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2007年12月05日

【写真レポート】Studio Life『アドルフに告ぐ』制作発表12/04 TOKYO FM HALL

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『アドルフに告ぐ』制作発表

 男優集団Studio Life(スタジオ・ライフ)が手塚治虫の漫画『アドルフに告ぐ』を舞台化します。Studio Lifeが舞台化してきた漫画原作作品のレビュー⇒

 手塚治虫文化賞受賞者である漫画家の萩尾望都さん、浦沢直樹さん(Wikipedia)の両氏を迎えた豪華なトーク・イベント付きの制作発表に伺いました。
 先日取材したわらび座『ミュージカル「火の鳥~鳳凰編」』同様、手塚治虫生誕80周年記念の企画なんですね。

 ここ数年で日本の漫画が映画化・テレビ化・舞台化されることが急増していますよね。大人気の“テニミュ”こと『ミュージカル・テニスの王子様』も少年漫画が原作です。Studio Lifeは1999年に『トーマの心臓』再々演を行っていますので、まさに名作漫画の舞台化のさきがけだったのではないでしょうか。2001年の『トーマの心臓』『訪問者』連鎖公演の感動は、今もトキメキとともに(笑)、心に鮮やかに残っています。

 『アドルフに告ぐ』が連載されていたのは確か私が小学生の頃で、実際に読んだのは大学生になってからでした。手塚治虫というとアニメの『鉄腕アトム』『リボンの騎士』ぐらいしか知らなかった私は、史実を題材にした、残酷な運命に翻弄される2人の少年のお話にちょっとしたショックを受けたことを憶えています。

 萩尾望都さんと浦沢直樹さん、『アドルフに告ぐ』の脚本・演出を手がけるStudio Life座付き脚本家・演出家の倉田淳さんの3人のトークは、手塚治虫という漫画家の凄さと、漫画という文化の深みについてあらためて知ることができた充実の約30分間でした。↓浦沢直樹さんと萩尾望都さん
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 萩尾「手塚先生の作品は読み終わった後にああでもない、こうでもないとずっと考えてしまう。漫画というものがこれほど人の心を揺り動かすものなら、私も描いてみたいと思ったんです。」
 浦沢「手塚先生の作品を読むと、心に痛みがしみこんでくるんですよね。喜怒哀楽も善も悪も、全部まとめて人間性であると言っているような。根源的な人間の表現のように思います。」

 倉田「人間は複雑怪奇なもの、清濁あわせもつ存在であると、手塚作品から学んだ気がします。浦沢先生の『MONSTER』は人間が自分の中に飼っている怪物の話でもありますよね。」
 浦沢「自分の中の怪物をいかに飼いならすか。でも怪物が外に出て来てしまうのも人間の営みだと言えます。では人間らしさとは何か?凶暴さも人間らしさなのか?という疑問が出てくる。そのドアを閉めず、ひとつひとつ開けてみんなに見せてくれたのが、手塚作品ではないでしょうか。」

 倉田「『アドルフに告ぐ』には3人のアドルフが登場します。例えばアドルフ・カウフマンはあの時代に生まれなければ、あの境遇で育たなければ、ああはならなかったかもしれない。運命の巡り合わせが人の人生を変えてしまいます。自分の中のモンスターを飼いならすために、人間はいったいどうすればいいのでしょうね・・・。」
 萩尾「誰を愛しているのか。誰を大事だと思うのかが、尺度になるのではないでしょうか。」

 ≪Studio Life『アドルフに告ぐ』メインキャスト写真≫
 前列左から河内喜一朗(劇団主宰)、倉田淳(脚本・演出)、山本芳樹/後列左から曽世海司、松本慎也、荒木健太朗、小野健太郎、甲斐政彦
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 『アドルフに告ぐ』はEhre(エーレ)チーム、Mut(ムート)チームのダブルキャスト公演。アドルフ・カウフマン役(山本芳樹/荒木健太朗)とアドルフ・カミル役(小野健太郎/松本慎也)以外はすべてシングルキャストです。アドルフ・ヒットラー役は甲斐政彦さん、狂言回しの役割もする峠草平役は曽世海司さん。曽世さんは司会進行もつとめていらっしゃいました。

 メインの役者さん6人がお1人ずつお話されたのですが、ほんっとに皆さん、ホレボレするほど真面目!!特にナチス党員の息子カウフマン役を演じる荒木健太朗さん(Mutチーム)が、当時のドイツ国民の心情について考えていることを率直に話された時は、その熱のこもった姿勢にすっかり魅せられてしまいました。THE・ガジラ公演や小劇場の自主公演などでも活躍されている小野健太郎さんのEhreチームに行こうと思っていたのですが、Mutチームも捨てがたくなっちゃいました。
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 Studio Life『アドルフに告ぐ』は12月20日(木)~30日(日)まで、天王洲 銀河劇場で上演されます。

Studio Life『アドルフに告ぐ』上演記念トークイベント「手塚治虫イズムを受け継ぐ者として」/Studio Life『アドルフに告ぐ』制作発表
原作:手塚治虫 脚本・演出:倉田淳
Ehre(エーレ)チーム:アドルフ・カウフマン/山本芳樹 ドルフ・カミル/小野健太郎
Mut(ムート)チーム:アドルフ・カウフマン/荒木健太朗 アドルフ・カミル/松本慎也
全公演:アドルフ・ヒットラー/甲斐政彦 峠草平役/曽世海司 ナチ党員、ドイツ総領事館カウフマン/寺岡哲 由季江・カウフマン/三上俊 カミルの父:イザーク/藤原啓児 カミルの母:マルテ/篠田仁志 エリザ・ゲルトハイマー/芸者・絹子/吉田隆太 小城先生/林勇輔 本多大佐/石飛幸治 本多芳男/仲原裕之 赤羽刑事/奥田努 県警捜査一課・米山刑事/牧島進一 仁川三重子/関戸博一 仁川刑事/河内喜一朗 ゾルゲ/下井顕太郎 アイヒマン/大沼亮吉 ボルマン/政宗 ゲルハルト・ミッシェ/船戸慎士 ランプ/倉本徹 エヴァ/深山洋貴 アドルフ・ヒットラー/甲斐政彦
他 Studio Life劇団員 ※キャストは都合により変更する場合もございます。※上記の役以外でも出演いたします。
料金(全席指定/税込)ファンクラブ(前売・当日共)S席6,000円/A席4,600円/一般(前売)S席6,300円/A席4,800円/一般(当日)S席6,500円/A席5,000円
http://www.studio-life.com/stage/adolf/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。
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Posted by shinobu at 2007年12月05日 13:14 | TrackBack (0)