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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2008年10月21日

パルコ『幸せ最高ありがとうマジで!』10/21-11/09パルコ劇場

 本谷有希子さんがパルコ劇場に初進出。永作博美さんをはじめ豪華キャストの話題の公演です。

 予想のつかないセリフのやりとりにいっぱい笑わせていただき、最後は本谷節にシビれました。上演時間は約2時間(休憩なし)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『幸せ最高ありがとうマジで!

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより (役者名)を追加。
 舞台は「エリートが書いたもんをヤクザが売る」とからかわれる、とある町の新聞販売所。
 慎太郎(梶原善)の留守中に、彼の愛人を名乗る得体の知れない女・明里(永作博美)が突然現れる。もともと慎太郎の女癖の悪さは病的とも言えたため、妻(広岡由里子)と子供たち(近藤公園&前田亜季)はその話を信じ込んでしまう。が、家族は一丸となって明里の存在を無かったことにしようとする。嫉妬でおかしくなったように家に上がりこもうとする明里を、妻と息子と娘は協力して阻止。
 明里は道に放り出されるが、住み込みバイト・えいみ(吉本菜穂子)の手引きによって、なぜか敷地内のプレハブ小屋に密かにかくまわれることに。
 こうして、誰にも予想できない復讐劇の幕は上がった・・・。
 ≪ここまで≫

 すさんだ新聞販売所で、家族および従業員らが揃ってひた隠しにしていたドロドロの人間関係が、正体不明の女・明里(永作博美)によって暴かれていきます。修羅場を面白がる彼女によってどんどんヒートアップ。
 大掛かりな装置に、ノリノリの音楽も面白かったです。

 初日でまだ演技の硬さが気になりましたが、すぐ盛り上がっていくでしょうね。追加公演もあるようです。

 ここからネタバレします。

 「大声で叫んだことが本当になる」、「人気がある方が勝つ」など、明里の分析は明快で、「精神病になる確固とした理由があるのは幸せだ(自慢できる)」という考えも面白いです。

 「人間が起こす行動に意味なんて、理由なんてない!」という主張にスカっとしました。予想なんてできないのが人生ですし、無意味な行動が人を、世界を形作っていると思います。だから永作博美さん演じる謎の女(=モンスター)が無差別に、ある家族を興味本位で(愉快犯として)本当にぐちゃぐちゃにしちゃうのが痛快。「明るい人格障害」ってサイコー(笑)。

 現代社会(特に東京かも)は、今ある全てをぶち壊してくれるモンスターを求めていると、私も思います。でも、新聞配達員のところに届けるべき夕刊が納品されたら、彼らはまずその仕事をこなすことが最優先なんですよね。そうやって私たちはご飯を食べて生きているから。明里と一緒に一瞬はじけて、ブっ飛んでも、すぐに日常へと戻っていきます。

 最後はパウンドケーキにささったみじめなろうそくに、明里がチャッカマンで火をつけて自分の40歳のバースデーを祝おうとしますが、火がつかないで終幕。思う通りにならない、全然うまくいかない、この世界バンザイ。

パルコ劇団外、本谷有希子 第一回作・演出作品
≪東京、倉敷、大阪≫
出演:永作博美、近藤公園、前田亜季、吉本菜穂子、広岡由里子、梶原善
脚本・演出:本谷有希子 美術:中根聡子 照明:倉本泰史 音楽:渡邊琢磨 音響:藤森直樹 衣裳:伊藤早苗 ヘアメイク:二宮ミハル 演出助手:則岡正昭 舞台監督:宇野圭一+至福団 宣伝美術:榎本太郎 宣伝写真: 忠之 宣伝:る・ひまわり 制作協力:寺本真美+ヴィレッヂ 制作:高石由紀子 プロデューサー:佐藤玄 製作:山崎浩一 企画・製作:株式会社パルコ 後援 ニッポン放送
【休演日】10/27(金)、11/4(火)【発売日】2008/08/03 7,000円 ※未就学児の入場はご遠慮下さい。
http://www.parco-play.com/web/play/motoya

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 22:09 | TrackBack

ハイバイ『ハイバイ オムニ出す』10/19-11/05リトルモア地下(『フランス』&『いつもの』)

 昨日に続いてリトルモア地下に伺いました。今日もほぼ満席。『いつもの』&『フランス』は上演時間が約2時間10分(途中5~10分の休憩を含む)。

 『いつもの』「ヒッキー・カンクーントルネード」を観るのはこれで3度目ですが(過去レビュー⇒)、やはり笑って泣いてしまう。
 『フランス』は・・・もしかしたら何度観ても驚いたり笑ったりできる演目なのかも・・・(笑)。強烈でした。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ハイバイ オムニ出す

 客席が三方からステージを囲みます。「落/星」は下手から、「常/仏」は正面から拝見。正面からが観やすいんじゃないかと思いました。まあどこに座っても見えるもの、見えないものがあるんですけどね。それも一期一会のお楽しみです。至近距離で私だけの表情、感情を持って帰りました。
 『フランス』はできたらもう一回観たいですね~・・・。あっけに取られて、頭の中が「?(ハテナ)」状態で、突発的に可笑し過ぎて爆笑して、そして最後はわ~ステキ~♪、でした。

 ここからネタバレします。

■『いつもの』「ヒッキー・カンクーントルネード」
 作・演出:岩井秀人(ハイバイ)
 出演:岩井秀人(ハイバイ)/坂口辰平(ハイバイ)/瑞田新菜(青年団)/平原テツ/川田希

 28歳のひきこもり10年選手トミオ(岩井秀人)と、その妹アヤ(瑞田新菜)はいつもながら見事なコンビネーション。母親役の平原テツさんものびのびしている印象。
 出張おにいさんの坂口辰平さんはドモって挙動不審なのが可愛いやら気持ち悪いやら(笑)。出張おねえさんの川田希さんは外見も話し方も真面目でちゃんとしているので、話す内容(強引で無礼で勘違い)とのギャップが面白い。

 最後にトミオ(岩井秀人)が玄関へと向かう演技でやっぱり落涙。「みちのくプロレスが見たい」という欲望と、外に出ることへの恐怖がぐるぐるうずまいて、一歩一歩、おそるおそる踏みしめる歩みのゆらめきがたまりません。


■『フランス』「コンビニュ~または謝罪について~」(「テンプルトンペックン」よりタイトル変更)
 作・演出:岩井秀人(ハイバイ)
 出演:永井若葉(ハイバイ)/坂口辰平(ハイバイ)/篠田千明(快快)/師岡広明

 岩井さんが親族代表に脚本提供した「コンビニ~または謝罪について~」の一部が題材になっていました。タバコの銘柄を間違えたのに謝らないコンビニの店員(師岡広明)に、しつこく「謝って」とすごむ(懇願する)客。役柄は次々と変わって、1つの役を4人で演じたり、タバコや机を演じたりもします。これが生っぽくて刺激的なんですよね。どこまでが脚本どおりでどこからアドリブなのか全然わからない。

 白い紙が貼られた大きなパネルが壁に取り付けられており、いくら説明しても謝ってくれない店員に対して、客(2人)が墨で絵を書いて伝えようとします。でもその絵がヘナチョコで・・・(笑)。あの絵で一番笑ったかも。コミュニケーションの難しさ、多様さが見事にあらわされていると思いました。

 「謝ってよ」「謝らないよ」の繰り返しが続き、なぜかコンビニのキャッシャーから宇宙へと飛翔。パネルに日本地図を書いて周囲を黒く塗りつぶしていき、空へと俯瞰する視点に移行したのも面白い!

 スピーカーと棚の上に別々に置かれていたにぎり寿司のしゃりとエビが、宇宙で合体しようとします。片方が「謝って」で、片方が「謝らない」を示しており、ぴったりと気持ちよく合体するかと思いきや、ぎりぎりのところですれ違ってしまいます。反発するもの同士がぶつかって、やっぱり離れていって、"Yes"と"No"の声が不協和音のようなノイズのまま大きくなっていって、最後はハーモニーにまで昇華。感動的。


 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:岩井秀人(ハイバイ)/永井若葉(ハイバイ)/坂口辰平(ハイバイ)/篠田千明(快快)/師岡広明

 岩井「『フランス』は今日、出来ました(笑)。でも脚本はずいぶん前に完成していて、役者はいつどこででも自分から話せるように、脚本の全てを覚えています。最後までプランが完成したのが、今日だった。」

仮チラシ時点のタイトル「数打つよ短編の宴(仮)」
「落(落語)」出演:夏目慎也(東京デスロック) 高橋周平 師岡広明 坂口辰平 石澤彩美
「星(SF)」出演:岩井秀人 金子岳憲 師岡広明
「常(いつもの)」出演:端田新菜(青年団) 平原テツ 岩井秀人 坂口辰平 川田希
「仏(フランス)」出演:師岡広明 永井若葉 坂口辰平 篠田千明(快快)
照明/松本大介(enjin-light)音響/長谷川ふな蔵 宣伝イラスト/岩井秀人 宣伝美術/土谷朋子(citronworks) 素材提供/湯沢靖典 記録写真/青木司 制作/三好佐智子、増井めぐみ 企画・製作/ハイバイ 共催/リトルモア地下
チケット発売日:9月15日 チケット料金: 全席整理番号付自由席 前売/2,000円 当日/2,500円 
セット券/3,500円  (前売のみ。落/星、常/仏 各1回ずつご覧になれます)*セット券は1名2回(落星+常仏)で3,500円です。
http://hi-bye.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 10:08 | TrackBack