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2010年09月18日

サンプル『自慢の息子』09/15-21アトリエヘリコプター

 今、松井周さんの新作が2本同時に上演されています。さいたまで『聖地』を観た翌日に五反田で『自慢の息子』を観て、類似点と相違点で頭ぎゅるぎゅる。『自慢…』のイメージは“仮設”“かりそめ”“つくりもの”など。上演時間は約1時間40分弱。個人的にはR15ぐらいかと。

 『聖地』の半券を『自慢…』の受付で提示すると小さなプレゼントがもらえます。逆に『自慢…』の半券を『聖地』の受付に持っていくと、また違ったものがもらえます。私はアトリエ・ヘリコプターでこれ↓をゲット。嬉し!
sample_present.jpg

 ⇒げきぴあ「舞台ウラ話」
 ⇒wonderland「初日レビュー2010 第1回 サンプル『自慢の息子』
 ⇒野村政之さんによる「サンプル『自慢の息子』東京公演(2010.9.15-21)感想ツイートまとめ
 ⇒演劇ジャーナリスト徳永京子さんの感想ツイート
 ⇒CoRich舞台芸術!『自慢の息子

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。改行を変更。
 日本のどこかに独立国を作りあげ、その王となった息子(古舘寛治)を探す母親(羽場睦子)と、その場所を知っていると言って母親に近づき、金をせびる青年(古屋隆太)がいる。
 一方、息子は日課として、クレームを大企業のコールセンターにかけていた。
 「お宅は私の国に勝手に侵入しているがいかがなものか?」と。
 ある日、噂をききつけた若いカップル(奥田洋平&野津あおい)が母親に相談する。
 「私たちはその国に亡命したい。」
 母親は彼らを連れてさまよう。自慢の息子が作った国を目指して。
 「私」という領土は一体どこに存在しているのか?
 あるいはその境界は?
 「国」と「私」についての考察劇。
 ≪ここまで≫

 日用品、それもあんまり必要そうじゃないものが、まるで捨てられているかのように置かれたステージ。ものはいっぱいあるのに、がらんどうのよう。床に広がる大きな布をはじめ、さまざまな小道具を登場人物が“何か”に見なして、誰もが自分本位に話を進めていきます。

 全部が嘘に見えてくる。何もかもが嘘だとしても、生きてるのは本当。この「生きている」感が『聖地』の方がヴィヴィッドなんですよね(劇団の性質上ですが)。

 ここからネタバレします。『聖地』についてもネタバレします。

 正(ただし)という名前の“息子”(古舘寛治)は自分が暮らすアパートを「独立国家“正(ただし)」だと言い張ります。そこに「亡命」してくる人々。

 『自慢の息子』というタイトルがいいですよね~。「自慢」も「息子」もごく個人的なことだし、思い込み次第。
 相思相愛の兄妹(奥田洋平&野津あおい)が互いの体に触らないのに、アホみたいにもだえあうシーンに爆笑。これも“振り”だし“思い込み”ですよね。勝手に「これがエロい」と決め込んで実際に気持ちよくなっちゃうんだから、人間は自分で捏造(創作)した物語を糧に生きているんだな~と思います。

 いなくなった息子“陽”(本当はもともといない)の代わりに、偶然隣りにいた兄(奥田洋平)を“陽”として養子にした女(兵藤公美)。『聖地』の女教祖の後釜選びと同じ。地中で生活するようになるのも『聖地』のラストと重なりますね。
 ヘリコプターと大きな布は『聖地』でも活躍。偶然なのか戯曲の指定なのかと質問したいところでしたが、ネタバレなので遠慮しました。

 最後に登場人物がマリオネットのような動きをして、案内人(古屋隆太)がそれを指差し、「これが聖地の起源です」(←セリフはあいまいです)と言ったのには『ハコブネ』を思い出しました。

 一番好きだったシーンは母(羽場睦子)がシーツを肩から巻き付けてオレンジ色の帽子をかぶり、まるでドレスを着た西洋の婦人のような姿で、客席に背を向けて台の上に立っているところ。母の足元のシーツの下で息子(古舘寛治)が苦しんでいるのが無様で良かった。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:松井周 野村政之(サンプルのドラマターグ)

 スタッフと俳優がアイデアを出し合って、その場でいいものを選んで採用して、さまざまに変容しながら作品が完成していったんだなと思いました。トークを聞いての印象です。

≪東京、大阪≫ サンプル:07 大阪公演@精華小劇場(精華演劇祭2010特別企画)
出演:古舘寛治(サンプル・青年団) 古屋隆太(サンプル・青年団) 兵藤公美(青年団) 奥田洋平(青年団) 野津あおい 羽場睦子
脚本・演出/松井周 舞台美術/杉山至+鴉屋 照明/木藤歩 音響/中村嘉宏 衣装/小松陽佳留(une chrysantheme) 舞台監督/熊谷祐子 演出助手/郷淳 演出助手・WEB/牧内彰 ドラマターグ/野村政之 英語字幕/小畑克典 フライヤーデザイン/京(kyo.designworks) 宣伝写真/momoko japan 制作/三好佐智子、坂田厚子、坂本もも 企画・製作/サンプル、(有)quinada(キナダ) 共催/精華小劇場演劇祭実行委員会・大阪市 助成/財団法人セゾン文化財団、平成22年度文化庁芸術文化振興基金、財団法人アサヒビール芸術文化財団
【発売日】2010/08/01 全席自由(整理番号つき) 前売:3000円 当日:3300円
http://www.samplenet.org/yotei.htm

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 11:42 | TrackBack

さいたまゴールド・シアター『聖地』09/14-26彩の国さいたま芸術劇場小ホール

 さいたまゴールド・シアターとは、59歳から84歳までの公募で選ばれた役者さん42名が所属する、平均年齢71歳の劇団です(2010年9月現在)。座付き演出家は彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督である蜷川幸雄さん。今回は37歳の劇作家・演出家・俳優である松井周さん(サンプル)が新作を書きおろしました。過去レビュー⇒

 松井さんの作品を観た直後は、感想をひとことで言いたくなることが多いんです。恥ずかしながら語彙が貧弱なせいもありますが、たぶん空間全体のビジュアルや肌感覚が強烈だから、パっと印象深いことばで言い表したくなるんじゃないかと自己分析。今回は「人類」、「地層」でした。未来よりも過去の蓄積の印象が強かったです。出演者がゴールドシアターの方々なので、年輪の厚みを感じたからかもしれません。

 蜷川さんの演出で松井さんの劇世界がこんなにも変わるのかと驚きつつ、大胆さとわかりやすさが加えられても、松井周戯曲の核は変わらないことも確認。『聖地』を観て、松井さんには今後も色んな劇団への戯曲提供をしていって欲しいと思いました。上演時間は約3時間20分強(途中休憩15分を含む)。

 ⇒蜷川幸雄インタビュー「ゴールド・シアターには韓国からも声がかかってるんですよ
 ⇒CoRich舞台芸術!『聖地
 レビューは後ほどアップ予定。

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 近未来。安楽死法が施行された日本では、老人は延命医療よりも「最適な死」「りっぱな最期」をのぞむように求められていた。エコロジーという名の下に排除され、それぞれの場所で追いつめられていく老人たち―。
 そんな時、ある老人ホームでかつてのアイドル歌手の死亡が報じられると同時に、その死には不審な点が多いことがわかった。元ファンクラブのメンバーたちは彼女の入所していた老人ホームに乗り込み、謝罪を要求するにとどまらず、こんなことを宣言する。
 「私たちはここを乗っ取ることを宣言する。今からここは『聖地』となる」
 この声明をきっかけに、全国から行き場をなくした老人たちが『聖地』に集まってくる。
 『聖地』は完成するのだろうか?
 そして、ここは一体誰にとっての『聖地』なのか?
 ≪ここまで≫

第4回公演
出演:さいたまゴールド・シアター 中野富吉 北澤雅章 森下竜一 遠山陽一 髙田誠治郎 重本惠津子(Wキャスト:ちの弘子) 葛西弘 小川喬也 小林允子 益田ひろ子 倉澤誠一 大串三和子 佐藤禮子 石川佳代 竹居正武 宮田道代 田内一子 手打隆盛[さいたまネクスト・シアター](Wキャスト:松田慎也[さいたまネクスト・シアター]) 田村律子 西尾嘉十 林田惠子 吉久智恵子 竹居正武 宅嶋渓 美坂公子 宇畑稔 関根敏博 上村正子 加藤素子 渡邉杏奴 寺村耀子 堀文明(客演) 谷川美枝 髙橋清 ちの弘子(Wキャスト:宮田道代) 都村敏子 小林博 徳納敬子 滝澤多江 石井菖子 小渕光世 百元夏繒 中村絹江 木下小春役:熊澤さえか(さいたまネクスト・シアター)
脚本:松井周 演出:蜷川幸雄 演出補:井上尊晶 美術:安津満美子 照明:岩品武顕 衣裳:紅林美帆 音響:金子伸也 振付:広崎うらん 音楽:かみむら周平 音楽監修・歌唱指導:池上智嘉子 演出助手:大河内直子 藤田俊太郎 舞台監督:山田潤一 ラジコン操作:塚本勇 新井洋二 小池章則、太田博之 協力:ヒロボー、東京無線 制作統括:渡辺弘 武井裕之 技術統括:山海隆弘 営業宣伝:近藤一幸 鶴貝典久 小林辰郎 票券:松井哲 古出敬子 制作:高木達也 原口さわこ 主催・企画・製作;財団法人埼玉県芸術文化振興財団 助成:財団法人地域創造 
【休演日】16日、21日、24日【発売日】2010/07/10 全席指定 一般:3,000円 メンバーズ:2,700円
http://www.saf.or.jp/arthall/event/event_detail/2010/p0914.html
http://www.saf.or.jp/gold_theater/
http://ameblo.jp/gold-theater/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 11:33 | TrackBack