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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2013年10月09日

新国立劇場演劇『エドワード二世』10/08-27新国立劇場小劇場

 1500年代に英国で活躍したクリストファー・マーロウの代表作を、演劇集団円の森新太郎さんが演出されます。⇒マーロウ作品のレビュー 上演時間は約3時間(途中休憩1回を含む)。

 とっても面白かったです!!黄金色の壁に囲まれた抽象舞台で、決め決めスーツ姿のワルいおじ様たちが、これみよがしに悪態つき放題!口をポカンと開けてしまうほどバカをやってくださって、スカっとしましたし、笑っちゃいました。

 これでA席5,250円って安すぎる…。B席3,150円、Z席1,500円(Z席は当日券)もあります。

 劇場ロビーで戯曲が掲載された雑誌が購入できます。買い忘れた…。

 演劇ライターの鈴木理映子さんのツイート↓ そうですよね、『ヘンリー六世』三部作連続上演、『リチャード三世』もすごく面白かった!

 ⇒CoRich舞台芸術!『エドワード二世

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 実在のプランタジネット家イングランド王、エドワード二世(在位1307-27)の起伏に富んだ激しくも短い生涯を描いた歴史劇。
 父王の死後、エドワード二世は貴族たちの助言にも関わらず、フランス人騎士ギャヴィストンを異常なほど寵愛し、多くの役職や地位を授ける。これが先王からの腹心の家臣たちより反感を買うこととなり、ギャヴィストンは追放される。
 エドワード二世は王妃イザベラの自分への愛情を利用しギャヴィストンを呼び戻すが、その後もエドワード二世から真の愛情を得られないイザベラは、愛人である貴族モーティマーと謀ってギャヴィストンをなぶり殺し、王を幽閉する。二人は王子(エドワード三世)への譲位をせまる……。
 ≪ここまで≫

 金箔が塗り込められたような大きな壁に囲まれた、シンプルな舞台美術。上下(かみしも)と舞台奥の3面の壁が、金色のまだら模様になっているのです。奥の壁の中央部分には出入り用の四角い穴(横幅1.5m、高さ4~5m?)が空いています。壁全体の高さはその穴の倍ぐらいだったかと思います。舞台面側は端から端まで薄汚れた白いカーテンで目隠しができるようになっており、役者さんが手動で引っ張って場面転換します。カーテンの縦の長さは2~3mぐらいかしら。額縁全体を覆う大きさではなく、カーテンの上部は空いています。

 シンプルとはいえ、照明の変化で百面相のように表情を変える美術で、その効果の素晴らしさに何度も息を呑みました。カーテン使いにも工夫があるし、床に模様をつける照明も良かった。衣装は遊びに遊んでいて、でも王族・貴族らしさを壊さないハイクオリティー。鳴る音がことごとくアイロニックで、ドキっとさせるほど憎い選曲だったな~。

 王位争いの凄惨な物語ですが、先日のトークセッションで森さんが「主演の柄本佑さんは志村けんのバカ殿みたいです(笑)」とおっしゃっていた通り、主役だけでなく多くの登場人物がいわば戯画化されているんです。ただ、人間の愚行への風刺は辛辣で、刺激の強い表現もありますので、心して見届ける必要があると思います。大人向けです。

 新劇の舞台でよく拝見するベテラン俳優の皆さんの演技は、狙いを定めた“やり過ぎ”感が実に魅力的。アホウとワルのオンパレード。
 タイトルロールの柄本佑さんは、どんなに勇ましくしても、頼りなくて、情けなくて、愛すべきバカ殿でした。体型を生かし、滑稽さを誇張するような動きも良かった。声がきれい。
 王妃イザベル役の中村中さんは、紺色のドレスがとてもお似合いで美しかったです。“王妃”であることに説得力のある声でした。そういえば鶴田真由さんに似てるなぁと思うこともありました。

 ここからネタバレします。

 エドワード軍VS貴族軍という2つの集団の戦いでも、敵味方の両方の人物がガランとしたステージにランダムに並んで、皆、客席の方に向いて語ります。チャンバラの場面はほぼ皆無で、人間関係や物語の進展を、人物の配置やステージングで見せきってしまうセンスの良さ。美術と照明がホンットに素晴らしい。

 エドワードが戦場へと向かう場面では、舞台奥から大き目の灰色の紙ふぶきが吹き出してくる中に、エドワードが飛び込んで行くのがすっごくかっこ良かったです。舞台面側は白いカーテンが引かれているので、紙吹雪はカーテンに遮られて客席までは届かないんですが、10%ぐらいは風に巻き上げられて客席中央あたりまで飛んで来ていました。

 エドワードは追放されていたギャヴィストン(下総源太朗)を連れ戻して溺愛し、ギャヴィストンの死後はスペンサー(谷田歩)にご執心。男同士でキスしまくってたな…(笑)。終盤でモーティマー(石田佳央)と王妃イザベラ(中村中)もキスすることになるので、キスには「一心同体の戦友になる」という意味が込められているのがわかります。

 地下牢に幽閉されたエドワードが全身に黒い液体を塗りたくられていたのには驚きました…。最初は黒くてモフモフした布地の全身タイツなのかな…と思ったんですが、壁に体を擦り付けた時に液体だとわかりました。エドワードとケント伯爵(窪塚俊介)の、顔から大いにはみ出している横一文字の口ヒゲや、ギャヴィストン(下総源太朗)のリオのカーニバル風ギンギラ衣装、殺し屋ライトボーン(西本裕行)の赤スーツも強烈だったけど、まさか、そこまでやるかと思いました(いい意味で)。

 父に代わって即位した王子エドワード(安西慎太郎)が、首だけになったモーティマー(石田佳央)の頭のてっぺんに剣をぶっ刺して、そのまま剣を頭上に高々と振り上げたポーズで、たった1人で舞台に仁王立ちしている状態で終幕。殺気立って興奮した王子エドワードがとんでもなく愚かに見えるのは、ひどく楽観的な音楽が鳴り響くから。舞台をペラッペラの黄金色に輝かせる照明も効いていました。

Try ・Angle -三人の演出家の視点- Vol.2
出演:柄本佑(エドワード二世) 中村中(王妃イザベラ) 大谷亮介(ランカスター伯爵) 窪塚俊介(ケント伯爵) 大鷹明良(アランデル伯爵) 木下浩之(ペンブルック) 中村彰男(レスター伯爵) 西本裕行(ライトボーン) 瑳川哲朗(老モーティマー) 石住昭彦(カンタベリー大司教) 下総源太朗(ギャヴィストン) 谷田歩(スペンサー) 石田佳央(モーティマー) 長谷川志(ボールドック) 安西慎太郎(王子エドワード) 小田豊(コヴェントリー司教) 原康義(ウォリック伯爵) *役名は主要な役1つずつを表記。
脚本:クリストファー・マーロウ 翻訳:河合祥一郎 演出:森新太郎 美術:堀尾幸男 照明:中川隆一 音響:藤田赤目 衣裳:西原梨恵 ヘアメイク:佐藤裕子 演出助手:城田美樹 舞台監督:大垣敏朗 制作担当:高瀬磨理子
【休演日】10/15,22【発売日】2013/07/28 A席5,250円 B席3,150円 Z席1,500円
http://www.atre.jp/13edward/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 19:24 | TrackBack

ワタナベエンターテインメント・Dステ14th『十二夜』10/04-13紀伊國屋ホール

 ワタナベエンターテインメントのイケメン集団D-BOYS、D2らが出演するDステの第14弾は、シェイクスピア作『十二夜』(過去レビュー⇒)。演出・上演台本は2011年のD-BOYS STAGE『ヴェニスの商人』がとっても面白かった、青木豪さんです。

 『十二夜』はロマンティックな恋愛喜劇でストーリーも面白いので、どのプロダクションで観てもほぼハズレなしというのが私の感覚なんですが、Dステならでは、今ならではの演出になっていて、とても楽しかったです。個人的には楽隊の生演奏(と演出)が特に良かったですね。上演時間は約2時間5分、休憩なし。

 ⇒CoRich舞台芸術!『十二夜

 あらすじはWikipediaでどうぞ(完全にネタバレしてますが、読んでから観ても楽しめる戯曲だと思います)。

 開演前にラフな体操着姿の出演者(男性のみ)が、舞台上でエクササイズやゲームをしています。客席のほとんどはファンの女性だと思うのですが、そんなお客様の好反応もぞんぶんに取り込んで、会場のムードを温めます。ロビーで生演奏をしていたギター奏者を含んだ、笛、太鼓、ピアニカの楽隊が客席通路を通って舞台に登場。お芝居が始まる空気が徐々に盛り上がる中、開演前の準備体操の延長線上にオープニングがありました。『ヴェニスの商人』でもそうでしたが、身体表現やダンス(群舞)と演技を組み合わせた、古典の世界への導入が見事だと思います。

 ヨーロッパのお話なので衣装は基本的にドレスなどの洋装ですが、舞台美術は和風。装置に込められた意味を考えると、大道具、小道具に和の要素を用いているのが、とてもマッチしています。生演奏のアンサンブル4人は、演奏自体がとてもお上手で聴かせてくれました。登場人物が「音楽を!」と楽隊に命じて演奏させたり、幕の裏側でBGMの役割を果たしたり、効果音役(時計)として登場することもあります。

 出演者が男性のみですから、女性を男性が演じます。男女のラブシーンなのにBLにも見えるのがいいですね。ファンの女性客が多いので「何をやってもウケる」客席ではありますが、私のようなひねくれた演劇ファンが、筋がわかっているのに笑えて、ドキドキできたのは、セリフを言う人はもちろん、その周囲の人々のリアクションが、その場の空気を生きたものにしていたからだと思います。

 D-BOYS、D2というと、テレビに出たりもしてるアイドル・グループですよね。私はテレビを見ないし、いわゆるイケメン舞台にも馴染みがないので、「アイドル」というものにあまり免疫がないんです。だからなのか、全く関係ないのかどうかわかりませんが、やっぱり人気がある人は光ってるなぁと思いました。自己肯定エネルギーが強いことは一種の才能ですよね。

 ここからネタバレします。

 特筆すべきは、舞台装置が神社だったこと。舞台中央の屋根のある美術は、能舞台のようでもあり、お祭りのやぐらのようでもあります。お芝居が始まる直前、役者さんは客席に背を向けて横一列に並び、神社に向かって二礼二拍手一礼をしました。この礼が行われた時、それまで沸いていた客席が一瞬で静かになり、厳かな空気が劇場を満たしたのです。「紀伊国屋神社にお芝居を奉納する」という構造になっているのだと解釈しました。私にとって「奉納する演劇」は震災以降の1つのテーマでもあり、今、この時に古典喜劇を若者が上演する意味を考える上でも、しっくり来ます。1600年代から変わらないバカ騒ぎや恋愛騒動を、神様の前で愉快に、懸命に演じることは、人間が自らの命に感謝し、演者と観客が一緒にそれをことほぐ行為(行事)だと受け取れるからです。

≪東京、大阪≫
出演:碓井将大、三上真史、池岡亮介、荒井敦史、加治将樹、鈴木裕樹、陳内将、山田悠介、近江陽一郎、山口賢貴、坪倉由幸(我が家)、ミッキー・カーチス、林健太(ピアニカ)、松山隼大(ギター) 柿崎寛人(リコーダー) 岡田旺久(パーカッション)
原作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出・上演台本:青木豪 音楽:笠松泰洋 美術:二村周作 照明:山口暁 音響:青木タクヘイ 衣裳:清水崇子(松竹衣裳)  ヘアメイク:糸川智文 振付:広崎うらん 擬闘:栗原直樹 歌唱指導:広瀬奈緒 演出助手:松倉良子  舞台監督:筒井昭善  宣伝美術:末吉亮(図工ファイブ) 宣伝写真:坂田智彦+西村法正+菊地洋治(TALBOT.) 宣伝スタイリスト:COMASA 宣伝ヘアメイク:糸川智文 宣伝:大澤剛 票券・制作:上野正人 宣伝・制作:渡邉あや 制作デスク:西川陽子  プロデューサー:渡部隆 総合プロデューサー:渡辺ミキ 主催・企画・製作:ワタナベエンターテインメント
【発売日】2013/07/13 一般料金:7,000円(全席指定/税込) 初めまシート:4,000円(当日引換/税込)
http://www.watanabepro.co.jp/mypage/artist/dst14_twelfth-night.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 17:44 | TrackBack