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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2010年03月13日

彩の国さいたま芸術劇場『ヘンリー六世』03/11-04/03彩の国さいたま芸術劇場大ホール

 蜷川幸雄さんがシェイクスピア戯曲を演出される彩の国シェイクスピア・シリーズ第22弾。演目は昨年新国立劇場が三部作を一挙上演し、数々の演劇賞を受賞した『ヘンリー六世』です。今回は、松岡和子さんが翻訳し、河合祥一郎さんが新たに構成され、三部作が前・後編の二部作になっています。場面が入れ替わったりもしているようです。

 前編・後編あわせて1日通し公演で、片方ずつは観られません。上演時間は約8時間30分(途中休憩15分、1時間、15分を含む)。
 1時間の休憩で特製のお弁当(1000円)をいただきました(写真↓)。鳥のフライ、焼き魚、煮物、サラダなど盛りだくさん。ロビーで事前に予約が必要です。予約時に希望すればロビーの下の階のテラス席も確保してもらえます。

20100311_obento.jpg

 折り込みチラシに周辺のレストランの地図も入っていまいましたので、開演前にチェックすると良いと思います。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ヘンリー六世

 真っ白なステージは2方向から客席に挟まれています。『コースト・オブ・ユートピア』に似ていますが、違うのはいつも舞台がある方の客席は数が少なく、後方が階段状の演技スペースになっていること。

 新国立版と比較する視点で観ることになりました。新国立版が庭、地球、そして宇宙へと広がるランドスケープだとすると、さいたま版は劇画の顔のアップの連続。登場人物の目やひたいから怒り、悲しみがギラギラとほむら立つ様が目に見えるほど。

 私はとにかく体力が持たないので(汗)『コースト・オブ・ユートピア』や『ヘンリー六世』などの3部作は、1部ずつ分けて観るようにしています。だから今作は終盤のシーンをちゃんと観て、咀嚼できたのかどうか自信がありません・・・。

 ここからネタバレします。

 ≪前編あらすじ≫ 当日配布のキャスト表より
 イングランド王ヘンリー五世の死により、その息子ヘンリー六世が王位を継承するが、年若い王は政治力を発揮できず、身内の摂政グロスター公爵とウィンチェスター司教は反発しあっている。フランスではジャンヌ・ダルクが皇太子シャルルと共に軍を率い、イングランド軍と激しく攻防する。イングランド国内では、ランカスター家(赤薔薇)とヨーク家(白薔薇)それぞれを支持する貴族たちが対立し、一触即発の状況が続いていた。イングランドとフランスの間に和平が締結し、ジャンヌは処刑される。サフォーク伯爵は自身の愛人フランスのレニエの娘マーガレットとヘンリーを結婚させ、ヘンリーの忠臣グロスターの妻の反逆をきっかけにグロスターを追い詰め、暗殺する。が、その後ヘンリーがサフォークを追放し、王妃は悲嘆に暮れる……。
 ≪ここまで≫

 オープニング。白い床にこぼれた赤い血を、現代の掃除婦姿の年老いた女たちが拭き取っていきます。この時点で目頭が熱くなってしまいました。それは過去のあやまちを現代の人間がきれいにする(=しりぬぐいをする=隠ぺいする=痕跡をなくす=忘れる)姿。これから始まる血なまぐさい歴史劇のさまざまなエピソードが胸によみがえりました(新国立版を観ていたおかげですね)。

 せっかく床を拭き終わったのに、今度はいくつもの赤黒い肉塊が、天井からボトッ!ボトッ!と落ちてきました。それを無造作に拾い片付ける老婆たち・・・。私の中で何かがプツっと切れたかのように、目から涙がボッロボロ。「幕開けからこんな状態になるなんて、どうしようっ!」と焦ったのですが、(ありがたいことに?/残念ながら?)ここがピークでした。

 大竹しのぶさんがジャンヌ・ダルクとマーガレットの2役を演じられてるとは知らず、驚きました。
 子供の頃のヘンリー六世を演じられた子役の中島来星さんが素晴らしかった!ヘンリー六世は「あんなに小さい頃から既に王様だった男」なんですね。
 マーガレット(大竹しのぶ)とサフォーク(池内博之)のラブシーンがたっぷりだったな~。

 ■1時間の大休憩

 ≪後編あらすじ≫ 当日配布のキャスト表より
 密かに王位奪還の準備を進めていたヨークが出兵し、薔薇戦争が勃発する。戦いはヨーク家が優勢となり、ヘンリーはヨークに王位の譲渡を約束するが、マーガレットは大軍を率いて攻め寄せ、ヨークを刺殺する。両家激戦の末ヨーク軍が勝利し、ヨークの長男エドワードが新王として即位する。マーガレットたちがフランスに逃走し王ルイに助けを求めていたところへ、ヨーク家の支持者ウォリックがフランス王家との政略結婚を持ち込んできたが、イングランドからの使者により、エドワードが勝手に未亡人のエリザベスと結婚したことが明らかとなり、ウォリックは激昂しランカスター家に寝返る。しかしエドワード軍の追撃によりマーガレットは捕えられ、息子の皇太子は殺害される。そしてエドワードの弟リチャードは、ヨーク家の天下を不動のものにするためロンドン塔に幽閉されているヘンリーのもとへ向かい……。
 ≪ここまで≫

 サフォークが死んだ後、池内博之さんはプランタジネットの3兄弟の1人として再登場されました。大竹さん演じるマーガレットと顔を合わせる場面もあるので、ちょっと違和感。

 エンディングはオープニング同様、肉塊が落ちてきました。やるせなさが息苦しさになって、苦い味わい。とても良かったです。
 セリフでは、「空前絶後の裏切り者!」に爆笑!

出演:上川隆也 大竹しのぶ 高岡蒼甫 池内博之 長谷川博己 草刈民代 吉田鋼太郎 瑳川哲朗 たかお鷹 原康義 山本龍二 立石涼子 横田栄司 手塚秀彰 青山達三 塾一久 木村靖司 妹尾正文 大川ヒロキ 石母田史朗 二反田雅澄 大富士 清家栄一 飯田邦博 新川將人 福田潔 星智也 福井博章 田島優成 太田周作 五味良介 宮田幸輝 川﨑誠司 遠山悠介 熊澤さえか 中島来星 亜蓮 羽子田洋子 大串三和子 佐藤禮子 田村律子 吉久智恵子
脚本:W・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 構成:河合祥一郎 演出:蜷川幸雄 美術:中越司 照明:勝柴次朗 衣裳:小峰リリー 音響:井上正弘 ヘアメイク:鎌田直樹 ファイトコレオグラファー:國井正廣 音楽:阿部海太郎 小道具デザイン:福田秋生 演出補:井上尊晶 舞台監督:白石英輔
【発売日】2009/11/14【通し券】S席=19,000円/A席=15,000円/B席=11,000円//学生B席=6,000円(劇場のみ扱い)※本公演は前編・後編あわせて1日通し公演、上演時間は約6時間の予定です(休憩除く)。※通し券に残席がある場合に限り、2010年1月下旬より前編券・後編券の発売を予定しております。※未就学児の入場はご遠慮ください。
http://www.saf.or.jp/arthall/event/event_detail/2010/p0311.html
http://shakespeare.eplus2.jp/article/127855991.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年03月13日 15:35 | TrackBack (0)