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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年02月26日

蜷川幸雄 演出『ペリクリーズ』02/19-03/16さいたま芸術劇場

 いつも恐る恐るチケットを買うサー・蜷川のお芝居。今回はものすごい豪華キャストに惹かれて先行でGETしてしまいました。

 そして結果は・・・・面白かった!! 大スペクタクル冒険ロードムービーならぬロード芝居。まるで大人気系ロールプレイング・ゲームのように、ストーリーを追いかけて存分に楽しみました。(RPGって例えば「ゼルダの伝説」とか「ドラゴンクエスト」とかみたいな感じ。古っ。)

 『ペリクリーズ』はシェイクスピアの作品の中でもとりわけ演出家の力量が問われる作品だそうです。なるほど、観てわかりました。登場人物が多い。シーン数が多い。転換も多い。そして、長い(3時間半)!これでもかこれでもかと畳み掛けていく波乱万丈でドラマティックなシーンの連続。蜷川さんがよくなさる日本風の演出顕在でした。ヤクザや女郎屋はあからさまに。能舞台を連想させる書き割りもあり。和風演出ってミニマムにかっこつけてやっちゃうといかにもロンドン公演向けだな~って冷めてしまうんですが、今回はそれがチャンチャンバラバラ、どんじゃかどんじゃか、おもちゃ箱をひっくり返したみたいに出てくるんです。こりゃ賑やかで楽しいよっ。

 また、これも蜷川さんがよくなさるのですが物語と全然関係ないテーマ(特に戦争が多い)を持ち込まれます。今回はオープニングとエンディングに戦時中の日本を思わせる演出が挟まれました。これに心を打たれたんです。今、イラクに対してアメリカが戦争をしかけようとしています。他にも北朝鮮のミサイルやテロリズムなどの大問題もありますよね。そんな時期に反戦の意志を明らかに示すような演出をなされたことは尊敬に値します。戦火をのがれて逃げまどい一滴の水を求めてさまよう人々。その中にこの不幸を嘆き、天を仰ぐ美女が1人。目が潤んでしまいました。

 あぁ・・・思い出した・・・・役者さんが素晴らしかった~・・・。特に私が大尊敬する市村正親さんと白石加代子さん。もーこの二人ってば凄すぎです。早替えしまくりの大サービス。ほとんど舞台に出ずっぱりみたいなモンです。市村さん、琵琶の練習されたんですね。何をやらせても本当に絵になる方。ユーモアも素晴らしい。白石さんは鬼にも仏にもなれるお方。道化役ももちろんはずしません。声おばけ。

 田中裕子さん。純粋無垢な少女役があんなにぴったりなんて。本当にかわいらしい人でした。清純さと深い慈しみが体からにじみ出ています。
 内野聖陽さん。年老いた役が良かったな。やっぱりスター。美しい。必ず脱がされるのもスターゆえのご愛嬌ですよね♪ それもまた美しいから良し!(笑)。

 衣装は私は大ファンの小峰リリーさん。素晴らしかった。ものすごいミクスチャーでしたね、今回は。和と中華とポリネシアンの融合?厚底ブーツまで出てきました。そういえばダンスもポリネシアンな空気でした。あの振り付けは不可思議でした。なんとも言えず目を奪われました。
 舞台装置も良かったです。ところどころ穴の空いた鉄の板から照明の光がまっすぐ伸びて降りてきます。
 語り部のシーンでは太陽劇団の手法そのまま使ってましたよね。紙芝居のようで文楽のようで、お芝居。面白い!バックとして使われた可動式の巨大な鏡が良かったです。後ろから丸見えになるのが潔い。本が開くようでわくわくする。

 さいたま芸術劇場って・・・・・遠いです。はい。皆様もご存知のとおり。都心で働いて会社帰りに行こうものなら終電覚悟ですよ。しかもこんな3時間半もあるお芝居。休憩が15分しかなくて驚きました。つ、疲れる・・・(笑)。だけどすごく楽しいエンターテイメント作品です。お時間と体力があればぜひ。もちろん土日のマチネとかでごゆっくり堪能されるのが一番お薦めです♪ご家族でも楽しめるかも。 
 
彩の国さいたま芸術劇場HP : http://www.saf.or.jp/

Posted by shinobu at 23:13 | TrackBack

新国立劇場演劇『浮標(ブイ)』02/19-03/7新国立劇場 小劇場

 新国立劇場演劇の「現在へ、日本の劇」というシリーズの第2弾。(第1弾は鴻上尚史作・演出『ピルグリム』でした。)
 セリフの一言一言を聞き漏らすまじと必死で耳をそばだてた濃厚な3時間40分(休憩2回、計20分を含む)。涙を拭く余裕なんて全くなかった。お芝居が終わってしばらくは拍手もできないし立つことも出来ませんでした。私にとっては2001年の大人計画『エロスの果て』と、井上ひさし作『夢の裂け目』以来の感動です。

 『浮標』は作者 三好十郎さんの実際の体験を基に書かれた私戯曲で昭和15年(1940年)初演。上演機会が非常に少なく幻の名作とも呼ばれる作品が栗山民也 演出のもと21世紀の東京によみがえります。

 静かに唸り続ける波の音。深い藍色の幕が上がるとそこは浜辺の一軒家。画家の五郎は結核をわずらった妻・美緒の看病をしている。必死の看病もむなしくどんどん悪化していく美緒の病状。そこにお見舞いにやってくる家族や友人等との交流を通して、人が生きるということは一体どういうことなのかを魂のこもった言葉と全身全霊の演技・演出で真正面から描きます。

 島次郎さんによる美術はまるで静物画のように静かで高潔でした。硬い板のような藍色の幕が舞台の上下(かみしも)と奥の3方を閉ざし、その上には劇場の照明機材などが露出しています。ぴしりと閉鎖され奥行きを感じさせない人工的空間にリアルな家と浜辺。風鈴や旗がやわらかくなびいているのが視覚的にとらえられるのですが、風の力は全く感じないんです。

 そんな静寂そのものの舞台から否応無しにほとばしる本物の感情。魂のセリフが怒涛のごとく私の心に降り注ぎました。
 五郎「本質的な絶望のせいで絵が描けないのだ。生きている中心が不確かになっている。一番大切なものを信頼できなくなっている。」
 美緒「ねえ、あのね、神様はあるの?」「理屈はいらない。本当のことを一言で言って。」
 五郎「俺たちはいつ何時も、のっぴきならない崖っぷちにいる。」
 赤井「(戦場に)行くと決まったときから頭の中が子供みたいになっちゃった。」

 全ての俳優が型を演じるとかキャラを作り出すのではなく、本当にその役として舞台に立っていた。見せ方を巧みに編み出すのではなく、あるがままの脚本の力をそのままに伝えたいというまっすぐな心が舞台から感じられました。たたずまいがそのままその芝居である。家も浜辺も、人も音も。役者の細かな所作や表情にまで栗山民也さんの演出が冴え渡ります。

 カーテンコールでは役者全員が舞台に正座・起立して並んでいました。オレンジと青の明かりが薄暗く役者の顔や装置を照らし、それもまた静止画、1枚の写真。そしてそれを静かに見守る劇場。観客も絵の一部になったようでした。

 初日が明けた後、出演者の方とお話が出来る幸運に恵まれました。「このお芝居に参加しているみんながこのお芝居を心から好きで、一人一人がこのお芝居のために全力を尽くしています。」

 戦時中の日本で生まれた奇跡の戯曲の重厚かつ崇高な舞台化。この「浮標」という作品を創り上げるために心をひとつにした人間の営み。必見です。(土日のチケットはZ席以外完売だそうです。3月の平日A席はまだ残席あり。)

出演:生瀬勝久 七瀬なつみ 佐々木愛 長谷川稀世 北村有起哉 大鷹明良 石田圭祐 須賀佐代子 吉村直 浅野雅博 花村さやか 小林麻子 永幡洋 大津尋葵 山中麻由 下里翔子
作 :三好十郎  演出 :栗山民也  美術 :島次郎  照明 :勝柴次朗  音響 :斉藤美佐男  衣裳 :宮本宣子  方言指導 :大原穣子  演出助手 :豊田めぐみ  舞台監督 :加藤高
A席5,250円 B席3,150円
新国立劇場

Posted by shinobu at 20:54

2003年02月23日

ジンジャントロプスボイセイ『RとJ』02/21-23青山円形劇場

 ジンジャントロプスボイセイは中島諒人(なかしま・まこと)さんが構成・演出されるパフォーマンス集団です。
 「最近のジンジャンの活動の集大成として自信を持ってご覧いただけるものになりそうです。」との宣伝文句に惹かれて今回も拝見。

 原作からイメージされるそれぞれ独立したシーンの組み合わせ。美術、衣装、照明、音響、パフォーマー、テキスト(脚本)を総合的に使ったアート時空間。いわゆるストーリーがあって起承転結のある演劇ではありません。パフォーマンス作品です。

 全ての役者さんが役者としてでなくあくまでも舞台表現の1要素として存在しています。つまりそれがパフォーマーなんですよね、役者じゃなくて。どんな際どい身体表現も笑えるセリフも、そのセリフを発した人から出ていると感じるのではなく作品として存在しているのが体感できます。役者の属人性にとらわれがちな現在の日本の舞台作品とは一線を画していると思います。

 衣装が良かったなー。あのAラインは本当に可愛らしいです。仕掛けにも心躍ります。
 低予算(だと思う)で効果的な舞台美術でした。ダンボール箱の中の色と衣装の色を合わせていたのがキュート。
 ギターの生演奏にも力を感じました。

 以下、内容を少しネタバレします。(でも読んでから観られてもOKだと思います。)

 「ロミオとジュリエット」のストーリーを群舞のみでミニマムに表現。
 シェイクスピア作「ロミオとジュリエット」から引用・選出された日本語のセリフ(誰の訳かは不明)の羅列。
 ゴミ袋に入れられて吊るされるパフォーマー。
 1本のナイフが色んなものに変身。存在の不確かさと雄弁さ。
 男と女のかかわりの象徴として抽象化されたSexの表現。コミカル。などなど・・・。

 特にセリフやストーリーでの主張がないので、一つ一つのシーンで観客それぞれが浮かべたイメージを持って帰ることになると思います。それがすごく多種多様でしかも多数になると思うんです。

 私は手袋が一番好き。2匹(?)の手袋ロミオと手袋ジュリエットがお互いを探してさまよい歩きます。ほほえましく、笑えました。
十数個の携帯から、か細い音で時報が流れる中、手袋たちが生まれて、生きて、死んで・・・のシーンでは泣きました。

 中島さんよりの宣伝メールの文章より↓
 「『生きる』を『死ぬ』のすぐ隣に置いて、『生きる』を普段とは少し違った角度で
 眺めて考えてみるという経験かな、と思いました。」

 当日パンフに大きくNO MINDLESS WARSとありました。

ジンジャンHP : http://zinjan.jp/

Posted by shinobu at 18:20 | TrackBack

2003年02月20日

天然ロボット『ホルマリンの少女』02/18-23中野MOMO

 天然ロボットは湯澤幸一郎さん主宰の劇団です。湯澤さんというとカウンター・テナーの歌声をお持ちのひと癖もふた癖もある俳優さん。宮田慶子 演出『エレファントマン』での美声と麗しい女装姿が記憶に新しいです。チラシを見るからに、かなりコアなデカダン・ムード。ちょっと怖いもの見たさの心持ちで劇場にたどりつきました。

 面白かった!わくわくした!うっとりした!ある猟奇殺人事件を題材にしっかりと作り込まれた推理モノなんですよ。ギドーの原作を現代の日本を舞台に置き換えて湯澤さんが脚色・演出されています。倒錯した性的嗜好と美少女退廃エロスを耽美に描き、そこに大人のウィットと軽快なギャグを適度に注ぎ込んで、不思議な統一感のある作品になっていました。湯澤さんテイストってこういうことなのでしょうか。一歩間違うと悪趣味なだけになりがちの題材ですが、しっかりした世界観でコントロールされていたので、完全に心を預けて観ていられました。

 マッチ売り(?)の少女からマッチを買うシーン。ものすごくエロティックでした。ベビードール風の濃紺のワンピースのすそから見えるペチコートの白いレース。そしてその下ではガーターベルト用のストッキングが太ももを締め付けています。
 「絶対に触っちゃだめよ。」
 絶妙のチラリズムが芳しく危険な色香を放って観客の目をくぎづけにするんですね。さらに、それを成立させたのは湯澤さんの演技にほかなりません。
 「やめて!触らないでって言ったでしょ」「白状したね」のやりとりには萌えました(赤面~っ)。
 柔らかい動線を描いて伸びる手や足が、驚くほど力強い所作をとる。気高さにうっとりしてしまいます。

 新谷真弓さん(NYLON100℃)。突き放した演技が魅力的でした。1つだけ残念だったのはヘア・メイクです。もうちょっとこだわって欲しかったな。初日だったからかもしれませんが。
 湯澤幸一郎さん。かっこいいし美しい。高いようで太い声が胸に響きます。手が届きそうなほど近くで彼のHot&Coolな演技を味わえるこの機会を、ぜひ逃さないで欲しいです。

 天然ロボット : http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Screen/7887/


≪ひとことモノローグより≫

◆ 『ホルマリンの少女』
  update: 2003.02.19 (Wed)

湯澤幸一郎さんの劇団、天然ロボットを観に行ってまいりました。
面白かった!!
大人向けのロリータ・エロスと謎解きサスペンスです。
新谷真弓さん(NYLON100℃)、加藤直美さん(ベターポーヅ)出演。

Posted by shinobu at 23:00 | TrackBack

シベリア少女鉄道『遥か遠く同じ空の下で君に贈る声援』01/24-02/02王子小劇場

 シベリア少女鉄道はインターネット演劇界では非常に人気の劇団です。とにかく脚本のアイデアがすごいです。非常に計算高くて緻密。そしてそれをやりきる演出もすごい。公演が終わっているのでネタばれしちゃいます。

 今回は「競馬」でした。

 ある、ちょっぴりさびれた喫茶店が舞台。へなちょこ・ほんわかな装置が適度にフレンドリーな雰囲気をかもし出します。登場人物はマスター、ウェイトレス、常連客のおじさん、別れそうな(?)カップルとその友人、その他もろもろ。

 登場人物の一人一人がおのおの決めゼリフを持っていて、何かあるごとにそのセリフを言います。「ぜんぜんわかんない」「いらっしゃいませ」「まじかよ、おい」みたいな簡単な言葉を振付つきで連呼。客は何のことだかよくわかんないまま物語は進みます。

 「彼氏が実は浮気をしていて、その浮気相手がこの喫茶店のウェイトレス!?」というどたばたが佳境になってくる頃に「あ、虹が出てるわ」と、突然、舞台奥の上部に虹のパネルが出現。赤、だいだい、黄、緑・・・と縦に並ぶストライプの右端には馬のぬいぐるみが並んで張り付いています。そう・・・それは競馬場・・・・!

 登場人物それぞれが1匹の馬。決めゼリフが馬の名前。「ナンテコトデショウ」とか。(言葉は確かではないです)そしてその名前を呼ばれる度にゴールに向かって1コマずつ進むというルールだったんです!「ぜんぜんわかんない!」ぬいぐるみが1コマ進む。「ぜんぜん・・・わかんない?」さらに1コマ進む、というように。
 名前の他にも競馬の実況アナウンスなどの競馬関連のワードを絶妙にとりまぜて、どたばたラブコメディーと競馬のレースを完全同時進行させます。あぁー・・・・ヤラれた。競馬用語の独特さと日本語の柔軟さを堪能。言葉についての知的好奇心が満腹。

 当日パンフが6種類あって勝ち馬投票券になっているとか、細かい技がまた憎い!『遥か遠く同じ空の下で君に贈る声援』というタイトルもわかってから読むと味わい深いですよね。実はチラシのキャッチコピーにもちゃんとネタが仕込まれていて見れば見るほど楽しめます。綿密なんですよね。

 あと、シベリア少女鉄道について声を大にして言いたい・・・女優さんが可愛いぞ!!
 渋谷景子さん。「ウレシインザスカイ!」の振付をまっすぐにやり続ける姿には女の私でも胸きゅんです。
 秋澤弥里さん。ウェイトレス姿で甘えられるとどんな男性でも参っちゃいますよ。
 土屋亮一さん。作・演出・出演。「いらっしゃいませ」のタイミングが絶妙。彼独特の憎めないふてぶてしさは貴重だと思います。

 今は小劇場で小劇場的に観るしかない(快適な客席ではない)のですが、やっぱり観たいと思わせる劇団ですね。

シベリア少女鉄道HP : http://www.siberia.jp/

Posted by shinobu at 22:19 | TrackBack

AGAPE Store #7『BIGGER BIZ』02/15-23紀伊国屋ホール

 後藤ひろひとさんの脚本をG2さんが演出された『BIG BIZ』の続編です。前作に比べるとキャラクター勝負というよりはストーリーに重点がおかれていました。
 私は今回のほうが好きです。断然笑えました。でも前作を見ておかないと楽しみは半減だと思います。キャラクター設定が非常にしっかりしている、というか、濃いので。

 内容はどたばた乱痴気騒ぎですが、徐々にはらはらどきどきのサスペンスになっていき、最後は大どんでん返しが気持ちいい。よくできた脚本だと思います。勘違いが勘違いを呼んでさらにひどい勘違いのためにひどい目にあう・・・。どたばたコメディーの王道をしっかり押さえて、しかもビジネス界のシビアな戦いも楽しく描いています。

 三上市朗さん。役作りのために太られたのかしら?と思うほどヤなおやじ系でっぷり体格。なのにすごくセクシー!うっとり見とれるほど。パワースーツがお似合いでした。クールに決めているのに大ピンチに陥って役柄が本性を現すときも、決して生っぽくならない。最初から最後までその役になりきってらっしゃいました。それが最高に滑稽でいいんです。

 こういうお芝居ってそういう演技であってほしいと思いますね。計算しつくされたコメディーであるためには何重にもお客をだましてほしい。八十田勇一さんも感情の移り変わりをしっかり見せてくださって、思いっきり笑わせていただきました。
 松永玲子さん(ナイロン100℃)。ナイスバディーを拝むのを待ち望んでいました。その甲斐あり(笑)。
 出てないはずの粟根まことさん(劇団☆新感線)がカーテンコールに出ていらしてびっくり!ラッキーなおまけでした。

 当日パンフの役者写真の衣装がすごく豪華。なんとブランド物なんです。時の流れを感じました。演出のG2さんもパンフに載られるようになりましたね。終演後ロビーにいらっしゃったのですが、すごく痩せてらっしゃいました。

G2プロデュースHP : http://www.g2produce.com/

Posted by shinobu at 15:09 | TrackBack

2003年02月17日

池畑慎之介 主演『越路吹雪物語~夢の中に君がいる~』02/14-18アートスフィア

 越路吹雪さんというと元宝塚の男役看板スターで戦後の大舞台女優。そして日本を代表するシャンソン歌手です。1980年没。原作者の岩谷時子さんは越路吹雪さんのマネージャーさんであり、ともに歌を作ったパートナーでもある方。そのお二人の友情を軸にしたお芝居でした。

 涙と鼻水がとまらなかった・・・・!(笑)。
 いやはや、期待どおりというか予想どおりというか。満足です。

 宮田慶子さんは本当に適材適所の演出をされる方だと思います。お芝居そのものというよりは、その興行の意味を考えてらっしゃる。客層をしっかりと頭に入れてらっしゃいます。実在した人物の自伝的作品を上演することのリスクと魅力、そしてその意味について熟考した末の演出だと思いました。力を入れるところと抜くところを熟知されてますね。

 越路吹雪さんの宝塚時代から始まって、ものすごい早足でその後のスター人生を表現し、最後は亡くなるまでのお話なのですが、突然ベッドが出て来て越路さんは死んじゃってました(笑)。それもそのはず、ピーターのレビューが待ってたんですよ。ゴマキ・ミュージカルと同じですね。歌がメインなんです。まあそれはそれでいいんじゃないか、と。お客様が神様ですから。お芝居をしっかり成立させることよりもピーターが華であることが大事。

 舞台装置はまさに地方興行を予定しているのがよくわかる組み立て式の匂いがぷんぷん。でもそれはそれでOK。それを高品質で鮮やかな衣装が補います。小峰リリーさんの衣装はやっぱりすごい。カッティングとフォルム(って言えばいいのかな)が最高です。

 池畑慎之介(ピーター)さん。すごい!さすがのスター!実はROLLYに(が)似てる!!(笑)。サービス精神の塊ですよね。適度の恥じらいと笑いのセンスが観客の心をわしづかみです。
 高畑淳子さん。彼女が居るから物語が成り立ちました。ただ立っているだけで笑えるし泣ける。優しさが溢れるひとつひとつの動きと言葉。彼女のお芝居には清らかで大らかな愛があります。大好きです。

天王洲アートスフィアHP : http://www.tennoz.co.jp/sphere/index.htm

Posted by shinobu at 02:08 | TrackBack

2003年02月11日

Bunkamura『ニンゲン御破算』02/04-24シアターコクーン

 松尾スズキ&中村勘九郎+大人計画常連陣+α!『キレイ』に引続きコクーンでミュージカルとのこと。歌舞伎役者とどうやりあうのか。

 ・・・松尾スズキさんの一人勝ちでしょう。松尾さんの暴走をただ見て思い知る3時間半でした。

 ストーリーは覚えてないです。『エロスの果て』もそうだったけど。ストーリーってもちろん大切なんだけど、それがどうでもよくなる瞬間が多発し過ぎで、ほとんど脳内テロ状態。全く統一感なく撒き散らされる(ように感じる)言葉、歌、踊り、そして水。

 つながっていないもの、それぞれ独立した個別のものの羅列がストーリーのように見えるだけなんです。というかストーリーだと思いたいだけ。それを受け入れられる役者が少なかった。はちゃめちゃこそルールだと、松尾さんを信じて自分の全てを投げ出せる人ばかりじゃなかった。いや、ほとんど無理な相談なんだと思います。投げ出すなんて、ね。

 私はつながってないことが大事なんじゃないかと思うんです。同時多発的に起こる相反する事象。それの連続。つまり不連続。当事者にとっては青天の霹靂、天変地異、ありえないこと、のように思うかもしれませんが、遠くからそれを眺めると実は非常に順序良く、道理にかなったことに見えるかもしれないん。だから、そのままやりきることで初めてそれを舞台にライブで表現できるのだと思います。

 シアターコクーンだからこその水。そう、水、水、水っっ!!『マシーン日記』の雑誌もそうでしたが、何事もある量を超えた時、一線を超えた時に、プツンとキレるんですよね。昇華するんです。小道具とか、たぶん私が今まで観たお芝居の中で一番量が多かったと思います。

 松尾スズキさん。天才。それだけ。それ以外に感想はありません。
 中村勘九郎さん。いっぱいいっぱい。セリフ間違うし。忘れるし。コクーン歌舞伎でのあの勇姿とは打って変わって子供のようでした。つながっているはずだ、と思って試行錯誤しているんじゃないかと思いました。

 阿部サダヲさん。いつも通りのカッコよさ。でも出番が少ない。単に物足りなかった。
 宮藤官九郎さん。松尾さんの合いの手でしかなかった。もっとメインでいて欲しい。阿部さんと同じく。
 荒川良々さん。いつものキャラですっきり満足でした。こういうマイペースがいいんですよね。考えないでいいんです。

 秋山菜津子さん。「刀くさっ!」最高。彼女についてももっと観たかった。
 片桐はいりさん。早口すぎました。どうしたんだろう?もったいなかった。
 浅野和之さん。この人も中村勘九郎さんと同じじゃないかなー。ついて行けてなかった。
 小松和重(サモ・アリナンズ)さんは自分のスタイルを出すこととが出来ていたと思います。

 宮藤官九郎さんが「大人計画に入ってしまったら大人計画の芝居を観られないよ」と、どこかで書かれていました。そうなんですよね。大人計画の世界は大人計画でしか作れないんだと思います。

文化村HP : http://www.bunkamura.co.jp/

Posted by shinobu at 18:01 | TrackBack

後藤真希 主演ミュージカル『けん&メリーのメリケン粉オンステージ!』02/05-12ル・テアトル銀座

 後藤真希というとモーニング娘。を卒業(って何?)してソロになったアイドルですね。通称ゴマキ。アイドル主役のミュージカルなのにいったい何なのよこのタイトル!?というタイトルです。副題は「黄金のS41 青春グラフィティー」。すごい。お友だちの幸野友之さん(方南ぐみ)が出演されるので観に行きました。

 おおよそ96%は男性客。そう。「おっかけ」と言っても過言ではない超ゴマキ・ファンの方々。ちなみに残り4%は子供連れ・その他です。「後藤真希 命」とか書かれたハチマキをした小学生とその母親とか。

 舞台は昭和40年代の東京。古くからあるもんじゃ焼き屋と大阪から来たばかりのお好み焼き屋との戦い。ゴマキの淡い恋心をからめて商店街の人々のほがらかな日常を描きます。

 開演の時、音楽が徐々に大音量になり会場が暗くなり始めたとたんに割れんばかりの拍手。さすがゴマキ。「ごっつぁんの初ミュージカル、一言一句聞き漏らさずに見守るよっ!」というファンの心遣いと緊張からでしょうか、最初の1時間ぐらいは客席の反応がさぶかった。盛り上がり始めたのが開演から1時間後。

 でもさすが樫田正剛さん(方南ぐみ)の脚本です。ソフトな吉本新喜劇っぽいわっかりやす~い内容で、ゴマキのヒット曲(サン・トワ・マミー等)をきれいにからめて見せ場も作って、最後はちゃ~んといい話に持って行くんです。泣いてるお客さんもいました。だいたいゴマキ主役なのに昭和40年代のお好み焼き屋という発想が素晴らしい。ギャップを狙ったんですね。

 だっさい格好したゴマキ。棒立ち棒読みのゴマキ。演技している時と歌っている時が全然別人格(キャラ)のゴマキ。一言で言うと人形みたいな人でした。目に表情が無いんですよね。鉄面皮というか。私的にはほぼ目に入らず無反応に通り過ぎてしまう種類の女の子なんだけど、あんなに熱狂的なファンがいるんですから、そういうところこそが魅力なのかもしれません。

 方南ぐみの役者さんがアイドルの舞台に出ているのが楽しかったです。客席との溝とかも露骨で。
 幸野友之さん。ゴマキとデュエットするって言ってたけどあの素の態度は笑えました。どこまで彼女に近づいていいのか、どこまでデュエット感を出さなきゃならないのか。計りながらの合唱。ゴマキのお父さん役の人が彼女の頭をなでるシーンで、おそるおそる手を伸ばして結局なでる振りだけして触らなかったり(笑)。そうよね、ちょっとでも彼女に触れるようなことがあったらファンに殺されますよね。

 ミュージカルのあっさりとしたエンディング。緞帳が下りていく。これで終わりだな~と思ったら10分間の休憩。え?なんと「後藤真希オンステージ」が待っていたんです! こ、これがメインなのね・・・。北島三郎特別出演とか、歌舞伎町のコマ劇場でやる興行と同じスタイル。つんく♂すごい!

 で、その盛り上がりは・・・・あの蛍光に光る棒、知ってます?みなさん(客席の70%)あれを準備し始めました。もちろんコンサート用の服装に着替えてます。Tシャツがすごかった。
 「GM連合 後藤真希 僕の存在 あなたのために・・・」
 「モーニング娘。私設応援団 ~MEG~ あさみ(←Tシャツを着ている人の名前)」
 「MAKI 510」
 皆さん、作ってるんですねー。思わず紙にこっそりしたためた私。

 客電が消えたとたんに総立ち。「まきちゃーん!!」「ごっつぁ~ん!!」のふっとい声援。汗だくになって縦ノリにジャンプしまくる筋肉むきむきの青年。蛍光棒を両手の指にはさんで(計8本)振り付けどおりに踊りシャウトするおじさん。・・・本当の意味で圧倒されました。初めてなまこを食べた子供みたいに。

 内容は照明ガンガン音楽ドンドンの普通のコンサートでしたね。ゴマキはどんどん着替える(脱ぐ)んだけど最後は体のラインがほとんど丸見えの衣装。若いって怖い。そしてエンディングはミュージカル出演者が出て来てテーマソングをみんなで踊って歌っての豪華ファイナル。
 「♪輝く未来。昭和40年代!夢の時代。昭和40年代!!」
 なんでやねん!思いっきり今風のコンサートしておいて昭和って・・・・。「オケピ!」ばりに笑えました。いやいやでもすごい大団円でした。素晴らしいエンターテイメントでした。心置きなく拍手です。

 後藤真希グッズがロビーにいっぱい。パンフは2,500円で中身はほとんど彼女の写真ばかり。全部セットというのがあって9,300円。すご。きっと全部買うんだろうな。

 実は、ミュージカル本編の時から隣りの人の口臭がつらくて仕方なかった。そして汗、汗、怒号。貴重な体験をさせていただきました。

 ※樫田さんの「樫」の字が違うのですが、私のPCではそのフォントがないので臨時に使わせて頂いています。

後藤真希 公式 : http://www.helloproject.com/gotomaki/

Posted by shinobu at 12:05 | TrackBack

2003年02月04日

宮本亜門 演出『ファンタスティックス』01/30-02/11世田谷パブリックシアター

 『ファンタスティックス』は40年以上世界中でロングランされているミュージカルの原点的作品だそうです。『モーツァルト』で注目された井上芳雄くん観たさにチケットをGETしました。観に行って良かった・・・!

 宮本亜門さんのミュージカルは一度途中で帰ったことがあるのでちょっと不安だったのですが、「この世界的な財産と言える作品を観られて良かった!」とすがすがしい気持ちで帰ることができました。

 ここからネタバレします。

 隣りに住む少年と少女。2人は両想いなんだけれど互いの父親に反対されているため、隠れて愛をささやきあっている。だけどそれは、2人を結婚させたいと思っている父親同士の企てだった。引き離せば引き離すほど2人は愛し合うだろうと見込んでいた父親たちは、最後の仕上げとばかりに流れ者エル・ヨガにひと仕事依頼してある事件を起こし、2人はめでたく恋人同士となったけれど・・・。

 前半が完全な前振りで後半に本編が、全てが凝縮されていると思いました。前半は寝ちゃってですねぇ(すみません。)・・・。後半はオープニングからわくわくドキドキ。前半とえらい違い。

 この作品は作詞が素晴らしいと思いました。そこが超ロングランの理由ですよね。父親2人に依頼されて若い2人を騙す、流れ者エル・ガヨの歌。言葉足らずですがちょっとご紹介。
 「この涙で充分です。この小さな雫だけで。」
 「人はなぜ成長するときに何かを葬らなければならないのか」「それは矛盾に満ちた逆説。パラドックス。」

 黒い舞台装置の上に現れる黒い衣装の出演者たち。そこからカラフルな衣装に着替えていくオープニングは躍動的でフレッシュ。宮本亜門さんらしい感じ。照明の使い方もモダンでよかったな。現代的な演出はフィットさせることが難しいと思うんですが合ってたと思います。

 イデビアン・クルーの井手茂太さんが振付ということですがあまり目立ってなかったかな。井手さん独特のユーモアを理解していたのが、少女の父親役の斎藤暁さんだけだったような。斎藤さん、素敵でした。

 井上芳雄くん、きれいでした。若いって素敵。この若さでこのやる気って宝物ですよね。声量はまだまだこれからってとこかな。でも主役にぴったりです。清楚でさわやかで。ファンになれそう。そう、誰にもお薦めのミュージカル・スターだと思います。

 ヒロインの高橋恵理子さん。スタイルいいし顔かわいいし技術も在るのでしょうけど、私は無理。苦手。なんか、ちょっと、品がないんですよね・・・井上くんが惚れる少女役には不適。わお、断言しちゃった、すみません。NHKの「歌えリコーダー」という小学生向け教育番組に出ていらっしゃる人なんですよ。私、見た事あるんです。操り人形みたいな演技をするアナウンサーっていうか。演技が非常に紋切り型。意図なしに大げさ。同じNHKだったら茂森あゆみさんの方が良かったんじゃないかなー、ってそんな問題じゃないか。

 物語としても、何も知らない大人しい少女が危険に魅了されて足を1歩踏み込んでしまう・・・という方がドラマチックだと思うんです。もともと勇み足の子がじゃんじゃん走り込んでも、それは普通です。というか見た目に美しくないと思うんですよね。そこは私の個人的好みだと思います。亜門さんはけっこうパワフルな女優さんが好きですよね。

 エル・ガヨ役の山路和弘さん。素晴らしかった。色気があってふところ深くって。この役の意味をしっかり咀嚼してその上、自分の魅力もプラスされていたと思います。

 追加公演では、井上芳雄くんのアフタートークがあるそうです。

世田谷パブリックシアターHP : http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/02-2-25-1.html

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