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2010年08月04日

【演劇教育】パーシモン・パレット・プログラム2010『演劇コース発表会「真夜中の太陽」』07/31めぐろパーシモンホール・小ホール

 めぐろパーシモンホール・パレットプログラム演劇コースを毎年拝見しています(過去レビュー⇒)。今年の作・演出は工藤千夏さん(青年団演出部・うさぎ庵・渡辺源四郎商店)。

 『真夜中の太陽』はラフカット2009で初演され好評だったので、2010年5月に谷山浩子さんの公演でも再演された短編です。私は再演を拝見して傑作だと思っておりましたので、中高生がこの演目に取り組むと聞いて、嬉しくて小躍りしてしまいました。上演時間は約45分。

 こちらのブログによると、めぐろパーシモンホール・パレットプログラム演劇コースは来年も継続決定!

 期待を上回る仕上がりでした!ティーンの男女の歌声にダダ泣き・・・。終わってもしばらく拍手が鳴り止まなかったです。
 男の子が6人参加していたので、男子学生役が書き足された“めぐろパーシモン・バージョン”になっていました。外国人役も日本人役に書き換えられていましたので、ますます高校演劇で上演しやすくなったのではないでしょうか。

 終演後に初演版出演メンバー数名と中高生が『真夜中の太陽』を一緒に歌ってくれました(↓写真)。指揮は宣教師マービン先生役だったジェイソン・ハンコックさん。※写真撮影可でした。
20100731_mayonaka_no_taiyo.JPG

 ここからネタバレします。

 男の子が明治神宮外苑での出陣学徒壮行会(1943年)の答辞を朗読します。体も声も気持ちも、当時とは全く違います。その差を目で見て、耳で聴いて知ることの衝撃たるや。

 空襲警報が鳴り、先生と老婆を除く全員が逃げ惑う場面で、「死に物狂いで防空壕に走る」という演技になっていませんでした。“空から落ちてくる爆弾に焼き殺されるかもしれない恐怖”がないんですよね。私は『真夜中の太陽』でもっとも大切な場面の1つだと思っていたので、ちょっとがっかり。
 でも子供たちがどう感じているか(演じているか)にかかわらず、抽象世界は鮮やかに、意味はどっしりと、確かな重みを持ってストレートに伝わってきました。戯曲と演出がセットになって、揺るがない強度があるのだと思います。

 終演後のトークで工藤さんがおっしゃっていましたが、稽古時間は1日4時間で計4日間という短期間だったそうです。それでここまで作り上げられたことに驚嘆します。歌もちゃんと三部合唱になっていて凄い!
 「戦争について議論するような時間はなかった」ともおっしゃっていて、それは残念です。青森の中学生版『河童』を観たせいもあり、私が過度に期待しすぎなのかもしれませんが。

 発表会があるワークショップなので、作品を完成させることが優先されるのは当然ですが、ワークショップで『真夜中の太陽』に取り組む意味としては、やはり子供たちが戦争について考えることなのではないかと私は思います。次回があるならば、日数を増やして(←ココ重要!)、一緒に考えたり、意見交換したりする時間を作っていただけたらと思います。

「真夜中の太陽 めぐろパーシモン・バージョン」
出演(公募による中学生・高校生21名):菊地尚輝 瀬口聖徒(カオリの孫) 南舘優雄斗 宮本周平 新美航平 長田咲紀 井上春香 花岡海 丸山由生奈 永井智美 宮澤茉理絵 木目田千春 市川萌夏 須川萌(カオリの孫) 池田佳央理(カオリ) 大西千尋 関口佳 佐藤麻央 小林千尋 木﨑千温(キザキ先生/カオリの息子の嫁) 矢島亮(ヤジマ先生) ピアノ伴奏:加藤充華
原案・音楽:谷山浩子 作・演出・指導:工藤千夏 [主催]財団法人目黒区芸術文化振興財団 [協力]有限会社アゴラ企画 [演出・指導]工藤千夏 [アシスタント]加藤充華 [音響]藤平美保子(T.E.S) [区民ボランティア]朝吹弓子/山本郁子/松本照代/福島豊/板本円/渡辺祐子
14:00(開場)/14:30(開演) 全自由席:300円 ※車椅子席:同料金
http://www.persimmon.or.jp/event/913.php
http://www.persimmon.or.jp/hosting-performance/914.php

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 14:08 | TrackBack

ホリプロ『ロックンロール』08/03-29世田谷パブリックシアター

 昨年の『コースト・オブ・ユートピア』も話題になった英国の劇作家トム・ストッパードさんの、2006年ロンドン初演作(2007年ブロードウェイ進出)を栗山民也さんが演出されます。初日を拝見しました。上演時間は約3時間10分(途中休憩1回を含む)。

 市村正親さんと武田真治さんが主演ということで、ミュージカルだと思っていたお客様もいらしたようですが、ストレート・プレイです。でも有名な音楽はたくさん流れます。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ロックンロール

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 ケンブリッジ大学の教授マックス・モロー(市村正親)はマルクス主義を唱える学者。彼の教え子であり、時代に翻弄されながらも生き抜くチェコ人ヤン(武田真治)。
 ときは1968年ケンブリッジ。フラワーチルドレンのエズミ(前田亜季)は、パイパー(実はシド・バレット)の吹く笛を聴いていた。そこに、ヤンが現れる。ロックンロールを愛する彼は、ロックと家族を守るため「プラハの春」が起こったチェコへ帰国することを決意したのだった。エズミはヤンに密かな恋心を抱いていた。そんなヤンを快く見送ることがマックスにはできない。マックスの妻、エレナ(秋山菜津子)は癌を病んでいた。
 チェコに帰国したヤンを待っていたのは、秘密警察の取調べだった。ヤンの友人ファーディナンド(山内圭哉)はドプチェク解放の署名を求めるがヤンは断る。そんな彼のもとにマックスがたずねてくるが、ヤンはマックスの言葉を聞かない。
 一方、イギリスではエレナが、レンカ(ヤンと同じチェコ人)に古典を教えていた。エレナが席を外した束の間、レンカはマックスに、ヤンが逮捕されたことを告げる。チェコのロックグループの権利を守ろうという嘆願書に署名をしたせいだった。エレナの病状は進んでいた。マックスはエレナを抱きしめることしかできない。
 1976年冬、プラハ。部屋に戻ってきたヤンの前に、砕かれたレコードが散らばっていた。それから20年以上たった1990年のイギリス、ケンブリッジ。マックスのもとにヤンがやってきた。ヤンとの突然の再会に驚くエズミ(秋山菜津子)。
 人々の想いは、静かに絡みあいながら、進んでいく。
 ≪ここまで≫

 イギリスのケンブリッジとチェコ・スロバキアのプラハを行き来し、場面転換時に当時流行していたロックがかかります。自分の知識のなさ、教養のなさにがっかりして落ち込みました・・・。
 一部セリフが聴こえづらかったのもありますが、歴史にしたってロックンロール(音楽)にしたって、「あぁ聞いたとあるな~」ぐらいにしか知らないものですから、体にぐっと入ってきて腹で理解するような、確かな重みで味わうことができませんでした。

 ロビーでパンフレットを買って読み、「あぁそういう意味だったのね」と少しは補完できましたが、観ている時は本来のこの戯曲の意味や魅力を受け取ることができなかったですね。自分のせいとはいえとても残念・・・。
 これからご覧になる方は、公式サイトにあるキーワードをある程度勉強されてから観に行かれると良いと思います(すでにご存知の方は不要ですが)。

 ここからネタバレします。

 2幕の最初にU2の"still haven't found what I'm looking for"が流れて、やっと体にしみてきました。JOSHUA TREEのジャケットも懐かしく。1987年の場面だったかと思います(違ったらすみません)。私はたぶん中学生か高校生ぐらいで「ベストヒットUSA」を毎週見ていましたから、“あの時”と舞台の時間がやっと一致し、2幕からは面白くなりました。

 武田真治さん演じるヤンのことがよくわからなかったです。友達の署名依頼を断ったり、お気に入りのロックバンドを応援して警察につかまったり、12年間もパン屋で働いてたり、スパイをしていたり・・・?文字の情報しか頭に残らなかったです。もう1度観ればわかるのかな・・・。

 最後は1990年のプラハ。ROLLING STONESのコンサートに盛り上がるヤンたちの横で、レンカ(黒谷友香)が学生(熊坂理恵)に詩を教えていました。「牧神パンは死んだ」と繰り返すのに苦い思いがこみあげます。1968年から始まり、22年後の1990年で終わる物語ですが、そのあまりの変容振りに驚くし、恐ろしさも感じます。獲得したものもあれば失ったものもあるんですよね。

≪東京、大阪、広島≫
出演:市村正親 秋山菜津子 武田真治 前田亜季 上山竜司 西川浩幸 月船さらら 森尾舞 檀臣幸 山内圭哉 黒谷友香 熊坂理恵
脚本:トム・ストッパード 演出:栗山民也 翻訳:小田島恒志 美術:松井るみ 照明:勝柴次朗 音響:高橋巖 衣裳:前田文子 ヘアメイク:鎌田直樹 演出助手:豊田めぐみ 舞台監督:小林清隆 主催・企画制作:ホリプロ
【休演日】8/11~8/17 S席8,500円 A席5,500円
http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=145
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2010/08/post_185.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 10:12 | TrackBack