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2008年12月06日

ギンギラ太陽's『BORN TO RUN さよなら初代0系新幹線』11/28-12/07あうるすぽっと

 大塚ムネトさんが作・演出、そしてかぶりモノ造型も手がける福岡の劇団ギンギラ太陽'sが、また東京に来てくれました(過去レビュー⇒)。

 老若男女問わず笑って泣ける、街を題材にしたかぶりモノ演劇です。上演時間は約1時間15分と短めですが、腹八分目でちょうど気持ち良い観劇になりました。何しろほとんど涙が流れっぱなしだったので(苦笑)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『BORN TO RUN

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 「夢の超特急」として誕生した初代 0系新幹線は、子ども達のあこがれの的でした。しかし次々と新型が誕生し、今ではすっかり脇役になっています。たまに走ることがあっても、広島までの各駅停車「こだま号」として使われるのみ。もう彼らが「ひかり号」として走ることはありません。そして、ついに今年の11 月で全ての初代 0 系新幹線が引退することになりました・・・。
 最後の日を前に、初代 0系新幹線達は「ある計画」を実行します。果たして「走るために生まれた彼ら」が取った行動とは!
 ≪あらすじ≫ 

 新幹線や駅のかぶりモノを被った俳優さんが、乗り物、建物などになりきって元気いっぱいに演じてくれます。ほぼ素舞台ですが、そんなことすっかり忘れるほどの厚みと迫力。

 私がヘンな客なのだと思いますが、始めから最後までほぼ止むことなく、涙を流しっぱなしでした。笑うこともありましたが、しみじみ感じ入って、ずーっとほろほろと・・・。

 役者さんが連れてくる風が、東京では味わえないものな気がします。だから、ニカっと笑って観客に語りかける冒頭のシーンから、胸に熱いものがこみ上げてきてしまう。福岡という土地がはぐくんだ空気なのか、ギンギラ太陽'sオリジナルのものなのかはわかりませんが、優しさ、大らかさがてらいなく放射されていて、足の裏から温まってくるような幸せな時間でした。

 ここからネタバレします。

 小学1年生のとき、小学館の「小学一年生」という月刊誌を買ってもらってたんですが、新幹線はその中で主役級のアイドルでした。リニアモーターカーの想像図も載ってたな~。「びゅわーん びゅわーん はしる 青いひかりの超特急♪」という歌が流れただけで涙が出てきちゃう。よく歌ってました。歌といえば、ブルース・スプリングスティーン。「BORN TO RUN」(YouTube)の調べに乗って、文字通り走る0系新幹線たちにも落涙。

 私は大阪出身ですが、福岡に親戚がいたし東京にも行ったので、新幹線にはよく乗りました。食堂車でも食べたな~。名菓ひよ子も我が家では定番のおみやげ物でした(もらう方でした)。

 おまけとして上演されるのは贅沢すぎた『女ビルの一生』。福岡のビル事情に明るくなくても存分に楽しめました。東京にも当てはまることですよね。東京は毎日どこかでビルが壊されて、新しいビルが建てられて、どこに何があったかなんて全く覚えていられない寂しい街です。でも、自分が暮らしてる街なんだよな~。ギンギラの人たちのように、自分で自分の街を愛することが必要な気がします。

 博多座のことをピシャリと言ってたのが痛快でした(笑)。
 「あんた、借り物のキャデラックって呼ばれてるわよ!東京や大阪で流行ったものを上演しているだけで、博多を名乗れるの?!」(セリフは正確ではありません)

≪福岡、東京≫
出演:大塚ムネト、立石義江、杉山英美、上田裕子、中村卓二、古賀今日子、中島荘太 、林雄大、吉田淳、石丸明裕、新田玄
作・演出・かぶりモノ造型・宣伝美術:大塚ムネト 舞台監督:松本幸一 照明:荒巻久登(シーニック) 音響:インテグラル・サウンド・デザイン 宣伝イラスト:庄子智湖 宣伝写真:藤本彦 制作:立石義江 永渕瑛美 プロデューサー:堀英明、石川鉄也 主催:ギンギラ太陽’s 、企画・製作アンミックスエンタテインメント、ピクニック 運営協力:ゴーチ・ブラザーズ
【発売日】2008/09/27 料金 4,500円 ※未就学児童のご入場はお断りいたします
http://www.gingira.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 17:02 | TrackBack

燐光群『戦争と市民』11/21-12/07ザ・スズナリ

 坂手洋二さんが作・演出される燐光群の新作は、主演に渡辺美佐子さんを迎えた約2時間半(休憩なし)の大作です。でも、長いとは思いませんでした。

 観ている時も観た後(今)も、私自身の今の生活と関連づけて考え続けました。
 12/7(日)14時の回は前売り完売。当日券あり(立ち見の可能性あり)。

 ⇒劇評:朝日新聞毎日新聞読売新聞
 ⇒CoRich舞台芸術!『戦争と市民

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 第二次世界大戦のさい、空襲を受けた街に残っていた防空壕跡。土地開発のための工事の過程で、戦時中に崩れていたと思われていたその場所が発見されました。戦時中、そこで過ごしたことのある女性が、その防空壕跡に居着くようになります。彼女は自分自身の「使命」に目覚めます。その場所を拠点に、活動を始めようと決意します。彼女は次の市長選に出馬することを決めたのです。
 ≪ここまで≫

 私は、勝手に戦争とかけ離れた人生を送ってきました。どんなに戦争に関する映画やお芝居を観ても、「あぁ当時は大変だったんだな、戦争はいけないな」と他人事のように受け取り、あつかましい同情の涙を流していたと思います。でもここ数年でやっと、自分のことだと思えるようになってきました。

 そのように私が自分自身から部外者であったのは、私が受けたわが国の教育のメカニズムのせいなんじゃないかと、赤坂真理著「モテたい理由」を読んでからはっきりと考えるようになりました。子供は学校で教えてもらうことを始めから嘘だとは疑いません。何らかのきっかけがなければ、その洗脳に気づくことは難しいと思います。
 例えば私の場合、『花よりタンゴ』(再演)を観た時にやっと、国に私有財産を取り上げられることが不当だと感じました。それまでは「みんなそうなんだから仕方ない」などとぼやかしていました。「みんな」という実は恐ろしい言葉については、多田淳之介さんの12/1のブログに丁寧に書かれています。

 「モテたい理由」にも書かれているように、私たちはまず先の戦争を知らなければ、今、私たちが実は関わらせられている戦争について考えられないし、日常で当たり前のように享受していることの本当の意味が、ずっとわからないままだと思います。この作品の主人公ヒサコ(渡辺美佐子)が自分が取って食べる鯨のことを考えたように、私たち個人々々が目の前にある食べ物のことを考えなければ。

 タイトル中の『市民』とは私たち一人ひとりのことで、個人が自分の力に気づき、行動を始める姿が描かれていました。永井愛さん、野田秀樹さんが出演されたシンポジウム「殺人社会と演劇」でも、個人の文化力を養うことが、幸せな人生をつかむ方法ではないかと提案されていました(永井さんの発言より)。

 “余剰”がもたらす傲慢とそれが生む悲劇について、はっきりと理解することができました。住みたい街に住み、食べたいものを食べ、したいことをして、好きな人と暮らす。でも身の丈にあった範囲で。これはアニメ映画『河童のクゥと夏休み』のメッセージでもあったと思います。
 言葉巧みにルールを変えることで、事実がどんどんゆがめられ、金がどこかに流れていく。スポーツのルールみたいだと思いました。

 カットアウトの暗転と大音量の音楽がスピード感を増してくれて、長い上演時間もリズムに乗って拝見することが出来ました。大量の情報を浴びるように頭に入れながら、舞台で起こることがまとまって私と同化していくように感じ、圧倒されました。

 ここからネタバレします。

 舞台は黒い木造の防空壕。捕鯨船の形もしています。私も同じ船に乗っているのだと思いました。

 冒頭、ヒサコとその妹(田岡美也子)、漁師(田岡美也子)の3人は、発見された防空壕におそるおそる入っていきます。ヒサコが防空頭巾にもんぺ姿の少女(=昔の自分)と出会ったところで、心をわしづかみにされました。実際に防空壕で空襲の夜を過ごした経験のある渡辺さんが、当時の彼女に出会ったとも受け取りましたので、まさに63年の月日がぎゅっと縮まり、重なりました。

 1945年3月の東京大空襲の様子を、大勢の役者さんが全身で表現してくださって、舞台ならではの臨場感と迫力がありました。つらかった。

 チラシに書かれていることでもありますが、人間は「殺されることを拒否する権利」を有しており、それを主張することは恥ずかしくないし、むしろ堂々と主張していいんだなと思いました。

≪東京、宮城、岩手、愛知、福岡、兵庫≫
出演:渡辺美佐子 田岡美也子 児玉泰次 吉村直 河野しずか 佐古真弓 中山マリ 鴨川てんし 川中健次郎 猪熊恒和 大西孝洋 樋尾麻衣子 杉山英之 小金井篤 安仁屋美峰 阿諏訪麻子 伊勢谷能宣 いずかしゆうすけ 秋葉ヨリエ 桐畑理佳 西川大輔 吉成淳一 武山尚史 鈴木陽介
脚本・演出:坂手洋二 美術:加藤ちか 照明:竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 音響:島猛(ステージオフィス) 衣裳:小原敏博 音楽協力:PANTA 舞台監督:森下紀彦 演出助手:城田美樹 進行助手:清水弥生 文芸助手:久保志乃ぶ 題字・イラスト:石坂啓 宣伝意匠:高崎勝也 制作:古元道広・近藤順子
【発売日】2008/10/11 全席指定 前売3,600円 ペア6,600円(前売・予約のみ) 当日4,000円 大学・専門学校生3,000円 高校生以下2,000円 (学生券は前売・当日共通料金 劇団扱いのみ 要学生証提示)
http://www.alles.or.jp/~rinkogun/sensoutoshimin.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 01:16 | TrackBack

映画「河童のクゥと夏休み」

 ロードショーの時の評判が良かったので、今年5月にDVDで観ました。評判どおり良い映画で、さすがは映画「クレヨンしんちゃん」の原恵一監督(Wikipedia)だと思いました。
 CGアニメは苦手なのですが、水がものすごくきれいで見入りました。⇒公式サイト

河童のクゥと夏休み 【通常版】 [DVD]
アニプレックス (2008-05-28)
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Posted by shinobu at 00:27 | TrackBack