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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2009年06月10日

新国立劇場演劇『夏の夜の夢』05/29-06/14新国立劇場 中劇場

 初演がとても好評だった、新国立劇場の『夏の夜の夢』再演です(⇒初演レビュー)。メインキャストが初演と同じなので、夢の国の妖精たちと再会する気持ちで伺いました。

 そして・・・今回も良かった~♪ 前回同様ラストは涙目になっちゃいました。初演よりもきめ細かい演技・演出になっています。チョウソンハさんのパック役はやはり必見。

 約3時間20分(途中休憩を含む)という上演時間を長く感じる時もありましたが、「シェイクスピアの『夏の夜の夢』を観るならコレ!!」とお勧めしたい作品です。今週末の6/14(日)まで。※6/27(土)に富山公演があります。

 ⇒CoRich舞台芸術!『夏の夜の夢

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 アテネの公爵(村井国夫)とアマゾンの女王(麻実れい)の結婚式を間近に控えたある夜。貴族の娘ハーミア(宮菜穂子)は許婚ディミートリアス(石母田史朗)との結婚を拒絶し、相愛のライサンダー(細見大輔)と共に妖精の住むアテネ近郊の森へと駆け落ちする。ハーミアを追いかけるディミートリアスと彼に片想いするヘレナ(小山萌子)も2人の後を追いかけ森の中へ。その森の中では妖精の王(村井国夫)と女王(麻実れい)が可愛い小姓をとりあって喧嘩の真っ最中。そこにいたずら好きの妖精パック(チョウソンハ)が登場し、王の命令で「惚れ薬」を手に女王にいたずらを仕掛ける。そして、女王はロバの頭をした職人ボトム(吉村直)と不思議な一夜を過ごすことに・・・・。
 妖精と人間、男と女、日常と夢の世界・・・・。一夜のスリリングな恋の大騒動の結末はいかに。
 ≪ここまで≫

 細かい演出がたくさん付け加えられて、2組の恋人たちのケンカも、妖精が人間たちにかける魔法も、シーンの1つひとつが見どころアップ!
 道化集団である村の職人たちによる劇中劇が、堂々とクローズアップされて、こんなに大成功している『夏の夜の夢』は観たことがありません。
 生演奏のバンドメンバーも、ちゃんと背中に羽をつけて演奏しているのが嬉しい。

 大掛かりな装置と豪華な衣裳で人知の及ばない世界をつくりあげて、人間と妖精とがともに歌い踊る夢を見せてくれて、そして最後には、夢から覚めたからこそ見られる夢も見せてくれます。それが本当の夢なのではないかと思います。

 ここからネタバレします。これからご覧になる方は絶対に読まないで下さいね!

 “舞台裏”に役者さんが素の状態(の演技)で登場するラストシーンは、演劇への愛そのもの。その愛で観客を満たしてくれます。

 「いま舞台で起こったすべての夢は、役者(人間)がつくったものだ」という告白は、夢を壊すのではなく、夢はいつでもそこにあると信じさせてくれる魔法でした。人間ってなんて素敵。今の私は妖精もホレ薬も信じられますよ♪

≪東京、富山≫ 新国立劇場2008/2009シーズン
出演:村井国夫 麻実れい チョウソンハ 細見大輔 石母田史朗 小山萌子 宮菜穂子 青山達三 大島宇三郎 吉村直 大滝寛 小嶋尚樹 酒向芳 水野栄治 神田沙也加 JuNGLE 倉田亜味 清家悠圭 森川次朗 浅井信好 柴一平 西田健二 インドの小姓(交互出演):小山颯 小島幸士

■配役
シーシアス/オーベロン 村井国夫
ヒポリタ/ティータニア 麻実れい
イジーアス/フィロストレイト 大島宇三郎
ハーミア 宮菜穂子
ヘレナ 小山萌子
ライサンダー 細見大輔
ディミートリアス 石母田史朗
クウィンス 青山達三
ボトム 吉村直
スナッグ 小嶋尚樹
フルート 水野栄治
スナウト 大滝寛
スターヴリング 酒向芳
パック、またはロビン・グッドフェロー チョウソンハ
豆の花 神田沙也加
蜘蛛の糸 坂上真倫
蛾の精 JuNGLE
カラシの種 松田尚子

作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出:ジョン・ケアード 美術・衣裳・ヘアメイク:スー・ブレイン 照明:中川隆一 音楽:イローナ・セカッチ 音楽監督:久米大作 音響:黒野尚 振付:広崎うらん 演出助手:大江祥彦 衣裳助手:林なつ子 ヘアメイク助手:佐藤裕子 舞台監督:澁谷壽久 芸術監督:鵜山仁 主催:新国立劇場
一般発売日:2009年3月20日(金)~ 全席指定 S席6,300円 A席5,250円 B席3,150円 Z席1,500円※料金は税込みです。 ※6月3日(水)、11日(木)は学生団体が入ります。
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000068_play.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 22:29 | TrackBack

東宝『ゼブラ』06/09-29シアタークリエ

 劇団ONEOR8(ワンオアエイト)で2度上演された人気作品(⇒初演レビュー)が、商業演劇のシアタークリエに登場。作・演出もONEOR8の田村孝裕さんです。上演時間は2時間休憩なし。

 檀れいさんが初日直前(5/31ごろ)に病気で降板され、代役に星野真理さんが抜擢されました。私は初日翌日のマチネを拝見しましたが、ヒロインにふさわしい、堂々たる演技を見せてくださったように思います。作品も素晴らしかったです。ブラボー!

 ⇒出演者休演のお詫びと新配役のお知らせ
 ⇒CoRich舞台芸術!『ゼブラ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を一部追加。
 これは、母の手ひとつで育てられた四姉妹のおはなし。長女(斉藤由貴)と四女(大沢あかね)は既に嫁ぎ、三女(山崎静代)も近々結婚を控えている。次女(星野真里)はひとり自家に残り、家を切り盛りするばかり。母親(和田ひろこ)は現在入院中で、生死の境をさまよっている。三女の引越しの準備と母親の見舞いをかねて、四人全員が久々に顔を合わせた。
 久々というのは、なにかが起こる前兆に過ぎない・・・。
 姉妹が幼いころに家を出て行った父親の存在。突然現れた葬儀屋の兄弟(村杉蝉之介&野本光一郎)。互いに隠していたことが次々と明らかになったその日、一本の電話がかかってくる…。
 ≪ここまで≫

 向田邦子作「阿修羅のごとく」をモチーフにしたというキャッチコピーに大いに納得できる、密度の濃い、一筋縄ではいかない家族ドラマでした。でも深刻になったり悲しくなったりし過ぎることはなく、トボけた笑いが満載!田村さんならではのしつこいギャグも(笑)、クリエの奥様方に大いに歓迎されていたようでした。

 どんなにダメな親でも、子供は親のことを信じたいと思ってしまいます。自分を捨てた人でも、美化して愛してしまうんですよね。宿命ともいうべき親子のつながりが、素直に発せられた言葉から痛いほどに伝わってきました。

 出演者は全員で12人で、誰もが独特の個性を持っていて、それぞれに魅力的。四姉妹は子供の頃と現在(20~30代?)を演じますので、パジャマ、ランドセル、セーラー服姿も込みで、現代日本の大人の女性として見つめました。誰もが愛らしい。
 次女以外は結婚(もしくは婚約)しています。長女の夫(入江雅人)、四女の夫(是近敦之)、三女の婚約者(今井ゆうぞう)は三人三様で、嫁の実家での居住まいのぎこちなさがとっても面白いです。幼なじみの文房具屋(矢部太郎)と三女の婚約者は、登場するだけで笑いを誘うこともありました(笑)。

 昭和の香りがする家屋が、物語の主役に見えてきたのが感動的。えらそうな言い方になって恐縮ですが、田村さんは、大劇場で大人が満足できる娯楽演劇を作ることができる、作・演出家になられたのだと思います。

 ここからネタバレします。

 長女(斉藤由貴)と愛人(江口のりこ)のバトルは、初演より火花バチバチで迫力アップ。次女(星野真里)に向かって「そんなに簡単じゃない」と言い返す長女のセリフに説得力あり。斉藤さん、かっこいい!

 長女の夫(入江雅人)が入院中の母から聞いた言葉から、父が家を出たのは母の浮気が原因だったかもしれないとわかります。このどんでん返しで劇の空気が突然変容しました。向田作品の香りがします。

 告別式が終わって親族が帰ると、次女(星野真理)は広い家にたった1人になり、昔を回想します。小学生の頃、中学生の頃、そして自分の絵(タイトルは「ゼブラ」)が金賞を受賞して、母が大喜びしてくれたこと。家の中に家族の思い出が充満して、壁に、柱に染み込んでいるように見えました。

 母の容態の悪化および死をきっかけに、ずっと音信不通だった父と姉妹との間で連絡が取られるようになりますが、次女だけはかたくなに父を拒否していました。でも次女が1人で実家にいる時に父から電話がかかってきます。一度はつっぱねるのですが、すぐにまたベルが鳴り、次女が電話を取らないのでベルが鳴りつづけたまま、暗転して終幕。このすっきりしない、曖昧な幕切れが良かった!何でも白黒つけられるわけがないし、人は迷い悩んで、怒って泣いて、一生じたばたし続けるしかないんだと思います。それに人の気持ちなんてすぐに変わりますから、先のことなんて誰にもわからないんですよね。

出演:斉藤由貴 星野真理 山崎静代(南海キャンディーズ) 大沢あかね 入江雅人 今井ゆうぞう 是近敦之 矢部太郎 村杉蝉之介 野本光一郎 和田ひろこ 江口のりこ ※檀れいが急病で降板のため、代役に星野真理
脚本・演出:田村孝裕 美術:香坂奈奈/照明:中川隆一/音響:本間俊哉/衣裳:小峰リリー/ヘアメイク:武田千巻 舞台監督:田中力也/演出助手:岡本栄策/企画協力:Bunko 向田和子/プロデューサー:小林香 製作:東宝
【発売日】2009/05/02 S席:9,000円/A席:7,500円(全席指定・税込)
http://www.tohostage.com/zebra/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 22:01 | TrackBack