2009年07月03日
【写真レポート】東京芸術劇場「野田秀樹芸術監督就任・記念プログラム発表記者会見②」07/01東京芸術劇場中ホールロビー
中ホールロビーにて
野田秀樹さんが芸術監督に就任した東京芸術劇場が打ち出すのは、オリジナル作品の発信と海外作品の紹介、そして小劇場での活躍が目覚しい若き才能への支援です。⇒記者会見①
東京芸術劇場(略称:芸劇)が提携という形でバックアップする公演を“芸劇eyes(ゲイゲキ・アイズ)”と名づけ、選ばれた5団体が紹介されました。
劇場は今、たくさんの日比野克彦さんの作品で飾られています。劇場前アトリウムに展示された巨大なヒノキ舞台は、自由に出入り可能(一般公開は13:00~18:00)。会見後には野田さんからさらに詳しいお話を聞くことができました。
⇒記者会見の動画(2009/09/28加筆)
≪芸劇が注目する才能たち、「芸劇eyes」≫
■ハイバイ『て』09/25-10/12小ホール1
作・演出:岩井秀人
【岩井秀人さん】
岩井「自分の身の回り2メートル四方を描く芝居を作っています。先ほど大竹(しのぶ)さんがおっしゃっていた、災いのパワーに興味のある方にはぜひご覧いただけたら。『て』は僕の家族の話です。僕の家族に、どれだけ陰湿で大変な血が流れているのかが(笑)、おわかりいただけます。」
■五反田団『生きてるものはいないのか』&新作『生きてるものか(仮)』10/13-11/01小ホール1
作・演出:前田司郎
※新旧2作同時上演。『生きてるものはいないのか』は岸田國士戯曲賞受賞作。
【前田司郎さん】
前田「『生きてるものはいないのか』は18人の俳優が出てきて、次々に死んでいく芝居です。“俺たちはなぜ死んでしまうんだろう”と思いながら、ただ死んでいきます。常に死ぬことを考えて作りたい。
東京芸術劇場が野田さんの就任で明るく素晴らしい場所にイメチェンして、今の時代に合った素敵な劇場になったことを嬉しく思っています。」
■グリング『jam』12/09-23小ホール1
作・演出:青木豪
【青木豪さん】
青木「グリングは東京芸術劇場小ホール1で旗揚げ公演をさせていただき、それから4回ほど使わせていただきました。『jam』は軽井沢のペンションの話です。ザ・スズナリでの初演とは違う演出でお見せしたいと思っています。」
■富士山アネット『EKKKYO-!』2010年01/12-17小ホール1
構成・演出:長谷川寧
【長谷川寧さん】
長谷川「戯曲をもとに俳優が演じたものをダンス(身体)に置き換えていくという、セリフがほとんどない舞台をやっています(⇒稽古場レポート)。いわばダンスと演劇の中間です。『EKKKYO-!』はジャンルを“越境”している団体を集めて、15分ずつパフォーマンスをするイベントです。色んな若い団体が、新しい東京芸術劇場に何かプッシュできたらと思っています。」
■モダンスイマーズ『新作(タイトル未定)』2010年02/05-21(予定)小ホール1
作・演出:蓬莱竜太
【蓬莱竜太さん】
蓬莱「『夜光ホテル』の続編を考えています(⇒稽古場レポート)。『夜光…』は、日暮里にいるハチガラスという悪僧たちの1人と知り合い、そこから書き起こしました。ある男がそのグループから決別しようとする様を描いたので、続編では決別とはどういうことなのかを、突っ込んで書いてみたいと思っています。演出面では、自分たちのやっていることを当てはめるよりは、この劇場の何かを借りた新しい表現にチャレンジしたい。」
▼日比野克彦アートプロジェクト「ホーム→アンド←アウェー」方式[But-a-I]07/01-09/06アトリウム前広場
昨年、金沢21世紀美術館で作製、展示されたヒノキ舞台[But-a-I](バッツアーアイ)が劇場前に展示されています。中にも自由に入れます!⇒OPEN THEATER PROJECT
【日比野克彦さん】
日比野「このヒノキ舞台では、多摩美術大学、東京藝術大学、地元池袋の立教大学などのカンパニーと一緒に、オープン・シアター・ミュージアムというタイトルで、稽古を見せながら週末に上演する見せ方を行っていきます。劇場の外の閉ざされていないオープンな空間で、広場、商店街、大学というものをつなげながら、より芸術の可能性を追求していきたい。」
≪記者懇談会≫
会議室にて
野田さんを囲んだ記者懇談会に参加させていただきました。ラインナップのテーマ性や“芸劇eyes”の選考基準などについて、野田さんから直接お聞きすることができました。
野田「今年のラインナップをご覧いただいておわかりのことと思いますが、1つの言葉でくくることができるようなテーマ性はありません。スタイルから入るのは違うのではないか。テーマ主義はおそらく海外の真似ですよね。我々は我々の見せ方をしていいし、日本の文化状況に合う見つけ方をしてもいいと思う。」
野田「“芸劇eyes”は毎年5団体というわけではないです。枠が枷(かせ)にならないようにしたい。今回選ばれた団体については、公演やDVDを観たり戯曲を読んで知っています。時間のゆるす限り、勧められた公演は観に行ってますよ。」
その他、舞台芸術を通じた子供の教育にも興味があると、はっきりおっしゃっていました。学校教育に演劇が取り入れられることを望む一個人として、都立の劇場である芸劇には、ぜひとも取り組んでいただきたいです。野田さんが発信する“子供のためのお芝居”に、今からわくわくしています。
※芸劇の入口は現在、日比野さんの幕絵で装飾されています。夢の遊眠社公演『野田版国性爺合戦』『ゼンダ城の虜~苔むす僕らが嬰児の夜』の舞台美術として使用された貴重な作品です。カラフルで楽しい!
⇒記者会見①はこちら
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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【写真レポート】東京芸術劇場「野田秀樹芸術監督就任・記念プログラム発表記者会見①」07/01東京芸術劇場中ホールロビー
中ホールロビにて
野田秀樹さんが池袋にある東京芸術劇場の芸術監督に就任されました。芸術監督が采配を振るう公立劇場というと(順不同に→)、新国立劇場、世田谷パブリックシアター、彩の国さいたま芸術劇場、静岡芸術劇場、まつもと市民・芸術館といった名前がパっと頭に浮かびます。
東京都立の劇場に初めての芸術監督が誕生したこと、それが野田さんであることは、日本の演劇界にとって大きな出来事だと思います。
野田「まずは、“ここに劇場がある”ということを人に知らせること。“あそこにいけば面白いものが観られる”という劇場にしたい。」
7/1(水)に発表された記念プログラムは、野田芸術監督ならではの色が、前面にくっきりと出た豪華なラインナップ。野田さん率いる東京芸術劇場が一般の観客の興味をぐっと惹きつけて、刺激的な舞台の水先案内人となってくれることを心から期待します。
⇒記者会見の動画(2009/09/28加筆)
■プロペラ『ヴェニスの商人』『夏の夜の夢』07/02-12中ホール
作:W.シェイクスピア 演出:エドワード・ホール 出演:プロペラ
【野田秀樹さん】
野田「実はプロペラ公演の舞台装置が、まだ日本に届いていないというトラブルが発生しまして、今回の公演はオリジナルの装置ではなく、日本で新たに作って上演することにしました。演劇は災いを福に変える力を持つ、数少ない芸術の1つ。芝居の底力を見せるチャンスだととらえています。」
【Bob Barrettさん(プロペラ出演者)】
Barrett「野田さんの記念すべきプログラムに呼んでいただき、何にも変えがたい光栄だと思っております。装置が行方不明になったことで、まさに今までとは違った、特別な公演ができます(笑)。プロペラは、その瞬間に立ちあう皆様に特別な体験をしていただきたいと思って活動しています。我々の力の全てを出す所存です。初めての日本、初めての東京で、役者にとっても忘れられない体験になりそうです。」
【Kelsey Brookfieldさん(プロペラ出演者)】
Brookfield「『ヴェニスの商人』で美女ポーシャを演じます。男の私が女役をやるというのも、演出家エドならでは。エネルギッシュに生まれ変わったシェイクスピアを楽しんでいただけるのではないかと思います。」
野田「エドワード・ホールは、演出を手がけていたロイヤル・シェイクスピア・シアターから飛び出して、今は自分で水車小屋を借りて演劇を作っている。気心が知れた仲です。」
■NODA・MAP『ザ・ダイバー 日本バージョン』08/20-09/20小ホール1
作・演出:野田秀樹 出演:大竹しのぶ 渡辺いっけい 北村有起栽 野田秀樹
料金6、500円 サイドシート3、000円(全席指定・税込)
企画・製作:NODA・MAP 制作協力:世田谷パブリックシアター
野田「英語と日本語は全く違うので、演出も変わります。あれだけいい(英語版の)演出も、敢えてあきらめる(笑)、そんな意気込みです。」
【大竹しのぶさん】
大竹「渋谷や日比谷にある劇場の舞台に立つ事が多く、池袋にはあまり来たことがありませんでした。新しい街で演劇を作り出していくことに意義を感じます。
人生には災いがつきもの。そんな災いからも湧き出るエネルギーを伝えたい。こういう時代だからこそ、生の力を感じてもらいたい。演劇の力を信じて、みんなで作って行きたい。いい芝居を作ります。」
【渡辺いっけいさん】
渡辺「昔、小ホール2で『ゴドーを待ちながら』をやらせていただきました。その時に古田新太さんに紹介してもらった、小さいけれどとても美味しい蕎麦屋が、今はなくなっているんです。とてもさびしい。楽しいことをやっていれば、周囲も変わっていく。この劇場が『ここで楽しいことをやっているぞ!』という空気になればいいと思う。」
【北村有起栽さん】
北村「今日のこの瞬間が嬉しい。演劇に携わってきた者として、記念すべき1本に参加させていただくことを光栄に思います。この劇場を10年、20年と持続させていけば、いっけいさんのおっしゃるような美味しい蕎麦屋も見つかると思う。池袋にぜひ来ていただきたいです。」
■TSミュージカルファンデーション『ミュージカル「天翔ける風に」』8/21-30中ホール
演出・振付:謝珠栄 原作:野田秀樹『贋作・罪と罰』 音楽:玉麻尚一
出演:香寿たつき 山崎銀之丞 戸井藤海 今拓哉 阿部裕 ほか
料金:S席9、000円 A席6、000円(全席指定・税込)
【謝珠栄さん】
謝「『天翔ける風に』は、野田さんの戯曲『贋作・罪と罰』をミュージカルにした作品です。野田さんから『天翔ける』というタイトルをいただき、その後に私が『風に』と付けました。『天翔ける』という言葉は、時代を変えようとした若い人の心意気、エネルギーを表しているのではないかと思っています。装置も衣裳も演出も変える、再々演です。」
【香寿たつきさん】
香寿「『天翔ける風に』は一番大好きで、もっとも感銘を受けた作品です。再々演に出演できるのが嬉しい。」
【山崎銀之丞さん】
山崎「自分はミュージカルは初めてなのですが、謝さんの個性とエネルギーに魅せられ、出演を決めました。お客様の期待を裏切らない作品になるよう、謝さんと香寿さんと一緒に作りたい。」
■松尾スズキ演出『農業少女』2010年2月→3月 小ホール1
作:野田秀樹 演出:松尾スズキ 出演:多部未菓子 吹越満 山崎一 江本純子
【松尾スズキさん(映像出演)】
松尾「自分は芸術という言葉に抵抗がある。笑いが芸術にどれだけ貢献できるか、そこに焦点をあてます。芸術の中にも笑いという感情があるということを、知っていただきたい。」
■アジア共同制作「バンコク・シアター・ネットワーク 野田作品上演プロジェクト」
『赤鬼 タイ大衆演劇“リケエ”バージョン』11/19-22小ホール2
『農業少女 タイ現代演劇バージョン』11/20-23小ホール1
作:野田秀樹 演出・出演:バンコク・シアター・ネットワーク
↓タイの出演者・演出家の皆さんからの元気な映像メッセージが流れました。
野田「タイ人は身体性が強いです。戦前の日本人はこういう体だったんじゃないかと思うことも。新演出なので、全く違う作品になります。」
中井美穂(司会)「バンコク・シアター・ネットワークの公演は上演期間が短いですので、どうぞ皆様お見逃しなく!」
⇒記者会見②に続きます。
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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