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しのぶの演劇レビュー
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2007年04月05日

G-up Presents vol.5『アリスの愛はどこにある』04/04-08新宿FACE

 G-up(過去レビュー⇒)がプロデュースする童話ファンタジーシリーズの第2弾です。第1弾『Deep Forest』に引き続き楠見薫さんと新谷真弓さんが出演されていて、脚本はほさかようさん、演出は板垣恭一さんです。他のキャストにも小劇場で注目の若手役者さんが揃っています。
 上演時間は約2時間15分。

 CoRich舞台芸術!『アリスの愛はどこにある

 ≪あらすじ≫
 アリス(新谷真弓)は恋人に誕生日パーティーをすっぽかされて、相当なおかんむり。姉(桑原裕子)が恋人から託されたプレゼントを持ってアリスをなだめにやってきた。童話作家の彼からのプレゼントは、アリスのために書かれた本。ありきたりのハッピーエンドが用意されている童話なんて大キライなアリスは、その本を床に叩きつける。すると見たこともないヘンな人(?)がやってきて・・・。
 ≪ここまで≫

 新宿FACEでお芝居を見るのは『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』に続いて2度目です。会場中央に大きなステージがあり、三方から客席が囲みます。ちょっとプロレス観戦みたいな感じだな~と思いました。メルヘンチックな模様の抽象舞台でくりひろげられる、めいっぱいメルヘンチックなお話・・・前半はどうやって入っていけば良いのか困りましたが(苦笑)、「こういうのは入り込んだ者勝ちだ!」と一念発起し、自分からグイグイとお話の中に入って行くようにしました。

 ほさかさんの作品は何度か拝見しています(過去レビュー⇒)。空想組曲での作品は特に、ストレートすぎて恥ずかしくなるような、ロマンティックでわかりやすいセリフが多いです。でも、途中からびっくりするほど残酷だったり陰惨だったり、かなりパンチの効いた展開になるんですよね。今作もまたそんなきっかけがありました。「わわわ、そんな風になっちゃうの!?」と引き込まれてからは、登場人物それぞれについて見どころが出てきて、頑張って物語に参加しようとする努力もいらなくなったのですが、それまでが長かったですね・・・。

 ここからネタバレします。

 突然やってきたウサギ(高木稟)は、無理矢理にアリスを本の中の世界に連れていきます。人が本の中に入っていく構成ってありがちですが、アリスの母(楠見薫)、姉(桑原裕子)、そして恋人(弓削智久)に該当する人物が本の中にいて、彼らが徐々に現実の世界の人物と重なっていくのは面白いです。そして彼らと彼ら以外のすべての童話の世界の住人(7歳児も含む)が、ドンドコと音を立てるように不幸のどん底に堕ちていくのが、ほさかさんらしいダーク・ファンタジーなんですよね。性格の悪い女王(楠見薫)がやっと改心し、物事が良い方に回転していくかと思いきや、何もかもがガラガラと崩壊してしまいます。「やっと来たー!」って思いました(笑)。

 夫を失って頑なになっていたアリスの母親(楠見薫)は、童話の世界に女王として君臨し、圧政を行っていました。でも死んだ夫(森岡弘一郎)の霊や彼女の側近ノア(多根周作)、ノアの妹ミーナ(田中あつこ)の愛によって心を開いていきます。アリスは女ったらしのハメルン(弓削智久)の無償の愛に打たれて、ハメルンに恋をするようになります。このように恋愛が大きなテーマになっていたのですが、恋を語る者同士の間にリアルな恋があまり感じられなかったのが残念。

 役者さんは全体的に本領発揮できていないように見えました。初日だったので、これから良くなられるのだと思います。完全な童話のファンタジーの中に入っていくことは簡単なことではないかもしれません。でも、そこは是非ともバカみたいにどっぷりと、本気でやって欲しいなと思います。母親・女王役の楠見薫さんは素直に感情を出してくださっているように見えました。

 衣裳や小道具がキルティングの生地で統一されていて可愛らしかったです。

出演=楠見薫/新谷真弓(NYLON100℃)/高木稟/小林健一(動物電気)/桑原裕子(KAKUTA)/森岡弘一郎/辰巳智秋(ブラジル)/瀧川英次(七里ガ浜オールスターズ)/多根周作(ハイリンド)/中谷千絵(天然工房)/桜子/小宮山実花/田中あつこ(バジリコ・F・バジオ)/櫻井麻樹/山村秀勝/熊野善啓(チャリT企画)/竹岡常吉(PMC野郎)/矢田一路/弓削智久
作=ほさかよう 演出=板垣恭一 舞台美術=松本わかこ 音響効果=末谷あずさ(OFFICEmyon) 音響オペレート=天野高志(OFFICEmyon) 照明=正村さなみ(RISE) 舞台監督=金安凌平 衣裳=名村多美子 衣裳協力=渡辺まり 音楽=佐藤こうじ(SugarSound) 小道具協力=櫻井徹 演出助手=井村容子 演出部=田村友佳(KAKUTA) 宣伝美術=岩根ナイル(mixed) チラシ写真=Tomo.Yun(http://www.yunphoto.net) 撮影=田中亜紀 制作助手=松井見依子/田辺恵瑠 プロデューサー=赤沼かがみ 企画製作=G-up
全席指定 前売・当日とも 4,500円 ※未就学のお子様はご入場頂けません。
http://www.g-up.info/

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Posted by shinobu at 2007年04月05日 01:17 | TrackBack (0)