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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2010年06月16日

FUKAIPRODUCE羽衣『愛死に(あいじに)』06/12-22東京芸術劇場小ホール2

 FUKAIPRODUCE羽衣(フカイプロデュース・ハゴロモ)は女優の深井順子さんがプロデュースし、糸井幸之介さん作・演出・音楽・美術・振付などをトータルに手がける劇団です。東京芸術劇場が注目する才能「芸劇eyes」に選ばれました。

 過激な性描写はいつもどおりなので、お好みは分かれると思います。でも人間全部をひっくるめて愛するには必要な表現だと、全身で納得できました。クライマックスの歌と踊りに感動して嗚咽。上演時間は約1時間30分。

 ロビーで『朝霞と夕霞と夜のお休み』(⇒レビュー)のCD(700円)を購入しました。

 ⇒公演公式ツイッター
 ⇒CoRich舞台芸術!『愛死に
 レビューを加筆しました(2010/06/29)。

 限界を通り越しても踊り歌い、無心に命を燃やす姿。

 ここからネタバレします。

 ≪あらすじ≫
 ラブラブだった男女が別れてしまい、それぞれ一人旅に。旅先のしなびた宿で思い出す、過ぎ去った蜜月の頃。
 ≪ここまで≫

 オープニングは緞帳が少しだけ上がり、ずらりと並んだロッキングチェアーがゆっくり揺れます。じわじわ、ゆっくりと始まるのがとても良かったです。

 男女のペアになりあらわに体を重ねる動きとあえぎ声。「夜だわ」と窓の外を見つめて言うセリフで三島由紀夫『近代能楽集 葵上』を思い出しました。「夜は男女の戦場だ」等という看護婦の長いセリフがあるんですよね(⇒過去レビュー)。『葵上』では心の中で想像するしかなかった夜の情景が、舞台上に生々しく存在していました。野蛮で美しかった。

 目の前にいる愛する人のことしか見えなくなり、何もかも振り切って快楽にふける男女。そんなに愛していたのにプツリと別れてしまい、未練の気持ちを歌い上げる。熱しやすくて移り気で気弱でわがまま。みっともない、でもそれだからこそ美しい動物、人間。快快『SHIBAHAMA』で受け取ったメッセージとも重なりました。

 ≪ポストパフォーマンス・トーク≫
 出演:岩井秀人(劇作家・演出家・俳優/ハイバイ主宰) 糸井幸之介

第12回公演 芸劇が注目する才能たち、「芸劇eyes」。
出演:深井順子 日高啓介 鯉和鮎美 高橋義和 寺門敦子 伊藤昌子(劇団阿佐ヶ谷南南京小僧) キムユス(散歩道楽) 澤田慎司 西田夏奈子 鈴木燦 東谷毬子 板倉チヒロ(クロムモリブデン) 金子岳憲(ハイバイ) 内田慈
作・演出・音楽・振付・美術:糸井幸之介 舞台監督:西直奏 シロサキユウジ 音響:樋口亜弓 照明デザイン:松本永(Fantasista?ish.) 照明操作:工藤雅弘(Fantasista?ish.) 衣装:吉田健太郎(yu-GEN CRaFTS) 衣装補佐:小野渾彩夏 生田志織 美術協力:池田那緒美 撮影:藤川智美 山下なつき 写真:田中流 宣伝美術:吉田健太郎 チラシイラスト:鈴木燦 チラシ短歌:深井順子 チラシモデル:高橋義和 プロンプター:井出智子 制作:坂田厚子 大石丈太郎 林弥生 プロデュース:深井順子 主催:FUKAIPRODUCE羽衣 提携:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 助成:芸術文化振興基金
【発売日】2010/04/24 前売り 一般3,000円 前売り サイド席(おまけ付)3,000円 当日3,300円 学生(前売/当日) 2,000円 ◎期間限定早割実施! 早割 3,000円→2,500円 期間 4月24日(土)~30日(金)
http://www.geocities.jp/hagoromo_hukai/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 11:25 | TrackBack

キコ(qui-co.)『カナリアの心臓』06/11-14神楽坂die pratze

 qui-co.(キコ)は小栗剛さんの演劇ユニット。今年3月に小栗さんが作・演出される旗揚げ公演を拝見しました。今回は企画公演という形で、小栗さんの脚本を黒澤世莉さん(時間堂)が演出されます。

 熱くて荒々しい詩情にあふれる小栗戯曲と、舞台上での俳優の自然なコミュニケーションを大切にする黒澤さんの演出との相性は、とても良かったと思います。俳優の熱演で見ごたえのある4人芝居でした。上演時間は約1時間20分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『カナリアの心臓

 ≪あらすじ≫
 父の葬儀で10年ぶりに集まった兄妹。ずっと離れて暮らしいていたのには理由がある。彼らが心底愛し憎んだ母のせいなのだ、何もかも。
 ≪ここまで≫

 ここからネタバレします。

 精神を病み新興宗教に入れ込んだ母親は、毒薬を作るようになります。それがオウム真理教の地下鉄サリン事件とつながりました。

 ラストは食卓を囲む兄妹たち。湯気の立つ本物の食事がちゃぶ台に並びます。真っ黒な抽象舞台にモノトーンの衣装で統一していたところに、いきなりカラフルな衣装と色とりどりの料理が出てきます。

 家族って何なのか。それは作った料理を一緒に食べることを日々の習慣にしている人たちのこと。そう言い切ってもいい(そう言うしかない)と思えました。

出演:北川昇吾、サキヒナタ、堀奈津美(DULL-COLORED POP)、小栗剛
脚本:小栗剛(qui-co.) 演出:黒澤世莉(時間堂)  舞台監督:前田義朗 美術:松本謙一郎 照明:南香織 音響:モリタユウイチ(OTOZAK) 演出助手:オノマリコ(趣向) 宣伝美術:澤田和賀子 写真:笠井浩司 撮影:$堂+大澤大介事務所 制作:北澤芙未子(DULL-COLORED POP) 製作:安藤リカ、長島紀子
【発売日】2010/05/15 前売:2500円 当日:2800円
http://www.qui-co.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 10:44 | TrackBack

快快『SHIBAHAMA』06/03-13東京芸術劇場小ホール1

 快快(ファイファイ)は海外ツアーも行う若手パフォーマンス集団。東京芸術劇場が注目する才能「芸劇eyes」に選ばれての公演です。落語の「芝浜」を快快流の現代劇にしていました。

 観客を巻き込んで起こる出来事が恐ろしくて、最初の一時間は「早くココから出て家に帰りたい」ぐらいの気持ちだったのですが(苦笑)、後半に入って、それらが(ハプニングも含めて)すべて計算されたものだったとわかり、「いきとしいけるもの全部らぶ」を全身で受け取りました。凄い!

 ⇒CoRich舞台芸術!『SHIBAHAMA

 小ホール1の壁に大きく映像が映され、客席を含む全体がクラブのような空間。まずその状態に圧倒されます。

 私が観た回はビールのようなものが小道具から吹き出したんです(小道具を倒してしまったため)。床にこぼれたビールに足を滑らせて、出演者(男性)が思いっきり転びました。これはさすがに計算外(笑)。

 ここからネタバレします。

 段取りがうまくいっていない快快メンバーのダンス(←意図的に)。ずっとテレビゲームをする若者(岩井秀人)。100円を資金に観客が参加する金目当てのジャンケン大会。
 インターネットで集めた世界中の盗撮画像を劇場の壁全体に映写して、演出の篠田千明さんが観客に話しかけるところで、やっとわかりました。現代のダメ人間を実際にやって、見せて、それも含めて「全部らぶ」なんだってこと。

 落語の落ちを「下げ」と言うそうですが、この作品は「これって下げじゃなくてアゲじゃね!?」という落ち。ブラボー!!

出演:大道寺梨乃 千田英史(Rotten Romance) 中林舞 山崎皓司 加藤和也 北川陽子 篠田千明 野上絹代 佐々木文美 藤谷香子 天野史朗 Kiss Laszio Juhasz Marton Andras 映像出演:野上三月 日替わりゲスト:岩井秀人(ハイバイ)/ナジュ・オルガ(faifai海外担当・パフォーマー)
脚本:北川陽子 演出:篠田千明 舞台監督:佐藤恵 技術監督:遠藤豊(ルフトツーク) 美術:佐々木文美 照明:上田剛 音響:星野大輔 衣装:藤谷香子 映像:天野史朗 演出助手:白川のぞみ(てとあし) 大道具制作:坂本寮 本郷剛 谷口綾 記録撮影:鈴木余位 記録写真:加藤和也  宣伝美術:cochae 天野史朗 快快キャラクターデザイン:しんぽうなおこ ロビーデコレーション:大道寺梨乃 山本ゆい 快快グッズ製作:大道寺梨乃 しんぽうなおこ 海外ツアーチーフ:Olga Nagy 制作:河村美帆香 協力:Budapest kitchen 提携:芸劇が注目する才能たち、「芸劇eyes」。東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 助成:財団法人セゾン文化財団 社団法人企業メセナ協議会 企画制作・主催:快快
http://faifai.tv/faifai-web/2010/04/post-46.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 09:55 | TrackBack