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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2009年06月06日

【お知らせ】wonderlandに寄稿させていただきました(2009年6/10発行のメルマガ第143号に掲載)

 “小劇場のいまにふれる劇評サイト~wonderland”に、Bunkamura『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』についてのレビューを掲載していただくことになりました。

 まずは6/10(水)に配信されるメルマガ「小劇場レビューマガジン ワンダーランド」第143号に掲載されます。ご興味のある方は、よかったらメルマガにご登録くださいませ。レビュー以外にも、お得な情報が載ってますよ♪

 ⇒週刊「マガジン・ワンダーランド」(無料)登録ページ

 ⇒ウェブサイトに掲載されました(2009/06/12)。

Posted by shinobu at 20:06 | TrackBack

新国立劇場演劇研修所第3期生試演会①『美しきものの伝説』06/05-07新国立劇場 小劇場

 新国立劇場演劇研修所・第3期生の第1回目の試演会です。2年の基礎訓練を経て3年生になった研修生は、最後の1年間に実際の舞台公演(計3回)を行います。申し込み必須の無料公演で、早々に受付は終了していました。過去レビュー⇒1期生の試演会1試演会2卒業公演1回目卒業公演2回目2期生の試演会1試演会2卒業公演

 め組とろ組のダブルキャスト公演で、各2ステージずつ。私はめ組の2ステージ目を拝見しました。1964年初演の宮本研・作『美しきものの伝説』は、大正時代に実在した社会主義者や小説家、演出家、俳優たちのお話です。上演時間は約3時間15分(途中15分の休憩を含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『美しきものの伝説

20090606_utsukushiki.jpg
劇場入り口の看板

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 大正元年、四分六(堺利彦)はクロポトキン(大杉栄)、暖村(荒畑寒村)らと興した売文社で、雑誌『近代思想』を発行し始める。3人は大逆事件の残党で、いつか行動を起こそうと機会を待っている。そこへ、青鞜社のモナリザ(平塚らいてう)に会うために、女優志望の野枝(伊藤野枝)が訪れる。
 一方、洋行帰りのルパシカ(小山内薫)、早稲田(沢田正二郎)、サロメ(神近市子)たちは、新劇や政治について熱く議論を交わしている。先生(島村抱月)が主宰する芸術座では、松井須磨子主演の『復活』が、音楽学校(中山晋平)作曲の劇中歌もあって大当たりをとる。またクロポトキンは妻がいながらサロメとも恋愛関係にあった。
 やがてクロポトキンらは時期を待てずに動き出し、「平民新聞」を発行するが発禁処分を受ける。その活動にも温度差が生じ始め、暖村は距離を置くようになる。そんな時、野枝は夫の幽然坊(辻潤)と別れてクロポトキンの元にやってくる。
 芸術座のサロンでは学生(久保栄)も議論に加わるようになるが、スペイン風邪がもとで先生が亡くなり、松井須磨子もその後を追い自殺。クロポトキンは革命思想を突き詰めて行く・・・。
 ≪ここまで≫

 長編戯曲をオーソドックスに、セリフの意味を大切に演出されていたように思います。登場人物が理想の演劇や演技手法について語るシーンも多く、日本の俳優学校で上演されるのに、ぴったりな演目なのかもしれませんね。長いセリフが多い上に言葉も平易ではありませんから、ハードルは高いと思います。

 1期生、2期生と研修生の試演会を拝見してきたこともあり、私が試演会でついつい期待してしまうのは、俳優がその場に居ることの力や輝き、そしてそこから生まれる目には見えない何かです。作品自体が面白いかどうかよりも、目の前にいる人(俳優)に意識が集中してしまうんですよね。そういう意味では、今日の公演で私の心身をゆさぶってくれた人はいなかったかも(開場時間に歌ってくれた女優さんは素晴らしかったです)。また次の試演会を楽しみに待とうと思います。

 ここからネタバレします。

 明晰な話っぷりといえばルパシカ(小山内薫)役の長元洋さん、音楽学校(中山晋平)役の米川貴久さん。芸達者で器用だなと再確認したのは四分六(堺利彦)役の金成均さん(でも私は『最後の炎』の時の方が好き)。早稲田(沢田正二郎)と呼ばれる調子のいい役者役の竹田桂さんは、トボけた演技で笑いを誘ってくださいました。松井須磨子役の辻村優子さんとの2人劇中劇も可笑しかった。幽然坊(辻潤:野枝の夫)役の若菜大輔さんは登場した瞬間にその立ち姿に目が奪われました。でも長ゼリフは少々リズムが単調だった気も。 

 賛助出演の先生(島村抱月)役の井上倫宏さん(演劇集団円)、暖村(荒畑寒村)役の神野崇さん(文学座)もすごく丁寧に演じていらっしゃるように感じました。
 突然坊役の二木咲子さんが開演前の前説がわりに歌を披露して、劇場の空気を心地よく盛り上げてくださいました。二木さんは1期生ですから、修了して2年経っているんですね。さすがの貫禄と華やかさでした。修了生がこんな風にどんどん成長していかれるなんて、ありがたいことだと思います。

め組(5 日18 時/6 日13 時)/ろ組(6 日18 時/7 日13 時)
【出演】松井須磨子:[め]辻村優子 [ろ]二木咲子(1期生・賛助出演) 先生(島村抱月):井上倫宏(演劇集団円・賛助出演) ルパシカ(小山内薫):長元洋 早稲田(沢田正二郎):竹田桂 音楽学校(中山晋平):米川貴久 学生(久保栄):宇髙海渡 クロポトキン(大杉栄):香原俊彦 暖村(荒畑寒村):神野崇(文学座・賛助出演) 四分六(堺利彦):金成均 野枝(伊藤野枝):[め]岸田茜 [ろ]鈴木良苗 モナリザ(平塚らいてう):[め]野村真理 [ろ]熊坂理恵 サロメ(神近市子):[め]吉田紗和子 [ろ]渡邉樹里 尾行:趙栄昊(4期生) 女給:[め]鈴木良苗 岸田茜 幽然坊(辻潤):若菜大輔 突然坊:[め]二木咲子(1期生・賛助出演) [ろ]辻村優子 裏方:大杉良(特別出演) 男優:今井聡(4期生) 男優:扇田森也(4期生) 女優:[め]熊坂理恵 [ろ]野村真理 女優:[め]渡邉樹里 [ろ]吉田紗和子
作:宮本研 演出:西川信廣 美術:長谷川康子 衣裳:中村洋一 照明:立田雄士 音楽:後藤浩明 音響:吉海真 振付:室町あかね ヘアメイク:我妻淳子 歌唱指導:伊藤和美 演出助手:大杉良 舞台監督:井川学 演出部:浅木靖志 衣裳操作:富原守武 阿久津真与 稽古写真:落合高仁 演奏:原良子(ヴァイオリン) 土田寿彦(チェロ) 後藤浩明(ピアノ) 岩村久雄(尺八) 新国立劇場舞台技術部:吉田信夫(舞台) 佐々木朗(照明) 信澤祐介(音響) 滝内慶太(映像) 村田祐二(調整) 松田周作(大道具) シアターコミュニケーションシステムズ レンズ 大道具:プランニング・アート 小道具:高津映画装飾 衣裳:東京衣裳 履物:神田屋 台本印刷:三交社 宮川洋
入場無料(申し込み制)
公式:http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000260_play.html
配役表:http://www.nntt.jac.go.jp/training/drama/pdf/haiyaku.pdf

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 19:46 | TrackBack

726『こころ』06/05-09 OFF OFFシアター

 鬼塚俊秀さんと西地修哉さんというお2人の役者さんが立ち上げたユニットのようです。「726」は「ナナ・ニー・ロク」と読むのかしら。チラシが素敵。

 演出に元NLTの北澤秀人さん、脚本に青年団リンク・青☆組の吉田小夏さん迎えて、夏目漱石の「こゝろ」(Wikipedia)を舞台化するという試みに興味を持ちました。

 北澤さんの演出は無料リーディング『アテンプツ・オン・ハー・ライフ』がとても面白かったんです。吉田さんと漱石という組み合わせはぴったりな気がしました。上演時間は約1時間45分。

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 ≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より
 時は明治末期。
 夏休み中に鎌倉に旅行に行った際、「私」は「先生」と出会った。
 「私」は世捨て人のような生活を送る先生の事に興味を抱き、
 親密な交際をすることになる。
 そんな折、 「私」は父の容態の急変により
 実家から離れる事が出来なくなる。
 父親が危篤という状況になって、先生からの手紙が届く。
 手紙には、衝撃的な先生の過去が綴られていた…。
 ≪ここまで≫

 舞台中央に1段高く作られた正方形のステージ。その周囲も演技スペースとなる抽象美術です。下から上に向かって照らす照明が舞台の周囲をぽつ、ぽつと囲んで、ほんのり和のムード。役者さんは全員和服で、袴や上着などを着替えて1人2役以上演じます。

 「こゝろ」は〔先生と私〕〔両親と私〕〔先生と遺書〕の3部からなる長編小説です。一部分にフォーカスをあてるのではなく、全体を2時間弱にまとめたのは凄いなーと思いました。
 役者さんは皆さんが、演じる役について真面目に取り組んだことが伝わってくる、丁寧で真摯な演技をされていたように思います。

 ちゃぶ台、花瓶などの小道具を舞台上に残したまま、違う時代へとすばやく場面転換するのがスマート!役者さんが何の役を演じているのか(何役に変わったのか)がわからない時間がスリリング♪原作を読んだからこその楽しみもありました(どこをどのように省略・肉付けしたのか、人物造形など)。
 こうやって個別に考えていくと見どころの多い作品だったと思うのですが、全体として面白かったのかというと疑問が残りました。帰り道にその理由を考えました。

 ここからネタバレします。

 原作「こゝろ」で私が一番引き込まれたのは〔両親と私〕の最後の場面です。“私”は実家に先生からの分厚い遺書が届いたため、父がまさに亡くなろうとしている時に、電車に飛び乗って東京に向かいます。“私”がどれほど先生のことを慕っていたかがわかりますし、しかもてん末(“私”は先生の自殺を止められたのかどうか)が書かれていないので、余計に想像が膨らんで切なさが増しました。

 今作では“私”がなぜそこまで先生に執着したかの理由が、描かれていなかったように思います。「明治時代をそれぞれに懸命に生きた人々の群像劇」という仕上がりだったのは、私にとっては物足りなかったのかも。  
 ※劇団フライングステージの『新・こころ』は、「先生と“私”はゲイである」という視点から全編を読み解いており、先生と“私”が出会った「海」と、Kと“私”が旅した「海」が見事にシンクロしていました。

 K、“私”の父、先生の3人の死が、1点に集まるアイデアにはなるほどと思いましたが、“私”の父という人物には感情移入できるきっかけがなかったので、効果はそれほど高くなかったように思います。

 K(西地修哉)が“私”(鬼塚俊秀)にお嬢さんへの恋心について初めて相談する時の、Kの恥じらいっぷりに胸キュンでした。

出演:鬼塚俊秀〔私、若い頃の先生〕、西地修哉〔K、私の兄、船頭?〕、杉山薫(ナイロン100℃)〔先生の妻、お嬢さんの母〕、照屋実〔先生、私の父〕、高原コマキ〔お嬢さん、私の兄嫁〕、ほりすみこ〔女中、私の母〕、大西玲子〔お嬢さんのご学友、結婚する女中〕
【原作】夏目漱石 【演出】北澤秀人【劇作】吉田小夏【美術】野村真紀【照明】高山晴彦【音響】天野高志【衣裳】大井崇嗣【舞台監督】中西隆雄 井上林堂【宣伝美術】高橋裕樹【制作】高市由香里【制作助手】岩間麻衣子【企画・製作】726
【発売日】2009/04/01 前売 2,800円 当日 3,000円 学生 2,500円
http://www.act726.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 10:27 | TrackBack