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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2007年11月27日

サスペンデッズ『ライン』11/20-25 OFF OFFシアター

 早船聡さんが作・演出されるサスペンデッズの第4回公演です(⇒過去レビュー)。

 早船さんは2008年6月に新国立劇場に新作『鳥瞰図-ちょうかんず-』を書き下ろされます。それもあってか、とっても大人な客席のOFF OFFシアターでした。上演時間は約1時間20分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ライン

 ≪あらすじ(というか大雑把な設定)≫
 秋子(中島佳子)は1人暮らしのOL。彼氏の李(伊藤総)とほぼ同棲状態で、李の同僚の草太(佐藤銀平)も部屋によく遊びに来る。秋子にはアメリカで暮らしている姉・秀子(柿丸美智恵)がいて、たまに秋子の部屋に帰ってくる。アパート1階のアンティークショップの店長(白州本樹)は気のいい人で、秀子に気があるようだ。
 ≪ここまで≫

 秋子が暮らしている2Kぐらいの清潔そうなアパートの居間。装置の転換はなく、ほぼ照明の変化だけで時間の経過を表現し、数時間、数日間、数ヶ月を行き来します。

 私達にとって実はすごく身近で、でもすべてを認識して生きるには種類も量も多すぎる日本の社会問題。それらが山と詰め込まれて1時間20分という短時間にまとまっていました。説明的に感じるセリフもなく、自然な対話からじわじわと世界が立体的になっていきます。簡潔・丁寧でよく出来た脚本だな~と思いました。

 キャラクターの造形には人工的に作った感触が少々残っていましたが、役者さんは舞台で生きて存在してコミュニケーションを取ろうとしているように感じられたし、登場人物1人1人の鮮やかな個性が発揮されていたので、みんなを愛することができました。
 実際、ひとこともセリフがないシーンで、舞台にいる役者さんの感情のうねりや行き来をビンビン感じて、じんわりと涙しました。こういう瞬間を体験できるから演劇が大好きなんだって、また確認できます。

 主になるテーマがとても深刻で厳しいものだったので、私個人としてはちょっぴりつらい観劇環境ではありました。

 ここからネタバレします。

 秋子と秀子は2人とも幼い頃に父親から性的虐待を受けており、それが大きな心の傷になっています。たとえば秋子は、李と結婚して家族を作るという想像ができません。
 他にも、李が在日韓国人(在日朝鮮人かも)であること、李と草太の職場環境が決して良くはないこと(ひどい上司がいる等)、妻が自殺して以来、肥後は年老いた母親と2人暮らしであることなどから、今の日本がわかります。
 李が望遠鏡から高層マンションを覗き見して、典型的な幸せ家族の様子を楽しそうに話すのも、“家族”という集合体について客観的に考える良い材料になりました。

 秀子はSMの女王様の仕事をしていたことがあり、秀子のファンのM男・蓮見(佐野陽一)がアパートまで乗り込んできます。ムチで打たれてストレス解消って(笑)。彼もまた毎日の仕事がうまくいかない人だったんですよね。対人恐怖症とか?

 大屋さん(登場しない)はいつもエコエコ言ってるくせに、新しいテレビを買って古いテレビを捨てちゃいます。秋子の部屋の壊れたテレビを大屋さんが捨てたテレビと取り替えるシーンで、生まれ持った気性や幼い頃の経験は、このテレビみたいに体からはがしてポイっと捨てられるわけではないな~と考えました。

 秀子が父親のことを警察に通報したことで家族はバラバラになりましたが、秋子が電話1本するだけで、秀子はすぐに帰国して秋子のもとに帰って来ます。秀子が世界で一番大事に思っているのはアメリカにいる彼氏でも誰でもなく、秋子だから。この姉妹の2人っきりの無言シーンが良かったんだな~。
 
 秋子は、暴力事件を起こして警察につかまった李に会いに行ったのかしら。李が買ってきた望遠鏡を片付けてしまったので、「さあ、次の男へ!」と進んでしまうのかなと思いました。

出演:中島佳子(無機王)/伊藤総/佐藤銀平/佐野陽一/白州本樹(スターダス・21)/柿丸美智恵
作・演出:早船聡 美術:近藤麗子 照明:工藤雅弘(Fantasista?ish.) 音響:平井隆史(末広寿司) 衣装:大野典子 舞台監督:大友圭一郎  制作:上田郁子(オフィス・ムベ) イラストレーション:木村タカヒロ 宣伝美術:野島敏光 協力:舞台美術研究工房六尺堂/ほか
10月10日(水)前売開始(全席自由) 前売2,800円 当日3,000円
【ご予約・お問い合わせ】オフィス・ムベ 042-727-8640 http://www.geocities.jp/office_mube/
http://suspendeds.jugem.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。
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Posted by shinobu at 23:11 | TrackBack

猫田家『ミーコのSFハチャメチャ大作戦~ベルンガ星人をやっつけろ!~』11/21-12/02アトリエヘリコプター

 猫田家tsumazuki no ishi所属の猫田直さんがプロデュースする演劇ユニットです。
 佃典彦さんの新作を岩井秀人さんが演出する、小熊ヒデジさんと猫田直さんの2人芝居ですから期待も高まります。

 チケット代が1000円とお得なプレビューは、剥きたてのゆでたまごみたいな、ぷるぷる・ひりひりした風合いでした(笑)。芸達者な出演者が揃った長い公演なので、終盤に向けてかなりの変化が見込めそうですね。

 ⇒公式ブログの舞台写真
 ⇒シアターガイド特集
 ⇒CoRich舞台芸術!『ミーコのSFハチャメチャ大作戦~ベルンガ星人をやっつけろ!~

 ≪あらすじ≫
 SSTはミーコ(猫田直)、ヒデ(小熊ヒデジ)、キンちゃんの3人組バンド。いわゆる一発屋でヒット曲は「夏の小さな三角形」だけ。今はキンちゃんがいなくなって、ミーコとヒデの2人だけで活動をしている。しょぼしょぼムードでツアーに出かけた2人は、長野県松本あたりのオニコベという村で奇怪な出来事に遭遇してしまう!
 ≪ここまで≫

 空き缶で額縁を飾った少々寂しげな舞台。ダンボール製の小道具がへなちょこ感をさらに増長します。
 上手脇には古代ギリシア人風の衣裳をまとった“演劇の神様”(安部康二郎)が鎮座し、わたわた・こまごまと働いているのがスパイシー。

 タイトルどおり“ハチャメチャ”な脚本でした(笑)。小熊さんと猫田さんにあて書きされたものでしょうね。普通に演技をしていてもちょっと濃い味なお2人が(笑)、技巧的な演技もするので、途中で何度も煙にまかれました。
 「いったいこの先どうなるの?」というストーリーの顛末への期待などはすぐに吹き飛んで、「この状況からどういう世界を作るつもりなんだろう?」と、作品の全体像を探る気持ちで観ることになりました。

 最後はぐるりんっと大きくくるむように、演劇ならではの演出でまとめてくださったように思います。ぞくっと寒気がするような、ちょっと怖い空気も感じました。

 「夏の小さな三角形」って曲は・・・すごい歌詞でした(笑)。さわやか路線でもの悲しげなメロディーも、コテコテで楽しめました。

 ここからネタバレします。

 あらすじ:地球征服をたくらむベルンガ星人に体をのっとられたヒデがミーコを襲う!・・・と思いきや、それは精神を病んで入院中のミーコの妄想だった。キンちゃんも失踪したわけではなかった。ミーコに横恋慕していたヒデが、嫉妬に狂ってキンちゃんを殺していたのだ。・・・というのはすべて、SSTのライブのMCネタとして上演された芝居だった。チャンチャン。
 ・・・というお話も「舞台で今演じられたお芝居なんですよ」と全てを入れ子構造にする演出が、最後に用意されていました。

 開演して数分後に制作さんが「これで終了です」と終演の挨拶を始めます。すると客席から1人の若い男性が「もう終わり?!それはないでしょ!」とクレームを言いつつ舞台の方に出てくるのです。
 開演前に「上演時間は90分です」と説明されていたので、それが演出であることは明らかですが、制作さんの話し方やサクラの役者さん(坂口辰平)の出てくるタイミングなどがとても曖昧(というか絶妙)で、ハラハラしちゃいました(苦笑)。
 「あぁ、仕込みなんだな」とわかってからも、坂口さんが、なんともとらえどころのないの話し方(脱力してるような・してなような、アドリブのような・そうでないような)をするので、引きつづき先が読めない状態に陥りました。完全に“してやられた”ってことなのでしょう。

 “演劇の神様”が照明・音響のオペレーションから小道具・大道具の移動、衣裳着替えまで全部を手伝います。あたふた困ったように動き回るのが滑稽で可愛いし、常に外側から作品を眺める存在として君臨しているのは大胆で面白い演出です
 “演劇の神様”は、最後の最後にヒデのギターを奪ってミーコのマイクも片付けてしまいます。“演劇の神様”から“神様”(=運命)になったのかなと想像しました。

 「夏の小さな三角形」歌詞:夏は私のビキニが小さい三角形/くちびるは小さな三角形/など

出演:小熊ヒデジ 猫田直 安部康二郎 坂口辰平(ハイバイ)
脚本:佃典彦 演出:岩井秀人 舞台監督:田中翼 美術:小林奈月 照明プラン:松本大介(enjin-light) オペ指導:富所浩一 音響:荒木まや(ステージ・オフィス) 宣伝美術:田岡一遠 宣伝写真:山崎のりあき 作詞:中原ミーコ(SST) 作曲:ヒデ(SST) 小道具:坂口辰平(ハイバイ) 衣装協力:永井若葉(ハイバイ) 制作:原田瞳(tsumazuki no ishi) ラインプロデューサー:赤沼かがみ プロデューサー:猫田直 企画/製作:猫田家
【発売日】2007/10/22 前売2,800円 当日3,000円 全席整理番号付自由席 ※但し21日のプレビュー公演は、限定50席 1,000円!(HPでのみ取扱い)
http://tsumazuki.com/necotake/

※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。
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Posted by shinobu at 21:07 | TrackBack

芸団協「芸団協セミナー2007・制作者のためのテーマ&トークvol.6」10/23芸能花伝舎1-1

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芸団協セミナー2007

 もう先月のことなんですが、芸団協セミナー「制作者のためのテーマ&トークvol.6『公共劇場と劇団~支援について考える』 に参加しました。ゲストは矢作勝義さん(世田谷パブリックシアター) 。※このエントリーは記録のみです。

 去年は演劇ライターの徳永京子さんの「小劇場に明日はあるか?! 番外編その2」(2006/11/28)にも参加しました。その日のゲストは劇作家・演出家・俳優の岩松了さんでした。⇒fringe TOPIC

 芸団協はさまざまな企画を催しています。作り手だけではなく観客にとって興味深いニュースもありますので、「芸団協メールニュース」は登録しておくと便利だと思います。

 ⇒芸団協ホームページに要約あり!(2008/07/21)

■制作者のためのテーマ&トークvol.6 「公共劇場と劇団 ~支援について考える」

【ゲスト】矢作勝義(世田谷パブリックシアター)

【内容】首都圏域に3000くらいはあるといわれている様々な小劇場劇団。将来もっと活躍して欲しいと思う集団に対して、どういう支援が必要なのでしょう。これからの公共劇場に期待される役割と支援のあり方について、世田谷パブリックシアターで貸館担当として多くの集団と関わってきた矢作勝義氏から提起していただき、制作者同士の意見交換と交流を進めます。

【参加費】1,800円(ソフトドリンク代、菓子代を含む)
【対象】制作経験1年以上の方。分野は特に問いません(定員40名)
【主催】社団法人日本芸能実演家団体協議会
【助成】平成19年度文化庁芸術団体人材育成支援事業/社団法人私的録音補償金管理協会(sarah)
公式サイト:http://www.geidankyo.or.jp/12kaden/04pro/seisaku/thema-talk07vol6.html

※注意を払って記事を掲載していますが、正確な情報は公式サイトでご確認ください。
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