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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2007年07月03日

劇団コーヒー牛乳『0号~ゼロゴウ』06/27-07/01シアターグリーン BIG TREE THEATER

 柿ノ木タケヲさんが作・演出される劇団コーヒー牛乳。初めて拝見しました。1998年旗揚げで第19回公演ということでした。もうすぐ10年ですね。

 「上演中の写真撮影は他のお客様のご迷惑にならない程度なら可!」っていうのには驚きました(笑)。レビュー(revue)のシーンでデジカメで写真を撮ってたお客様、いらっしゃいましたよ。ちょっとうらやましかったな~。でも勇気ないよー。

 →CoRich舞台芸術!『0号~ゼロゴウ

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
 時代は昭和。舞台はキネマの撮影所。
 嗚呼、懐かしきは我が青春。
 昭和初期、映画がまだ「キネマ」とか「活動写真」なんて呼ばれていたころ、それは文化の花形だった。
 活気ある撮影所は、その「キネマ」に青春を懸ける若者たちであふれていた。
 明日のスターを夢見る役者。作品で名を上げようとする監督。腕のいい職人気質のスタッフたち。
 しかし、時代の背後には大戦の足音が近づいていた・・・。
 劇団コーヒー牛乳の新境地、青春群像活劇「0号(ゼロゴウ)」乞う、ご期待!!
 ≪ここまで≫

 わかりやすいお話で、殺陣にレビューにとても頑張ってるお芝居でした。前説やカーテンコールでは大衆演劇っぽい雰囲気。お客様からの掛け声も飛びます。

 昭和初期の映画撮影スタジオが舞台で登場人物もその時代の日本人ですが、今の若者の等身大の反戦の気持ちとして伝わってきて、ちょっぴり不本意な心持ちがありつつも、何度か涙が流れちゃいました。なぜ不本意だったかというと、ギャグがあまりに笑えなかったから(苦笑)。※私のツボじゃなかっただけで、客席では笑いがいっぱい起こっていました。

 殺陣を初めて取り入れたそうですが、初めてとは思えないみどころがいっぱいありました(殺陣:大八木八大)。右手に持った刀を相手の肩と首の境目に当ててから、左手で刀を上から押さえながら切るとか、かっこ良かったな~。バック転などのアクロバットが出来る役者さんもいらっしゃいましたね。

 レビュー・シーンではヒロイン千代子役の三枝奈都紀さんが、網タイツ姿で美脚を披露!めっさキレ~っ!!女王を囲んで踊る紳士たちのダンスの振付も、アメリカ映画に出て来そうな本格的なスタイルで楽しかったです。

 ここからネタバレします。

 取り壊しが明日にせまった撮影所に2人の老人が現れます。千代子(ザンヨウコ)と後藤(岡田一博)はその昔この撮影所で出会った恋人同士で、待ち合わせの約束を果たすためにやってきたのでした・・・と、ここまでで「あぁ、2人の内どちらか(もしくは両方)が亡くなっていて、幽霊になって出会ってるんだなぁ」とわかります。
 その仕組みがわかっていても特にがっかりすることはなく、熱の入った回想シーンでわいわい騒ぐ若者達を見て、楽しむことができました。ただ、役者さんの演技は全体的におぼつかないものではありました。

 千代子(ザンヨウコ)が南方戦線の悲惨な状況を説明する中で、こんなセリフがありました。
 「しまいには鍋ややかんなどの日用品も供出することになり、人を殺す道具になったのよ。」(ことばは完全に正確ではありません)

 戦争のせいで貧しい暮らしを強いられたり、望みどおりの人生を生きられなかった(死ぬことを無理やり選ばされた)という表現は、戦争映画などでもよく見られます。「それでも愛する人のために命を捧げた」という美談になるのがひとつのパターンです。

 でもこの作品では、自分たちが使っていた生活のための大切な道具が人を殺す武器になる嘆きを描いていました。平和ボケだとかいろいろ言われる“戦争を知らない世代(私自身も含めて)”が、本当に自分自身の身になって戦争について考えた時に浮かんできた気持ちを、素直に伝えてくれたように感じました。

 主人公の後藤(持永雄恵)をはじめ撮影所にいた若者たちは、ただ映画が作りたかっただけだし、ただ大好きな人と一緒にいたかっただけです。だけど赤紙が届いてしまい、死ぬとわかっている戦地に向かうことになります。映画を作る楽しさや、大勢の仲間と一緒に居る喜びを、全身で汗だくになって役者さんが盛り上げていたからこそ、その理不尽さを実感することができたのだと思います。
 最近、若い人が描く戦争もののお芝居で泣けることが多いです。

出演=阪本浩之、西川康太郎 伊藤今人、渡辺毅、鈴木ハルニ、中村須摩子、二瓶恵、こなきG.G、持永雄恵、三枝奈都紀(Afro13)、鈴木ハルニ、石黒圭一郎、中山貴裕、藤田佳奈(嶋アイランド)、高橋征也(劇団芋屋)、岡田一博(嶋アイランド)、ザンヨウコ(危婦人)
作・演出:柿ノ木タケヲ 舞台監督:渡辺陽一 舞台監督補:小野哲史 舞台美術:袴田長武+鴉屋 照明:宮崎正輝 音響:岡田悠(SoundCube) ミュージカル音楽:百瀬悠介(嶋アイランド) ミュージカル演出:岡田一博(嶋アイランド) 殺陣:大八木八大 衣裳:車杏里 振付:伊藤今人 宣伝美術:細田美装 写真:横山武 龍画:柿ノ木タケヲと愉快な仲間たち 制作:浅倉良徳 吉田千尋 大橋沙香 企画・製作:劇団コーヒー牛乳
http://www.coffee-milk.com/

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Posted by shinobu at 18:46 | TrackBack

三条会『ロミオとジュリエット』07/02千葉市美浜文化ホール

 関美能留(せき・みのる)さんが演出される三条会(過去レビュー⇒)。は、千葉県を拠点に活動する劇団です。極度の方向音痴の私ですが、三条会に会うためなら千葉まで遠征いたします(遠征って大げさだけど)。案の定スムーズには会場にたどり着けなかったのですが(涙)、開演には間に合いました。

 あまり演劇に親しみのないお客様向けの工夫と、コアな演劇ファンがにやりとする隠喩とが、奇妙だけれど良いバランスで混ぜ合わさった演出でした。三条会はやっぱり凄い!って思いました。観に行ってよかった~。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ロミオとジュリエット
 ※南房総市シェイクスピア・カントリー・パーク/シアターホールで上演された作品の再演です。

 劇場内は客席も含めて黒色で、ほぼブラックボックスの状態です。学校の教室の勉強机が舞台の4隅に置かれ、舞台奥のスクリーンに文字映像が映し出されるシンプルな装置。

 三条会版「ロミジュリ」は、ベンヴォーリオ(中村岳人)が口上役としてあらすじをドンドコしゃべっていく4幕ものでした。セリフが部分的にスクリーンに表示され、それを朗読したりもします。三条会でこんな演出は初めて観ました。ベタなギャグもたくさんありましたね。公共ホールの開館記念公演ということで、小さなお子さま連れや演劇をよく知らないお客様のための戦略だったのでしょう。見事に機能していたと思います。

 ベンヴォーリオは前説で、客席との距離を近づけるためにダジャレを連発しますが、それはシェイクスピア作品の特徴を表現するのと兼ね合わせられています。今回もやはり邦楽のポップスが大胆に使われました。それもまた同じ効果があります。

 舞台4隅の席についている女性4人は、全員がジュリエット。ガムを噛んでいてとてもお上品とは言えない姿勢でイスに座っているジュリエットたちは、現代の若者を現しています。特に上手前でノートパソコンを触っている(文字映像のオペをしている)女の子などは、いわゆるイマドキの女の子っぽいサラリとしたふてぶてしさがありました。

 蜷川版「ロミジュリ」では若さゆえの無鉄砲さ、劇団「木花」版「ロミジュリ」では熱に浮かされてうっかり命を落とす瞬間などが特に印象に残っています。『ロミオとジュリエット』の重要なキーワードは若さと情熱、それが引き起こす人の死(殺人・自殺ともに)なのかもと感じておりました。三条会版でも同じことが描かれているように感じながら、その表現方法のスマートさに唸りました。

 残念だったのは音楽の音が大きすぎてセリフが聞こえないシーンが多かったこと。役者さんによって声が聞こえたり聞こえなかったりするのは、それが意図的な演出だったとしても、もったいない気がしました。

 ここからネタバレします。

 4人のジュリエットの衣裳は左側は赤、右側は白のドレスなので、真ん中で紅白に分かれています。特に下手前の赤いドレスの女(大川潤子)と、上手奥の白いドレスの女(寺内亜矢子)が対になっており、大川さんは人間の本性・本能(内側)で、寺内さんが人間の行動(外側)を体現しているように思いました。ロミオがいとこのティボルトを殺してしまったシーンで寺内さんは嘆き悲しみますが、大川さんはぎらぎらとした笑いを浮かべて興奮しながら、その殺人事件を楽しんでいるようでした。

 下手から上手へと走り去り、次はまた下手から登場するという演出が何度もありました。『ニセS高原から』でもありましたが、俳優の動線が時間という数直線上を走っているように見えるので、物語が過去から現在、そして未来へと時間を越えて普遍的なものに感じられます。また、俳優がありえないところから再登場するので、空間を越える効果もありますよね。

 男優さんは包丁を手にしており、戦う時に剣として使ったりしますが、ベンヴォーリオはそれをマイクに見立てたりします。マスコミの暴力(『THE BEE』でも感じました)や現代の若者がおこすナイフによる殺人事件なども連想されます。

 三幕では大声でお茶の間の家族芝居(ジュリエットのキャピュレット家)が演じられました。家族という人間関係を風刺する、いわゆる茶番劇だったと思います。ここで声が聞こえなかったのが残念。

 使われた音楽はTMネットワーク「SEVEN DAYS WAR」(映画「ぼくらの7日間戦争」主題歌)、安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」、そしてglobeのテクノ曲(曲名わからず)でした。小室哲哉シリーズですね。ミスマッチに苦笑しつつも、歌詞があまりにストーリーに合致しているため感嘆のため息が出るという(笑)、観客泣かせの選曲です。たまりまへん。
 
≪千葉市美浜文化ホール開館記念公演≫
出演=大川潤子、榊原毅、橋口久男、中村岳人、舟川晶子、立崎真紀子/寺内亜矢子(ク・ナウカ)、牧野隆二(ク・ナウカ)
原作=W.シェイクスピア 構成・演出=関美能留 照明=佐野一敏 制作=久我晴子 主催=千葉市、アートウインド運営企業体
1,000円 ※上演時間60分
http://www.sanjoukai.com

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Posted by shinobu at 17:01 | TrackBack