2011年09月03日
東京芸術劇場『芸劇+トーク―異世代劇作家リーディング『自作自演』岩松了×松井周』09/03水天宮ピット・大スタジオ
岩松了さんと松井周さんがご自身が書かれた小説(戯曲も)を朗読し、その後にトークをするという東京芸術劇場の企画です。劇場はただいま閉館中で、稽古場施設である水天宮ピットの大スタジオで行われました。私は大スタジオでの公演に伺うのはこれで5度目かも(⇒1、2、3、4)。来年は野田秀樹さんの『THE BEE』が同会場で再演されますね。
岩松さんと松井さんが約30分ずつ朗読された後、10分間の休憩をはさんでトークに入りました。密度の高い時間でしたね~。とにかく読まれた小説、戯曲が面白い!エロい!(笑)
今回が第1回目で、次回は11月20日(日)15時~。出演は宮沢章夫さんと戌井昭人さんです。
⇒CoRich舞台芸術!『自作自演 岩松了×松井周』
岩松さんも松井さんも俳優でいらっしゃいますので、朗読は安心して聴いていられましたし、とても面白かったですね。書いたご本人が読むからか、作品の指し示す方向が明確で理解しやすかったように思います。たとえば2人の人物の会話だと、一方からの質問の意図がはっきりしているし、もう一方がそれにどうやって答えるかにも、迷いがないというか。物語を直球で受け取れた感覚です。
トークでは戯曲と小説を書く時の違いなど、ざっくばらんに平易な言葉でお話しくださいました。お2人のファンだけでなく、劇作家や小説家も観に来られればいいのではと思いました。
ここからネタバレします。
■松井周 短編小説『およばれ』(講談社「群像」2008年4月号掲載)
リゾートマンションの販売会社でともに働く男女。他人に監視された地下シェルターで、互いに「あなたには興味がない」と確認した上で体を重ねる。なんともエロティック。松井さんお1人の声を聴きながら、主人公の男性の身体が、彼の精神と乖離していく、人間が分離していくような錯覚を味わいました。
家や空間に人は動かされているという感覚。人は能動的に、主体的に動いているわけではないという認識。
■岩松了 短編小説『乏しい愛の顛末』(紀伊國屋書店「ifeel アイ・フィール」2002年冬号掲載)/『蒲団と達磨』より(第33回岸田國士戯曲賞受賞作品)
『乏しい愛の顛末』は赤ん坊ごと乳母車を駅に放置した女性に執着する、ある駅員の独白で進みます。幕切れが痛切。
『蒲団と達磨』は夫婦の寝室になぜか居るタクシー運転手が凄い。夫婦のトボけたやりとりに爆笑しました。岩松さんがト書きを読むのを聴ける幸せ。
■トークのおぼえがき
「全てはリアクション。人は絶えずリアクションしている。つまり全ては演技である」という考えに納得。「見る/見られてる」ことが反応誘発装置。見られていること、つまり他者の視線が人を突き動かすファクター。「とめどない自分への演出力。自意識の合わせ鏡。人はそれとともに生きるしかない。」
「無防備の姿が美しい」のは、見られていることに無自覚な体のことですよね。
岩松さんが「演劇とは1人の人間がそこに居るということだけ」とおっしゃいました(たぶん)。演劇は究極的にはそうなのだと私も思います。
<第1回>
出演:岩松了 松井周 トーク聞き手:徳永京子徳永京子(演劇ジャーナリスト)
舞台監督:白神久吉 舞台監督助手:押中孝次 照明:乳原一美 音響:石丸響一 コーディネーター:徳永京子 制作:内藤美奈子 栗原千波 主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 東京都/公益財団法人東京都歴史文化財団
【発売日】2011/08/06 前売1,000円/当日1,500円 (全席自由)
http://www.geigeki.jp/saiji/039/index.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。
TACT/FEATIVAL『飛行隊』『ビモ・ボトッ~ビモのおにたいじ~』08/03-04水天宮ピット・大スタジオ
今年も東京にTACT/FEATIVALがやってきてくれました。東京芸術劇場が閉館中のため、会場は稽古場施設の水天宮ピットです。
昨年人気炸裂だった『ひつじ』(レビュー⇒1、2)の開演時刻には残念ながら間に合わず(涙)、『ビモ・ボトッ~ビモのおにたいじ~』と『飛行隊』を拝見。
野外テントでは大道芸や楽器演奏が行われており、すべて鑑賞無料。屋台もありました。一日中遊んで行った方もいらしたようです。
⇒CoRich舞台芸術!『飛行隊』『ビモ・ボトッ~ビモのおにたいじ~』
ここからネタバレします。
■【カナダ/演劇・マイム】コープス『飛行隊』
≪あらすじ・作品紹介≫
カナダ軍第217飛行中隊は、きびしい予算削減により飛行機をすべて失ってしまいました。でも5人の戦闘パイロットは志を失わず、可能なあらゆる場所で地上訓練を続けていきます。ポップ司令官の指揮の下、カナダだけではなく世界各地で厳しくも陽気な、観客も参加する飛行訓練を展開中。
≪ここまで≫
厳しい司令官のもと、男女各2名ずつ合計4名のパイロットが、組体操のような身体表現で訓練の様子を非常にコミカルに見せてくれます。衣裳は全身黒タイツ。英語、フランス語、スペイン語(?)そして日本語など、数種類の言語が当然のように混在しているのが素敵。
コープスは『ひつじ』も上演しています。羊飼い役のデヴィッドさんが飛行隊の鬼・司令官役。ちょーかっこいーーーーーーー!!!
客席から1人の観客を選んで、飛行隊の一員として訓練する場面があります。私が観た回の参加者は小さなお嬢さんと一緒だった若いお母さん。この方が見事に飛行隊と一緒に演技をされて、拍手喝さい!あれはかっこ良かったな~。
最後は「カナダには飛行機がない。でもアイデアはある!」と言って、飛行機が飛ぶところ(パイロット4人が司令官を持ち上げる)を見せてくれました。大スタジオの搬入口から外へと飛び立って終幕。
■【インドネシア/影絵】ハナ★ジョス/インドネシア『ビモ・ボトッ~ビモのおにたいじ~』
≪あらすじ・作品紹介≫
屋敷を焼かれ、あてもなく森をさまよっていたビモとその家族に親切に宿を貸してくれたとある村。しかし、その村は人食い鬼がやってくる村で、ビモは親切にしてくれた村人のために、どこからかやってきた道化師たちとともに鬼退治にむかいます!
≪ここまで≫
流暢な日本語でコミカルな影絵を見せてくれました。上手手前では楽器の生演奏があり、影絵に合わせて歌と音楽を聴かせてくれます。
実は人形はフルカラー。切り絵が微細で美しいです。最初はスクリーンの裏側で人形を操作していたのですが、中盤以降は人形使いのお兄さん(1名)が人形を持ってスクリーンの表側に移動してきました。客席に背を向け、スクリーンに人形をすりつけるようにして、前半と同じように演技をしてくれます。客席が舞台裏になる逆転が面白かったですね。
大きな葉っぱ(のようなもの)を裏返すと燃え盛る炎の絵が書いてあり、善悪(天国と地獄)が表裏一体になっていることを表しているようでした。人食い鬼を若者が退治する話ですが勧善懲悪ではなく、最後にはやんわりと、世界は清濁併せ持つものであるというメッセージがあったように思います。
お歯黒のお姉さんは一体どういう意図のキャラだったんでしょうか・・・(笑)
TACT/FEST 7-8月 2011年 大阪・松本・新潟・東京・びわ湖
国際自動青少年芸術フェスティバル・こどもとおとなのシアターパーク
http://www.tact-japan.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。
ホリプロ・東京芸術劇場『「100万回生きたねこ」リーディング発表会』06/30水天宮ピット・大スタジオ
ベストセラーの絵本「100万回生きたねこ」をミュージカル化することを念頭に、若手劇作家3人に台本執筆を依頼して、リーディングの形で上演する企画です。東京芸術劇場芸術監督の野田秀樹さんが監修されています。糸井幸之介さん、戌井昭人さん、中屋敷法仁さんの台本競作とキャストの豪華さに惹かれて伺いました。
終演後に観客とのディスカッションの時間があり、観客がけっこう積極的に質問・意見されていて面白かったです。ここから始まって、本当にミュージカルとして上演される日が来たら嬉しいな~。
⇒CoRich舞台芸術!『「100万回生きたねこ」リーディング発表会』
≪企画概要≫ 公式サイトより
若い才能育成の場として、長期的視野で新しいものを生みだすことのできる環境をつくる、そんな芸術監督の思いがいよいよ始動。
手始めに、幅広い世代から支持を受ける『100万回生きたねこ』リーディングをトライアウトします!
ミュージカル化を念頭に執筆を依頼したのは、新進気鋭の劇作家3名。糸井幸之介(FUKAIPRODUCE羽衣)、戌井昭人(鉄割アルバトロスケット)、中屋敷法仁(柿喰う客)。まったく毛色の違う三者三様の戯曲を、野田秀樹監修により1本の戯曲にまとめてお贈りします。
≪ここまで≫
中屋敷さんの演出が素晴らしかったですね~!リーディングとはいえ、すっかり作品に没頭して楽しませていただきました。照明効果もしっかりあって良かったです。音楽も阿部海太郎さんのオリジナルなんですね。
ここからネタバレします。
いきなりラップで始まったのが衝撃的。最初は中屋敷法仁さんの脚本です。中盤が糸井幸之介さん、終盤が戌井昭人さん。糸井さんの掃除機がブルンブルン!と活躍する歌が可笑しかったな~。戌井さんの黒子が登場するラストシーンはロマンティックで演劇的でした。ちょっと涙ぐんでしまった。
【出演】ねこ・玉置玲央/白いねこ・笹本玲奈/飯野めぐみ/澤田慎司/日高啓介/深井順子/深谷由梨香/村上誠基(50音順)
原作:佐野洋子 作「100万回生きたねこ」(講談社刊) 上演台本[競作]:糸井幸之介/戌井昭人/中屋敷法仁(50音順) 演出:中屋敷法仁 音楽:阿部海太郎 舞台監督:井関景太 清水規雄 照明:工藤雅弘 松本永 音響:佐藤こうじ 企画制作:ホリプロ 主催:ホリプロ/東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 東京芸術劇場芸術監督:野田秀樹
ご観劇及び、ディスカッションへの参加費 2,000円(税込)
*ご観劇のみのお客様も参加費は同一料金になります。*会場の定員がありますので、ご観劇&参加をご希望される方は、事前のご予約をお勧めいたします。*当日のお求めは 2,500円(税込)となりますので、予めご了承ください
※開場は開演の30分前になります。※整理番号順のご入場を希望されるお客様は、開演20分前にお集まりください(当日引換のお客様は、お引換の上ご集合ください)。遅れられたお客様にはご入場をお待ち頂くことがございます。予めご了承ください。
http://www.horipro.co.jp/usr/ticket/kouen.cgi?Detail=167
http://www.geigeki.jp/saiji/037/index.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。