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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年02月13日

おにぎり『斷食』01/26-30座・高円寺1

 劇団☆新感線所属俳優の村木仁さんが、池谷のぶえさんと市川しんぺーさんに声をかけて結成された“おにぎり”の旗揚げ公演です。200席程度の小劇場で、青木豪さんの書き下ろし戯曲をいのうえひでのりさん(劇団☆新感線)が演出するという贅沢さ。

 ホラー風味もあるSFドラマでした。派手な音響、照明が楽しい!そして怖い!上演時間は約1時間25分。
 仮チラシを持っていくと受付でプレゼント↓がもらえます♪ 仮チラシは切り込みを入れて返してくださいます。観客への心遣いが嬉しいですね。
 ※公演はとっくに終了しております。レビューが遅くてお役に立てずすみません。
20110127_onigiri_kan.JPG

 ⇒CoRich舞台芸術!『斷食

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 ある男(村木仁)の元に、怪しげな保険外交員(市川しんぺー)がやって来る。
 保険外交員によると、最近亡くなった男の母親(池谷のぶえ)は、生前ある保険に入っていたという。
 母親の遺した保険が、男を奇妙な運命へと導いていった。
 ≪ここまで≫

 観終わって第一の感想は、青木さんが現代および未来の「食」について警鐘を鳴らしているのではないかということ。
 けっこう露骨な下ネタが頻出します。設定上、不可欠だとも受け取れます(つい先日観たこの公演でも感じました)。役者さんがズバっとやりきってくださるので、昼の明るいうちから観ていても大丈夫でした(笑)。大人向けではあると思います。

 池谷のぶえさんの演技の切れ味のよさ、おおらかさに感服です。ものすごくかっこいい!

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 近未来の日本。「自分にそっくりなクローンを作っておき、将来の臓器移植に備える」という医療保険ができている時代。魚はどうやら絶滅し、ほとんどの食事が人工食物で、缶詰になっているようです。主人公の杉浦哲(村木仁)は一人暮らしの40代男性で、職業は借金の取立て屋。

 池谷のぶえさんが杉浦の母と、そのクローンを演じます。クローンは予備の臓器を確保する目的で生み出されたので、人間らしく生きる権利はありません。食の楽しみもないので、「死ぬために生きるならセックスするぐらいしかない」という切実さ。映画『愛の嵐』を思い出しました。

 断食道場で3日間絶食し、杉浦の朦朧とした意識の中で、夢と現実の差が曖昧になっていきます。過去の回想場面でわかったのは、アル中のDV夫を刺し殺したのは母親だったこと。だから息子は15年間も実家とは疎遠にしていたんですね。
 そういえば母親は抗がん剤治療をはじめた翌日に突然死んだ、がん患者のエピソードを語っていました。現代医療への疑念も織り込まれているのではないかしら。

 杉浦とクローンと一緒に断食していた保険外交員(市川しんぺー)は「あんたみたいな人はこれからの時代、生きていけないよ」と言い、杉浦をナイフで殺してしまいました。保険外交員の「俺は何でも食って生きてやる」という最後の言葉には、人間らしさがありません。考え過ぎかもしれませんが、やはり食べ物なんじゃないですかねー・・・。野菜や肉、魚など命あるものをいただくのが食事だとすると、人工食物は“食べ物”じゃないんですよね。だから保険外交員は、人間のようで実は人間ではなかった、というか。

 何度も笑わせていただきましたが、特にはっきりと覚えてるのは池谷さんのこのセリフ。
 「たわわがここにあるよ!」

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫ メモ程度です。
 出演(舞台上手より):橋本じゅん いのうえひでのり 青木豪 司会:金田明子

 青木「(おにぎりへの書き下ろしをするにあたり)まずSFというお題がありました。村木さんからは『(村木、池谷、市川の)3人芝居でアキ・カウリスマキみたいなのを』と(笑)。」
 いのうえ「小劇場で男2人女1人の3人芝居だから、つか(こうへい)さんの芝居を思い出した。『蒲田行進曲』『飛龍伝』とか。セリフとともに音がバーン!と鳴るのはザ・ガジラです(笑)。」

 4月に上演される『港町純情オセロ』の話題になりました。主演は橋本じゅんさん。
 いのうえ「『リチャードⅢ世』をやってみて、今の日本でシェイクスピアを忠実に上演するには、翻案するのがいいと思った。『港町純情オセロ』は、まんま『オセロー』です。」

 『鋼鉄番長』を病気降板された橋本じゅんさんの元気なお姿を見られて嬉しかったです。

第3回演劇村フェスティバル参加 おにぎり旗揚げ公演
出演:村木仁 池谷のぶえ 市川しんぺー
脚本:青木豪 演出:いのうえひでのり 舞台美術:池田ともゆき 照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音響:藤本純子 衣裳:小原敏博 演出助手:山崎総司 舞台監督:芳谷研 演出部:三木やよい 照明操作:瀬戸あずさ 衣裳助手:小林由香 ヘアメイク協力:堀内典子 殺陣指導:川原正嗣 大道具:俳優座 小道具:高津映画装飾、天野雄太、中田彰輝(M.E.U)、高橋岳蔵 運搬:マイド 作画と図案:ナミヘイ 宣伝写真:引地信彦 制作:Little giants 制作助手:辻未央 制作協力:ヴィレッヂ、那須みちの 託児協力:(特)子ども文化NPO M・A・T 提携:座・高円寺/NPO法人劇場創造ネットワーク 後援:杉並区 企画・製作:おにぎり
【発売日】2010/12/11 全席指定 前売り・当日4,000円
http://blog.livedoor.jp/onigiri2011/
http://blog.livedoor.jp/onigiri2011/archives/51163486.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 21:30 | TrackBack

Bunkamura/Quaras『ミシマダブル「サド侯爵夫人」』02/02-03/02 Bunkamuraシアターコクーン

 『わが友ヒットラー』に続いて『サド侯爵夫人』(過去レビュー⇒)を拝見。面白かった~~~!上演時間は2回の休憩を含み、カーテンコール込みで約3時間30分弱。

 禁断の、背徳の、という修飾がぴったりの、なまめかしくて暴力的な、それでいて美しい言葉の洪水。『サド侯爵夫人』はストーリーも面白いんですよね~。あらすじがわかっているはずなのにハラハラしちゃいました。豪華絢爛な衣裳・かつらにうっとり!

 ロビーでは三島由紀夫関連書籍などが多数販売されていました。両戯曲を収録した文庫本↓もあり。私は以前にザ・スズナリで購入。ありがたいです。

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)
三島 由紀夫
新潮社
売り上げランキング: 88017

 ⇒CoRich舞台芸術!『サド侯爵夫人』『わが友ヒットラー』

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 18世紀、ブルボン王朝末期燗熱の都パリ―。サド侯爵夫人・ルネ(東山紀之)は、残虐かつ淫靡な醜聞にまみれる夫を庇い、愛し続ける。〝悪徳の怪物〟に〝貞淑の怪物〟として身を捧げる彼女に対し、世間体を重じる母・モントルイユ夫人(平幹二朗)は様々な手を尽くし別れを迫るが、夫が獄につながれてもなお彼女の決意は揺らがず、対立は続いた。やがてフランス革命が勃発。混乱の中、老境に差しかかったルネのもとに釈放されたサド侯爵が現れるのだが・・・。
 ≪ここまで≫

 華麗なドレスを身にまとった淑女が次々に登場し、話す内容がとても卑猥・・・というのがまず面白いんですよね。露骨に嫌な顔をしながら、彼女たちはみんな興味津々(笑)。観客もまた然り、でしょう。
 ドレスがちょっと大げさなんじゃないかと思うぐらい豪華なのがイイ!たとえば第一幕のルネのスカートの刺繍(?)が素晴らしかった~。場面ごとに着替えて出て来てくださって、人物の性格の違い、時の流れも表されていて嬉しい限り。

 フランス革命が起こって社会構造がひっくり返ってしまうことで、淑女たちの地位や生活も否応なしに激変します。価値観が逆転してタブーとされていることがタブーでなくなったり。牢獄にいる“怪物・サド侯爵”の近くにいる女性たちの気持ちの変化が、社会の変化と合わせて描かれます。

 東山紀之さんは“貞淑”で、夫に献身的に尽くすサド侯爵夫人ルネ役。ギュっとひきしまった体で姿勢をビシッと正して、SM行為について語ります。淫靡なこととは全く縁がなさそうなのに!『わが友ヒットラー』では少々もの足りなさを感じた東山さんですが、『サド侯爵夫』ではギャップが大きな魅力でした。
 生田斗真さんはルネの妹アンヌ役。とても可愛らしくって男性だということを忘れるほど。衣裳の色使いやデザインが、勝気で要領の良い性格にも合っていました。

 悪徳を体現するサン・フォン夫人役の木場勝己さんよりも、世間体ばかり気にするモントルイユ夫人役の平幹二朗さんの方が、ずっと悪徳が表に出てたような(笑)。木場さんはコミカルな面を強調する方向の役作りだったように思います。平さん、素晴らしかったです・・・!のけぞるほど笑えたりも!

 ここからネタバレします。

 搬入口と壁、赤いカーテンの演出は同じでした。『わが友ヒットラー』とまさに“対(つい)”なんですね。装置も演出も一緒なのはちょっと寂しい気もしましたが、衣裳が豪華なので不満はなし。
 西洋の歌曲(オペラなど?)に日本の音楽(能や歌舞伎のお囃子など?)を重ねて流していました。和と洋が正面からぶつかるように混ざります。セリフのきりのいいところで拍子木の音が鳴り、リズムを作っていました。ちょっと回数が多すぎる気もしましたが、3時間半の会話劇を一般の観客が飽きずに観られるための工夫かもしれません。

 第2幕のルネ対モントルイユの場面の、平さんの長いセリフに聴き惚れ、見とれました。
 第3幕はフランス革命が起こって9ヶ月後。モントレイユ夫人の言動が節操無く変わっているのが愚かしくて滑稽です。
 とうとうサドが解放されるというのに、ルネは出家を決意します。善人が不幸になってくサドの小説を読んだルネは、その小説の薄幸の主人公ジュスティーヌは自分であり、サドは牢獄にいながら自分を、この世界を、小説の中に閉じ込めたと言います。
 ルネのセリフを通じて、文学という人間の生み出した芸術の素晴らしさをあらわしているようでした。東山さんの堂々とした長いセリフを聴きながら、作家・三島由紀夫の小説の(二次元の)世界を味わえました。

ミシマダブル 三島×MISHIMA vs 蜷川
出演:東山紀之 生田斗真 木場勝己 大石継太 岡田正 平幹二朗
脚本:三島由紀夫 演出:蜷川幸雄 美術:中越司 照明:服部基 音響:井上正弘 衣裳:小峰リリー ヘアメイク:武田千巻 音楽/編曲:かみむら周平 所作指導:花柳寿楽 舞台監督:濱野貴彦 演出補:井上尊晶 演出助手:大河内直子 藤田俊太郎 劇場舞台技術:野中昭二 票券:岡野昌恵 制作助手:稲村宗子 制作:大宮夏子(Bunkamura) 宇津木信之介(Bunkamura) 麻田幹太(Quaras) プロデューサー:加藤真規(Bunkamura) 松井珠美(Bunkamura) 松野博文(Quaras) 制作協力:ジャニーズ事務所 企画・製作・東京公演主催:Bunkamura/Quaras
【休演日】2/7,14,21,28【発売日】2010/11/27 S¥11,000 A¥9,000 コクーンシート¥6,000(税込)
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_11_mishima.html

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Posted by shinobu at 17:24 | TrackBack

ロロ『グレート、ワンダフル、ファンタスティック』02/09-13こまばアゴラ劇場

 ロロは三浦直之さんが作・演出(時には出演も)される非常に若い劇団です。こまばアゴラ劇場の冬のサミット2010参加作品となった新作初日を鑑賞したのですが、最後まで拝見してみて、これは完成しなかったんだな(初日に間に合わなかったんだな)・・・と思いました。

 若い男女の恋愛を描くことの多かったロロが、違うことにチャレンジしているのはわかりましたし、ある場面がものすごく官能的で素晴らしかった。

 佐々木敦さんのツイート(⇒)によると、初日後に作品は激変したようですので、また次回に期待したいと思います。

 ⇒CoRich舞台芸術!『グレート、ワンダフル、ファンタスティック
 レビューは記録のみ。

 ここからネタバレします。

 赤い照明の中で、クルオがマコトの髪についた生クリームを少しずつ舐める場面。

ロロvol.5
出演:板橋駿谷 亀島一徳 篠崎大悟 望月綾乃 青木宏幸 多賀麻美 森本華 山崎明日香
脚本・演出:三浦直之 照明:工藤雅弘(Fantasista?ish.) 音響:池田野歩 衣裳:藤谷香子(快快) 舞台監督:鳥養友美 大地洋一 演出助手:中村未希 宣伝美術:玉利樹貴 制作助手:幡野萌 制作:坂本もも 企画制作:ロロ/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
【発売日】2010/12/01 予約・2500円 当日・2800円 高校生以下・2000円(予約・当日共に)
http://llo88oll.web.fc2.com/
http://www.agora-summit.com/2010w/lineup/lolo.html

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Posted by shinobu at 16:16 | TrackBack

【お知らせ】「CoRich舞台芸術まつり!2010春」応募〆切は明日2/14(月)の朝10時!

 毎年審査員をつとめさせていただいております「CoRich舞台芸術まつり!2011春」の応募〆切りは、明日2/14(月)の朝10:00です。⇒現在の応募状況

 ネビュラエクストラサポートが配信する“制作者の為のニュースヘッドライン”がこんな風にご紹介くださいました。
 
 「参加料無料、グランプリ賞金100万円、審査員は全国どこにでも飛んで行く、という小劇場カンパニー(特に東京以外の地域のカンパニー)にとっては他に類を見ない絶好のチャンスなだけに、もっともっと多くのカンパニーの参加を期待したい。」

 応募のコツをfringe blogにまとめています。まだ間に合います!お待ちしておりま~す!

Posted by shinobu at 14:45 | TrackBack