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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2011年02月13日

Bunkamura/Quaras『ミシマダブル「サド侯爵夫人」』02/02-03/02 Bunkamuraシアターコクーン

 『わが友ヒットラー』に続いて『サド侯爵夫人』(過去レビュー⇒)を拝見。面白かった~~~!上演時間は2回の休憩を含み、カーテンコール込みで約3時間30分弱。

 禁断の、背徳の、という修飾がぴったりの、なまめかしくて暴力的な、それでいて美しい言葉の洪水。『サド侯爵夫人』はストーリーも面白いんですよね~。あらすじがわかっているはずなのにハラハラしちゃいました。豪華絢爛な衣裳・かつらにうっとり!

 ロビーでは三島由紀夫関連書籍などが多数販売されていました。両戯曲を収録した文庫本↓もあり。私は以前にザ・スズナリで購入。ありがたいです。

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)
三島 由紀夫
新潮社
売り上げランキング: 88017

 ⇒CoRich舞台芸術!『サド侯爵夫人』『わが友ヒットラー』

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 18世紀、ブルボン王朝末期燗熱の都パリ―。サド侯爵夫人・ルネ(東山紀之)は、残虐かつ淫靡な醜聞にまみれる夫を庇い、愛し続ける。〝悪徳の怪物〟に〝貞淑の怪物〟として身を捧げる彼女に対し、世間体を重じる母・モントルイユ夫人(平幹二朗)は様々な手を尽くし別れを迫るが、夫が獄につながれてもなお彼女の決意は揺らがず、対立は続いた。やがてフランス革命が勃発。混乱の中、老境に差しかかったルネのもとに釈放されたサド侯爵が現れるのだが・・・。
 ≪ここまで≫

 華麗なドレスを身にまとった淑女が次々に登場し、話す内容がとても卑猥・・・というのがまず面白いんですよね。露骨に嫌な顔をしながら、彼女たちはみんな興味津々(笑)。観客もまた然り、でしょう。
 ドレスがちょっと大げさなんじゃないかと思うぐらい豪華なのがイイ!たとえば第一幕のルネのスカートの刺繍(?)が素晴らしかった~。場面ごとに着替えて出て来てくださって、人物の性格の違い、時の流れも表されていて嬉しい限り。

 フランス革命が起こって社会構造がひっくり返ってしまうことで、淑女たちの地位や生活も否応なしに激変します。価値観が逆転してタブーとされていることがタブーでなくなったり。牢獄にいる“怪物・サド侯爵”の近くにいる女性たちの気持ちの変化が、社会の変化と合わせて描かれます。

 東山紀之さんは“貞淑”で、夫に献身的に尽くすサド侯爵夫人ルネ役。ギュっとひきしまった体で姿勢をビシッと正して、SM行為について語ります。淫靡なこととは全く縁がなさそうなのに!『わが友ヒットラー』では少々もの足りなさを感じた東山さんですが、『サド侯爵夫』ではギャップが大きな魅力でした。
 生田斗真さんはルネの妹アンヌ役。とても可愛らしくって男性だということを忘れるほど。衣裳の色使いやデザインが、勝気で要領の良い性格にも合っていました。

 悪徳を体現するサン・フォン夫人役の木場勝己さんよりも、世間体ばかり気にするモントルイユ夫人役の平幹二朗さんの方が、ずっと悪徳が表に出てたような(笑)。木場さんはコミカルな面を強調する方向の役作りだったように思います。平さん、素晴らしかったです・・・!のけぞるほど笑えたりも!

 ここからネタバレします。

 搬入口と壁、赤いカーテンの演出は同じでした。『わが友ヒットラー』とまさに“対(つい)”なんですね。装置も演出も一緒なのはちょっと寂しい気もしましたが、衣裳が豪華なので不満はなし。
 西洋の歌曲(オペラなど?)に日本の音楽(能や歌舞伎のお囃子など?)を重ねて流していました。和と洋が正面からぶつかるように混ざります。セリフのきりのいいところで拍子木の音が鳴り、リズムを作っていました。ちょっと回数が多すぎる気もしましたが、3時間半の会話劇を一般の観客が飽きずに観られるための工夫かもしれません。

 第2幕のルネ対モントルイユの場面の、平さんの長いセリフに聴き惚れ、見とれました。
 第3幕はフランス革命が起こって9ヶ月後。モントレイユ夫人の言動が節操無く変わっているのが愚かしくて滑稽です。
 とうとうサドが解放されるというのに、ルネは出家を決意します。善人が不幸になってくサドの小説を読んだルネは、その小説の薄幸の主人公ジュスティーヌは自分であり、サドは牢獄にいながら自分を、この世界を、小説の中に閉じ込めたと言います。
 ルネのセリフを通じて、文学という人間の生み出した芸術の素晴らしさをあらわしているようでした。東山さんの堂々とした長いセリフを聴きながら、作家・三島由紀夫の小説の(二次元の)世界を味わえました。

ミシマダブル 三島×MISHIMA vs 蜷川
出演:東山紀之 生田斗真 木場勝己 大石継太 岡田正 平幹二朗
脚本:三島由紀夫 演出:蜷川幸雄 美術:中越司 照明:服部基 音響:井上正弘 衣裳:小峰リリー ヘアメイク:武田千巻 音楽/編曲:かみむら周平 所作指導:花柳寿楽 舞台監督:濱野貴彦 演出補:井上尊晶 演出助手:大河内直子 藤田俊太郎 劇場舞台技術:野中昭二 票券:岡野昌恵 制作助手:稲村宗子 制作:大宮夏子(Bunkamura) 宇津木信之介(Bunkamura) 麻田幹太(Quaras) プロデューサー:加藤真規(Bunkamura) 松井珠美(Bunkamura) 松野博文(Quaras) 制作協力:ジャニーズ事務所 企画・製作・東京公演主催:Bunkamura/Quaras
【休演日】2/7,14,21,28【発売日】2010/11/27 S¥11,000 A¥9,000 コクーンシート¥6,000(税込)
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_11_mishima.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年02月13日 17:24 | TrackBack (0)