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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年02月04日

むーとぴあ『く・ち・づ・け』02/04-10駅前劇場

 女優の武藤晃子さんがプロデュースし出演もされる“むーとぴあ”の第3回公演です。私は初見。浅野雅弘さんが出演されるのと、わかぎゑふさんの作・演出作品が久しぶりに観たいなぁと思ったので伺いました。

 舞台は昭和5年の日本の、信州の小さな村。18歳の少女が主人公のラブコメです。衣裳の着物が嬉しい。上演時間は約1時間40分弱。

 出演者の近江谷太朗さんより「平日、特に来週の火曜日が空いてるのでぜひ」とのことでした(2度目のカーテンコールにて)。「感想をブログに書いてください、つぶやいてください」と熱心におっしゃってたので書いてみました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『く・ち・づ・け

 ≪あらすじ≫
 本家の跡継ぎとなる一人娘の繭子(武藤晃子)には生まれた時から婚約者がいる。隣に住む従兄の健太郎(近江谷太朗)だ。彼は分家の長男で職業軍人。次男の健治郎(荒木健太朗)は音楽学校に通う変わり者。長女の華江(仲坪由紀子)は教師をしており、繭子とは昔からの親友だ。
 健太郎と正式なお見合いをすることになり、幼いころに母親を亡くした繭子は、女中のトメ(種子)から“結婚したらしなければいけないこと”を学ぶが・・・。
 ≪ここまで≫

 トメ役の種子さんがめちゃくちゃ面白かったです。医師役の浅野雅博さんと2人っきりの場面に爆笑。

 ここからネタバレします。

 結婚したら旦那様と「クチスイ(キス)をしなければならない」という衝撃の事実を知らされた繭子は、ショックを受けて寝込みます。やがて健太郎との結婚の覚悟はしたものの、生涯最初のくちづけはあこがれだった健治郎としたいと華江に告白。華江に健治郎のフルートを盗んできてもらいますが・・・。

 色んなドタバタは楽しかったですが、マイクのアナウンスで進行するのはちょっと違和感。せっかく入り込めても、マイクの声で気持ちが冷めてしまうんですよね。好みの問題でしょうけど。
 中国に出兵することになった健太郎は繭子のために婚約を破談。でも終戦後に無事に帰って来てハッピーエンド。戦後をもっと描いて欲しかったな~。健太郎が去って帰ってくるまでが、あっけなかったです。

 カーテンコールで武藤さんが「(むーとぴあ)が3回目を迎えられたのは、何よりお客様のおかげです!」と力強くおっしゃってましたけど、観客はチケットを買って観劇しただけですから、そんなに「お客様は神様です」みたいな感じでへりくだらなくてもいいんじゃないかな~と思いました。
 生写真とサイン入りの色紙(500円)とパンフレット(1000円)を荒木さんが可愛らしく宣伝。終演後は役者さんが売り場に立って物販されていました。懐かしい感じがしました。ずいぶんこういう公演にはごぶさたでしたね。

【第21回下北沢演劇祭参加作品】
出演(五十音順):浅野雅博(文学座) 荒木健太朗(StudioLife) 近江谷太朗 種子 仲坪由紀子 藤井びん 藤尾姦太郎(犬と串) 武藤晃子
脚本・演出:わかぎゑふ 演出助手:斎藤栄作 照明:泉次雄(rise) 音響:小笠原康雅(OFFICE my on) 衣裳:福田千亜紀 衣裳・小道具協力:玉造小劇店 舞台監督:筒井昭善  宣伝写真・宣伝美術:垣内敏秀 ヘアメイク:茂木美緒・杉浦なおこ  票券:こばちえ 制作:橋本香苗 プロデューサー:武藤晃子 企画・製作:むーとぴあ
【発売日】2011/01/08 全席指定 4,500円(前売・当日共)※受付は開演の1時間前、開場は開演の30分前からです。小学生未満のお子様はご入場はご遠慮ください。 ※劇場の構造上、車椅子でのご入場はできません。※開演後はお席にご案内できない時間帯、または指定のお席を変更させていただく場合がございます。
http://www.mu-topia.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:08 | TrackBack

森崎事務所・M&O playsプロデュース『国民傘―避けえぬ戦争をめぐる3つの物語』01/21-02/13ザ・スズナリ

 岩松了さんの新作です。出演者は全員オーディションで選ばれた方々(⇒告知エントリー)。上演時間は約2時間25分(途中休憩10分を含む)。

 初日の帰り道に思わずこんなツイートをしちゃいました。少々興奮気味(笑)。“全然わからないこと”が刺激的なんですよね。
 D-BOYSの方々が2人出演されていて、客席にはファンの女性が多かったような。足立理さんがすっごく良かったですね~。

 ⇒CoRich舞台芸術!『国民傘

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより。
小さな3本の物語から、やがて大きな「戦争」が見えてくる-。
 岩松了が書き下ろした3本の短編を、オムニバス形式で上演する試験的・冒険的・刺激的な公演。3本の作品には共通して「戦争」の背景がある。大きな社会的背景の中で、巡る因果に翻弄される小さな存在である個人の事情と、大きな運命の流れを描く岩松渾身の新作は、オーディションにより選ばれたジャンルにとらわれない精鋭たちと、ザ・スズナリの緊密な空間の中で繰り広げられる。2011年のスタートを飾る話題作。
 ≪ここまで≫

 全員がオーディションで選ばれたということで、演技の種類や質感などはバラバラでした。上手手前には生演奏をする
 高くそびえる壁がパタパタと畳まれたり広げられたりして場面転換します。どの部屋も遮断されている息苦しさがあって、人生の行き止まりのよう。でも全然違う空間にすぐに変化しますから、無数の壁があり、でも通り抜けられたりする迷宮のようでした。

 おおまかに分けると3つの物語があり、どんどん関わって交わっていきます。テーマは「戦争」とのことで、兵士が登場するので具体的に「戦争」の姿は目に見えています。そんな「戦争」自体と、私たちが生きる日常にある「戦争」とか同列で存在したような。「戦争」の種は意外に普段から人間が無意識に、いとも簡単にまき散らしていて、その被害もまた目に見える形で日常生活の中にあらわれているのだろうなと思いました。

 映画撮影に参加する兵士役の足立理さん。発想・想像する力に柔らかさがある方なのではないでしょうか。瞬発力もあって素直で、(私には)支離滅裂な(ように見える)言動や行動、しぐさを、次々と軽快にあらわしていかれます。舞台の上にそのまま自然に居ることもしていらしたような。
 石住昭彦さんは演劇集団円の翻訳戯曲上演で拝見し、かっこいいな~と思っていたのですが、今作ではキュート!石住さんも「わかる」「わからない」を意識せずに、素直に演技をされていたように思います。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 母(長田奈麻)と娘(早織)。長男は戦場に行ってしまって不在。2人は“国民傘”の置き場を勝手に変えたため投獄される。看守(三浦誠己)が読む本には印刷所の話が書かれていた。
 小さな印刷所で働く兄弟(石住昭彦、渋川清彦)と従業員(三浦俊輔)、使用人(浅野かや)。弟が撮影する映画に兄は出演したことがある。“国民傘”という傘を全国に置くという法律を作った暴君の役だった。戦地から戻った若者(三上真史)が、印刷所で働かせてくれと言ってきた。従業員には美しい愛人(片山瞳)がいる。
 中隊長を探している兵士たち(佐藤銀平、足立理、太賀)。探している、と言っているが実は殺害して埋めてしまったようだ。

 語られた言葉から意味や感情を受け取ろうとして、自分の頭(心)で解釈しようとしても、そんな余裕は与えてくれません。自分がいた物語から脱して違う世界に行く人物もいますし、「台本があるからその動きをしてるんでしょう(セリフを言ってるんでしょう)」と言ってしまう人もいて、映画を撮る場面では劇中劇もあります。演劇の内と外も自由に行き来されるので、振り回されっぱなし。物語の結末まで翻弄されながら誘導されますが、最後もまた手に確かなものをつかめることはなく。

出演:足立理 石住昭彦 佐藤銀平 渋川清彦 太賀 三浦俊輔 三浦誠己 三上真史 浅野かや 長田奈麻 片山瞳 早織(五十音順)
脚本・演出:岩松了
【発売日】2010/11/20 前売り\4,500/当日\4,800(全席指定・税込み) ベンチ・椅子共通
http://www.morisk.com/plays/umbrella/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 16:18 | TrackBack

真心一座身も心も『流れ姉妹たつことかつこ ~エンド・オブ・バイオレンス~』01/27-02/06本多劇場

 “小劇場の大衆演劇”『流れ姉妹』シリーズの最終話です(過去レビュー⇒)。千葉雅子さんの脚本を河原雅彦さんが演出し、お2人とも出演されます。開演してすぐに前3作のあらすじを動画とともに説明してくださいますので、初めての方でもOK。上演時間は約2時間30分弱、休憩なしですが、長さはそれほど感じなかったです。

 当日パンフレットは豪華版で1500円。Tシャツやてぬぐいなども販売。大阪公演の後に前進座劇場で東京凱旋公演があります。期間は2月17日~22日。

 ⇒YOMIURI ONLINE「古田新太、池田成志を迎え“真心一座”最終章」(取材・文:武田吏都)
 ⇒CoRich舞台芸術!『流れ姉妹 たつことかつこ ~エンド・オブ・バイオレンス~

 前回までのあらすじはこちらに詳しいです。

 古田新太さん、池田成志さんというビッグなゲストが、あれやこれや(笑)ぶっぱなしてくださいます。もー盛りだくさんで「ほんっとバカバカバカーーーっ(笑)!」と心の中で叫びがらの観劇でした(笑)。

 最初にアナウンスで見どころを解説してくださいます。お約束の場面がやってくるとお馴染みの音楽がかかり、観客も出演者と一緒に準備万端。安心して乗っかっていけます。“凌辱”の場面がやっぱり面白いですね~。“わかっちゃいるけど笑っちゃう”空気を作るのは簡単なことではないと思うのですが、最初からスイッチオンできました。

 好戦的で阿修羅のような姉たつこ(千葉雅子)は次々と恋人(ラバー)に出会い愛されて、菩薩のような慈愛の心を持つ妹かつこ(村岡希美)はなぜか(レイパーに)凌辱されてしまいます。舞台で行われるのは基本的には笑えることばかりですが、理不尽なことが起こる度に「それが世間というものだよなぁ」としみじみ達観したような心地にもなります。

 ここからネタバレします。

 幕開けの説明はナイロン100℃の廣川三憲さん。素晴らしい!一気に気持ちが盛り上がりました。
 かつこの凌辱シーンは滝のある癒やしスポットにて。植村春樹(古田新太:ゲストレイパー)たちに襲われるところで滝の水にかつてのレイパーたちの顔が映写されます。まさに最終章(笑)。

 たつこ(千葉雅子)とかつこ(村岡希美)に実の兄がいて、それが講談師(池田成志:ゲストラバー)であり、元やくざの保護観察官(河原雅彦)の正体だった、という結末。母からの虐待が長男(=講談師)と長女たつこを苦しめ、2人はいつか母親に復讐を果たすと固く約束していたのでした。何も知らずに育った次女かつこと、たつこの間に深い溝があることに納得。

 最後の場面で妹かつこは赤ちゃんを育てていました。谷村の子供かと思ったらそうではなく・・・となると植村の子供なのでしょうか?かつこを一途に追い続けた谷村と幸せになってハッピーエンドかと思わせておいて、そうは問屋がおろさないのがいいですね。
 姉たつこは僧侶の姿となって植村とともに旅に出ていました。なんでやねん(笑)。母親は植村に殺されちゃったのよね?そこはちょっとあっけなさすぎたかな~。

≪東京、大阪、東京、新潟≫
出演:古田新太 池田成志 千葉雅子 村岡希美 坂田聡 河原雅彦 小林顕作 政岡泰志 伊達暁 信川清順
脚本:千葉雅子 演出:河原雅彦 美術:片平圭衣子 照明:倉本泰史 音響:大木裕介 衣裳:木村猛志 映像:ムーチョ村松 殺陣指導:清水大輔  ヘアメイク:武井優子 小道具:清水克晋 演出助手:矢本翼子 舞台監督:津江健太+至福団 宣伝美術:CoaGraphics 宣伝写真:引地信彦 宣伝ヘアメイク:川端富生 WEB製作:今城加奈子 MONOLITH 広報:吉田プロモーション 制作:佐々木康志 重田知子  ラインプロデューサー:牛山晃一 プロデューサー:伊藤達哉 企画:真心一座身も心も 製作:ゴーチ・ブラザーズ
【休演日】1/31【発売日】2010/12/18 前売7,000円(全席指定・税込)
http://mimokoko.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 15:15 | TrackBack

【ワークショップ・オーディション】エビビモpro.「6月公演『さらばユビキタス』出演者募集」※2/28〆切(メールのみ)

 オリジナルミュージカルを上演する若手劇団エビビモpro.が、6月の王子小劇場での新作公演の出演者募集ワークショップ・オーディションを開催します。過去レビュー⇒、2

 脚本・演出は矢ヶ部哲さん。自身で作曲・演奏・出演もされるマルチな方です。昨日のトークで「体力に自身のある方、お待ちしています!」とおっしゃっていました。詳細は公式サイトでどうぞ。

 ●エビビモpro.『さらばユビキタス』
  会場:王子小劇場
  公演期間:2011年6月8日~12日
 ・ワークショップ・オーディション
  年齢制限:18歳以上(高校生不可)の男女10名程度
  費用:2,000円(ワークショップのみの参加も可)
  〆切:2011年2月28日(月) 24:00 ※メールのみ

■エビビモpro.第7回公演『さらばユビキタス』出演者募集 ※公式サイトより

【ワークショップ日程】
日程A :2011年3月 17日(木)・19日(土)
日程B :2011年3月 18日(金)・20日(日)
※必ず日程A・日程Bのどちらかを選択してください。
 (1日だけの参加等の場合はご相談ください。)

時間帯は全日程15時~20時を予定しております。
応募者多数の場合は選考させていただきます。
ワークショップのみの参加をご希望の方も歓迎します!お気軽にご相談ください。

費用:2,000円
会場:都内某所

【オーディション募集要項】
・18歳以上(高校生不可)の男女10名程度
・2011年4月半ばから始まる稽古に参加することが可能で
 2011年6月8日~12日に行われる公演に出演が出来る方
※公演参加にあたりチケットノルマを設定する場合がございます。予めご了承ください。

【応募方法】
①氏名(ふりがな)  ②年齢  ③性別
④連絡先の電話番号  ⑤演劇活動の有無と活動履歴
⑥希望のワークショップ日程
 (「A」または「B」、もしくは「両方で可」とお答えください)
以上を記載し、下記のe-mailアドレスまでメールの送信をお願いします。

【応募〆切】
2011年2月28日(月) 24:00迄
連絡先e-mail ⇒ ebibimo(アットマーク)live.jp
ホームページ ⇒ http://www.ebipro.com/

◎また、エビビモpro.ではお手伝いをしてくれる方も募集しています!お気軽にご相談ください!

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 11:34 | TrackBack

万能グローブ ガラパゴスダイナモス『ひとんちで騒ぐな』02/03-06こまばアゴラ劇場

 福岡の若手人気劇団である万能グローブ ガラパゴスダイナモスが、こまばアゴラ劇場の冬のサミット2010参加作品として、初東京公演を行っています。
 ⇒毎日.jp『「舞台芸術祭「サミット」:東京初公演の「ガラパ」に注目

 作・演出(出演も)の川口大樹さんとは何度かお会いして、出演作も拝見したことがありましたが(関連エントリー⇒)、劇団公演は初見。

 とっても面白かったです!!シチュエーション・コメディーがそれほど好きではない私ですが、何度も笑わせていただきました。今後の東京公演の予定はないそうですが、そういわず、ぜひまた来て欲しいです。上演時間は約2時間弱。

 なんと開幕前に全ステージ完売・・・。当日券はわずかですが発行されるそうです。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ひとんちで騒ぐな

 ≪あらすじ≫ 劇場公式サイトより
 今作は、文字通り、「家」が舞台のワンシチュエーションコメディです。
 一軒家の思いのほか複雑な構造、例えばあの部屋とこの部屋が繋がっていたり、意外なところに死角があったり・・・というような「家の構造」に重点を置いたホームコメディじゃない、家コメディ。
 家の持つ「迷路的要素」とそこから生まれるすれ違い、さらに人間関係のややこしさを盛り込んで、臨場感ある笑いに溢れた作品となっております。
 ≪ここまで≫ 

 まず2階建ての家が具象美術だったことが嬉しいですね。無造作に散らかったカラフルな小道具たちにもちゃんと仕掛けがありました。ドア、ふすま、台所、2階、柱、こたつ、ロフトなど隠れられる場所(死角)が無数にあり、出くわすはずの人々がすれ違っていきます。バッタリ会うのが面白いんですよね~。
 オチが2重、3重、多いところではそれ以上に用意されていて、最初の方で笑えなくても必ずいつか可笑しさを拾えるような手厚い脚本でした。「それはちょっと無理があるよねぇ(笑)」と思う瞬間もないわけではないのですが、そんな破綻も愛せて、一緒に楽しめます。観客の気持ちが盛り上がっていける空気を、緻密に組み上げていってくださいました。

 それにしても完売ってすごいですよねー・・・。3年前の人気作での満を時してのアゴラ・サミット参加に加え、トークゲストがとても豪華。準備が行き届いています。私はチラシのデザインがとてもいいなと思ってました。東京は公演数が多く、劇場でもらうチラシ束も膨大なので、チラシの広告力は若干小さくなっているのではないかと言われていますが、やはり威力は大きいのだなと感じました。

 ここからネタバレします。

 テレビドラマのバイトADが東京から故郷に戻り、留守の実家を勝手に使ってドラマ撮影をしようとします。留守のはずなのに住人がいたり、トイレを借りにきた他人がのさばったりするのは「なるほどね」と納得の展開なのですが、実はADの実家でさえもなかった、となるのがすごい(笑)。

 招かれざる客人側(AD、町長立候補チーム)だけでなく、住人側にも問題を抱えさせている設定がいいですね。住人女性が二股をかけており、恋人の男性2人が鉢合わせする絶体絶命の危機は、スリリングですごく滑稽。女性が2人を直接紹介せざるを得なくなり、同時に両方に「お兄ちゃん」「彼氏」と言って切り抜けたのは見事でした。

 ヘッドフォンで音楽を聴いているから物音が聞こえない、というのがまず良かったですね~。ふすまを開けて、閉めて、開けて・・・の繰り返しはわかっていても笑えるし、最後は意外性でも笑わせます。演技でしっかり笑いを成就させるのが素晴らしいです。

 東京で役者になって成功したと嘘をつくADと、町長に立候補しようとしているADの幼なじみとのドラマも1つの軸になっていました。
 「かっこ悪いことをかっこ悪いと思ってるのが、一番かっこ悪いんだよ」という名言もいただきました(笑)。

 ≪終演後のトーク≫
 出演(向かって左から):川口大樹 椎木樹人 矢ヶ部哲(エビビモpro.) 小山田壮平(andymori)

 高校時代の演劇部の仲間が再会。ガラパでは数年前からandymoriの楽曲を劇中で使用されているそうです。

第11回公演 冬のサミット2010参加作品
出演:阿部周平 椎木樹人 多田香織 どん太郎 松田裕太郎 松野尾亮 横山祐香里 川口大樹
脚本・演出:川口大樹 舞台監督:森田正憲(株式会社FGS) 演出助手:田中基康 舞台装置:中島信和(兄弟船) 舞台美術:藤紗希江 音響:大谷正幸(有限会社九州音響システム) 音響操作:辻村泰平 照明:太田勝之(有限会社SAM) 照明操作:竹内元一 映像:萱野孝幸 小道具:松田裕太郎 衣装:石山龍太郎 メイク:多田香織 宣伝美術:中村ヤスオ(WELLS FACTORY) 制作:橋本理沙 企画制作:万能グローブ ガラパゴスダイナモス/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
≪トークゲスト≫3日(木)19:30 小山田壮平(andymori)& 矢ヶ部哲(エビビモpro.)/4日(金)19:30 中島かずき(劇団☆新感線)/5日(土)14:00 徳尾浩司・篠崎友・堀田尋史(とくお組)/5日(土)19:30 土田英生(MONO)/6日(日)14:00 上田誠(ヨーロッパ企画)
【発売日】2010/12/01 一般前売2500円 一般当日2800円 東京初上陸記念、お得な2つのガラパ割!ガラパ割 前売2300円・ガラパ割 当日2500円:ガラパメンバーの平均年齢より若い「25歳以下のお客様」か、ガラパと同じ「九州出身のお客様」を特別価格でご案内します。年齢のわかるものか、九州出身だと主張できる何か(学校の卒業証書、SUGOCA、うまかっちゃん等々)をご持参ください!
http://www.galapagos-dynamos.com/index.html
http://www.agora-summit.com/2010w/lineup/bannoglobe.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 11:21 | TrackBack

ゴジゲン『神社の奥のモンチャン』02/02-06座・高円寺1

 松居大悟さんが作・演出・出演される劇団ゴジゲンの初の再演公演は、演劇村フェスティバル参加作品。上演時間は約2時間弱。

 ゴジゲンは松居さんと俳優の目次立樹さんの2人ユニットなので、公演ごとに客演の役者さんを呼ぶプロデュース形式を取られています。演技の技術のばらつきが気になっちゃいましたね。座・高円寺1はかなり広い空間なので手ごわかったのではないかと思います。

 ⇒CoRich舞台芸術!『神社の奥のモンチャン

 ≪作品紹介≫ 公式サイトより
 モンチャンは鬼だ。
 恐ろしい顔。残虐な振舞い。真夜中の叫び声。
 奴は神社に潜み、毎晩、村人を喰らっている。
 村の誰もが鬼に怯え、いつか退治されることを願っていた。
 そんなモンチャンは毎晩叫ぶように、ギャグの練習をしていた。
 本当は、ちょっとでも、笑ってほしいだけだった。
 ≪ここまで≫  

 鬼や着物を着た村人など、いわゆる昔話に出てくるような人物が登場するのですが、セリフには現代日本の若者言葉もまざっているのが軽快。ギャグも楽しいです。殺陣は派手な音楽をかけてダンスにしちゃってもいいんじゃないかな~と思いました。
 優しさやナイーブさは受け取れましたが、まずは厳しい日常生活や体に痛みを感じるほどの悲しみを描いてこそ、じゃないでしょうか。人の出入りなどに必然性を感じられないところが散見されました。

 鬼役の目次立樹さんのがんばりに切実さが感じられて良かったです。臭いにおいがする村人役の古河耕史さんとからむ場面は臨場感がありました。

 ここからネタバレします。

 森の中で道に迷って神社にたどりついた若者たち(大窪人衛ら)が、神社にまつわる話をしはじめます。神社の壁が下手側からぐるりと上手側に開いて、神社の外側から内側へと場面転換したのは、動きがあって面白かったです。
 フェス前作の『斷食』でも三方囲みにしていましたから、舞台の横幅をそのまま広く使うのはハードルが高かったのかも。

 童話「泣いた赤鬼」がベースになっているのでしょうね。選曲は好みだな~と思いましたが、内容にマッチしすぎな気もしました。 

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演(向かって左から):松居大悟 篠原友希子 大村学 古河耕史

第10回公演 座・高円寺 冬の劇場24 演劇村フェスティバル参加作品
出演:大窪人衛(イキウメ)、大村学(劇団プレステージ)、篠原友希子、園田玲欧奈(劇団プレステージ)、高松呼志響、田中美希恵(贅沢な妥協策)、土田祐太、富田麻帆、古河耕史、松居大悟、目次立樹(五十音順)
脚本・演出:松居大悟 舞台美術 / 片平圭衣子 照明 / 伊藤 孝(ART CORE) 照明操作 / 上原皓介 音響 / 田上篤志(atSound) 音楽 / 森 優太 映像 / 大見康裕 衣裳 / 本間圭一 横田真理 演出助手 / 久保大輔 演出補佐 / 青木直也 飯田紘子 演出部 / 秋山拓弥 舞台監督 / 上嶋倫子 川除 学+至福団 宣伝美術 / 今城加奈子 宣伝写真 / 松本のりこ WEB / 飯塚美江 後輩 / 橋爪知博 制作 / 武藤香織 半田桃子 制作助手 / 高橋慶一朗 大國妃南子 前田喜郎 三輪 塁 プロデューサー / 北川隆来 提携 / 座・高円寺/NPO法人劇場創造ネットワーク  後援 / 杉並区 制作協力 / ヴィレッヂ 企画・製作 / ゴジゲン
【発売日】2010/12/11 前売・当日3500円 学割2500円(要学生証提示)
http://www.5-jigen.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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