2010年05月17日
燐光群『ザ・パワー・オブ・イエス』05/10-23ザ・スズナリ
坂手洋二さん率いる燐光群がイギリスの劇作家デイヴィッド・ヘアーさんの新作を本邦初演。ヘアー作品を上演するのはもう3度目なんですね。
2009年9月にイギリスで初演され、この4月まで上演されていた演目が、早くも日本語版として観られるのは、劇団が作家との信頼関係を築いてこられたからだと思います。ありがとうございます。
開演前にパンフレットの用語集をよく読んでおかれると良いと思います。
⇒CoRich舞台芸術!『ザ・パワー・オブ・イエス』
イギリスの国立劇場から新作執筆依頼を受けて、劇作家のデイヴィッド・ヘアー(John Oglevee)は金融業界の人々にインタビューをしていきます。登場するのは実在の人物ばかりのドキュメンタリー演劇です。
国立劇場が「世界金融危機はなぜ起こったか、いま何が起きているのか。」(公式サイトより)を劇作家に依頼することに、まず感動。
回収見込みのない債権(サブプライム・ローン)を証券にして、小分けにして販売していたことなどの事実を、当事者の生々しい言葉で伝えてくれるので、とてもわかりやすいです。
終わったことは振り返らない、過去に学ばない、反省しない銀行家たち。井上ひさしさんの「いつまでも過去を軽んじていると、やがて私たちは未来から軽んじられることになるだろう」という言葉を、より生々しい実感を持って、受け止めることができました。※現在、新国立劇場で上演中の『東京裁判三部作』のキャッチコピーになっている言葉です。
一部の役者さんのセリフがおぼつかなくて心配になりました。ヘアー役のJohn Ogleveeさんは日本語で話してくださるのですが、早口ですべるように語尾をにごしてしまうと、意味がわからなくなるんですよね(日本語は最後が大事)。もうちょっとゆっくりめに、丁寧に話していただけたらなぁと思いました。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
「いっぱい儲けたんだから、それに見合った額の報酬があってしかるべき」というトレーダーの感覚は、言葉づらの意味だけを受け取るとなるほどねと思えるかもしれません。でも元手は自分の資金じゃないんですよね、そもそも。
「好況の後は不況、不況の後は好況がやってくる。経済は恩恵をもたらしてくれるから、損をするときは我慢をすればいい」という考えに対して、「損害をこうむるのは恩恵を受けた人じゃない、一般市民なんだ」という返答。全くそのとおりですよね。そこの部分を想像しないで、自分とお金だけの関係で片付けちゃえるから、振り返らないのかしら・・・。
いや、銀行家の方々のせいにするのが目的なのではなくて、今の資本主義経済のシステムが、もう頼れるものではないってことなんでしょうね。
≪東京、大阪、愛知≫ "The Power of Yes" by David Hare
出演:藤井びん 鴨川てんし 川中健次郎 猪熊恒和 大西孝洋 田中茂弘 John Oglevee 杉山英之 伊勢谷能宣 西川大輔 鈴木陽介 橋本浩明 中山マリ 南谷朝子 松岡洋子 樋尾麻衣子 安仁屋美峰 渡辺文香 桐畑理佳 横山展子 矢部久美子 根兵さやか
脚本:デイヴィッド・ヘアー 演出:坂手洋二 訳:常田景子 美術:島次郎 照明:竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 音響:島猛(ステージオフィス) 衣裳:宮本宣子 舞台監督:高橋淳一 演出助手:武山尚史 文芸助手:清水弥生・久保志乃ぶ・村松みさき イラスト:沢野ひとし 宣伝意匠:高橋勝也 制作:古元道広 近藤順子
【発売日】2010/03/27 全席指定 一般前売3,600円 ペア6,600円(前売・予約のみ) 当日4,000円 大学・専門学校生3,000円 高校生以下2,000円 (学生券は前売・当日共通料金 劇団予約のみ 受付で要学生証提示)
http://www.alles.or.jp/~rinkogun/index.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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ハイバイ『「ヒッキー・カンクーントルネード」の旅2010~初めて組』05/16-23アトリエヘリコプター
ハイバイは俳優としても活躍される岩井秀人さんが作・演出・出演される劇団です。『ヒッキー・カンクーントルネード』は劇団旗揚げ公演にして、再演を重ねる人気演目(過去レビュー⇒1、2、3)。
東京、神奈川、福岡の3都市ツアーで、東京では経験者組と初めて組のキャスト違いの2本立て公演となっています。上演時間は約1時間25分。
初めて組の初日を拝見しました。初演キャストのチャン・リーメイさん以外は、オーディションで約300人の中から選ばれた方々だそうです!
経験者組は早くも完売(当日券あり)。桜美林大学プルヌスホールと西鉄ホールは経験者組ですので、遠出されてもいいかも。
※劇団初の公演パンフレットをロビーで販売中(600円)。今読んでたら、なんと6度目の再演なんですね、すごいな~。
⇒岩井さんはサロンパスのCMで唐沢寿明さんと共演
⇒CoRich舞台芸術!『「ヒッキー・カンクーントルネード」の旅2010』
あらすじなどについては過去のレビュー等をご覧いただけたらと思います。
岩井さんが出演していない「ヒッキー」を初めて観たのですが、風合いは違うものの、いつもと同じものを受け取って・・・あぁこの作品は作者の手を離れて公(パブリック)のものになったんだなぁと思いました。⇒この作品で演劇をはじめてご覧になった方のツイート
出張おねえさん役のチャン・リーメイさんがパワーアップ!あかの他人の家族をかき回して楽しんでいるような、凄みのある笑顔が恐ろしいです(笑)。
トミオの妹アヤ役の浅野千鶴さんは、笑ったときはもちろん、怒って怒鳴っても可愛い方でした。こんな女性に生まれたかったな~と普通にうらやんでしまいました。
ここからネタバレします。
トミオが玄関の方の暗闇に消えるシーンの後に、お母さんが公衆電話でお父さんと話すシーンが追加されていました(東京では初お目見え)。以前のも好きですが、希望がより鮮やかに見えるラストもいいと思います。
≪東京、神奈川、福岡≫ 第4回福岡演劇フェスティバル参加作品
初めて組:篠崎大悟(ロロ) 浅野千鶴(味わい堂々) 近藤フク(ペンギンプルペイルパイルズ) 吉田亮(ハイバイ) チャン・リーメイ(Love&Light)
経験者組出演:岩井秀人(ハイバイ) 成田亜佑美 坂口辰平(ハイバイ) 平原テツ(ハイバイ) チャン・リーメイ(Love&Light)
脚本・演出:岩井秀人 照明:松本大介 衣装:mario 舞台監督:川除学(至福団) 演出助手:T-BOY 郷淳子 宣伝美術:土谷明子(citron works) 宣伝写真:岩井泉 記録写真:曳野若菜 制作:三好佐智子 坂田厚子 藤木やよい 提携:西鉄ホール(西鉄ムーブスペシャル) 主催:ハイバイ (有)quinada パンフレット編集協力:藤原ちから パンフレットレイアウト:林弥生(演劇サムライナンバーナイン)
【休演日】5月20日【発売日】2010/04/03 自由席(整理番号付) 前売:3,000円 当日:3,300円
http://hi-bye.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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