2012年09月07日
日穏-bion-『かわたれの空』08/29-09/04シアター風姿花伝
日穏-bion-(ビオン)は岩瀬晶子さんがプロデュースを手がける演劇ユニット。岩瀬さんは女優としてだけでなく脚本家、アナウンサーとしても活動されています。上演時間は約1時間40分。
「夏に戦争を題材にした作品を鑑賞する」という日本の習慣は、ずっと守っていっていいだろうと私は思っています。今年は朗読劇『少年口伝隊一九四五』が上演されないので、私にはいい機会だったかもしれません。
⇒CoRich舞台芸術!『かわたれの空』
レビューは記録程度です。
≪あらすじ≫ 公式サイトより
昭和27年夏、日本が戦後初めて参加したヘルシンキオリンピックが行われている頃・・・。
港の見える町の一角にたたずむ飲み屋には、毎日のように近所の住民が集まってきては一杯酒を酌み交わして帰っていく。
そんなある日のこと、一人の傷を負った男が店に運び込まれてくる。彼は9年前にその町から出征し、戦死したと思われていた男だった。彼の生還に沸く家族や住民たち。
しかし、彼にはその町で過ごした記憶が全くなかった・・・
≪ここまで≫
戦争によって理不尽に奪われる市井の人々のささやかな幸せ。
選曲含め演出は私好みではなかったです。演出家も出演者も、登場人物1人ひとりに思い入れがあるのだと思いますが、会話の中に不要な間(ま)が多かったように思います。
岩瀬さんが演じたのは記憶を失った元兵士の妻役。キリっとした聞きやすい発語をされながら、ふんわりと膨らみがあるきれいな声でした。さすがはアナウンサーだと思いました。
ここからネタバレします。
「かわたれ」とは朝焼け前あたりの時刻のこと。「たそがれ」の反対だそうです。
第3回公演
出演:山田将之、岩瀬晶子、田辺日太、大原研二、内田晴子、深津哲也、田村幸士、市村尚子、木村龍太、玉代勢圭司、亀岡園子、たんじだいご
企画・脚本:岩瀬晶子 演出:たんじだいご 照明:大村真一 音響:平井隆史(末広寿司) 舞台美術:吉野章弘 舞台監督:村信保 制作:遠藤いづみ(TEAM♯BISCO) 宣伝美術:田村幸士 題字:岩瀬敦子
【発売日】2012/07/01 前売り3,500円 当日3,800円(日時指定・全席自由) 8月29日(水)7時半&31日(金)2時 割引3,300円 ペアチケット 2枚1組6,500円 学生割引 2,800円
http://bion.jp/?page_id=46
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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ワタナベエンターテインメント・Dステ11th『クールの誕生』09/04-10紀伊國屋ホール
稽古場レポートを書かせていただいた『クールの誕生』東京公演初日を拝見。上演時間は約2時間10分(途中休憩なし)。D-BOYS舞台公演の過去レビュー⇒1、2、3
D-BOYSファンの若い女性の笑い声と、大人の男性客の笑い声が響きました。老若男女問わず楽しめる娯楽作だと思います。1960年代のお話ですが、現役サラリーマンへのメッセージも込められています。
⇒CoRich舞台芸術!『クールの誕生』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
明日への夢があふれていた1960年代・・。裏銀座にある弱小商社「東京堂物産」の社員たちは、来年に控えた東京オリンピック用のグッズ販売の権利を得ようと必死だった。隣接するグランドキャバレー「COOL」で、あの手この手で取引先を接待するのだ。若手社員・岡田清(牧田哲也)と安達裕人(三上真史)もそんな狂騒に巻き込まれる。二人は伝説のサラリーマン・塙(柳浩太郎)に導かれるようにたくましく成長してゆくが、やがて派閥争いに巻き込まれ、ホステス・美枝子(三鴨絵里子)を巡る恋に翻弄され、同期の友情にひびが入る。そして訪れる東京堂物産の危機に、二人はもう一度手を取り合って立ち向かうことになるのだが・・。
ジャズ、キャバレー、接待・・60年代の風俗の中で、時流に流されながらも夢とプライドを持ちながら生きようとするサラリーマンたちの姿を、おまぬけに、エネルギッシュに描きます。
≪ここまで≫
ここからネタバレします。
キャバレーに勤めるボーイ(堀井新太)が東京堂物産の情報をライバル会社にリークし、その会社の社員になっていたなんて。苦味があっていいですね。
中堅社員の矢部(鈴木裕樹)は恋人のホステス(三鴨絵里子)を連れ出して、会社を辞めてしまいます。会社のルールを破りそうにない人物が、全く予想外の大胆な行動に出てしまうことの衝撃って大きいんですよね。稽古場で演出家が指摘されていたことが改善されていました。
幻のサラリーマンを演じた柳浩太郎さんの予想できない動きが、強烈なナンセンスギャグを生むのが面白かったです。最後の場面で旅行鞄を床に放り出したのには、声を上げて笑っちゃいました(笑)。カルピスの瓶に直接水を入れて飲むのもか可笑しかったな~。ひょうひょうと独自の美学を披露していくキャラクターがぴったりでした。
≪終演後のトーク≫
出演(左から):牧田哲也 鈴木聡(脚本) 山田悠介
脚本の鈴木さんが書籍「社畜のススメ」(藤本篤志)に言及されました。私自身も過剰な個性重視の風潮には疑問があるので、生き生きと働いている会社員を描く『クールの誕生』は爽快でした。
出演:柳浩太郎、鈴木裕樹、加治将樹、牧田哲也、三上真史、山田悠介、堀井新太(以上D-BOYS・順不同)/ 三鴨絵里子、俵木藤汰、弘中麻紀、永井秀樹
脚本:鈴木聡 演出:山田和也 音楽:川崎晴美 美術:二村周作 照明:佐藤公穂 音響:長野朋美 衣裳:木村猛志(衣匠也) 演出助手:相田剛志 舞台監督:堀吉行(DDR) 宣伝美術:タカハシデザイン室 宣伝写真:西村淳 宣伝衣裳:牧野iwao純子(ダダグラム) 宣伝ヘアメイク:糸川智文 協力:藤本篤志 宣伝:大澤剛 票券:上野正人 制作:水島智代 佐藤みのり プロデューサー:渡部隆 総合プロデューサー:渡辺ミキ
【一般発売】7月7日(土)午前10時~【料金】7,000円(税込/全席指定/未就学児童入場不可)
※D-BOYS STAGEは11thよりDステになりました。
http://www.dstage.jp/cool/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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マルハンクラブ『父を葬る』09/05-09劇場MOMO
新国立劇場『温室』での怪演に魅せられ、半海一晃さん演出の舞台を観に行くことにしました。脚本は石原燃さん。石原さんのことは日本劇作家協会「月いちリーディング」でお見かけしていました。
劇場MOMOに行ったのって、ものすごく久しぶり。上演時間は約1時間30分。
⇒CoRich舞台芸術!『父を葬る』
≪あらすじ≫
25年会っていなかった父親の遺骨を受け取った。納骨したのに成仏してくれない。
≪ここまで≫
1人暮らしの女性の部屋に父親の幽霊が出てくるお芝居といえば、井上ひさしさんの『父と暮せば』。現代、というより、まさに今の日本に置き換えたようなお話になっていました。
父親役の二瓶鮫一さんがすっごくキュートでした。どんなに大声で怒鳴っても可愛らしいのって凄い。
ここからネタバレします。
父親は母親と娘を棄てて日雇労働者になっており、酒場で友達(半海一晃)に殴られて死亡。母親はガンで既に亡くなっており、娘は高校は卒業したものの母親の看病と仕事に追われ、友達もできないまま孤独に生きてきました。娘の職業はスーパーのレジ打ちのパート職員。重労働なのに薄給で、クビが怖いから上司には何も文句が言えません。
父親がばけて出てきたのは、娘が放火をするのを止めさせたかったから。そして娘と楽しく飲みたかったからなのかな。両方を叶えたから成仏したのだと思いました。
マルハンクラブ番外公演
出演:近藤佑子(三条会)、二瓶鮫一、半海一晃
作:石原燃 演出:半海一晃 美術:大津英輔 照明:宮野和夫 音響:坂口野花 舞台監督:伊藤新 松下清水+鴉屋 宣伝美術:春口浩一郎(スフィア) 制作協力:ぷれいす
一般発売:2012年7月30日[月] (全席指定、税込) 4,000円
http://www.place-net.co.jp/maruhan.html
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日本劇作家協会『戯曲朗読研究会・月いちリーディング』06/30座・高円寺の地下稽古場2
日本劇作家協会の『戯曲朗読研究会・月いちリーディング』に初参加してきました。採り上げられた戯曲は鈴木アツトさんの新作『グローバル・ベイビー・ファクトリー―Global Baby Factory』。
朗読といってもただ読むだけではなく、しっかり演技もしてくださいます。無料イベントで継続開催されているので、お客様には常連さんが多いようですね。⇒今月は9月29日。
⇒CoRich舞台芸術!『月いちリーディング/12年6月』
『グローバル・ベイビー・ファクトリー』の題材はその名のとおり“赤ちゃん工場”。妊娠できない日本人女性がインド人女性に代理母になってもらうのですが…というお話です。代理母だけでなく色んな社会問題を織り込んだ面白い戯曲で、実際の上演に興味が湧きました。
自作が朗読され、その場で講評されるのは、まな板の上の鯉になった気分なのではないでしょうか。立候補する劇作家さんには相当の勇気が必要だと思います。
【出演】赤澤ムック(黒色綺譚カナリア派) IKKAN(テアトルエコー/オフィス怪人社/ツラヌキ怪賊団) おーみまみ(アズリードカンパニー) 枝元萌(ハイリンド) 帯金ゆかり 坂本鈴(劇団だるめしあん) 重田千穂子 西田夏奈子 宮本奈津実(味わい堂々) 矢内文章(アトリエ・センターフォワード) 丸尾聡
【コーディネイター】丸尾聡 (世の中と演劇するオフィスプロジェクトM) 【ファシリテイター】山田裕幸 (ユニークポイント) 【今月の劇作家】永井愛 (二兎社) 【ゲスト】谷賢一 (DULL-COLORED POP) 【劇作家協会リーディング部】長谷基弘 石原燃 篠原久美子 谷賢一 中津留章仁 夏井孝裕 丸尾聡 山田裕幸
無料。要予約。
http://www.jpwa.org/main/activity/reading-workshop
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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