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しのぶの演劇レビュー
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2009年12月08日

フェスティバル/トーキョー09秋・山海塾『卵を立てることから一卵熱』12/04-06東京芸術劇場中ホール

 「F/T09秋」の7本目(⇒ ⇒記者発表)はパリを拠点に活動する山海塾の再演作品。『卵熱』の東京公演は8年ぶりだそうです。山海塾はF/T09春、09秋に連続参加しています。

 天児牛大さんがあまりにかっこ良くて、幕開けからその背中に見とれてしまいました。上演時間は失念。カーテンコールが凄かった!歓声があがるし拍手も止まらないし、いったい何回あったのかしら。出てくる度に振付も違っていて、すっごく楽しかった!

 ⇒CoRich舞台芸術!『卵を立てることから一卵熱

 舞台は一見シンプルそうなのですが、実は床が大きくて四角いプールになっており、水面に広がる波紋が、舞台奥の白い壁に反射するようになっています。足をサっと入れるだけで、一瞬にして壁に同心円状に広がる無数の波紋が、壁一面に大きく映し出され、それは得も言われぬ美しさ。

 ダンサーの体は想像していたよりもリラックスしているように見えて、張りつめた空気がずっと続くわけではありませんでした。むしろ気持ちを楽にして観ていられて良かったです。

 踊りも個性的で面白いですが、音響、照明、美術のトータルな空間演出のセンスが独特で、天児さんの美意識が隅々まで行きとどいているのが素敵ですね。

 ここからネタバレします。

 上手天井からは一筋の水が落ち続け、下手天井からは同じく一筋の白い砂が落ち続けます。砂は徐々に積もってひざまでぐらいの高さの山になります。客席からは見えないけれど、水面は高くなっていたんでしょうね。天児さんが砂の山にさわり、覆いかぶさって倒れるのがきれい。

 上手の方で天児さんがずっと卵を触っている(?)場面があって、あまり動かないものだからちょっと集中力が途切れてしまいました。座席は中央付近だったので決して舞台から遠かったわけじゃないんですけどね。
 
 中盤以降で、卵がバン!っと砕け散る(天児さんが両手で割る)演技があり、音響ともばっちり合っていて鳥肌。
 白く塗った手の指先だけを赤く塗ります。その色合いは血のようでもあり、マニキュアのようでもあり、不思議。

 カーテンコールで一番感動しました。5人でおじぎをして(そのおじぎの型が渋い!)、ゆっくりと体を曲げている間に、じわじわと暗転するのがめちゃくちゃカッコイイ!なるほど天児さんは唯一無二の舞踏家なんだなと思いました。

"UNETSU -The Egg Stands out of Curiosity"
初演:1996年パリ市立劇場 共同製作:パリ市立劇場 山海塾
演出・振付・デザイン:天児牛大 音楽:YAS-KAZ 吉川洋一郎 舞踏手:天児牛大 蝉丸 竹内晶 市原昭仁 長谷川一郎 舞踏手助手:松岡大 浅井信好 舞台監督:中原和彦 舞台監督助手:小野哲史 山下翼 照明(初演):山我勉 照明:岩村原太 鈴木悟 音響:相川晶 衣裳作製:飯塚昌代 衣裳協力:太田雅公 制作:緒形彰 秋山いづみ 丸田鞠衣絵 秋元桂子 【F/Tスタッフ】制作:米山淳一 【F/Tクルー】尾越有紗 金子穣為 小嶋恵理 菅原良和 林佳美 森田寿美礼 共催:東京芸術劇場(財団法人東京都歴史文化財団) 主催:フェスティバル/トーキョー
全席指定 一般 S席4,500円/A席3,500円 学生 3,000円/高校生以下 1,000円(A席のみ。要学生証提示)
http://www.sankaijuku.com/
http://festival-tokyo.jp/program/sankaijuku/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:30 | TrackBack

フェスティバル/トーキョー09秋・伊藤キムプロデュース『おやじカフェ』11/14-12/13東京芸術劇場前・特設ドーム

 『快快の「GORILLA」』に続き、翌日に“F/T station”で『おやじカフェ』と遭遇。春秋とF/Tに通ってて、はじめて観られたー!
 写真はドーム外側だけ。すみません。土日はやっぱりにぎわってますね~。⇒「F/T09秋」 ⇒記者発表 ⇒レビュー10

200912061543000.jpg

 ドーム入口から覗いたら、給仕の格好をした元気な“オヤジ”たちがPerfumeの「POLYRYTHM」にノって、ニッコニコの笑顔で踊ってました。その前は光GENJIの「パラダイス銀河」(とBeatlesの何かをmixさせた曲?)だった(笑)。超~楽しそうでした。笑いながら手拍子して観てました。

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 21:48 | TrackBack

フェスティバル/トーキョー09秋・快快『快快の「GORILLA」~ゴリラの写生大会』11/13-12/18東京芸術劇場前・特設ドーム

 東京芸術劇場前にある特設ドーム“F/T station”では、入場無料のイベントがたくさん開催されています。毎週金曜日は若手パフォーマンス集団快快(ファイファイ)が、毎回変わったイベントを開いています(笑)。⇒「F/T09秋」 ⇒記者発表 ⇒レビュー10

20091204_gorilla.JPG

 ⇒CoRich舞台芸術!『快快の「GORILLA」

 私が覗いたのは12/4(金)のゴリラの写生大会。出来あがった絵をゴリラが講評していました(笑)。ゴリラの言葉は写真右隣りのお兄さんが日本語で伝えます。「なんて温かいんだ、春のようだ」とか言ってた(笑)。みんなで一緒に絵を描いて、完成した絵を見せ合って、ゆったりだんらんなムードでした。

 残すはあと2回!下記は会場でいただいたチラシの情報です。
 詳細は快快公式サイトでアップされますのでチェックしてください。

■12/11(金)19時30分頃~22時頃まで※入場無料
 ようこそ先輩\(^o^)/
 チェルフイッチュ岡田利規さんとのスペシャル企画!
 「これから ゴリラやりまーす」
 快快がゴリラの着ぐるみを着て、チェルフィッチュの代表作
 『三月の5日間』を公開稽古!
 ゴリラが岡田さんにウッホッホな演出してもらいます

■12/18(金)
 ラスト!当然ぶちあげクロージングパーティー開催!
 DJは吉沢ダイナマイトさん!
 ゴリラがガチンコボクシングやります!
 やばいよゴリラどうなっちやうの!?
 人間の頭髪をつかったお習字もあり!

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 21:34 | TrackBack

フェスティバル/トーキョー09秋・庭劇団ペニノ『太陽と下着の見える町』12/05-13にしすがも創造舎

 タニノクロウさんが作・演出される庭劇団ペニノの新作です。「F/T09秋」はこれで10作品目(⇒)。

 タニノさんが記者発表で「うまくパンチラを見せたい」と公言されてたとおり、パンチラは大盤振る舞い(笑)。もちろん目玉はそれだけではなく。幸せな夢とおぞましい悪夢が混ざる、大がかりなインスタレーションのようでした。お子様にはエッチ度が高すぎるかも(笑)。上演時間は約1時間30分。

 5分間の劇団紹介動画↓が超カッコイイ♪

 ⇒CoRich舞台芸術!『太陽と下着の見える町

 黒い幕が上がって開幕。何を書いてもネタバレになるのでストーリーなどは控えます。スタイリッシュで、アーティスィックで、冷静で、でもいたずらな遊び心があって、スケベ(笑)。刺激も強いし意味もわかりやすいとは言えないので、お好みは分かれると思います。私はすっごく面白かったです♪後半はプチ興奮(笑)。

 作品全体が変態見本市のようで、そこはサンプル『あの人の世界』に似てるように思いました。天地がぐちゃっとくっついて、ごちゃまぜの、めちゃくちゃになるカオスな感覚も。
 人間を変態と非変態に分けるのは実は不可能で、おそらく私も他人から見たら変態なのだろうと思います。同様に、精神病患者と健常者の区別というのも容易ではないのかもしれません。

 計算して作られた舞台美術には見る者・見られる者、行動を起こす者・傍観する者を対比する効果も含まれており、無数の箱庭に展示された現代日本人の標本を眺めているようでした。見世物小屋みたいな感覚も。
 客席に向かってまっすぐに語る役者さんは、その人自身のように生々しい時もあれば、ルールどおりに動く人形のようでもあり、出演者全員の存在感がそろっていて素晴らしかったと思います。

 ここからネタバレします。

 舞台は2階建ての無機質な白い建物。1階は白い業務用ベッドがあるだけの殺風景な小部屋が並んでおり、おそらく精神病院のデザインです。10代から80代まで幅広い年齢層の男女が、部屋の中で、それぞれに望むことを自分から進んでやっています。ハイヒールを履いて落語をする女(内田慈)や、性欲を抑えられない受験生(山田伊久磨)など、変態度高い目。

 2階は会議室と広めのテラス。男女2人ずつの計4人は、テニスのユニフォームのような白くて清潔そうな衣裳を着て、優等生なムード。でも女性のスコートがわざと風でめくれてパンチラ三昧。彼らは1階の住人の行動を傍観して、批評するばかり。自分たちがやってるのは、どうやらごっこ遊びのようです。

 自ら行動を起こしているとはいえ、1階の人間はお膳立てされた娯楽(SMプレイ、萌え系アニメなど)を楽しんでいます。パンチラもどんどんわざとらしさが強調されてきます。マーケティングされた娯楽が溢れかえる現代社会を表してるように思いました。2階の人間は自分からは何もせず、噂話に興じて他人の欠点をあげつらって楽しんでいます。これもまたインターネットというメディアで、誰もが批評家気どりになっている今のことではないでしょうか。

 交通事故だろうが老衰だろうが、やがて誰にも死が訪れ、土に帰すことになる人類。帰るところは排せつした糞尿と同じ場所です。風船を持って50代の男(久保井研)がテラスから飛び降りると、下手上方の丸い窓にトイレのマークがあらわれました。1階の住人たちが部屋の外に出て、ベッドにみんなで腰かけて彼を見つめていたのも良かったな~。
 最後は2階にいた女の1人が、言葉が通じない者同士の絵を通じた会話について語りました。意味が全く通じないのも、期待した答えが返ってこないのも、人間のコミュニケーションの常だと思います。

庭劇団ペニノ18th "The Town where the Sun and Underwear are seen"
出演:久保井研(唐組) 山田伊久磨 佐野陽一(サスペンデッズ) 間瀬英正(ユークポイント) 大久保宏章(自己枇刺ショー) 森準人 マメ山田 高橋ちづ 内田慈 五十嵐操 坂倉奈津子 寺田ゆい 笹野鈴々音
作・演出:タニノクロウ 構成:タニノクロウ 玉置潤一郎 山口有紀子 吉野明 美術:田中敏恵 照明:今西理恵(LEPUS) 音響:中村嘉宏 衣装:中西端美 小道具:横川奈保子(Y's factory) 演出助手:森準人 舞台監督:矢島健 大川裕 舞台監督助手:大地洋一 音響操作:佐藤こうじ(Sugar Sound) 演出部:井上悠 衣装部:正金彩 安田美路加 大道具:C-OOM 櫻井敏郎 小道具:高津映画装飾 佐田丘仁子 井佐みずほ 照明協力:ART CORE 制作:中山静子 制作補:三好佐智子 【F/Tスタッフ】制作:武田知也 板橋薗恵 制作補:坂田厚子 インターン:荒川真由子 【F/Tクルー】上野智美 大和田愛 岡崎由子 川村美幸 郷淳子 清水美里 竹澤ひさみ 野中さやか 三橋俊平 製作:庭劇団ペニノ 共同製作:フェスティバル/卜-キョー 助成:財団法人セゾン文化財団 主催:フェスティバル/卜-キョー
【発売日】2009/09/05 3,500円
http://festival-tokyo.jp/program/penino/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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