2009年09月15日
吾妻橋ダンスクロッシング実行委員会『吾妻橋ダンスクロッシング』09/11-13アサヒ・アートスクエア
『吾妻橋ダンスクロッシング』は何度か観たつもりだったのですが、どうやらこれで2度目かも(⇒2006年10月)。いつも大人気で今回も早々に完売だったようです。上演時間は約3時間(途中25分の休憩を含む)。
似た顔ぶれだな~とも思いつつも、どれも見どころがあって濃い3時間。でも最後に上演された飴屋法水さん演出のパフォーマンス『顔に味噌』に感動して、しばらく放心状態。私にとっては、この1本がそれまでの作品の印象を上書きしてしまうほどでした。
⇒CoRich舞台芸術!『吾妻橋ダンスクロッシング』
【1】ハイテク・ボクデス『無機LAND』
構成・演出:小浜正寛 構成・技術協力:秋山想、松本英明、山本圭祐、小林ともえ、業務用菩薩、ニせ生物、上村聡
出演:介護用ベッド、扇風機、こいのぼり、ダッチワイフ等
身近な道具で、動くインスタレーションみたいな。
【2】contact Gonzo『(non title)』
出演:出演:加藤至、三ケ尻敬信、塚原悠也、キャナイ
不良っぽいストリート・ファッションの若い男性4人が殴り合ってました。私はこういうの苦手なはずなんだけど、アイコンタクトとか呼吸を合わせる感じが面白くて不快感なし。2人取っ組みあったと思ったら、その上にさらに2人とも跳んで乗っかっていくんだもの。そりゃ怖いけど面白いですよ(笑)。
小さなペットボトルに入れた青い照明がPCを介して壁に映ったり、使い捨てカメラでフラッシュを焚いたり。私は初めてだったんですが、「2年前と同じだからあんまり・・・」という人もいたり。
【3】チェルフィッチュ『ホットペッパー』
振付:岡田利規
出演:伊東沙保、武田力、横尾文恵
3人の派遣社員。「送別会の幹事をまかされたんだけど、それって社員の仕事じゃね?」
あーもーばかばかしくって、でも社会風刺にもなっていて。
飴屋法水作品にも出演していた武田力さんの表情が面白い。伊東沙保さんが団扇で仰ぐのが可笑しい。
【4】ほうほう堂『あ、犬』
出演:振付・出演:新鋪美佳、福留麻里
和風で牧歌的な感じ。歌だとハンバート・ハンバートみたいな。後半は面白くなりました。
【5】快快[faifai]『ジャークチキン~それはジャマイカの食べ物』
出演:天野史朗、佐々木文美、大遠寺梨乃、加藤和也、野上絹代、藤谷秀子、山崎皓司
「2001年宇宙の旅」のテーマがかかる中、ただ、料理。もーほんと馬鹿!楽しい!素敵!
ボブ・マーリーの顔型風船サイコー。ひげの先からチキンの香り(笑)。ジャークチキンサンドは大売れだったようです。
【休憩25分】
快快の篠田千明さんの映像作品『Guten Tag, AZUMABASHI!!!』(出演:篠田千明、ベルリンの人々)が流れていました。爆破された教会の前でのダンスが素晴らしい。軽快にインターナショナル。
【6】鉄割アルバトロスケット『馬鹿舞伎』『園まなぶ』『どやらっぷ』『焼鳥の串』『おれの母ちゃん何処行った?』
作:戌井昭人 演出:牛嶋みさを
出演:内倉憲二 奥村勲 中島朋人 村上陽一 中島教汁 伊藤麻美子
鉄割流の歌舞伎、シャンソン、ラップなどなど。
1人で立っていて絵になるのが凄い。レバーの串を腕に差すのとか(笑)。
【7】Line京急『吉行和子(ダブバージョン)』
作・演出・振付・出演:山縣太一、大谷能生、松村翔子
音楽:大谷能生 作詞:山縣太一、松村翔子
もう25歳だしロックを控えて水割りにしたってことで。
【8】いとうせいこうfeat.康本雅子『VOICES』
ポエトリー・リーディング:いとうせいこう ダンス:康本雅子 音楽:Dub Master X ギター:森雅樹(EGO-WRAPPIN'/ 12日のみ)
いとうせいこうさんがあんなに怒鳴るとは予想外。メッセージには共感しました。康本さんのダンスはやっぱり素晴らしい。人間1人の価値を表す説得力強大。ギターのある日は全然違う雰囲気だったみたい(観た人からの情報より)。
【9】飴屋法水『顔に味噌』
作・演出:飴屋法水
出演:秋葉賢人、安ハンセム、石川夕子、小駒豪、大井けんじ、上村梓、キムウンジン クジェ・タルク、香本正樹、桜木彩佳、武田力、立川貴-、マチナ・シモーネ、丸瀬顕太郎、村民麗薫、藤原みかん、モンジュ、エビーよだ、高内絵里
フェンシングの試合。防具をつけているので顔が全く見えない。試合が終わってから防具を取って初めて顔を見つめあう2人。少々驚いた様子。戦争ってそういうことだよね。
テキストは宮沢賢治の『よだかの星』、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』など。名前って何なのか。私は誰なのか、何なのか。
日本語を話す中国人、韓国人、イタリア人、ブラジル人ら。ドレスを脱いでヘアメイクも落としていく女。顔にみそを塗って踊る女。住んでる場所や話す言語、親につけられた名前がその人を表すわけじゃない。服を脱いでメイクを取っても、顔がみそだらけになっても、そこに確かに居る体だけが、その人なんだ。
防具を被った飴屋さん。防具の中で爆竹がいくつも弾けた。防具からもうもうと立つ煙。顔がなくなったら人じゃないのか?
最後にマイクで朗読するのは、英語と日本語が話せる年配の男。その人がそこに居ること、それを私たちが見ていることは、確かなもの。
【10】Chim↑Pom
インスタレーションがあったそうですが、私は認識せず。どうやらトイレの中を中継したらしい。
ダンスやパフォーマンスを観ると落ち込みます。今回も漏れなく。面白かったのに落ち込むって変なんですけど(苦笑)。見たことのない折り込みチラシの多さに、舞台芸術界の広さを見せつけられて愕然とするんですよね。そしてこういう音楽系というか、ダンス系・パフォーマンス系の客席の雰囲気についていけない自分を再確認して、自分の度量の狭さにがっかりもするし。
出演:飴屋法水 いとうせいこう contactGonzo チェルフィッチュ Chim↑Pom 鉄割アルバトロスケット ハイテク・ボクデス 快快(faifai) 康本雅子 Line京急 ほうほう堂
【発売日】2009/07/25 一般3500円/学生3000円(プリコグのみ取扱)/当日4000円※全席自由、チケット記載の整理番号順に入場
http://azumabashi-dx.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。
【オーディション】サスペンデッズ「第8回公演(2010年5月@芸劇)出演者募集」※11/30〆切(メールor郵送)
早船聡さんが作・演出(たまに出演も)されるサスペンデッズが、来年5月の公演の出演者を募集しています。公演会場は野田秀樹さんが芸術監督を務める東京芸術劇場小ホール2です。
早船さんは劇団活動以外にも新国立劇場に新作戯曲を描き下ろすなど、今注目を集める若手劇作家でもあります。⇒『ロゼット』稽古場レポート
男女とも年齢制限なし。経験問わず。早船作品の感想必須(⇒ただいま新作が9/20まで上演中)。ご興味のある方は下記をどうぞ。
■サスペンデッズ出演者オーディション開催!(折り込みチラシより) ⇒劇団ブログ
2010年5月に上演するサスペンデッズ第8回公演の出演者を募集します。
◎募集内容◎
1.公演日程
2010年5月22日~30日(全8回公演予定)
東京芸術劇場小ホール2
2.稽古日程
2010年4月中旬~5月21日
都内稽古墳にて
3.募集人数
男女3~4名
*チケットノルマ・出演料はありません。
◎オーディション概要◎
第一次審査 書類選考 2009年11月30日必着
*結果は12月末までにメールにてご連絡いたします。
第二次審査 オーディション(受験料1000円)
2010年1月都内にて
1.応募資格
稽古、本番に全日参加できる方
2.申し込み方法
以下のものを下記までお送り下さい。(eメール可)
○氏名・生年月日・年齢
○住所・電話番号・メールアドレス
○身長・体重
○写真(バストアップと全身写真各一枚)
○経歴(芸歴含む)
○今まで観たサスペンデッズもしくは早船作品についての簡単な感想
3.申し込み締切
2009年11月30日必着
4.お申し込み・お問い合わせ先
〒194-0013 町田市原町田4-19-17グリーンコート301
オフィス・ムベ サスペンデッズオーディション係
info(アットマーク)suspendeds.net
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。
サスペンデッズ『夜と森のミュンヒハウゼン』09/11-20三鷹市芸術文化センター星のホール
早船聡さん(⇒新国立劇場に書き下ろし、稽古場レポート、メルマガ号外)が作・演出(たまに出演も)されるサスペンデッズの新作は、三鷹市芸術文化センターのMitaka"Next"Selection 10th.参加作品。チラシのイラストがいつも素敵。
劇場入口からびっくり、の美術です。これは気持ちいい!これまでとは作風がガラっと違った、大人のダーク・ファンタジーでした。上演時間は約1時間45分。
⇒詩森ろばさんのブログ
⇒CoRich舞台芸術!『夜と森のミュンヒハウゼン』
レビューをアップしました(2009/09/17)。
≪あらすじ≫
深い森の中に棲まうものたち。病気の妹と2人暮らしの兄。仲間はずれの帽子男。さびしんぼのバニー。フレンドリーな無差別殺人犯。旅行鞄を持った女が迷い込んできて・・・。
≪ここまで≫
星のホールは変幻自在ですね。開演前からとても心地よくて胸躍りました。
会話をする人物の背後にある森が深層心理の世界のようで、その深みと広がりが美しかった。
夢と現実が交差し、幻想的な空間に様々なイメージが浮かび上がります。看護師(石村みか)の物語には『ザ・ダイバー』と重なるところもありました。
ここからネタバレします。
劇場が森になっていました。入口側に大きな木が何本も立っていて、その林を抜けるとステージが広がります。客席はその奥に設置されていました。つまりいつも舞台になっている側に客席があります。奥行も幅も大きくとった贅沢な舞台空間でした。木は白く塗られている(?)ので、照明の色が映えます。
動物たちの幻想世界と看護師(石村みか)の現実が交互に描かれ、意外なところに接点が見つかり、重なっていきます。まさか早船さんの作品でウサギが登場するとは全く予想していませんでした(笑)。もうちょっと早くに全てが分かっても良かった気がしました
妹サキ(高畑こと美)は幼い頃に暴漢らに殺され、遺体となって森の中に捨てられていた少女でした。少女のかつての飼い犬クロ(佐藤銀平)が遺体を発見し、少女は何もかも忘れてしまった魂としてよみがえります。犬は少女を自分の妹として、森の中で十年暮らしてきました。
不倫相手の男(伊藤総)にひどい仕打ちをされて、お腹の子供も失って(堕胎か流産かは不明)、深く傷ついた看護師の魂と、少女の魂が共鳴したのでしょうか。2人は森で出会い、そして一緒に森を旅立っていきます。
得体のしれない無差別な暴力は時代のキーワードですよね。殺人犯(=ホワイトソックス)と不倫男を伊藤総さんが演じているのが怖いところ。また、ホワイトソックスは誰かに依頼されて殺人(動物殺し)を行っているのも、現代を暗示するものがあると思います。
最後は犬たちが火をつけて森が真っ赤に染まって終幕。問題が起こって、行き詰って袋小路に入ってしまったら、何もかもすべて壊して新しくやり直そうとする今を表しているようでした。
第7回公演 Mitaka"Next"Selection 10th.参加
出演:伊藤総(ホワイトソックス)/佐藤銀平(犬)/佐野陽一(一角獣)/富沢たかし(金田・マスター)/冠野智美(うさぎ)/高畑こと美(妹)/石村みか(看護士)
脚本・演出:早船聡 美術:袴田長武+鴉屋 舞台監督:大友圭一郎 照明:工藤雅弘(Fantasista?ish.) 音響:平井隆史(末広寿司) 衣裳:大野典子 イラストレーション:木村タカヒロ 宣伝美術:野島敏光 制作:石川はるか(ハイリンド) 上田郁子(オフィス・ムベ)
【休演日】9/14(月)前売2,500円 当日3,000円 全席自由 お問い合わせ:info@suspendeds.net TEL&FAX:042-727-8640 オフィス・ムベ
http://www.suspendeds.net
http://mitaka.jpn.org/ticket/0909110/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。
箱庭円舞曲『極めて美しいお世辞』09/11-22 OFF OFFシアター
古川貴義さんが作・演出・前説を担当する箱庭円舞曲の第13回目の本公演。古川さんが演出されたプロデュース公演(2009年6月)の、稽古場レポートを書かせていただきました。
ヘアサロンの控室で本音と建前がうずまきます。上演時間は約2時間。
⇒CoRich舞台芸術!『極めて美しいお世辞』
≪あらすじ≫
ヘアサロンの美容師控室。数年前に姿を消した美容師(小野哲史)が突然帰ってきた。腕が良くて芸能界でも仕事をしていた彼は、売上が伸び悩んでいるところに投入された助っ人なのか?
≪ここまで≫
美容院の裏側。小道具を丁寧にそろえてらっしゃいます。OFF OFFシアターは舞台上に柱があるのですが、それを感じさせない美術が素敵。ただ、具象で表現しているので、物語の設定や展開について細かいところまで気になったりすることもあり。全体が2時間あるのは少々長く感じました。
自分が絶対だと信じていても、他人には受け入れてもらえなかったり、絶対にバレてないと思っていても、既に誰もが知っていたり。いかに自分の感覚が他人と合っていないか、世間に通用しないかが暴かれていきます。
当然だと思っていたことが他人には全く通じていなかったという事実を突き付けられて、頭から水をかけられたようにショックを受けた瞬間の役者さんの表情と、空気が固まるような感覚が刺激的。
役者さんの中ではスタイリスト役の原田優理子さんがのびのびしていて素敵でした。
ヘアサロンの売上が落ち込んでいるというのは、シャレにならないですね。と言いながら、私もめったに行かないんだけど・・・。
ここからネタバレします。
スタイリスト宇高(原田優理子)は総代表(伊藤新)と不倫していて(といっても宇高さんは総代表が結婚していることを知らなかったみたいだけど)、それが総代表の奥さん(津留崎夏子)にバレバレになります。女同士の笑顔のバトルがいやらしくてイイ(笑)。
「技術と経験に裏打ちされた自分の美的センスは絶対だ(もちろん客にも押し付ける)」という潔癖タイプの富彌(小野哲史)は、女性客をタラすことにしか能がない日當(和知龍範)よりも、自分が人気がないことにショックを受けて泣いてしまいます。「それで泣くのかよ!(笑)」と笑ってしまいました。意外性がいいんですよね~。
総代表(伊藤新)と泣いちゃった富彌(小野哲史)らが、ケンカ腰で本音を語り合うシーンが面白かったです。人間、あまり考えないで、直感やその時の気分で動いてるものですよね。総代表の意見には納得するところがありましたが、彼が一方的にたくさん説明しすぎな気もしました。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
出演:古川貴義 赤澤ムック(黒色綺譚カナリア派)
お2人とも偶然に下北沢MINXに通っているとのこと。
奥さん(津留崎夏子)の最後のけん玉は、脚本では「最後まで成功しない」となっているけれど、たとえ成功したとしても誰にも見られていないので、成功とはいえないかもしれない。だから成功してもいいという風に変更したとのこと。
私が観た回は成功でした。私には「人生何が起こるかわからない」「何が起こっても自分の中にしか本当はない(それさえも怪しいんだけど)」という意味に伝わったので、成功で良かったと思いました。
箱庭円舞曲第十三楽章 Thank you for your compliment & sexual desire.
出演:小野哲史、爺隠才蔵、村上直子(ホチキス)、松本寛子、高木充子(LaCompagnieAn), 原田優理子(トリのマーク(通称))、伊藤新(ダミアン)、清水穂奈美、和知龍範、津留崎夏子(ブルドッキングヘッドロック)
脚本・構成・演出・前説:古川貴義 舞台美術:稲田美智子 照明プラン:工藤雅弘(Fantasista?ish.) 音響:岡田悠(One-Space) 小道具:栗山佳代子 衣裳:三木葉子 舞台監督:西村正一 毛髪:山内翔 選曲:古川貴義 演出助手:陶山浩乃(劇団競泳水着) 萩原雄太(かもめマシーン) イラスト:須山奈津希 宣伝美術:Box-Garden House/古川貴義 広報:須貝英 制作:安田有希子 企画製作:箱庭円舞曲
【発売日】2009/07/24 前売:2,500円 / 当日:2,800円 11(金)の19:30の回、14日(月)、17日(木)の14:30の回は初回割引/平日昼公演割引 前売:2,200円 / 当日2,500円
http://www.hakoniwa-e.com/top.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。