2012年08月11日
【写真レポート】東京芸術劇場「リニューアル・オープン記者発表会・内覧会」08/09東京芸術劇場
野田さんは稽古中で映像登壇
池袋の東京芸術劇場が1年半の大規模改修を経て、来たる9月1日(土)よりリニューアル・オープンします。「リニューアル・オープン記者発表会・内覧会」にてお話を伺って参りました。
2009年に野田秀樹芸術監督が就任して以来(関連エントリー⇒1、2、3、4、5)、創造発信型の公共劇場として話題作の上演や斬新な企画を実施してきた同劇場が、ハード面からも新しく生まれ変わります。⇒facebookページも開設
劇場全体が統一感のあるシックなゆとり空間になっていました!写真とともに、リニューアルして素敵に変身したポイントをご紹介いたします。
【9月1日開幕】ジャンク・オペラ『ショックヘッド・ピーター ~よいこのえほん~』
【9月1日開幕】TACT/FESTIVAL 2012・劇団コープス『ひつじ』
【9月2日開幕】東京芸術劇場リニューアル記念『東京福袋』
【9月5日開幕】NODA・MAP『エッグ』※追加席販売 2012年8月19日(日)10時~
■エントランス
まずは劇場の顔であるエントランス。以前までは開けっ放しになっていた入口に、ガラスの扉がついていました。劇場という文化施設の中に入った実感と安心感が得られて、「お芝居を観に来たぞ~!」と高揚する気持ちも早いうちから盛り上がりそう!
入ってすぐ右側にボックスオフィスを見つけました。写真↓左側の丸い建物です。チケットを買いやすいし、待ち合わせもしやすそうですね。
★イタリアンレストランとベルギービールのお店が新規テナントに。23時まで営業。
★郵便局ができるそうです。記念切手が発行されます。
★小さなお子様がいるご家庭に朗報!保育士が常駐するキッズルームができます。
※生後4ヶ月から小学校入学前のお子さま(定員あり)。
■巨大なエスカレーターを壁際に移設
【改修前】空間中央に青い巨大なエスカレーターが鎮座していました。
【改修後】青いエスカレーターがなくなり、新しいエスカレーターはボックスオフィスの右側から壁に沿って2段階に分かれています。神奈川芸術劇場KAATのアトリウムにちょっと似てますね。高所恐怖症気味の私でも乗れました。
■プレイハウス(元・中劇場 834席、車いす7席、立ち見90席)
ボックスオフィス左手のエスカレーターで上がると、プレイハウスのエントランスがあります。落ちついた茶系色で統一され、ロビーもシックな印象。
演劇専用ホールとしての音響により気を配り、より見やすい座席配置に。新しいイスの座り心地はとても良かったです。席番号が見やすい! ★女性用トイレが増設されたそうです!
劇場内の壁は煉瓦の隙間に打ちっぱなしのコンクリートが覗く独特のデザインです。
舞台の両袖には障害物が何もありません。舞台って見えないところが広いんですよね。
楽屋が広い!美しい!ユニットバスがついてる部屋がある!ビジネスホテルみたい…。
畳の部屋も!
■ロワー広場
ボックスオフィス左手のエスカレーターを降りると、オレンジ系の茶色に塗られた壁と床が広がります。エスカレーター正面にあった噴水がなくなりました!
床の色がそのままシアターイースト、シアターウエスト内のロビーの床へも続いています。
カナダからやってくる大人気の『ひつじ』は、今年もロワー広場で“放牧”されますよ~!入場無料です。お子様とぜひ!
※『ショックヘッド・ピーター』開演前に観られます。9月3日(月)休演。
■シアターイースト(元・小ホール1 可動式272~324席)
以前はこんな空間でした。ステージの機構が独特だったんですね。
改修後、客席の段差が高くなってます!天井が低い印象もなぜか解消されていました。
イスに手すりがあります。かなり見やすくなって快適!
楽屋(舞台奥)と舞台の床の高さが同レベルになったことで、表現の幅が広がるそうです。作り手の方は一度内覧されるといいですね。
■シアターウエスト(元・小ホール2 可動式195~257席)
以前は木製のプロセニアムの枠が気になる劇場でした。段差がない席が多くて見づらかったんですよね。
そして今はすっきり変身。前方座席にはこれまでと同様に段差がありませんが、上下(かみしも)の数列が舞台に向かって斜めに配置されているので、視界は広がりました。
お隣りのシアターウエストとお揃いのイスで、こちらも快適。
シアターイーストもシアターウエストも、舞台裏および楽屋が広いですね~。贅沢です。
■コンサートホール(元・大ホール 1999席)
私は入ったことのなかった音楽用ホールです。エントランスのドーム型の天井画はそのまま残し、間接照明などで統一感のある印象に。
パイプオルガンが有名なんですよね。ステージの幅を客席方向に増設して、観客が演奏者をより親密に感じられる距離感になったそうです。
開場時刻を開演30分前から1時間前に繰り上がり、劇場内でよりゆったりと過ごせるようになります。バー・ラウンジもあってロビーも広いですから、いいムードの社交の場になりそう。
■ボックスオフィスの屋上は可愛らしい涙型のスペース
コンサートホールの高さからから眺めた景色です。ガラス窓の下にベージュの床、茶色が効いていて、いい景色。
ボックスオフィスの屋上になんて、全く用はないのに、なぜか上りたくなってしまう(笑)。高いところにいるとなぜか勝手に気分がアガってしまう(笑)。ロワー広場、アトリウム、そしてこの高さがあって丸いスペースを、アーティストが面白く使ってくれるんじゃないでしょうか!
【感想】
築20年以上の大きな施設を改修するにあたり、建築設計の担当者が「考え方を変えることで、イメージを変える」とおっしゃっていました。テーマは「アトリウムのあり方・暖かみのある色彩・滞在したくなる空間」。劇場エントランスを閉じたこと、ボックスオフィスをすぐ目に入る場所にしたことなど、入った瞬間にコンセプトがはっきり伝わってきました。
もとからあるものの良い部分を残し、悪い部分をなくして、新しく良いものを加える。そして来館者に「わ!変わった!!」という印象を与える。そのためには、「どんな施設にしたいか」という根本の考えを変えることから始まるんですね。保育士が常駐するキッズルームができたことなどからも、より幅広い客層に対して、劇場が窓を開いてくれているように思います。
「劇場法にある“地域の広場”“世界への窓”となることを目指し運営していく」と劇場副館長がおっしゃっていました。国内公共ホールと連携したツアーや、海外の作品の招聘、次世代の人材育成などにも力を入れて行くそうです。今後のラインアップが楽しみですね。私自身としては、1人でではなく、家族や友人と訪れる場にできればいいなと思います。
撮影:mao
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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ロロ『父母姉僕弟君』08/05-14王子小劇場
三浦直之さんが作・演出される劇団ロロの新作は、佐藤佐吉演劇祭2012参加作品。上演時間は約2時間。8月13日(月)14:00に追加公演があります。
ロロは来月の東京芸術劇場リニューアル記念『東京福袋』の9月6日(木)19:00に出場。次回は10月に京都のKYOTO EXPERIMENT 2012・フリンジ"PLAYdom↗"に参加されます。東京の小劇場劇団が首都圏以外の地域でツアー公演を行うことが増えていますね。
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≪あらすじ≫
妻とドライブ。彼女はもうすぐ死ぬんだ。
≪ここまで≫
王子小劇場の劇場入り口側が舞台。ベニヤ板の表面がそのままむき出しで使われた抽象美術です。シンプルなようでいて実は仕掛けがあって、毎度のことながら、ライブの舞台ならではのサービス精神に富んでいて嬉しいです。
ほぼ何もない空間でイスを移動させるだけで場面転換するのが、安易には映らず、絵的に美しかったのが良かったです。三浦さんの演出のセンスはどんどん洗練されてきているように思います。
ストーリーに理路整然とした筋道はない、脈絡など重要ではないのだと気づいてから、何のためにこのような表現をしているのかと探りながら観ることになりました。
家族は集団演技の賜物で、疑似家族の営みは、まるで野球のチームのようにポジションが決まっていてルールも明確。家族(チーム)を構成する人々のそれぞれの理想がぶつかって、すれ違って破たんします。過去、現在、未来を同時に起こし、生前、死後を現世と混在させる試みが成功していたと思います。
脚本については、なぜここでその話題になるのか、なぜこの言葉を交わすのかという必然性があまり感じられないことがあって、2時間という上演時間は私には長かったです。いわゆるポピュラーなテレビドラマや楽曲、もしかしたら漫画や小説などから多数引用されていたようですが、残念ながら私にはわからないことが多かったです。
役者さんでは柿喰う客の葉丸あすかさんの存在がヴィヴィッドでした。
ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。
土に埋まっている死者も、天に昇った死者も、まだ生まれていない赤ん坊も、同じ場所に。
死んだ妻は夫に「憶えていて」「忘れないで」と言い続けます。それに対して夫が「思い出せる限りの全てを、できる限り細かく、記述する」と答えたのには納得でした。私たちはどうしたって何でも忘れます。だから、主観が入ってしまうとはいえ、記述することが大事なんですよね。自分が死んだ後も誰かが読んで伝えてくれるかもしれない。8月なので、ちょうどこんな記事↓も。
⇒被爆の記憶、あなたに託す 次世代の語り部、養成中(朝日新聞)
ペット猫になった父につけた名前が「パブリックビューイング」ってのが可笑しかった。
"We are the world"のトボけた茶番風の合唱の中、「なんでやねん!」とつっこみ続けるが良かったです。
終盤のクライマックスで、上下(かみしも)に設置された2つのベニヤの壁が開いて、互いに中央に向かって迫っていき、客席からすごく近い位置でぴったりと閉じて巨大な壁になりました。主人公である夫(亀島一徳)が野球用バットで板を叩き破り、死んだ妻がいる“大きな木の下”に行きます。木の根元には妻の他に数人が寝そべっていました。黄泉の国だし天国だし夢の中だし。木の前で話す男女に日本神話のイザナミとイザナギも連想。
そういえば夫は最初から1つの場所(妻との思い出の地)を目指していました。「人は場所に染み付いている」ものなのだと思います。
佐藤佐吉演劇祭2012参加作品 vol.8
出演:亀島一徳、篠崎大悟、望月綾乃、内海正考、小橋れな、島田桃子、多賀麻美、田中佑弥(中野成樹+フランケンズ)、葉丸あすか(柿喰う客)、山田拓実
脚本・演出/三浦直之 美術/松本謙一郎 照明/工藤雅弘(Fantasista?ish.) 音響/池田野歩 衣裳/森本華 舞台監督/鳥養友美 演出助手/中村未希 宣伝美術/玉利樹貴 制作助手/鈴木猛丸・横井貴子 制作/坂本もも 企画製作/ロロ
【休演日】なし 一般:2800円 学生:2500(要・学生証提示) 当日:300円増し 高校生以下:1000円(要・学生証提示、一律) 平日お昼の回割り引き:各料金より300円引き リピーター割引き:1000円(要・予約、一律)
http://llo88oll.com
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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