2007年10月03日
パパ・タラフマラ『トウキョウ⇔ブエノスアイレス書簡』10/02-/07アサヒアートスクエア
パパ・タラフマラは小池博史さんが作・演出・振付を手がけるカンパニーです。ダンスも演技もするし、歌も歌うし、今回は生演奏もあり。独自の舞台パフォーマンスを創作し、海外で活発に活動されています。
上演時間は約1時間35分。ワンドリンク付き。私が観た回は制服をかっこよく(?)着くずした高校生の団体客が入っているようでした。斬新な課外授業じゃないですか?!
⇒CoRich舞台芸術!『トウキョウ⇔ブエノスアイレス書簡』
≪あらすじ≫ 正しいかどうか不明。
東京生まれでブエノスアイレスに住んでいる女が、ブエノスアイレス生まれの男と結婚(同居?)しているが、男が出張で東京に行ってしまい、超遠距離恋愛中。男からの電話を待つ女。
≪ここまで≫
横長で平たいステージの真ん中奥に、カラフルに塗装されたワードローブ。顔だけ白塗りの楽隊が下手に。ヴィヴィッドな色使いで派手な衣裳&メイクの役者(ダンサー)が人形のように演じたり歌ったり踊ったり。
パパ・タラフマラは久しぶりに拝見したのですが、やっぱり私の好みではなかったです。セリフが受け入れづらいんですよね。言葉もかっこいいと思えないし(可愛らしさ・ダサさを意図的に狙っている感あり。でもそれも私の好みではなく。)、役者さんの演技はおぼつかないし。歌も踊りも空間もビジュアル的には楽しめました。しゃべらないでさえいてくれれば・・・。
白装束の“微笑みと幻覚のダテ男”役の天野史朗さんがめちゃくちゃかっこ良かった!小指値で「エンピツ君」をやってるイメージだったから(笑)、衝撃も大きかったです。ダンスにも表情にも見とれました。というか、彼しか目に入らなかった。
ここからネタバレします。
エロスというのか官能というのか、その、エッチの好み(センス)も私には合いません。なぜ脈絡なく大笑いするのかしら。なぜ頻繁に目をひんむいて獣のような叫び声をあげるのかしら。なぜ男に体をいやらしく触られて、女がギャハギャハ喜ぶのかしら。
作品に没頭できればそんなことは気にせずにいられるのでしょうけど、些細なことがひっかかってしまいました。私の好みに合わなかったというだけのことです。
ワードローブが大活躍。階段になったり、ひっくり返ってがらんどうの中身を見せたり。
カーテンコールが長すぎるように感じました。海外仕様なのかもしれません。
出演=小川摩利子(夢見た女は渦の中) あらた真生(迷い込んだ女) 池野拓哉(迷い込んだ男) 天野史朗(微笑みと幻覚のダテ男) 南波冴(目玉ギロリの座敷わらし) 菊地理恵(ギスギス女中) 清水小寿江(そそのかし女中) 橋本礼(嵐の郵便局員)
作・演出・振付=小池博史 音楽=中川俊郎 サウンド=藤井健介 <音楽>中川俊郎(作曲・ピアノ) 堀越彰(ドラム) 伊藤彩(ヴァイオリン) 遠藤益民(チェロ) 横手亜梨沙(ヴォーカル) 美術=田中真聡 壁面美術=松島誠 オブジェ=山口百合子 山内祥子 佐藤千秋 森聖一郎 西井佑介 松元久子 衣装=小林和史 甲斐さやか(OUT SECT) 映像=甲斐さやか 照明=関根有紀子 音響=江澤千香子 演出助手=木野文子 眞嶋木綿 舞台監督=大谷地力 宣伝美術=葛西薫 安藤隆 制作=仲島智紗子 山本麻紗子 衣裳協力=早川すみれ・岡田三千代 映像操作=馬場良枝 主催=パパ・タラフマラ 企画・制作=SAIInc.
一般発売日=7月28日(土) S 席(一般4,800円/高齢者3,900円) A 席(一般4,500円/高齢者・学生3,700円) 当日5,300円(一律料金)
http://www.pappa-tara.com/
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tpt『PIAF ピアフ』09/24-10/08ベニサン・ピット
安奈淳さんがエディット・ピアフを歌う、贅沢な小空間。平日マチネは優雅なマダムで満席で、ちょっとル・テアトル銀座みたいなムードの意外なベニサン・ピットでした。
上演時間は・・・忘れちゃいました。すみません。約2時間30分だったように思います(途中15分の休憩を含む)。
ちょうど映画『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』も上映中ですね。信用できる演劇筋のお友達から絶賛の声が届きました。観たいな~。
⇒CoRich舞台芸術!『PIAF ピアフ』
tptらしいシックな美術。役者さんの演技は残念ながら全体的におぼつかない感じで、演出はちょっと説明しすぎな印象でした。でも、とにかく安奈淳さんの歌が素晴らしい!これに尽きると思います。
エディット・ピアフというと私は美輪明宏さん主演の『愛の賛歌』と、あとはテレビで何度か映像を観たぐらいの知識しかないのですが、もーあの歌を聴くだけで涙がボロボロ流れてしまいます。
ピアフの半生をたどっていく内に、安奈さんの歌う表情が深くなっていって、終わりに近づけば近づくほど声も力強く、感情の表出も豊かになっていきました。
今さらですが、人間の感情って素晴らしいなって思いました。揺れたり膨らんだり、色んな形・色になって身体から湧き出てくるんですよね。それが歌声に乗って大きな波紋を描いて、劇場いっぱいに満ちるのを、全身で味わうことができました。
ここからネタバレします。
ピアフが弱ってしまって車椅子の生活になってから、演技もシーンも面白く観られるようになりました。恋人を欠かすことがなかった魅惑の女性としてのピアフ像を、もっと味わいたかったですね。なぜ若い男性があんなに彼女に惹かれるのか、その説得力が欲しいです。
カーテンコールの後に安奈さんの「愛の賛歌」ソロ。歌詞は越路吹雪さんが歌われた日本で有名なものとは違っていたんじゃないかしら。またもや落涙。
出演=安奈淳、瀬戸口剛、島村勝、TROY、井上裕朗、青山吉良、有希九美、松岡美希、新井祐美、武田優子、石橋祐、小寺悠介、三貴将史、清水隆伍、大和屋ソセキ、ピアノ=阿部篤志
作=パム・ジェムス /訳=常田景子 /演出=亘理裕子 /音楽監督=後藤浩明 /美術=中根聡子 /照明=笠原俊幸/音響=内藤博司・岩楯岳志/衣裳=萩野緑 /ヘア&メイクアップ=鎌田直樹/ステージング=中村音子/舞台監督=森聡/アドバイザー=菅原道則
【発売日】2007/08/23 全席指定6,000円 学生3,000円(TPTのみ取扱い)
http://www.tpt.co.jp/
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THE SHAMPOO HAT『その夜の侍』09/29-10/08ザ・スズナリ
赤堀雅秋さんが作・演出されるTHE SHAMPOO HAT。新劇団員の女優さんも増えた劇団公演です。
初めてシャンプーハットを観たのは『アメリカ』でした。びょーびょー泣いて大変だったんですよね~(笑)。今回は、その『アメリカ』以来の号泣をしてしまいました。改心の一撃!を受けてしまった気分。
⇒CoRich舞台芸術!『その夜の侍』
≪あらすじ≫
妻をひき逃げされた男(赤堀雅秋)が、ひき逃げ犯に復讐しようとしている。決行まであと2日。
≪ここまで≫
シャンプーハットの舞台にしては珍しい抽象空間。床には十字架のようにクロスする道。音楽がすごくかっこいいです。曲だけで泣けてきたりしました。
笑いも少なめですし、非情な暴力やあきらめるしかないすれ違いなど、観ていて胸が苦しくなるほどつらいことが淡々と、生々しく描かれます。男が自分を追い詰めて、追い詰めて、追い詰めた結果、体から出てきてしまった本当の気持ちを吐露した時、涙が止まらなくなってしまいました。
ここからネタバレします。
とうとう犯人・木島(野中隆光)と対面した健一(赤堀雅秋)。包丁を持っていた彼から発せられた言葉は。※セリフは正確ではありません。
「(犯人と)たわいのない話をしたかった。昨日見たテレビの話とか、何を食べたかとか。」
妻が死んでから3年間ずっと、死んだ妻を求め、犯人を恨んできた健一は、死刑執行の日(妻の命日)の1ヶ月前から犯人を観察していました。毎日ポストに脅迫状を残して。
そんな気持ちに支配されて生きるのはつらいですよね。できることなら忘れたい。恨むことから逃げたい。健一は「そのためには殺すしかない」と思っていたけれど、ずっと観察するうちに木島という人間を見るようになってきて、ただの標的じゃなくなったのかなと思いました。
世の中には納得できないことばかり。だから、本気で話をする。それでも解決なんてできないかもしれない。でも、あきらめないで、勝手に決めないで、話し合う。そうすれば解決はしなくても、次には進めるかもしれない。生きることができるかもしれない。・・・そんなことを考えました。
舞台中央奥から客席に向かって、健一がぬぼーっと歩いてくるシーンがきれいでした。
出演=野中隆光 日比大介 児玉貴志 多門勝 黒田大輔 滝沢恵 吉牟田眞奈 梨木智香 赤堀雅秋
作・演出=赤堀雅秋 舞台監督=高橋大輔+至福団/中村貴彦 照明=杉本公亮 音響=田上篤志(atSound) 舞台美術=福田暢秀 舞台製作=F.A.T STUDIO 照明操作=高円敦美 宣伝美術=斉藤いづみ 舞台写真=有賀傑 舞台収録=♀GUCCi♂ 演出助手=武田有史 制作助手=岩堀美紀 谷慎 河野美有紀 web制作=野澤智久 制作=HOT LIPS 武田亜樹 制作協力=西田圭吾 統括=野中隆光 企画製作=HOT LIPS
【発売日】2007/08/19 指定席 前売¥3500 当日¥3700 自由席 前売¥3200 当日¥3400 【平日マチネ(10/4 15時の回)】 指定席 前売¥3200 当日¥3400 自由席 前売¥3000 当日¥3200
http://www33.ocn.ne.jp/~shampoohat/
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