までは少々退屈だったのですが、中盤から突然、身体と声と心が一緒になって動き出し、空間全体が命の息吹で満ちたように感じられて、涙が止まらなくなりました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『スネークさん
 レビューをアップしました(2007/07/21)。

 公演が終了しているのでネタバレします。

 爽やかカラフルな色合いの衣裳の女の子たちが、おしゃべりしたり、踊ったり、歌ったり。
 実は中盤までは退屈で眠気に襲われたりしてたんです。意味不明の言葉のやりとりや、奇妙な動き(動作)がぽつぽつと起こって、女の子だけの閉じた世界(“オリーブ少女”っぽい感じ)のように感じたので。でも終盤の歌が始まったところから、もー涙が止まらなくなっちゃっいました。

 目の前に、生きる体と声。動くこと、歌うこと、弾む息と汗。愛と喜びでつながった、いのちの、やわらかな、のびやかな、その姿。そこで起こっていること全てが、いのちを喜び、いのちを生きていた・・・。

 脚本および出演のツキムラニホさんが母親であることも大きな核になっていると思います。毎月血を流して、新しい命を生み出す「女」だからこそ作ることができた作品なのではないでしょうか。

 服を脱いだり着たりするのが、脱皮するヘビ(スネークさん)を表していたのかな~。服をどんどん脱いで下着姿になっちゃったのはちょっとびっくりしましたね(笑)。

 この作品はダンスなのか演劇なのかというと、どちらとも言えない(どちらとも言える)ものでした。ダンス公演との圧倒的な差は、顔と声の演技の在りかただったと思います。声を出す瞬間の俳優さんの状態が、ダンサーとは全然違うんですよね。何らかの感情が必ずその身体にありました。

 パンフレットに書かれた演出の木崎友紀子さんの言葉です↓
 ≪引用≫
 またツキムラはこう書いています。
 「世界では端的に言葉にできないことが沢山起こっている。」
 心の中でもそれは同様に起こっているはず。
 ただそれはエスカレーターの手すりのようにほんの少しスピードが違うだけなんだろう。
 ≪ここまで≫

 この「言葉にできないこと」を表そうとするのが芸術ですよね。ちょうど宮沢章夫さんが富士日記2に「言語化されないなにものか」について書かれていました。私が演劇などの舞台芸術のおかげで教わったのは、このことなのだと思います。
 ≪引用≫
 「人の会話は、ほんと、でたらめである。けれど人はなぜか、それでもコミュニケーションが取れている。なぜなんだろう。つまりそれが、「身体言語」というものだろう。人は「言葉」がなければコミュニケーションがはかれないと思いこんでいるが、それこそが「近代という病」である。別役さんが『ベケットと「いじめ」』で書いているのもそのことだ。」
 (富士日記2 12:51 Jun. 17 sun.「仕事を終えて、あるいは、<言語化されないなにものか>について」)
 ≪ここまで≫

 「言葉で表せるのは氷山の一角でしかない」と、チェルフィッチュの稽古場公開で岡田利規さんもおっしゃっていました。言葉では伝わらないことがあまりに多すぎて、しゃべればしゃべるほど後悔する・・・なんてことが、私の実生活の中で増え続けています(汗)。そんな時期にこの『スネークさん』に出会って・・・涙が止まらなかったのかな。まずはだまって、にっこりすること。それでいいんじゃないかって今は思います。

出演=井上三奈子 川隅奈保子 工藤倫子 申そげ 鈴木智香子 月村丹生 兵藤公美 松田弘子 田畑真希(フリー)
演出=木崎友紀子 作=ツキムラニホ 照明=岩城保 音楽=やぶくみこ 衣裳プラン=ツキムラニホ カブリモノ=斎藤栄治 舞台監督=桜井秀峰 宣伝美術=京 当日運営=林有布子 撮影=深田晃司 制作=スネークさん制作部 総合プロデューサー=平田オリザ 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 企画製作=青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
アフタートークゲスト:6月20日(水)伊藤キム 6月22日(金)多田淳之介(東京デスロック)
予約・当日共 2,300円(日時指定・整理番号付・自由席)
http://www.seinendan.org/jpn/info/wakate070408.html

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Posted by shinobu at 12:05 | TrackBack

青年団リンク・青☆組vol.6『おやすみ、枇杷の木』07/11-16アトリエ春風舎

 青年団リンク・青☆組(あおぐみ)は吉田小夏さんが作・演出されるユニットです。私は初見。アトリエ春風舎に凝った日本家屋が出現していました。

 渡辺源四郎商店『小泊の長い夏』とチラシビジュアルが重なっているため(夕日の写真)、『サンセット“半券”割引』が実施されています。

 ⇒CoRich舞台芸術!『おやすみ、枇杷の木』 

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。改行を変更。
 木下家の庭には、大きな枇杷の木がある。
 二十数年前の初夏に、家族で食べた枇杷の実の種を、父と娘達が植えたのだ。
 種はあっという間に芽吹き、葉を茂らせ、今では庭に大きな影を落としている。
 二十数年の間に、父は他界し、娘達は少女ではなくなった。
 二十数年と少したったある日、その男はやってきた。
 枇杷の木は、未だ実をつけたことがない。
 濡れた緑の枝先は、あの日の記憶を置き去りにしたまま、
 遠い空に向かって、にょきにょきと伸びてゆく・・。
 ≪ここまで≫

 客席に対して少し斜めに建てこまれた、少々年季の入った日本家屋。かなりリアルに丁寧に作られていましたが、ところどころ抽象的な部分もあってとても良い雰囲気です。特に格子のデザインが牢獄に見えたりして面白かったです。

 女性が作ったのがよくわかる、非常に女性らしいお芝居でした。前半までは胸がムカムカするほど女の匂いがたちこめており(笑)、気分的にも少々困り気味に見物していたのですが、中盤以降に女たちの裏側がほろり、ほろりとほどけて見えてきてホっとしました。

 終演後に何人かの知り合いと感想を話し合ったら、ストーリーの解釈がいろいろに分かれていて驚きました。そういえば「わかる人にしかわからない」ぐらい、おぼろげな演出が多かったかもしれません。
 でも私には、物事を説明するためのセリフや演出が、いかにもさりげなさそうに準備されていたように感じ、残念な気持ちもありました。たぶん装置がリアルに作られていたので、細かい部分まで気になってしまったのでしょう。もっと抽象な部分が前面に出てきても良かったのではないかと思います。

 お誕生日のケーキのシーンが幻想的でした。言葉を使わずして関係性や背景をはっきりと示すことができていて素晴らしいなと思いました。

 ここからネタバレします。

 いい年をして結婚していない(子供が生まれる気配がない)三姉妹と、その母親のお話でした。おそらく都会で一人暮らしをしていたのであろう次女が、仕事をやめて実家に帰ってきます。そこに母の新しい恋人がやってきて、平穏なはずだった女家族の生活にあからさまな波風が立ちます。

 長女はお隣りの奥さんと仲良くしながら、その夫と不倫をしている。次女は小学校の頃に露出魔(下半身を露出して「愛してください」と言う)に遭遇し、今もトラウマになっている。三女はフリーターの彼氏とのプチSM関係にハマっている。料理ができない母親は元教え子と恋に落ちて、娘たちのことなど二の次になっている、などなど・・・。後半はダメなムードが蔓延してきます。

 実ができない枇杷は、子供を生まない姉妹のことを示しているのかなと思いました。この「不毛」が、方向は違いますが『小泊の長い夏』と重なったように感じました。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:吉田小夏/岩井秀人(ハイバイ・主宰/青年団演出部)

 ハイバイの岩井秀人さんがのっけからトばしてくれて、笑いの絶えない楽しいトークでした。

 吉田「女性が強いことを見せたかった。」「でも、動物的には(男性よりも)弱いということも。」

 タイトルの意味について観客から質問がありました。吉田さんは「受け取ってもらったままで結構です」とおっしゃって、ご自身がどういう意図でそのタイトルにしたのかはお話されませんでした。「答えを言うようなことになるのは良くない気がする」という理由からのようでした。
 それに対して岩井さんが「作家の意図は言ってもいいと思う」という意見をおっしゃいました。私も岩井さんと同意見です。観客が受け取ったままで良いのなら、作家の意図は“答え”ではないのですから、ネタバレしても問題もないと思います。

出演:足立誠 天明留理子 髙橋智子 熊谷祐子 二反田幸平 山口ゆかり(フリー) 羽場睦子(フリー)
作・演出:吉田小夏 舞台美術:濱崎賢二 照明:伊藤泰行 音響:薮公美子 宣伝美術:空 宣伝写真:浜田綾 制作:青☆組制作班+宮永琢生 総合プロデューサー:平田オリザ 企画制作:青☆組/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
トークのゲスト→7/10:岩井秀人(ハイバイ・主宰/青年団演出部)/7/11:多田淳之介(青年団リンク 東京デスロック・主宰)
日時指定・全席自由・整理番号付 予約2,300円 当日2,500円
青年団リンク・青☆組×渡辺源四郎商店 共同企画『サンセット"半券"割引』 
http://aogumi.org/05-biwanoki07/nabegen.html
http://www.komaba-agora.com/line_up/2007_07/aogumi.html

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Posted by shinobu at 11:46 | TrackBack