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2008年01月14日

【稽古場レポート】わらび座『ミュージカル「火の鳥~鳳凰編」』稽古初日01/04わらび座 第五けいこ場

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わらび座 第五けいこ場

 新年早々、秋田県角館のわらび座を訪れました。昨年秋にたざわこ芸術村にお邪魔して以来です。(⇒写真レポート

 わらび座は今年、手塚治虫の名作漫画「火の鳥」をミュージカル化します(⇒制作発表の写真レポート)。3/28(金)~29(土)にパルテノン多摩でプレビューがあり、4/25(金)に新宿文化センターで開幕します。2009年まで全国ツアーが続く大規模公演です。
 演出家の栗山民也さんらビッグなスタッフ陣を向かえた、一大プロジェクトの稽古初日を見学させていただきました。

 ⇒虫ん坊2008年2月号(2008/02/02リンク追加)
 ⇒CoRich舞台芸術!『ミュージカル「火の鳥~鳳凰編」

 ↓角館駅に降り立つと、一面の雪景色!駅についた頃から吹雪き始めました。
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 ↓わらび座の本拠地・たざわこ芸術村へは角館駅から車で約10分ほどです。車の窓からの景色も真っ白!
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 ↓第五けいこ場です。たざわこ芸術村の敷地からほんの少し離れたところにあります。
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 ↓広い稽古場には出演者とメインのスタッフが集結。演出の栗山さんらを迎えた公式の顔合わせです。
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 栗山さんと音楽の甲斐正人さんをはじめ、振付の田井中智子さん、歌唱指導の矢部玲司さんも、東宝ミュージカル『マリー・アントワネット』を作ったチームなんですね。これは期待も高まります!
 まずは明るいムードの中、栗山さんのご挨拶から始まりました。 

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↑栗山さんと演出助手の栗城宏さん

 栗山「『火の鳥』とは、正体がつかめない、いわば永遠の課題なんだと思う。それはまるで運命のように目には見えない、得体の知れないものを探求すること。稽古が終わって本番になっても、ステージをやる度に奥深い、謎に包まれたドラマを探して行くことになると思います。出来上がったシーンをただそのまま繰り返すのではなく、これで終わったと思わないで、常に動くことで何かが見つかっていくんじゃないかな。」

 栗山「この舞台に主役はありません。メインの役といっても多く登場するだけで、たまたまその時、その人に光が当たっているだけ。例えば8人で一緒に歌っていても、自分1人の世界だと思ってください。1人1人が主役となって、舞台で起こる瞬間々々にぶつかり合い、足し算ではなくかけ算になるような作品にしましょう。毎回、演じる相手と新鮮に出会っていけば、本質が見えるはず。」

 ↓そして一人ずつの自己紹介が終わると、振付の田井中さんの指導のもと、ストレッチ体操の時間になりました。
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 筋肉の部位についての丁寧な説明から始まる、緻密なストレッチです。ただ身体を伸ばすだけでなく、身体の内側へと想像力を働かせるんですね。手や膝を置く位置などの指定がとても細かい!

 ↓ストレッチの後はダンスです。田井中さんがその場で付けた振付を、役者さんたちが覚えて踊ります。
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 数チームに分かれて順番に踊るのを、演出の栗山さんがじっと見つめています。ダンスの後は1人ずつ持ち歌を歌ったり、モノローグを披露したり。まだメインの登場人物以外はキャストが決まっていませんので、いわばオーディション状態。ん~、コレは緊張するっ!

 『火の鳥』のメインキャラクター(我王/茜丸/速魚/ブチ)を演じる俳優さんをご紹介しましょう(我王役のパク・トンハさんはお休みでした)。
 ↓まず、茜丸役の戎本みろさん(⇒プロフィール、⇒インタビュー)。
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 制作発表の時はスっと爽やかな印象だったのですが、比較的若いキャストに囲まれているからか、とても貫禄のある頼れるお兄さんタイプの方のようにお見受けしました。静かに立つ姿や、一歩一歩踏みしめるように歩む足取りにズシリと重みがあります。

 ↓2人のヒロインの内の1人・速魚(はやめ)役を演じる碓井涼子さん(⇒プロフィール、⇒インタビュー)。キラリとした輝きのある清楚なお顔。細い体だけど芯のあるキリっとした歌声です。
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 ↓もう1人のヒロイン・ブチ役はダブルキャストです。まずはわらび座の田郷真友さん(⇒プロフィール、⇒響ボーカル)。はつらつとしてらっしゃるので、田郷さんが動くと周りがパっと明るくなるんですよね。
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 ↓2人目のブチは今泉由香さん(客演)。ミュージカルだけでなくストレート・プレイにも出演されてきた女優さんです。体のバネが生きているダンスには躍動感があり、高い歌唱力も魅力です。写真はイスに座った誰かに話しかける演技をしているところです。※写真提供:わらび座
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 ↓キャストは未定ですが、とても目を引いたのは『坊っちゃん』主役の三重野葵さん(⇒プロフィール、⇒インタビュー)。その場に溶け込んで、彼が動けば空気も一緒に踊るような、しなやかな存在感でした。
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 ↓独唱を聴いて思わず涙してしまったのは、『笛じいちゃんとボクの宇宙(そら)』主役の末武あすなろさん(⇒プロフィール、⇒インタビュー)。※写真提供:わらび座
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 劇中歌の「いつか地球を飛び出して!」を披露してくださいました。前奏の時から役柄にグっと入り込まれたようで、立ち姿も歌声もとても美しかったです。

 初日ということで14時~18時までの短めのお稽古でした。ピリっとした緊張感で引き締まる時間もありましたが、皆さんが終始ほがらかで、全体的に居心地の良いのどかなムードでしたね。
 ↓全員で車座になり、1人ずつ順番に中央に出て、モノローグを言うお稽古がありました。
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 話す人も聞く人も、お互いにコミュニケーションを取ってリアクションをします。そのやりとりがすっごく暖かいんです。人と人との間の心の壁がなくて、何でも柔らかく受け止めてくれそうな・・・。色んな稽古場を見学してきましたが、この素朴で優しい空気はなかなかないと思います。

 誰もが伸び伸びと自分を発揮できる創作現場で、『ミュージカル「火の鳥~鳳凰編」』の芽が吹く瞬間を、目で見て体で感じることができたように思いました。

 そうそう、私の写真の腕が悪いため全く伝えられていなくて残念なのですが、女性は皆さん、とってもお肌が白くてきれいなんですよーっ!「はぁ~・・・♪」っと、うっとり見つめちゃうぐらい透き通った肌をしてらっしゃいます。やっぱり東北は美女が多いっ!

 1泊2日でお邪魔しまして、2日目はたざわこ芸術村の保育所を見学させていただきました。レポートは後ほどアップします。※アップできていません。ごめんなさい。

出演予定(わらび座):椿康寛/岡村雄三/長掛憲司/戎本みろ/平野進一/森下彰夫/三重野葵/飯野裕子/遠藤浩子/碓井涼子/田郷真友/小林すず(小林涼子あらため)/末武あすなろ/山口貴久子
客演:パク・トンハ(2008年4/25~5/15まで)/内田勝久/中山城治/本間識章/森山晶之/渡部徹/今泉由香
原作:手塚治虫 演出:栗山民也 脚本:齋藤雅文 音楽:甲斐正人 美術:妹尾河童 演出助手:栗城宏 振付:田井中智子 振付助手:高田綾 歌唱指導:矢部玲司 歌唱指導助手:紫竹ゆうこ 舞台監督:石井忍・板子光男 稽古場助手:黒木いづみ 制作:渡辺澄子 広報:押久保陽子/尾﨑隼 協賛:手塚プロダクション・角川書店
http://www.warabi.jp/hinotori/

※注意を払って記事を掲載していますが、正確な情報は公式サイトでご確認ください。
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Posted by shinobu at 14:39 | TrackBack

劇団鹿殺し『2008改訂版・百千万(ももちま)』01/11-21駅前劇場

 大阪から東京に拠点を移したばかりの頃は、劇団員が一軒家に同居して路上パフォーマンスをしながら生活しているのが話題になった、劇団鹿殺し。新劇団員が増えて新体制になったようです。私は本公演を観るのは2度目です(関連過去レビュー⇒)。

 上演時間は2時間強。私が観た回は当日券が36枚も出たそうで、大入り満員でした。でも立ち見はなかったですね。まだ開幕したばかりなので今なら座れるぐらいの混み具合なのでしょう。

 「劇場へ行こう!~駅前劇場編~」に参加している公演です。DMに書かれたID番号があれば、参加団体のチケットを割引価格で予約できますよ♪これから上演されるMCR劇団フライングステージの公演が最低でも2割引!!(観たことがない団体に限ります)

 ⇒CoRich舞台芸術!『2008改訂版・百千万

 ≪あらすじ≫ CoRichより
 福井県美浜町の原発で事故が起こる。同じ年に生まれた少年、「エンゲキ」。彼の頭は肥大し、腸でぐるぐる巻きの体はがんじがらめの姿であった。
 母親は彼を産んですぐに失踪。父親は醜い息子「エンゲキ」を哀れみ、部屋に閉じ込めて育てる。
 しかし、ある日外に飛び出し鏡をのぞいた「エンゲキ」は自らの醜い姿を目撃。
 父親は言う。「外の世界など見なくてもいい。お前には何もできないのだから」
 「自分には何もできないのだろうか。なぜ自分が醜く、非力に生まれてきたのか、そのなぞを解きたい!」家を飛び出したエンゲキは不自由な体で長い長い旅に出る。旅の途中、さまざまな世界で力いっぱい生きる人々の姿に、生きること、一心に何かを突き詰めることの持つ力、メッセージを受け取り、、エンゲキは少しずつ、自分の中に芽生える野心や衝動を確認していく。はたして彼の長い旅路の果てにあるものとは何なのか……。
 ≪ここまで≫

 客席に向かって堂々と場面の説明をしたり、顔が白塗りだったり、水や食べ物がネタに使われたり、客いじりがあったり、全体的に私の好みではない作風です。もちろんお好きな方も大勢いらっしゃると思います。人気劇団ですものね。

 東京初の劇場公演に比べると、今回は元気さや、がむしゃらさが減り気味のように感じました。上京してからたった2年半ほどで新宿コマ劇場公演に脚本提供したり、スペース・ゼロで本公演を打ったりしていますから、こなれてきて当然なのかもしれません。でも、やっぱり荒削りなパワー全開なのが劇団鹿殺しの個性なんじゃないかな~とも思うので、ちょっと残念でしたね。

 映像のクオリティがとても高かったです。駅前劇場の広い間口いっぱいに広がって、お芝居ときっちり連動しているのは凄いですね。でも美術や衣裳などの質は(敢えて)低い目なので、アンバランスなのが少々気になりました。

 ここからネタバレします。

 “必要性が感じられない男性の裸体の露出”が個人的にかなり苦手な私ですが、『「銀河鉄道の夜」を演じる裸族たち」は受け入れられました(笑)。前張り芝居・・・(笑)。
 オレノグラフィティさんは若い男優さんならではの爆発力があるように思いました。鍛えられた身体もきれいですね~。

 魚の帽子を被ったシンガー・岸本啓孝さんの歌が良かったです。カニの“のんちゃん”役の谷山知宏さんもやり切ってくださって面白かった。

 チョビさんの衣裳が脳ミソがでっかい“エンゲキ”のまま、変化がなくて残念。へその緒を脱ぎ去る演出が欲しかったな~(勝手ですみません)。でも「(エンゲキは)頭頂部から見るとただれたキンタマに見える」は可笑しかった(笑)。
 チョビさんってハスキーヴォイスでワイルドな雰囲気もありつつ、コケティッシュでキュートなんですよね。そこが観たかったし、歌も聴きたかったな~。

 「想像力を働かせて・・・」というセリフが何度か出てきましたが、そうやって言葉にしてしまうことで、想像力の世界がしぼんでしまうように思いました。
 
劇場へ行こう!~駅前劇場編~ 参加作品
出演:菜月チョビ、丸尾丸一郎、オレノグラフィティ、橘輝、円山チカ、菅野家獏、坂本けこ美、佐藤輝一、しのだ藍郎、高橋戦車、傅田うに、道園遼一、山岸門人、岸本啓孝、谷山知宏(花組芝居)政岡泰志(動物電気)
作:丸尾丸一郎/構成:劇団鹿殺し/演出:菜月チョビ/劇中歌・チラシ・Web:李/舞台監督:佐藤恵・下井崇裕・杣屋昌洋/舞台美術:加藤まゆこ/照明:工藤雅弘(Fantasista?ish.)/照明操作:吉村愛子(Fantasista?ish.)/音響:高橋秀雄(Sound Cube)/音響操作:楠瀬ゆず子/(Sound Cube)/衣装:赤穂美咲/映像:ムーチョ村松(トーキョースタイル)・西川友規・平野晶子/制作:遠山ちあき・内藤玲奈/制作統括:樺澤良/企画・製作:劇団鹿殺し/主催:オフィス鹿
【発売日】2007/11/24 前売り3,200円 当日3,500円
http://shika564.com

※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。
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Posted by shinobu at 10:30 | TrackBack