2010年06月28日
【レポート】芸団協2010「ラウンドテーブル『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』」【8】04/30-05/01芸能花伝舎1-1
『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』【8】では、私が参加したグループでの議論をまとめました。
⇒劇場法(仮称)RT【全体のまとめページ】
メンバーは公共劇場制作者2名、演劇プロデューサー1名、劇団主宰者1名、制作支援会社社員1名、そして私の6人。
■地域の公共劇場を作品創造、人材育成の拠点に
■こども向けプログラムの充実
■上質な作品の多地域ツアーを可能にするために
■劇場技術スタッフの労働環境も整備が必要
■劇場法(仮称)勉強会の開催を
■地域の公共劇場を作品創造、人材育成の拠点に
公共劇場制作者A「演劇・舞踊系作品を創造する公共劇場というと(以下、順不同に)首都圏の新国立劇場、世田谷パブリックシアター、彩の国さいたま芸術劇場、東京芸術劇場(まだ創造は少ない)。そして北九州芸術劇場、新潟りゅーとぴあ、まつもと市民芸術館、静岡舞台芸術センター、兵庫ピッコロシアター、水戸芸術館、いわきアリオス(←今は創造をしていない?)、そして小さいところだと鳥取の鳥の劇場、埼玉のキラリ☆ふじみなど。その数はまだ少ない。」
公共劇場制作者A「公共劇場の運営をそれぞれの地方自治体にまかせていると、文化予算削減に伴い、今の規模がさらに少なく、小さくなってしまう可能性がある。作品創造、人材育成の拠点としての劇場が増えれば、実演芸術がゆたかに展開する可能性が見えるはず。社会を豊かにしていく可能性を高める拠点としての公共劇場を、劇場法であとおしする。」
公共劇場制作者B「アーティストを育てるのは日本の演劇界の課題。そして、劇場には制作や営業の人間も入る必要がある。」
公共劇場制作者A「東京の場合は、劇場だけで育てなくても周囲に数多くの芸術団体がある。でも地方はそういうわけにいかない。劇場がある程度のレベルおよびセンスを持った人をかかえないと、創造環境が成立しない。例えば海外と共同制作をするなら、静岡舞台芸術センターのようにキャストにもスタッフにも技術が必要。」
公共劇場制作者B「民間劇場ではキャスティングを重視するのも仕方ないと思う。公共劇場は無名だが良質な俳優や作品を使うなど、民間でできないような長期的な視点に基づいたことをやるべき。」⇒公共劇場制作者Aも同意見。
■こども向けプログラムの充実
公共劇場制作者B「『社会の活力と創造的な発展をつくりだす劇場法(仮称)の提言』(PDF)27ページで紹介されている海外の評価指標で、10代の観客の割合を指標に入れているのがいい。今、観客が高齢化している。『実演芸術の将来ビジョン2010』(PDFあり)の内容はもっと具体化しないと、芸術監督うんぬんと書かれていても一般の人にはわからない。例えば子供向けのプログラムが必須であるなどと盛り込んでもいいんじゃないか。ただ、プログラムまで法律で決めるのは、方向性の制限にもなるので危険かも。」
公共劇場制作者B「劇場には広場のような機能の仕方があるといい。本が読めたり、朗読の講座があったり、色んな人が集まれる場であるべき。昨今、親にとっては子供を土日にいかに安く遊ばせるかが大事。その受け入れ先としての劇場の役割は大きい。顧客開拓にもなる子供向けプログラムはやはり重要。」
しのぶ「劇場のラインナップにこどものためのプログラムがあるのはいいと思う。子供が劇場に行く時は、親も行くことになる。広場の役割が増す。」
■上質な作品の多地域ツアーを可能にするために
公共劇場制作者A「海外招聘作品で東京から他地域へのツアーを計画しようとすると、仕込みやバラしのためのスタッフも東京から連れて行かなければならない。結果的に経費が高くなりすぎてツアーは断念せざるを得ない。地域の劇場に、ある一定のスキルを持って、安全に、クオリティーの高い作品が上演できる環境が必要。そうした作品の受け入れができる劇場が増えないと(全国的に)発展しない。」
演劇プロデューサー「創造はせず貸し館だけに特化した劇場でも、高い志を持った人材がいればいい。劇場側から『触らないで!汚さないで!余計なことをしないで!』等と言われると、芸術団体はもうその劇場には行きたくなくなる。アーティストと一緒に創作するぐらいの意志のある、受け皿としての劇場も重要。東京でやっていることを他地域でも観てもらわないと、観客も育たない。」
演劇プロデューサー「若い頃にある公共劇場と共同で作品をつくった時、舞台で水や砂を使うやり方を劇場の技術者に教わった。プロの方に相談にのってもらい、一緒に作れて嬉しかった。
若者にはない技術を持った劇場付きのプロのスタッフが、上から目線にならずに若者に教えるのはいいことだ。アーティストと劇場スタッフが一緒に創作し、出来た作品が質の高い面白いものであったら、観客もたくさん観に来て、劇場の知名度もネームバリューも上がる。劇場とアーティストの両方にとってメリットがある創作環境が望まれる。」
■劇場技術スタッフの労働環境も整備が必要
公共劇場制作者A「最近の劇場は、舞台機構の発達にともなう複雑化・大型化が進み、技術スタッフには専門的な知識と経験が必要となっている。何か事故が起きれば死亡事故にまでになる可能性がある。今は労働環境としての劇場で働く人を守るための法律整備が遅れている。みんなが幸せなに働けるように、劇場という立場を明確にして、ある一定レベルの環境を保つ必要がある。」
しのぶ「仕事がハードだと疲弊して辞めていってしまいますよね。続かなくて辞める若者は多いですか?」
演劇プロデューサー「つらいし、まともなお金も貰えないし、20代の子は早く辞める。その上、今の若者の方が体力がないし(笑)、辞めないようにと若者の方が大事にされるから、肉体的にも中高年に過度な労働がのしかかってきている。一般企業でも若者が大切にケアされているのが現状。」
公共劇場制作者B「今の若い人が、もう少し安定した仕事に就きたいと感じても仕方ない状況。自分も雇用が不安定だと感じている。財団職員ならずっと働けるが、制作は1年ごとの契約。例えば地方公共団体の首長が変わって、政策方針が変わって、劇場で創造をしないと決まったら、制作はクビになるかも。劇場法(仮称)ができ、劇場で働く職員の身分保障につながれば嬉しい。身の危険も感じつつ働いているので、それを法律でちゃんと決めてくれたら安心できる。」
しのぶ「私は劇場が創作する素晴らしい演劇作品を、たくさん観させてもらっている。これからも観たいと強く願っているし、日本各地でも同様の環境であって欲しい。だから劇場で働くスタッフや実演家が、安心して活動し続けられるようになって欲しい。」
■劇場法(仮称)勉強会の開催を
演劇プロデューサー「劇場法(仮称)はぜひ実現して欲しいと思っている。このままいくと(観客数は)頭打ちで、私たちの仕事はなくなる。飲食店でアルバイトしながら演劇を作らないといけなくなる。今の若い演劇人はよく勉強しているし、社会の中でどうやって演劇を続けていくかを考えている人が多い。だから年配の実演家および制作者向けの劇場法(仮称)勉強会を開いた方がいいんじゃないか。」
芸団協ラウンドテーブル「劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!」
主催:社団法人日本芸能実演家団体協議会
http://www.geidankyo.or.jp/12kaden/04pro/manage/gekijo_rt100430html.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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【情報】国際演劇評論家協会(AICT)日本センター「シアタークリティックナウ2010『脱出せよ! 日本演劇』」07/19座・高円寺2F カフェ・アンリ・ファーブル
演劇批評誌シアターアーツを発行する国際演劇評論家協会(AICT)日本センターが、第15回AICT演劇評論賞の授賞式およびその関連イベントとして、「脱出せよ! 日本演劇」と題したシンポジウムを開催します。
●「シアター・クリティック・ナウ2010『脱出せよ! 日本演劇』」
日時:7月19日(月・祝)17:30(開場17:00)
会場:座・高円寺2F カフェ・アンリ・ファーブル
登壇者:野田秀樹×内田洋一×扇田昭彦×野田学
料金:1,000円(当日受付精算)
※シアターアーツ定期購読者は無料(先着30名まで、要予約)
お申し込みは公式サイトからどうぞ。
受賞作である「日本の演劇人 野田秀樹」(責任編集/内田洋一)を拝読しました。野田秀樹さんの生い立ちから現在にいたるまでの活動が詳細に記されています。野田さんの高校時代の様子や『THE BEE』創作日記などから、言葉(脚本)から演劇が生まれる過程、プロの作品づくりの現場の厳しさを、うかがい知ることができました。
貴重な記録であるだけでなく、1人の人間(内田さん)が1人のアーティストに真摯に接し、その全体像をくみとろうとする熱が伝わってくる本でした。
候補作だった「僕と演劇と夢の遊眠社」(高萩宏著)と、「だから演劇は面白い!」(北村明子著)と合わせて読むと、劇団夢の遊眠社および野田秀樹さんにまつわる出来事を複数の視点から知ることができ、まるで緻密な群像劇を見たような気持ちになりました。
「僕と演劇と…」と「だから演劇は…」は「好きなことを仕事にして成功している人」のお話として、面白いだけではなく勉強にもなりました。
小学館
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シアタークリティックナウ2010「脱出せよ! 日本演劇」
http://theatrearts.activist.jp/2010/06/ctn2010.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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わらび座『ミュージカル「アトム」』06/19-27新宿文化センター
『ミュージカル「アトム」』東京公演の千秋楽を鑑賞しました。めっちゃくちゃ良かったっ!!メインキャストが違うのも含めて、2ヵ月前の秋田初日とは別モノでしたね(⇒制作発表)。
主役の良知真次さんは、以前に違うミュージカルで拝見した時とは別人のように、演技が素晴らしかったです(失敬!)。関係者に聞いたところ千秋楽に向かって登り調子だったそうで、兵庫公演も行きたくなっちゃいました。
やっぱり長く上演を重ねると完成度が上がるんですね~(今さらですが)。『火の鳥 鳳凰編』もそうでした。
⇒CoRich舞台芸術!『ミュージカル「アトム」』
レビューは記録程度です。※2010/11/19にアップしました。
ロボットたちのダンスのクオリティーがめちゃくちゃ上がっていて、最初から息の合った躍動感にわっくわく。
上野哲也さんが降板してダブルキャストとなったアズリ役。私が拝見したのは柳瀬亮輔さんでした。ひたむきで優しいまなざしが良かった~。三重野葵さんのアズリも観たかったな~。ダッタン役も演じられたようです。
ここからネタバレします。
トキオ(良知真次)の体の中にアトムの電子頭脳が入っていたとわかる場面。良知さんは「今、はじめて知った」という演技ができていました。素晴らしかった。わかっていることなのに一緒に驚いて、感動してしまいました。
わらび劇場初日に気にかかったストーリーの非整合性や、ちょっと恥ずかしくなるような演出はすっかり改善されていました。横内謙介さんやスタッフの皆さんが初日後に対応されたんですね。ありがとうございました。
【新宿文化センター大ホール公演・出演】トキオ:良知真次(東宝芸能) マリア:五十嵐可絵(東宝芸能) アズリ(ダブルキャスト):三重野葵 柳瀬亮輔(※上野哲也が体調不良のため降板) スーラ:速水けんたろう(ホワイト・キャンパス) 神楽坂町子:椿千代 ダッタン:宮本昌明 タケ:岩本達郎(劇団扉座) エミ:碓井涼子 時計じいさん:岡村雄三 チルチル・クロキ:千葉真琴 シアン:森下彰夫 ヨッツン:瀧田和彦 ウメ:小林すず チータン:神谷あすみ ヘレン:工藤純子 ジュリー:山口貴久子 ロップ:鳥潟知沙 クロキの手下:上土井敦(劇団扉座) 串間保彦(劇団扉座)
原案:手塚治虫 脚本・演出:横内謙介 音楽:甲斐正人 振付:ラッキィ池田、彩木エリ 美術:金井勇一郎 照明:塚本悟 音響:小寺仁 衣裳:樋口藍 声楽指導:山口正義 ヘアーメイク:我妻淳子 小道具:岩辺健二、平野忍 演出助手:小沢瞳、栗城宏 音楽助手:紫竹ゆうこ 振付助手:高田綾、舞台監督:石井忍 監修:手塚眞 協賛:手塚プロダクション 角川エンタテインメント 共同制作:新宿区 企画制作:わらび座
【新宿文化センター大ホール公演】指定席: S7000円 A6000円 学生各1000円引き
http://www.warabi.jp/atom/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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