2010年03月10日
新国立劇場演劇『象』03/05-30新国立劇場小劇場
別役実さんの25歳の時に書かれた不条理劇『象』(⇒過去レビュー)を桃園会の深津篤史さんが演出。SMAPの稲垣吾郎さんと大杉漣さんが共演される豪華キャスト公演です。
上演時間は約2時間45分(途中休憩1回を含む)と予想外に長い目でしたが、その時間が必要だったのだと思います。起こっていることが不条理に見えても、人間の行動には理由がある(不条理ではない)んですよね。そして、舞台美術に驚かされました。
⇒CoRich舞台芸術!『象』
レビューは記録程度です。(2013年6月27日にアップしました)
≪あらすじ≫ 公式サイトより
入院中の「病人」をその甥である「男」が訪ねてくる。「病人」はヒロシマへの原子爆弾によるヒバクシャで街頭で裸になって背中のケロイドを見せ喝采を浴びていたが、既に病状が悪化し今は入院をしているようだ。二人の会話から「男」もヒバクシャであることが明らかになる。
男:静かに死んでしまいたいとは思いませんか?
病人:思わないね。俺はむしろ、死ぬ前に殺されたいと思っている。
男:何故?
病人:知らん。情熱的に生きたいのさ。
「病人」はまた元気になってあの町でケロイドを見せたいと願っているが、「男」は静かにそのときを待つべきだと主張する。二人の生き方の違いを主軸に据えながら、「病人の妻」、「医者」、「看護婦」など二人をとりまく様々な人々の姿から、ヒバクシャの抱える問題、それをとりまく世の中の問題が垣間見えてくる。そして遂に「男」も発病し、「病人」の隣のベットへと入院することとなる。あくまでも行動的な「病人」とは対照的に静かに死を迎えたいと願う「男」。ある雨の日、ついに「病人」はあの町へ出かけることを決意するのだが・・・。
≪ここまで≫
服が、山のように、積み上げられています。トレーナーやシャツなどの現代服です。子ども服が目に入ってギョっとしました。原爆の被害者でもあり、全人類でもあり。
稲垣吾郎さんが『象』に出演されると知った時から、いったいどんな舞台になるのか想像がつかなかったんです。やはりカラーが違うというか…。でも稲垣さんが“現代の若者”を象徴する存在に見えて、かえって1962年の『象』の世界が、今にフィットしたように感じました。深津篤史さん、恐るべし。
ここからネタバレします。
病人(大杉漣)とその妻(神野三鈴)がおにぎりの具について話すシーンで笑えました。笑った自分に驚きました。笑える会話だったなんて。
病人がやがて男(稲垣吾郎)に対して殺意をあらわすまでの時間がたっぷりとられていて、彼がなぜそのような行動を取ったのか、納得できました。
※客席には稲垣さんのファンの方々がとても多く、いわゆる劇場内のマナーを守ろうとしない人もいらっしゃって、残念でした。
新国立劇場2009/2010シーズン
出演:稲垣吾郎/奥菜恵/羽場裕一/山西惇/紀伊川淳/足立智充/阿川雄輔/神野三鈴/大杉漣
脚本:別役実 演出:深津篤史 芸術監督:鵜山仁 主催:新国立劇場
【発売日】2010/01/30 A席6,300円 B席3,150円 Z席1,500円
http://www.nntt.jac.go.jp/play/20000208_play.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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アトリエ・センターフォワード『ブルー・ウォーター 20XX火星編』03/03-10シアター風姿花伝
矢内文章さんが作・演出・出演されるアトリエ・センターフォワードの第三回公演(⇒第二回公演レビュー)。観客の年齢層の高さに驚きました。やはり新劇の劇団員さんが多数出演されてるからでしょうか。上演時間は約1時間50分。
チラシのキャッチコピー通り、いかにもB級SFな火星空間でのがっつりストレート・プレイ。小さな劇場での3000円台のお芝居なのに、美術、衣裳、ヘアメイクが凝っているのがとても嬉しい。チラシもかっこいいし。そして出演者も豪華なんですよね。実はこういう劇団(矢内さんの1人ユニット?)って珍しい気がします。
⇒CoRich舞台芸術!『ブルー・ウォーター 20XX火星編』
≪あらすじ≫
深刻な水不足となった地球では、火星への移民が奨励された。しかし火星の環境は人間が暮らすのにはあまりに過酷。人々は地球に帰る日を夢見て肉体労働(水源探し)に耐えていた。ある日、地球から世間知らずのお嬢様(中川安奈)が火星にやってきて・・・。
≪ここまで≫
社会的なテーマをふんだんに盛り込んだ火星SF。そしてダジャレありお色気ありの、オーソドックスな物語喜劇でもあります。観客に話しかけたり、客席通路を使ったり、アクティブな演出で観客を楽しませてくれます。
たまに役者さんの“お約束”な演技が気になったり、セリフで説明しすぎなんじゃないかな~と思ったりもしましたが、丁寧に書きこまれた設定もアイデアも面白かったですし、メッセージも共感できるところが多かったです。団体としてはまだ第3作目なんですよね。こういう作風の劇団を他に知らないので、脚本・演出の矢内さんの今後が気になります。
ここからネタバレします。
生命の危機に追い込まれて野獣と化す人間たちよりも、データを収集・蓄積して成長する2体のロボット(眞藤ヒロシ&佐藤麻衣子)の方が、より人間らしい理性と感情を持つようになるのが皮肉で面白いです。
ミナ(中川安奈)が地球にふりそそぐ流れ星の正体を「ロケットよ!」とあばいて終幕。つまり地球に帰ろうとしても撃ち落とされるのかな・・・。
出演:中川安奈 栗原茂(流山児☆事務所) 斉藤直樹 佐藤晴彦 五十嵐明(青年座) 椿真由美(青年座) 佐藤麻衣子(文学座) 眞藤ヒロシ 巌大介 矢内文章 アナウンスの声:深貝大輔
脚本・演出/矢内文章 演出助手/大久保遼 カトウシンスケ 美術/宇野奈津子 衣裳進行/及川千春 照明/宮野和夫 音響/上野雅 ヘアメイク/梅澤裕子 ヘアメイクアドバイザー/鎌田直樹 舞台監督/深沢亜美(るうと工房) 制作/松本恵美子 トータルアドバイザー/冨士山和夫 主催/アトリエ・センターフォワード
【発売日】2010/01/23 前売:3800円、当日4000円
プレビュー(3月3日)は前売・当日とも2500円
http://centerfw.net
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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