2010年02月13日
reset-N『青』02/10-14ザ・スズナリ
当日パンフレットに主宰・作・演出の夏井孝裕さんが「これがreset-Nです。」と書かれていました。フランス留学から帰国後、数本の私戯曲を上演されてきましたが、留学前のreset-Nの作風に戻って来られたようです。
黒光りするシャープな空間から熱いメッセージが伝わってくる、硬質なストレート・プレイ。上演時間は約1時間45分。
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レビューはほぼ記録のみです。
≪あらすじ≫ 公式サイトより
東京、遠くない未来。
急激な移民社会への変化の中、外国人排斥のレイシズムが日本を覆っていた。
中でも過激な暴力行為で知られるグループがある。
当初は穏健な活動をしていた彼らだが、メンバーの分裂、抗争の激化を経て
血で血を洗う抗争の当事者となっていくのだった。
発起人となったかつてのメンバー達は事態の収拾を決意するのだが…。
報復の連鎖が終わるとき、そこにある「日本」は何か。
来るべき危機を見据える新しい黙示録。
≪ここまで≫
“そんなつもりじゃなかったのに”、暴力抗争を引き起こしてしまった2人の男。
ここからネタバレします。
「逃げる」という1つの結論(それもまた叶わないのですが)。どこかで読んだ覚えがあったんですが、今思い出しました。浦沢直樹さんの漫画「20世紀少年」でした。
舞台奥にある大きな引き戸を開くと、青い空間。劇場の外の壁に青い照明を当てているんでしょうね。リアルに外と内が表現されているのは面白いと思いましたが、寒かった・・・。
奴隷のラン(山田奈々子)がご主人様のノグチ(鶴牧万里)の右手ひとさし指をなめるシーン(それだけじゃないですが)は、夏井さんにしか作れない時間。Welcome back!
reset-N ver.25.0 第20回下北沢演劇祭参加作品
出演:久保田芳之/鶴牧万里/原田紀行/綾田將一/田中のり子/山田奈々子(以上reset-N) 井上裕朗/カトウシンスケ/末吉康一郎/藤堂海 ※出演を予定しておりました常石梨乃は製作進行の遅延により、話し合いの上、今回は出演いたしません。お詫び申し上げます。誠に申し訳ございません。
脚本・演出:夏井孝裕 グランドデザイン:massigla lab. massigla lab.:夏井孝裕/浅香実津夫/荒木まや/内野なみ 美術・照明協力:青木拓也 音響協力:徳久礼子 舞台監督:桑原淳 制作協力:藤田晶久(palette-bullet)・田川浩充 音響:荒木まや 宣伝美術:quiet design productions/omni studio 舞台記録:tanla.st 助成:平成21年度 文化芸術振興費補助金 共催:下北沢演劇祭実行委員会 主催:reset-N
【発売日】2010/12/12 前売2,800円/当日3,200円/学生2,000円
http://www.reset-n.org/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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フォースド・エンタテインメント『視覚は死にゆく者がはじめに失うであろう感覚』02/10-12原宿Vacant
小沢康夫さんのつぶやきの影響もあり、知人と一緒に鑑賞。1人の男性が1時間ずっと立ったまま話し続けるパフォーマンスでした。日本語字幕つき英語上演。
フォースド・エンタテインメントはこちら↓の公演もあります。
2月13日(土)13:00-19:00『Quizoola!』。なんと6時間上演!
⇒CoRich舞台芸術!『視覚は死にゆく者がはじめに失うであろう感覚』
ラフな衣裳で白人男性が語り続けます。具体的には全然思い出せないんですが、名言というか標語というか、面白くて聞き逃したくないと思える短いセンテンスが、大量に繰り出されていきました。
とはいえ立って静かに語るだけなのは私には少々退屈で、たまに眠くなったりも。でも終盤に入ると、「1人の役者がセリフを話している」だけではない、違う見かたができるようになりました。
カーテンコールが終わって他の観客が席を立ちはじめても、私はしばらくじっと座って、余韻を味わいました。立っていた彼が人生で、この場が世界だと感じられたから。
ここからネタバレします。
語られる内容は同意・共感できるものもあれば、疑問に思ったり反対意見を言いたくなるものもありました。おそらく観客1人ひとりがそれぞれに違った受け取り方をしていたのではないでしょうか。それはコミュニケーションそのものだと思いました。
最後の方になると、役者さん(ジム・フレッチャーさん)は早口で休みなくセリフを言い続けます。そうなると観客は面白いと思ったり疑問を感じたりする余裕もありません。ただ主張をあびせられるがままになります。私は「あぁ、これは人が死ぬ前のようだ」と思いました。人間って実は自分の言いたいことを周囲にまき散らすばかりで、他人の意見なんてほとんど聞きませんよね(笑)。そして死ぬ直前になればなおさら。
最後のセリフを言ってフレッチャーさんが舞台からテクテクと歩いて去った後、誰もいない舞台がガラーンと広がりました。それは1人の人間がその命を終わらせて、消えた後の世界でした。人が生まれ、多くの人と出会い、そして別れる(死ぬ)。客席に残された私は、目の前の空間を自分が死んだあとの世界だと受け取り、これからも(私がいなくても)ずっと、ずっと続いていく時間を見つめました。
Postmainstream Performing Arts Frestival 2010
ポストメインストリーム・パフォーミング・アーツ・フェスティバル 2010
("Sight is the Sense that Dying People Tend to Lose First")
出演:ジム・フレッチャー(Jim Fletcher)
テキスト・演出:ティム・エッチェルス(Tim Etchells) アシスタントディレクター:パスケイル・ペトラリア(Pascale Petralia) ライティングデザイン:ナイジェル・エドワーズNigel Edwards) プロデュース:フォースド・エンタテインメントForced Entertainment) 舞台監督:尾崎聡 照明:大庭圭二(RYU) 翻訳・字幕:新井知行 フライヤー・デザイン:松本弦人 制作:天野未来 佐藤道元 プロデューサー:丸岡ひろみ 制作協力:日本パフォーマンス/アート研究所 企画・製作・主催:国際舞台芸術交流センター PPAFプロデューサー:丸岡ひろみ 小沢康夫
前売り3,500円 当日3,800円*ワンドリンク付。日本初演作品・日本語字幕つき
http://ppaf.parc-jc.org/j/2010/index.html#fe
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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モモンガ・コンプレックス/ダンス・パフォーマンス的公演『ウォールフラワーズ。』02/11-14富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ
モモンガ・コンプレックスは白神ももこさんが振付・構成・演出される女の子ばかりのダンスカンパニーです(関連レビュー⇒1、2)。キラリ☆ふじみを拠点に活動するキラリンク☆カンパニーとして、継続的に活動されています。
庶民的でガーリーでコミカルな、ダンス“的”作品でした。どちらかといえば『初めまして、おひさしぶり。』の方が好きですが、今回も夢を見せてもらえました。上演時間は約1時間。
⇒CoRich舞台芸術!『ウォールフラワーズ。』
等身大の女の子の形に切り取られたダンボール紙(←おそらく)がたくさん、客席と舞台をぐるりと囲むように立っています。紙の女の子たちの足元にはお花がいっぱい。“壁の花たち”ですね。衣裳はオリーブ少女のお出かけ着のような、ちょいレトロなドレスでした。ヒールとパンプスもおしゃれ。
パーカッションとピアニカの生演奏(やぷくみこ)のゆるいライブ感が優しくて、ボランティア出演(?)の男子たちの笑顔が可愛くて。ミラーボールでお花の光が回るのは、ちょっとさびしげなロマンティック空間。
コントのようなシーンもある、コンテンポラリー・ダンス“的”作品でした。7人の女の子が一緒に激しく踊るところはかっこいいです。にこにこ笑ってキラキラ光る瞳が、好きだ!
ここからネタバレします。
ゴージャスなクラシック音楽が流れる中、誰からもダンスのお誘いの声がかからず、ずっと壁側に立ちっぱなしの女の子たち(=ウォールフラワーズ)。舞台では誰も踊っていないのに、彼女たちのさびしさ、切なさが伝わってきます。
その後は、悲しさもみじめさも引き受けて、がんばる女の子たち・・・だったのかな。
2人の男子に手を取られた白神さんが、「Shall we dance?」と歌いながら中央の黄色い円盤に乗って、ステージを回っていくシーンが素晴らしかったです。「努力の末に乙女の夢が叶った」という夢を見た気がして、涙がほろり。
『EKKKYO-!』の短編で披露したカーテンコール集はやっぱり可笑しいですね。
モモンガ・コンプレックスvol.5
出演:臼井梨恵 北川結 眞嶋木綿 夕田智恵 白神ももこ(以上モモンガ・コンプレックス) たにかわまいこ(ユトリロユルリト) 矢崎里美 ボランティア男子:土路生真隆 安川良平
振付・構成・演出:白神ももこ 音楽:やぷくみこ 舞台監督:中西隆雄 照明:伊藤秦行 舞台美術:濱崎賢二 衣装:臼井梨恵 宣伝美術・物販デザイン:きたがわゆう 制作:藤原里香 企画・製作:モモンガ・コンプレックス
【発売日】2009/12/16 一般 2,500円 当日 2,800円 ラブレター割引 2,200円(モモコンやキラリ☆ふじみへの想いを綴ったラブレターを書いてきてくださった方)※ラブレター割引はモモンガ・コンプレックス、キラリふじみ窓口での前売り・予約のみの取り扱いです。チケットぴあ、当日券での取り扱いはありません。※開演5 分前を過ぎますと予約がキャンセルになる場合がございます。※車椅子のお客様は事前にお問い合わせください。※未就学児の入場はご遠慮いただきます。
http://d.hatena.ne.jp/momonga_complex/
http://www.city.fujimi.saitama.jp/culture/kouen/kouen.html#momonga
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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