2011年02月11日
芸団協セミナー2011『劇場をめぐるラウンドテーブルVol.7「地域の劇場のこれまでとこれから~地域劇場の本音を聞こう~』01/31芸能花伝舎1-1
芸団協の「劇場をめぐるラウンドテーブル」にはなるべく参加するようにしています(⇒関連エントリー⇒1、2、3、4、5)
第7回目のゲストは埼玉県の劇場キラリ☆ふじみの芸術監督である演出家の多田淳之介さんと、愛知県を拠点に主に東海3県で活動する劇団うりんこの制作者、平松隆之さん。参加者には公共ホールの職員の方々が多かったようです。
お話を伺って、劇場とその周辺地域との関係はとても大切だなと、あらためて思いました。劇場で働く人、公演をする人の生活は、当然ながら劇場周辺地域やそこに暮らす一般の人たちと関係しますよね。東京に住みながら“観たい舞台が上演される場所に出向く”という感覚だけで行動してしまうと(私がしばしばそうなのですが)、このことをおろそかにしがちだと思いました。
多田さんは公共ホールの芸術監督として日本最年少。自身の劇団東京デスロックは東京公演を休止して日本各地で活動しており、韓国公演でも高い評価を得ています。東京デスロックのキラリンク☆カンパニーとしての最後の公演『平成二十三年のシェイクスピア』は、現役高校生と創作する作品。キラリ☆ふじみにて2/25(金) ~ 27(日)に上演されます。キラリ☆ふじみはチェルフィッチュ『ゾウガメのソニックライフ』、二兎社『シングルマザーズ』(⇒制作発表会)などの、演劇界注目の公演が観られるすごい劇場になりました。
富士見市民の方々との演劇、劇場を通じた直接的なかかわりについて、優しい語り口で話してくださいました。こんなに穏やかなのに作品は尖がってるのが魅力(笑)。やはり多田さんはアーティストだなと思います。
多田「芸術監督になる前もキラリ☆ふじみで働いていたので、昔から知り合いだった地域の子供が、劇場まで僕を訪ねてくることがある。劇場に長年つとめていることがとても大事だと実感した。」
劇団うりんこは2003年に観たこの作品がすっごく面白かったんです!平松さんは論理思考の冴える制作者でありながら、同時に情熱的なロマンティストでいらっしゃるようにお見受けしました。名言の数々にシビれましたね。
平松「サッカーはチャージ。芸術はチェンジ。」
※サッカーをテレビ観戦した人が「元気をもらった」と言っていた。スポーツは元気をくれる(チャージ)。では芸術は?芸術は変化(チェンジ)をもたらすのだ。
劇団うりんこはただいま新作『アセリ教育』を上演中。期間は本日2/11(金)~13(日)。なんと中屋敷法仁さん(柿喰う客)の新作を、柴幸男さん(ままごと)が演出するという・・・これはめちゃくちゃ観たい!のですが、行けなくなってしまいました(涙)。いつか東京でもやってくれないかなー!
平松さんは劇団制作と並行して「日本のへそ演劇祭(通称:へそフェス)」のチーフプロデューサーもつとめられています。へそフェスのモットーは「観客主体」「サブカル同盟」「地域をつなぐ」。公式サイトの「Q&A」ページに平松さんの精神がくっきり示されています。ぜひご一読を。
ゲスト:平松隆之(劇団うりんこの制作者。このたび「日本のへそ演劇祭」をプロデュース) 多田淳之介(演出家・東京デスロック主宰・富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ芸術監督)
進行役:矢作勝義(世田谷パブリックシアター)
主催:社団法人日本芸能実演家団体協議会 助成 平成22年度文化庁芸術団体人材育成支援事業
参加費2,000円(茶菓代を含む)
http://www.geidankyo.or.jp/12kaden/04pro/manage/gekijyo_rt11vol7.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Bunkamura/Quaras『ミシマダブル「わが友ヒットラー」』02/02-03/02 Bunkamuraシアターコクーン
三島由紀夫戯曲2本をほぼ同じキャスト交互上演、しかも演目が『サド侯爵夫人』(過去レビュー⇒1、2、3)と『わが友ヒットラー』(⇒過去レビュー)という・・・驚きの企画です。
演出は蜷川幸雄さん。男性ばかりのキャストはジャニーズ事務所所属の生田斗真さんと東山紀之さん、そして大ベテランの平幹二朗さん、木場勝己さんら。まず『わが友ヒットラー』を拝見しました。上演時間は2回の休憩を含み、カーテンコール込みで約3時間弱。
ジャニーズ事務所のスターが2人出演している公演ですが、お約束のような3回目のカーテンコール(スタンディング込み)がなくて気持ちが良かったです。
公演パンフレットは2作品兼用で2000円。平野啓一郎さん、小池真理子さんらの寄稿もあり充実の内容でした。操上和美さんの写真が渋い!
⇒CoRich舞台芸術!『サド侯爵夫人』『わが友ヒットラー』
あらすじはこちらに詳しいです。
2011年の今、上演されているということと、いかにも「お芝居(嘘)ですよ」ということを、はっきりと見せる演出だったと思います。オープニングの演出がかっこ良かった!!豪華な装置に、ハーケンクロイツの腕章をつけた軍服、感情の起伏に沿うような音楽。わざと演技の色合いを濃くして、大げさに強調するようなもシーンも時にはありました。初演された当時だって、普段には話されないような言葉の連続ですものね。
『わが友ヒットラー』は一度観たことがありますし、ストーリーを追う必要は私にはありませんでした。修飾の多い美しい日本語の文章を語る男たちが、戯曲上および舞台上において戦う様を見つめました。出演者は4人4様といいますか、演技へのアプローチがそれぞれに違う気がしました。
平幹次郎さんは恐ろしい武器商人クルップ役。書かれた言葉の1つひとつをじっくり味わえるようなセリフ運びを堪能。見事な朗読を聞いているような気持ちにも。
ヒットラー役の生田斗真さんには、登場する度に引きつけられました。長いセリフの途中でヒットラーの気持ちは何度も激しく変化します。体も心も大きく震わせ、生々しく存在されていました。生田さは現在26歳なんですね。若いのにすごいと思います。
レーム役の東山紀之さんの言葉は、私には伝わって来づらかったですねー・・・。あらわす感情の種類が少ないように思いました。例えば演技(および感情)が一直線すぎて、長いセリフがずっと同じニュアンスだったり。でも敬礼や回れ右など、軍人らしい体の動きがものすごく美しい!きびきびとした動作をされる度に見とれました。鍛え上げられた身体だからこそなんでしょね。
木場勝己さんはレームと水と油の関係にあるシュトラッサー役。レームとの対決シーンが見せ場だったと思うのですが、個人的にレームの言葉や存在のしかたがしっくり来ず、そのせいかどうかは定かではないですが、シュトラッサーの言葉もあまり入ってこなかったです。
ここからネタバレします。
劇場の機構が露出した何もない舞台。幕開けにまず舞台中央奥の大きな搬入口が開き、外の景色が見えます。冷気も入り込んでくる中、天井まで届きそうな鏡ばりの巨大な壁が、上下の袖から移動して出てきました。黒い作業着を着た演出部のスタッフさんたちが動かしています。4~5つほどの大きな壁が舞台を横切りながら、徐々に横につながって空間を丸く囲むような形に固定。豪華なイスやベンチなどの調度品も登場し、きらびやかな部屋が完成しました。並んだ壁の中央部分は外へと開いたバルコニーで、どうやらヒットラーが演説する場所のようです。バルコニーの奥には先ほどから開いている搬入口があり、渋谷の景色が見えています。そして赤い豪奢なカーテン2枚が、天井の右側と左側から同時に降りて来て、舞台と客席との間をバサリと優雅に閉ざしました。かっこいーーーーーーー!!
幕が開くとヒットラーが客席に背を向け、群衆に向かって演説をしていました。日本人がドイツ人を、しかも実在した歴史上の人物を演じるという大っぴらな嘘を、“開幕”する形で見せる演出がとても良いと思います。演技の方法や選曲なども含めてもっと深い意図があるかもしれませんが、そこまでは咀嚼できず。
ミシマダブル 三島×MISHIMA vs 蜷川
出演:東山紀之 生田斗真 木場勝己 平幹二朗
脚本:三島由紀夫 演出:蜷川幸雄 美術:中越司 照明:服部基 音響:井上正弘 衣裳:小峰リリー ヘアメイク:武田千巻 音楽/編曲:かみむら周平 所作指導:花柳寿楽 舞台監督:濱野貴彦 演出補:井上尊晶 演出助手:大河内直子 藤田俊太郎 劇場舞台技術:野中昭二 票券:岡野昌恵 制作助手:稲村宗子 制作:大宮夏子(Bunkamura) 宇津木信之介(Bunkamura) 麻田幹太(Quaras) プロデューサー:加藤真規(Bunkamura) 松井珠美(Bunkamura) 松野博文(Quaras) 制作協力:ジャニーズ事務所 企画・製作・東京公演主催:Bunkamura/Quaras
【休演日】2/7,14,21,28【発売日】2010/11/27 S¥11,000 A¥9,000 コクーンシート¥6,000(税込)
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_11_mishima.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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