2009年01月20日
タテヨコ企画『宇宙ノ正体シリーズ・その5「アメフラシザンザカ」』01/14-20駅前劇場
横田修さんが作・演出される劇団、タテヨコ企画の新作です。宇宙ノ正体シリーズとは剃髪の修行僧たちが登場するシリーズ。タテヨコ企画の作品を拝見するのは今回で4度目になります(過去レビュー・記録⇒1、2、3)。
タテヨコ企画ならではの、期待どおりの空気が舞台に作り出されるのが嬉しい。誰もいない空間、暗転中の音に落涙。上演時間は約1時間50分。
⇒CoRich舞台芸術!『アメフラシザンザカ』
≪あらすじ≫
舞台は海辺の漁村にある寺。修行僧・永然(好宮温太郎)の実家だ。“アメフラシ”から、永然の姉・祥子(勝平ともこ)の息子を誘拐するとの脅迫状が届き、永然の同僚の修行僧たちと村人らが集まった。
≪ここまで≫
しっかりと建て込まれた(ように見える)木造の日本家屋で、坊主頭の僧たちが走りまわります。それだけで駅前劇場に分厚い空気があって楽しい。
口から言葉が発せられるごとに、人の優しさ、ずるさがぽろぽろとリズムよくはがれ落ちるように出てくるので、一言ひとことに深い味わいがあります。可笑しいやりとり中に、急に苦味が走ったり。
具象とフィクションの混ざり具合に、この劇団の個性があると思いますが、湧いた疑問がしこりになって残ってしまうことがあるのが少し残念です。個人差があると思いますが。
大きな波の音、激しい雨音に人知を超えた世界を感じ取れました。舞台に誰もいない数秒のシーンがすごく良かった。
ここからネタバレします。
全身緑色のタイツを着た妖怪が、開幕してすぐに登場していたのが良かったです。「妖怪がいる」ことを常態としてから始まるドラマの方が面白いですよね。
原発誘致派と反対派で争っているという設定が胸に痛い。その間に寺があるというのも皮肉が効いています。祥子の夫の部下・三浦(堀夏子)が、一目で愛人だとわかる演技だったのが素晴らしい(笑)。映画「阿修羅のごとく」での木村佳乃さんを思い出しました。この映画での木村さんはスゴイっす!
永然が昔の恋人・いくみ(舘智子)に向かって、蛇の目傘を広げて「一緒に行こう」と誘うシーンにうっとり。でも永然が「一緒にここから逃げよう」と言ったのにはがっかり(笑)。やっぱりダメ男だ・・・(苦笑)。横田さんは骨の髄まで正直で、真面目な方なんだな~と思いました。でも、個人的にはここでハッピー・エンドにしても良かったんじゃないかな~とも思いましたね。2人の前途が多難であることは明らかなので。
結局、舞台となった居間が本堂だったのかしら?だとするとお経を上げる対象となるものが見えなかったのは残念。最後の読経は魅力ではありますが、障子に向かって読むのには違和感が残りました。
10周年記念公演 第1弾
出演:青木柳葉魚、市橋朝子、大塚あかね、舘智子、ちゅうり、鶴川春男、西山竜一、久行しのぶ、藤崎成益、好宮温太郎(以上、劇団員)、青山麻紀子(boku-makuhari)、勝平ともこ(劇団M.O.P.)、小高仁、じょじ伊東、堀夏子(青年団)
脚本・演出:横田修 舞台監督/田中翼 照明/鈴村淳 音響/島貫聡 舞台美術/濱崎賢二(青年団) 宣伝美術・写真撮影/平地みどり チラシイラスト/糠谷貴使 制作/タテヨコ企画制作部+森佑介+大木孝司 製作/タテヨコ企画
【発売日】2008/12/17 前売3,000円(日時指定・全席自由) 当日3,300円 学生割引1,500円 (高校生以下/要予約/当日受付にて学生証をご提示下さい) ビデオ撮影日・平日マチネ割引 前売・当日共 2,000円
http://tateyoko.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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パルコ・プロデュース『いのうえmeetsシェイクスピア「リチャード三世」』01/19-02/01赤坂ACTシアター
劇団☆新感線のいのうえひでのりさんが演出するシェイクスピア。タイトル・ロール“リチャード三世”を古田新太さんが演じます。
ストーリーがとてもわかりやすかったです。マーガレット役の銀粉蝶さんが圧巻。上演時間は約3時間30分(休憩20分含む)。
カーテンコールでソロでおじぎする時に転んだ人、初めて見た(笑)。でもちょ~可愛いかったからOK!(笑)
⇒CoRich舞台芸術!『リチャード三世』
あらすじはこちらでどうぞ。
テレビ画面が数台並んでいるのは『SHIROH』でも見ましたが、演出は違った効果がありました。動画で説明してもらえるのは非常にわかりやすいですね。
60~70年代ファッションのような衣裳がきれいで、見てるだけで面白かったです。THE BEATLESの"SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND"のジャケットみたい。⇒舞台写真
リチャード三世というと、シェイクスピア作品の中でも随一の悪党。ひどい奴なのにどこか憎めないのは、古田さんのキャラクターならではですよね。ただ、早口の言葉が流れてしまって集中できないことが多々あり。
マーガレット役の銀粉蝶さんがとにかく素晴らしくて、銀さんが登場する度に目がうるうる。言葉のひとつひとつに説得・感心させられ、緩急の効いた長い独白に酔いました。銀さんを観られたから、それで満足と言っていいぐらい。
ヨーク公夫人役の三田和代さんはさすがの存在感。ヘイスティングズ卿役の山本亨さんも面白かったです。小さな王子を演じた子役の男の子が可愛かった。名前はわかりませんでした。
ここからネタバレします。
悪巧みはICレコーダーに録音し、呪いはキーボードに打ち込んで、密談は携帯でこっそりと。
リチャード三世に対して反旗を上げ、次期王になるリッチモンド伯を演じた川久保拓司さん。『音楽劇 ガラスの仮面』の桜小路くん役で初めて拝見したんですが、今回は金髪くるくるカールのオスカルみたいな正義の味方役で(笑)、背の高さも美しいお顔もぴったりハマっていて見ごたえがありました。
≪大阪、宮城、東京≫
出演:古田新太 安田成美 榎木孝明、大森博史 三田和代、銀粉蝶、久世星佳 天宮良、山本亨 増沢望、西川忠志、川久保拓司、森本亮治 逆木圭一郎、河野まさと、村木仁、礒野慎吾、吉田メタル、川原正嗣、藤家剛/ 藤木孝(12月)、久保酎吉(1月)・若松武史 他
脚本:ウィリアム・シェイクスピア [翻訳]三神勲[演出]いのうえひでのり[音楽]岡崎司 [美術]池田ともゆき [照明]原田保 [衣裳]前田文子 [映像]上田大樹[音響]井上哲司 [音効]末谷あずさ [ヘアメイク]宮内宏明[アクション指導]川原正嗣・藤家剛[特殊効果]南義明 [小道具]高橋岳蔵 [演出助手]菅野将機[舞台監督]芳谷研・吉見裕司[宣伝美術]河野真一 [宣伝写真]尾嶝太 [制作協力]細川展裕・柴原智子+ヴィレッヂ[企画]毛利美咲 [プロデューサー]佐藤玄 [制作]尾形真由美 [製作]山崎浩一[企画・製作]株式会社パルコ 主催:TBS / PARCO
【発売日】2008/11/22 S席10,000円 / A席8,000円(全席指定・税込)※未就学児の入場不可。
http://www.parco-play.com/web/page/information/richard
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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