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2009年06月18日

乞局『芍鸝(シャックリ)』06/17-22駅前劇場

 下西啓正さんが作・演出・出演される劇団乞局(こつぼね)の新作です。独特の、本当に独特の(笑)、ストレートプレイを上演されています。いつも気になる役者さんが多数出演されていて、いつもタイトルが読めない(笑)。今回の上演時間は約1時間40分。

 現代日本のとある公園にて、国づくりをはじめる人々。不気味で予想不可能な展開尽くしで、役者さんの演技にも驚かされっぱなしでした。とても面白かったです。

 平日昼だというのに客席は8~9割ぐらい埋まっていました。チケット代が公演前半のオトク価格だからかしら。終演後に上映された短編映画「グレムリンの行程」(約15分)も拝見しました。これも可笑しかった。

 ⇒CoRich舞台芸術!『芍麗鳥

 ≪あらすじ≫
 公園で新しい国を作ろうとしている人々。どうやら皆ホームレスのようだ。新しい仲間が数名ほど入国してくる。誰もがそれぞれに“神様”になるが、リーダーがいない。そこに「私が神様です」と答えた女がいた。
 ≪ここまで≫

 おそらく公園であろう場所。中央に汚いトイレが丸見えになっています。全体は木々に囲まれていますが、なぜか王族が暮していそうな装飾がちらほらと施されているため、装置自体は具象だけれど、抽象的な空間です。

 場面転換の度に白い幕で舞台を隠して、「第○章」「第○節」といった章タイトルが幕に映写されます。ある小さな国が生まれ、見知らぬ者同士が共同生活を始めて、何が起こっていくのか。過去の歴史をひもといていくような感覚でした。庭劇団ペニノのように、舞台という箱庭で淡々と事件を提示していくようにも受け取れました。

 役者さんの演技・動作も、照明も音響も、私の予想や期待の範ちゅうには収まりませんでした。シーンが記憶に残りやすい形をしていないという点で、岩松了さんの作品に似ている気がします。全て観終わってから、最後のシーンを始点にして前のシーンを思い返し、やっと意味がわかったような(?)気がしました。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 公衆便所に住みついていた会社員の女(島田桃依)が神様になります。しばらくすると、なぜか神様が3人(岩本えり、中島佳子、立蔵葉子)増えています。夫(下西啓正)が迎えに来たところで、その3人は妻の過去の姿だったとわかります。でも個別に人格があるし、同時に生きている時点で、曖昧なのですが。
 神様たちは観客に向かって話しかけます。「ごめんなさい」と言いながら、全く謝罪の気持ちも、行動を改める気持ちもなさそうなところが、愚かしくて可愛らしいと思います。

 食べ物など必要なものを“調達”するのは義務だけれど、“換金”はしてはいけないという厳しいルールがあります。でも墓地をあばいて物を盗み、“換金”する者もいることがわかります。高い志(?)をもって建国したとしても、やはり内側から腐っていくんですよね。
 
 腐敗した酒を飲んで覚醒した一部の人間(佐藤みゆき、西尾佳織ら)によって、クーデターのようなものが起こりますが、やはりその酒は体に毒だったようで、すぐに倒れて死んでいきます。神様も1人ずつ消え去っており、生き残った人も逃亡して、国は自滅。
 最後のシーンで公園は、ゴミをあさるホームレスと幸せそうなカップルたちがすれ違う、ごく普通の公共の場所になっていました。それまでに観ていた物語が、日常生活のほんの近くに存在したかもしれない、架空の世界だったように感じました。

 中央のトイレには、夫と離婚して本当にホームレスになった女(島田桃依)が居ます。彼女の状況はより悲惨になっていますが、ホームレス(笹野鈴々音)に再び「あなたは神様ですか?」と聞かれて彼女は「いいえ、違います」と答えます。夢から覚めて、現実を知り、等身大の自分になったという点ではハッピーエンドなのかも。

 寝転がるヘロドトスさん(西尾佳織)に上着をかけようとして、オリンパス君(佐野陽一)が踊りだすシーンは面白すぎ。なんだあの照明と音楽は!(笑) あれは自分の欲望と戦ってたってことなのね。
 最初から居たホームレスの3人(池田ヒロユキ、三橋良平、笹野鈴々音)は、笹野さんと男優さんとの身長(および体の大きさ)の差が面白かったです。

乞局第16回公演
出演:岩本えり 下西啓正 墨井鯨子 西尾佳織 三橋良平(以上、乞局) 池田ヒロユキ(リュカ.) 石田潤一郎 伊藤俊輔(ONEOR8) 佐野陽一(サスペンデッズ) 笹野鈴々音 佐藤みゆき(こゆび侍) 島田桃依 立蔵葉子(青年団) 中島佳子
【脚本・演出】下西啓正 【舞台美術】 袴田長武+鴉屋 【照明】吉村 愛子(Fantasista?ish.) 【音響効果】平井隆史(末広寿司) 【映像制作】高村啓史(komono.studio) 【演出助手】田中元一(田中兄弟) 【舞台監督】棚瀬巧+至福団 【衣装・メイク】中西瑞美 【スチール】鏡田伸幸 【撮影】テアトルプラトー 【宣伝美術】鈴木敏夫 【WEB】柴田洋佑(とくお組) 【制作】上田郁子(オフィス・ムベ) 西岡よどみ 【制作補佐】辻奈緒理 【製作】乞局(コツボネ) 【劇中国家】作詞:飯田かほり 作曲:雨森スウ(時間堂) 編曲:星野奈穂子(時間堂)
【発売日】2009/05/01 日時指定・全席自由 前売り・予約:¥3,000 当日:¥3,500(開演の1時間前より販売)●前半割引:¥2,500 ←17(水)~19(金)は前売り¥2,500/当日¥3,000(※期間中他の割引はございません)●学生割引:¥2,500(劇団予約のみ・要学生証提示※当日券なし)●喪服割引:¥2,500 (劇団予約のみ※当日券なし)※喪服もしくは喪服に準ずる服装でのご来場。詳細はHPをご覧下さい。※15歳未満入場不可
http://kotubone.hp.infoseek.co.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 21:20 | TrackBack

【ワークショップ】「Robert Allan Ackerman Workshop 4th」08/15~26都内某所

 the companyがロバート・アラン・アッカーマンさんのワークショップを開催します。下記は、J-Stage Naviからいただいた情報です。概要と申し込み用紙は公式サイトでダウンロードしてください。

 【期間】2009年8月15日(土)~26日(水)
  ※20(木)・21(金)の両日は休み。
  「台本の読み方」と「シーンスタディ」を組み合わせたカリキュラム。
  テキスト別に2クラス開講。

  ●Class.1 : 13:00~16:00 (8/15~8/26)
   テキスト「ストレンジャーズ・オン・ア・トレイン」
   著:グレイグ・ワーナー 原作:パトリシア・ハイスミス
  ●Class.2 : 17:00~20:00 (8/15~8/26)
   テキスト「クローサー」著:パトリック・マーバー

 【参加費】100,000円
 【締切】WEBにて発表。※ただし、定員に達し次第〆切。

■ロバート・アラン・アッカーマン ワークショップ

 この度、the companyでは、演出家ロバート・アラン・アッカーマンによります、第4回ワークショップを、2009年8月15日(土)~26日(水)に、開催することとなりました。

 これまでに、数々の刺激的な舞台を創り続けているロバート・アラン・アッカーマン(演出)の2009年3月『ストーン夫人のローマの春』 パルコ・プロデュース公演は、皆様の記憶に新しいことと思います。

 この作品には、ロバート・アラン・アッカーマンワークショップを経てキャスティングされた俳優が16名出演しています。2008年10月『1945』世田谷パブリックシアター公演では、総勢65名、2008年4月『バーム・イン・ギリヤド』新宿シアターモリエールでは、20名の俳優が出演しています。

 常に素晴らしい役者たちと出会いを求めているロバート・アラン・アッカーマンのワークショップは、参加する俳優にとっても舞台出演の機会に直結する刺激的なものとなっています。是非この機会に、参加をご検討ください。皆様との素晴らしい出会いを楽しみにしております。


【お問合せ】
Robert Allan Ackerman Workshop4th
受付業務担当:J-Stage Navi(ジェイステージナビ)
〒176-0023 東京都練馬区中村北1-2-8 ライオンズシティ練馬 205号 
Tel:03-5971-9002(平日11:00~18:00)
Fax:03-5971-9003
MAIL: workshop4th(アットマーク)thecompany-t.com
http://www.j-stage-i.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 12:20 | TrackBack

Studio Life『LILIES(リリーズ)』06/17-07/12紀伊國屋ホール

 記者発表の写真レポートを書かせていただきました、Studio Lifeの『LILIES(リリーズ)』初日に伺いました。FEU、SOURCE、TERREの3チームによるトリプルキャスト公演で、初日はFEUチーム。⇒2003年版のレビュー

 終演後に、原作者であるミシェル・マルク・ブシャール氏のご挨拶がありました。この公演のためにカナダから来日されたそうです。ブシャール氏の作品は同じくStudio Lifeが上演した『孤児のミューズたち』も素晴らしかったので、お姿が見られて嬉しかった。快活でハンサムな紳士でした。

 ⇒CoRich舞台芸術!『LILIES

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 修道院で出会った3人の少年に起こった悲劇。
 封印されたシモンとヴァリエのロマンチックな物語。
 1952年、カナダ郊外の刑務所。
 囚人達の告解を聞くために訪れたビロドー老司教(青木隆敏)は突然、看守や囚人たちに監禁される。そして、彼の目の前で囚人シモン(石飛幸治)の計画による囚人達の手の込んだ芝居が始まる。そこには40年前の自分の姿があった。奔放な少年シモン(新納慎也)と惹かれ合うヴァリエ(松本慎也)。そんなふたりに嫉妬心を抱くビロドー(林勇輔)。修道院で出会った少年達に何があったのか、封印された過去の悲劇がよみがえる。
 ≪ここまで≫

 『LILIES』は2002年にスタジオライフが日本で初めて上演したカナダ戯曲で、今回が2度目の再演、つまり3演目になります。“刑務所で上演される男だけの劇中劇”は、男優集団スタジオライフに打ってつけの演目ですよね。

 2003年に観た時は、ヴァリエの母親である伯爵夫人(曽世海児さんが演じていました)に感情移入してボロボロ泣いていたのですが、今回はそういう感覚にはならなかったです。2度目だからかしら。
 でも、やはり戯曲はとても面白いと思いました。スタジオライフ以外の劇団でも観てみたいですね。

 少年ビロドー役の林勇輔さんはさすがの存在感。何をしても面白かったです。
 少年ヴァリエ役の松本慎也さんは、観るたびに、毎回毎回、成長されているように感じます。新納さんとのキスシーンは体のバランスもぴったりで美しかった。

 ジュニア7の方々が音楽ユニットを結成されたそうです。バンドデビュー?⇒雪月花

FEUチーム出演:新納慎也(シモン) 村上幸平(医師の妻・女の奴隷) 山本芳樹(パリジェンヌ) 松本慎也(ヴァリエ) 青木隆敏(老ビロドー) 林勇輔(ビロドー) 石飛幸治(老ヴァリエ・ヴァリエの父親) 船戸慎士(医師) 関戸博一(伯爵夫人)
原作:ミシェル・マルク・ブシャール 上演台本・演出:倉田淳 美術:松野潤 照明:森田三郎 舞台監督:清水浩志(ニケステージワークス) 音響:竹下亮(OFFICE my on) 衣裳:竹原典子 ヘアメイク:角田和子 美術助手:渡辺景子 演出助手:平河夏 荒川真寿恵 宣伝美術:成田久 宣伝写真:河上輝明 宣伝スタイリスト:塩畑美由喜 題字:重松淳也 制作:稲田佳雄 揖斐圭子 大野純也 麻場優美 小山智子 若松美香 デスク:山﨑みれい 瀬津丸砂織 宣伝:ディップスプラネット プロデューサー:玉塚充 蓬田恵美子 企画・制作:スタジオライフ 東京公演主催:スタジオライフ 神戸公演主催:新神戸オリエンタル劇場
【東京公演】【発売日】2009/04/19≪S席≫<前売> 5,200円 / 一般<当日> 5,400円 ≪A席≫<前売> 4,700円 / 一般<当日> 4,900円 ≪ウィークデイマチネ公演≫<前売> 4,200円/一般<当日> 4,400円 (ウィークデイマチネ公演にはS席・A席の区別はありません 【神戸公演】【発売日】2009/05/02≪S席≫<前売> 6,000円 / <当日> 6,500円 ≪A席≫<前売> 4,000円 / <当日> 4,500円
http://www.studio-life.com/stage/lilies2009/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 00:28 | TrackBack