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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年09月07日

柿喰う客『悪趣味』09/04-13シアタートラム

 中屋敷法仁さんが作・演出・出演される柿喰う客は、活動開始から5周年を迎えた若手人気劇団です。第15回目を迎える本公演は、シアタートラムで10日間以上という長期間。おのずと期待も高まり、前売り券が割引(2500円)になっている初日に伺いました。上演時間は約1時間40分。

 具象の装置が非常によく出来ていて、劇場に入るなり驚きました。シアタートラムでここまでギッチリと建てこんだものを観るのは久しぶりな気がします。チケット代が2000円代なのは格安です。物販も充実していて、私は300円の公演パンフレットを購入。

 全配役をランダムに入れ替える(シャッフルする)「乱痴気」バージョンもあり(9/7の19:30&9/10の14:00)。私は怖いので行きませんが(笑)、ファンの方にはたまらない企画かも。

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 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。
 ――北東北の山深き寒村、霧田村。
 人を食い殺す“化け狐”伝説が残るこの村で
 身元不明の惨殺死体が見つかった時
 村人たちの運命の歯車は、少しずつ狂い始める―
 ≪ここまで≫

 美術や照明などのスタッフワークがとてもハイレベル。ハードロック調の曲が大音量で鳴るのもイケてる感じ・・・なんだけど、内容はあえてB級。物語はタイトルどおり“悪趣味”な要素が多いです。でも、これまでの柿喰う客の作品に比べるとエロ度ひかえめ。登場人物は出演者26名(劇団員は8名)よりもずっと多くて濃いキャラクターばかりですが、チームごとにしっかり書き分けられているので混乱することはありません。

 役者さんは激しく動き、早口でしゃべるものの、演技はストイックに制御されています。若さと勢いで突っ走って、飛んで歌って、観客を置いてきぼりにして勝手に遠くまで行ってしまうのではなく、緻密にこつこつ積み上げた稽古の成果が出ていたように思います。

 ただ、志の高さに感心して役者さんの身体をじっくり眺めている内に、セリフを聞き逃したり。笑いどころを逃し続けたり。クオリティーは高いはずなのに、面白かったんだか面白くなかったんだか全然わからない(笑)。 

 若いからこそ出来る作風なのでしょうし、「乱痴気バージョン」といった豪快な企画を実行するのも、並はずれた遊び心の成せる業というか、向こう見ずというか(笑)。でも、「若さならではの歓迎すべき暴挙」と評するには、すでに実力が付き過ぎている気がします(おこがましいですが、ほめ言葉のつもりです)。

 作品を公演へとパッケージ化することにも成功されていると思いますので、個人的には、作品の中身をより深めて行ってもらいたいと思います。例えば、これまた一観客のわがままですが、役者さんにもっと高いハードルを用意して、できるかどうかわからないギリギリのラインを見せてほしい。次の公演に、そして劇団の今後の方向性にも期待します。

 ここからネタバレします。

 ノンストップ(ちっさな休憩はありますが)の大騒ぎの奥にずっと流れていたテーマは親子の愛憎、恨みの連鎖などでしょうか。化け狐を退治した人間の男に狐ののろいがかかり、男が怪物(狐?)になってしまって村から出て行った後も、彼の妻と子供たちにはのろいがかかったまま。狐の子孫もまた復讐を企てており、怨念が世代を経て受け継がれていきます。

 本編と関係ないのに無理やり挿入される河童(須貝英)コントは、とてもよく稽古されているのがわかる完成度。でも、おふざけであるとわかっていながら、全然笑えないんですよねー。役者さんのバッチリ決まったアンサンブルに見入ったり、中屋敷さんのギャグの成り立ちに感心したりしてる内に、通り過ぎてしまって(苦笑)。

 いい感じ(なのかどうかはわからないけど)に力が抜けている人が出てくると、そこで観客もフっと息がつけて、笑いにつながることもありました(例えば中屋敷さんのゲイキャラ)。「笑えないのは失敗だ」とは思わないですが、演出意図がよくわからないままなのはもったいない気がします。

柿喰う客第15回公演 1年越しの新作本公演!! 飛び散る鮮血! こだまする悲鳴! 超B級アダルト×オカルト×サスペンス!!
出演:七味まゆ味 コロ 玉置玲央 深谷由梨香 村上誠基 本郷剛史 高木エルム 中屋敷法仁(以上、柿喰う客) 梨澤慧以子 國重直也 片桐はづき 須貝英(箱庭円舞曲) 齋藤陽介(ひょっとこ乱舞) 野元準也(ビビプロ) 出来本泰史(劇団Seven Stars) 高見靖二(チャリT企画) 佐野功 浅見臣樹 永島敬三 佐賀モトキ 伊藤淳二 川口聡 瀬尾卓也 柳沢尚美 熊谷有芳 渡邊安理(演劇集団キャラメルボックス)
脚本・演出:中屋敷法仁 舞台美術:泉真 照明:富山貴之 音響:上野雅 衣装:飯田裕幸 演出助手:伊佐美由紀 舞台監督:棚瀬巧+至福団 宣伝美術:山下浩介 宣伝写真:堀奈津美(DULL-COLORED POP/*rism) モデル:深谷由梨香 制作:赤羽ひろみ 主催・企画製作:柿喰う客
【発売日】2009/07/20 全席指定・税込【一般】前売 2,800円/当日 3,000円【学生】前売 2,000円/当日 2,300円 (※1)【団体】2,500円 (※2)【初日割引】2,500円 (※3)※1 劇団のみ取扱。受付にて要学生証掲示。※2 劇団のみ取扱(要予約)。3名様でご来場のお客様対象(お一人様2,500円)。※3 9/4(金)19:30の回のみ。一般は前売/当日ともに2,500円。
http://kaki-kuu-kyaku.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 15:24 | TrackBack

青森県立青森中央高校『ともことサマーキャンプ』08/29国立劇場

 第55回全国高等学校演劇大会三重大会の上位入賞校4校が、受賞作を国立劇場で上演しました。私は渡辺源四郎商店の畑澤聖悟さんが戯曲を書き下ろした、青森県立青森中央高校の『ともことサマーキャンプ』を拝見。上演時間は約1時間。⇒舞台写真

 劇場入り口でマスクが配布されていました。劇場内で付けておいて、帰る時にゴミ箱に捨てるようにとのこと。新型インフルエンザ流行による厳戒態勢なんですね。

 ≪あらすじ≫ 当日配布のパンフレットより
 サマーキャンプ!
 夏の目差し。夏の海。さわやかな潮風。ビーチボール。
 すいか割り。ビーチパラソル。花火。フォークダンス。くらげ。
 海が俺たちを待っていたのになあ!
 しょうがないじゃない。 ……あんなことがあったんだから。
 ≪ここまで≫

 『ともこと…』は『親の顔が見たい』の裏側も見せる構成で、いじめ加害者の女子生徒らが登場します。生徒とその親を同じ役者が演じるのが面白いです。8/24までアトリエ・グリーンパークで上演されていた『河童』の出演者も大勢いました。演劇づくしの夏休みですね~!

 それにしても国立劇場の舞台は間口が広い!客席も広いですから声も聞こえづらいですし、万全に準備するのはなかなか難しそう。
 
 終演後すぐに高校生司会者による出演者および演出家へのインタビューがありました。観客からの質疑応答は興味深いものがありました。高校生はしっかり返答して立派だったと思います。⇒畑澤さんのブログ

 チケット代は無料(ただしチケットがないと入場できません)。全席自由席と思いきや指定席でした。でも舞踊等が終わって演劇が始まる時になぜか指定席が解除。解除されたことを知らないまま、はじっこの指定席に座っていた私って・・・すごく損した気分。
 どういう意図と効果があるのかわからないですが、指定席にするなら入れ替え制を徹底するなり、本気で取り組んでいただきたいですね。色んなジャンルの発表会をするので難しいのでしょうけれど。

【出演】イシオカ(学年主任):石岡洋平 ヨコオカ(校長):横岡舞子 シミズ(HRT、新任):清水ちえり ミナ/ミナの母:有馬三菜 カイ/カイの母:坂口海 サトミ/サトミの母:山内さとみ サツキ/サツキの母:櫻田沙月 ナツミ/ナツミの母:大崎捺未 ともこ/ともこの母:木村知子 タクミ/ホソヤ(新聞配達店長):細谷拓弥 その他:對馬宗輝 米村昌史 對馬俊樹 佐藤真琴 算用子夢 中島悠子 坂本有美華 木田彩織 吉田恭兵 岡崎涼太 奥崎愛野 松岡和 堤彩 松野えりか 藤林奈都美 小胆史
作/畑澤聖悟 演出/三田村菖 演出助手/中島悠子 舞台監督/有馬三菜 照明/比内郁里 河本祐美子 柴田顕人 音響/三上奏子 小道具/櫻田沙月 顧問/星村隆 木下和子
http://koenkyo.org/memorial/2009/2009mie/miemieindex.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 11:38 | TrackBack