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2006年02月17日

こまつ座『兄おとうと』01/19-02/05紀伊國屋ホール

 初日の幕が開かなかった2003年初演から、同じキャスト&スタッフでの待望の再演。メルマガ号外を出しました。
 戯曲本も買いました。何度も読み返したいし、大切な言葉を覚えておきたいからです。
 今も旅公演の真っ最中です。公式サイトに各地域の劇場の問合せ先が載っていますので、お近くの方はぜひお問い合わせください。

 すばらしい劇評はこちら⇒Wonderland(後藤隆基さん)

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 ≪あらすじ≫ 公式サイトより引用。(役者名)を追加。
 兄、吉野作造(辻萬長)。民本主義を提唱し大正デモクラシーの旗手となった偉大な政治学者。多くの門弟をかかえ人びとの尊敬を集めた。
 おとうと、吉野信次(大鷹明良)。兄作造より十歳下。東大法学部から農商務省に入り、のちに大臣を二度務めたピカピカの高級官僚にして凄腕の政治家。
 この兄弟、ともに信念固く仕事に励み、獅子奮迅の日々。生涯に、枕を並べて寝たことはほんの数えるほどしかなかった。それも、たまに会えば決まって必ず議論、議論、議論……!
 しかも、兄作造を支える賢夫人玉乃(剣幸)と、弟信次に寄りそう賢妻君代(神野三鈴)は、血のつながった実の姉妹だった……!
 ≪ここまで≫

 作造と信次は血の繋がった兄弟なのに、大人になって枕を並べて寝たのはたったの5回。その5つの夜を描きます。初演にはなかった“説教強盗”のシーンがまるまる1場分追加されていました。

 役者さんがあふれんばかりの愛情で観客を迎えてくれます。そして、わたしたち人間のほんとうの願いとは何なのかを、易しく、まごころ込めて伝えてくださる、井上ひさしさんの宝石のような言葉のシャワー。

 ここからネタバレします。

 作造「国もおにぎりと似ている。なにを芯にして一つになるのか、そこが大切なんだよ。」
    ~~~何が国のもとになるのかを皆で話し合う~~~
 君代「民族、ことば、宗教、文化、歴史……全部だめ。ほかになにかあるの?」
 作造「ここでともに生活しようという意志だな。」
   「ここでともによりよい生活をめざそうという願い、それが国のもとになる。」
   「そして、人びとのその意志と願いを文章にまとめたものが、憲法なんだ。」

 別れ別れになっていた兄(小嶋尚樹)と妹(宮地雅子)が奇跡的に再会し、2人で喜びの歌「逢いたかった」を歌います。
 “三度のごはん きちんと食べて 火の用心 元気で生きよう きっとね”
 この歌詞こそが人々が本当に望んでいることなんだと、作造と信次は同時に気づきます。生活、災害、健康の保障なんですね。
 作造「ものごころついてから今まで、世の中の不幸を目にするたびに、なぜ、なぜ、なぜと問うてきたが、その無数のなぜは、結局『三度のごはん きちんと食べて 火の用心 元気で生きよう きっとね』という、いまの唄の文句にまとまってしまうんだよ。」
 
 Wonderlandにも書かれていますように、数あるこまつ座作品の中でも群を抜いて絶妙なキャスティングです。中でも役柄ごとにくるくると変身する宮地雅子さんの素晴らしいこと!機敏な動きとあふれ出んばかりのプラスのパワーに釘付けでした。

2003年初演。「作者大幅に加筆し、大増補版でお届けする、堂々の再演!」
≪東京、高松、丸亀、阿南、鳴門、徳島、松山、今治、高知、須崎、奈良、多治見、名古屋、白井、古川、盛岡、尼崎、市川、川西、山形、函館、苫小牧、釧路、江別、旭川、札幌、岩見沢、水戸≫ ※東京以外の地域は演劇観賞会や市民劇場の会員限定の公演が多数。
出演=辻萬長/剣幸/大鷹明良/宮地雅子/小嶋尚樹/神野三鈴
作=井上ひさし 演出=鵜山仁 音楽=宇野誠一郎 美術=石井強司 照明=服部基 音響=秦大介 振付=謝珠栄 衣裳=前田文子 歌唱指導=宮本貞子 宣伝美術=和田誠 アクション=渥美博 演出助手=保科耕一 舞台監督=大内敦史 制作=井上都・高林真一・谷口泰寛
前売開始12/10(土) 入場料5250円(全席指定) 学生割引3150円※こまつ座での販売のみ
公式=http://www.komatsuza.co.jp/
2003年のレビュー=http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2003/0518011007.html

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Posted by shinobu at 18:25 | TrackBack

青年団リンクRoMT『待つ』01/26-02/09アトリエ春風舎

 鈴江俊郎さん(劇団八時半)の戯曲の2本立て公演です。演出は『髪をかきあげる』に引き続き『待つ』を拝見してまいりました。『待つ』は1994年度KYOTO演劇フェスティバル大賞&脚本賞 受賞作品です。
 『髪をかきあげる』よりも上演時間も短かく、軽い感覚で観られました。ク・ナウカもそうだけど、青年団の女優さんってきれいな人が多いですねーっ。

 レビュー⇒踊る芝居好きのダメ人間日記休むに似たり。

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 この2~3週間ほどの間にしみじみと感覚を確かめているのですが、大劇場や中劇場で上演される演劇よりも、小劇場演劇の方が面白い作品に出会える確率が上がっていると思います。私の好みが変わってきているのかもしれませんが、小劇場へ行くときの足取りの方が確実に軽くなっているのです。

 ≪あらすじ・作品解説≫ 公式サイトより引用。踊る芝居好きのダメ人間日記に詳しいあらすじあり。
 若い女(鈴木智香子)の部屋、中央にこたつ。女の部屋を次々と訪れる人々。
 人々は女の部屋に、 様々なコトガラを落としていく。
 待ちかねた人は、本当に待ち人なのか。
 コドクではないと嘘ぶいて、ひたすらに待っている人の物語。
 1994年度KYOTO演劇フェスティバル 大賞&脚本賞受賞作品。
 ≪ここまで≫

 『髪をかきあげる』は真っ黒で閉塞感のあるシャープな空間でしたが、『待つ』は若いOLの一人暮らしの部屋が中央にありますので、温かい生活臭のする美術でした。上手前にはラーメン屋のカウンターがあって、上手奥のスペースには床にテニスボールが多数転がっており、ベンチとセットでテニスコートを表していました。

 『髪を・・・』と同様、やっぱりセリフの言い方が面白いんです。大声で叫んだり、詩のようだったり、つぶやきだったり。いわゆる静かな会話劇なのですが、私の日常的な感覚とは違った対話が常に生まれていて、一言ひと言をじっくり味わいながら楽しく最後まで観させていただきました。

 パンフレットに書かれた演出の田野さんの文章より↓ (部分的に中略)
 『待つ、というのは、ひょっとしたらものすごく積極的かつ攻撃的な態度の表明、なんじゃないだろうか。存在を確かめるための。』
 『待つ、ことは、賭ける、ことだ。賭けは、希望だ。
  待つ、ことは、祈る、ことだ。祈りは、心からの行動だ。
  じゃあ、何を祈る?』

 青森だったか、どこか東北地方のニュースの音が流れていましたね。あれは舞台が東北だという意味なのかしら。

 ここからネタバレします。

 24歳OLの小川マキ子(鈴木智香子)はテニススクールで出会った妻子もちの高島(太田宏)と不倫の関係にあります。果たして彼を待っているのか、何かを待っているのかはわかりませんが、休みの日はずーっとこたつに入って、本を読んだり音楽を聴いたり一人言を言ったりして、ズルズルと時間を過ごしています。何度も手に取る本は、新興宗教(おそらく幸福の科学)の本です。

 いつもなら誰も来ないマキ子の部屋に、不倫相手の高島(太田宏)、職場の先輩(たむらみずほ)、係長(西村和宏)の4人が同時に集ってしまうのがすっごく可笑しいです。もし本当にこんなことが起こったら、きっとこんな静か~に気まずくて、意外と何も隠さずにポンポコと話をしてしまうものなんだろうなと思いました。
 ただ、係長からもらったネックレスのラッピング箱の残骸について、マキ子が具体的に「係長が持ってきて・・・(云々)」と説明してしまうのは、わざとらしい気がして残念でした。

 市役所での出世にアグレッシブな23歳の大山田(長野海)と、28歳でテニススクールのコーチに叶わぬ恋心を抱いている杉村(たむらみずほ)、そして不倫をしている小川マキ子(鈴木智香子)という、3人の20代女性にスポットが当たったところが良かったです(その横で誰がどんなセリフを言ったかは残念ながら忘れてしまいました・・・)。10年前から今も変わっていない、もしかするとエスカレートしてしまった、若い女性のあり方が胸に刺さりました。孤独で寂しいですよね。

 鈴木智香子さん。『地球の片隅で ライフ・レント編』でも強く印象に残る女優さんでしたが、今回もまたうるんだ瞳とゆるい口元がグサっと来ました。
 たむらみずほさんのスコート姿もお宝ものですよね。スタイルいーなーっ。長野海さんも可愛かったです。
 太田宏さんはやっぱり渋くてステキだと思いましたが、『髪をかきあげる』の方が恐ろしくてセクシーで良かったです。
 係長役の西村和宏さんは第三エロチカの方だと思っていたのですが、今はサラダボールの演出家で、青年団の演出部にも所属されているんですね。おまぬけさんな演技が可愛かったです。でもくしゃみについてはちょっとわざとらしいような・・・あれは演出なのかな。

『待つ』出演=鈴木智香子/たむらみずほ/長野海/太田宏/西村和宏/古屋隆太
『髪をかきあげる』出演=山本雅幸/古屋隆太/荻野友里/山本裕子/太田宏/天明留理子/大塚洋
作=鈴江俊郎 演出=田野邦彦(青年団演出部) 舞台美術=鈴木健介 照明=西本彩 音響=薮公美子 制作=岩佐暁子+RoMT 宣伝美術=太田博久 総合プロデューサー=平田オリザ 企画・制作=青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 協力=劇団八時半 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
2/1休演日。各10ステージ。前売・予約・当日共同じ値段。日時指定・全席自由・整理番号付。一般『待つ』2,000円/『髪をかきあげる』2,500円学生・シニア(60歳以上) 【両公演とも】1,500円 高校生以下【両公演とも】1,000円/平日マチネ割引、2演目セット券あり
劇場内=http://www.komaba-agora.com/line_up/2006_1/romt.html
青年団内=http://www.seinendan.org/jpn/infolinks/infolinks051124.html
稽古場日記 RoMT Live!=http://blog.livedoor.jp/romt2005/

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Posted by shinobu at 16:12 | TrackBack

むっちりみえっぱり『明日からは粉がある』01/28-29アトリエヘリコプター

 復活待望のむっちりみえっぱり。メンバーの佐藤沙恵さんはテルミン演奏者としても活躍されています。古谷充子さんはイラストレーターなんですね。五反田団、THE SHAMPOO HATからの客演陣も豪華でした。

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 ご縁があって過去作品は少々拝見しております()。彼女達は本当に非凡です。ご覧になった方々のレビューをお読みいただければ、だいだいの雰囲気がおわかりいただけるのではないか、と。演劇◎定点カメラにサラっと書かれたあらすじを読むだけでも爆笑。

 レビュー⇒演劇◎定点カメラ中西理の大阪日記うえぽんの「たぬき鍋」踊る芝居好きのダメ人間日記休むに似たり。*S子の部屋わたしはかなも!←かわいいイラストあり!、テクサスの、とき☆めき夢日記週末シアターゴアーの傾く日常

 「LOHAS」をかかげるヘナチョコげなパン屋が舞台。2階の名曲喫茶はこけし(本物)が営業しており、パン屋の従業員との闘争がはじまる。

 もー・・・・非凡。こけしがまんま登場します。もちろん人間(役者)が手で持って動かすんですが、こけしとしてしゃべります。

 小刻みにぷるぷると肩を震わせながら、めちゃくちゃ笑わせていただきました。バームクーヘンの一切れがこけしの頭の亀裂にハマって、「なくしていたものが見つかった」なんて・・・・!

 超シュールなむっちりワールドは、ぜひ実体験をお勧めします。次回公演を切望。

出演=江川瑠衣/古谷充子/山本由佳/吉田麻生/加藤英一(FMG)/黒田大輔(THE SHAMPOO HAT)/望月志津子(五反田団)/中川幸子(五反田団)  喫茶店の客は日替わり=瀬戸寛/齊藤庸介
作・演出=むっちりみえっぱり スタッフ=猪川哲一朗/小早川晋/中道智子/本郷華里
温かい飲み物付き 前売り1000円 当日1300円
公式=http://hello.to/mucchiri_mieppari/
公演公式=http://tonmanaseikatu.zero-yen.com/etc/mucchiri,.html

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Posted by shinobu at 15:24 | TrackBack