2011年06月11日
【情報】ピーター・ブルック演出作品(2008年初演)が静岡にやってきます⇒6/18(土)16時と6/19(日)14時の2ステージ

緊急告知チラシ
3月の震災および原発事故の影響で、SPAC「ふじのくに⇔せかい演劇祭2011」(⇒記者発表)では公演中止や演目・内容変更が相次ぎました。※中止演目については無料の映像上映が実施されます。
海外から非常事態にあると言える東日本に来るのは、とても勇気のいることだと思います。何らかの使命感がないと難しいのではないでしょうか。『シモン・ボリバル、夢の断片』を上演するオマール・ポラスさんは、「俳優一人、椅子一つ、ロウソク一本だけでも芝居は続けうることを示したい」と意志表明し、来日を決心されました。この危機において、国境を越えた人と人とのつながりの重さ、強さを改めて受けとめています。
先日、日本の状況をかんがみて『この凶暴な闇』から『ヘンリー五世』へと演目変更したピッポ・デルボーノ・カンパニーですが、主演・演出のピッポ・デルボーノさんの体調が急変して来日できなくなり、残念ながら公演は中止となりました。その替わりに急きょ、同日程・同会場で、ピーター・ブルックさんの2008年初演作が上演されることになりました。↓舞台写真(SPACより提供)
ピーター・ブルックさんは現在86歳。20世紀を代表する演出家と言われる方です。間違いなくビッグ・ニュースですね。私は10年前に1度観たことがあります。日本にいながらピーター・ブルック作品を観られるチャンスを、ぜひつかんでください。
●ピーター・ブルック演出『WHY WHY』(2008年初演)⇒公式ページ
日時:6月18日(土)16:00開演/19日(日)14:00開演
会場:静岡芸術劇場
ドイツ語上演/日本語字幕
上演時間:60分
⇒WEB予約
18日(土)は19時30分から、SPAC『天守物語』も上演されます(⇒2001年レビュー)。SPAC芸術総監督の宮城聰さんのク・ナウカ時代の代表作の1つで、野外劇場「有度」では初の上演になります。東静岡には便利な温泉施設「天神の湯」もありますので、よかったら静岡週末旅行を楽しんでみてください♪ ⇒去年の旅行スナップ
⇒Next舞台制作ラボ【劇場ナビ 特別編】わたしを劇場へつれてって ~静岡スペシャル・目次~
※ピーター・ブルック作品の来日が決まったのは、ピッポ・デルボーノ・カンパニーのご尽力によるものだそうです。ピッポさん、ありがとうございます。ご快復を心よりお祈り申し上げます。
上演時間 60分
出演:ミリアム・ゴールドシュミット 音楽・演奏:フランチェスコ・アニェッロ
作:ピーター・ブルック マリー=エレーヌ・エティエンヌ 演出:ピーター・ブルック 製作:チューリッヒ市立劇場 共同製作:パレルモ・ガリバルディ劇場 バール・プロダクション
SPAC・庭劇団ペニノ『エクスターズ』06/04-05舞台芸術公園野外劇場「有度」
庭劇団ペニノのタニノクロウさんがSPACに初登場。しかも新作野外劇ということで期待最高潮で伺いました。⇒記者発表
老女6人と青年3人による歌って踊ってのパラダイスには、とぼけた笑いが満載!楽しすぎて、これでいいのかしらと不安になるほど(笑)。上演時間は約1時間20分。
タニノクロウさんがツイッターから投稿した舞台写真⇒1、2、3、4、5
⇒CoRich舞台芸術!『エクスターズ』
⇒庭劇団ペニノブログ「官能から遠く離れて?」
≪あらすじ≫ 当日パンフレットより。
ここはどこで、いつなのだろう。森の中にひっそりと佇む、とある施設。
肉色の斑模様に包まれた室内に並ぶのは、どこか懐かしい公園遊具と、ピアノ。
プレイルーム……なのだろうか?やがて朝が来て、住人たちが集いだす。
少女のような愛らしい装いの、六人の老女。
やんちやな少年のような格好をした、三人の青年。
なんでもない、彼女たちの一日が始まる。
やることと云えば……歌うことくらいしかない。
≪ここまで≫
あらすじを読まず、前知識ゼロで拝見。なるべくそうするようにしています。
高い壁に囲まれた部屋。白いネグリジェの老女6人と、なぜか彼女らに奉仕する若い男性3人。彼らは執事?子供用の遊具がならぶ空間で、のんびり音楽を聴いて、テレビを見て、歌を歌って過ごす人々。ここは実社会でないのは確か。天国なのかしら。
高い壁で守られた至福の密室ですが、野外劇場なので常に広く外へ、空へと開かれているのがミソですね。人間だけが集まって、たわいない、でもいとおしい行為が鮮やかに営まれますが、所詮それらは限られた世界の中でのこと。
ここからネタバレします。
つまり老人ホームなんでしょうね。終演後に一緒に観ていた人と話してわかりました(←遅い)。でも知らなくて良かったな~。知ってたら想像が広く飛ばなかった。朝起きて夜寝るまでを描いているようにも見え、人の一生を表しているようにも思えました。
男性3人が協力して、1人がわざわざロッククライミングで壁を登り、何をするのかと思ったら電灯を設置(笑)。あぁ仕事ってそうだよなと思いました。
水飲み場で「The Sound of Silence」をギターとコーラスで演奏する場面に爆笑。
一日の締めくくりはドレスを着てのダンス。3人の執事が見守る中、踊り終えた老女たちは寝室へ(たぶん)。一人残ったのはピアノを弾いていた女性。壁の木の隙間から光が射してきました。やんごとない後光のよう。やがて1枚の板が開いて壁の向こうに広がる闇が見えました。女性は恐れおののくような態度で光を見つめ、逃げるように退場。
言葉が通じる、一緒に歌が歌える、あ・うんの呼吸でいたわりあえる仲間との生活。でもその周囲には人知の及ばない世界が広がっています。「有度」の舞台奥は原始林ですから、未知の闇とはすなわち自然のこと。最後の場面は自然への畏敬の念のあらわれだと思いました。無力な私たちの小さな、小さな世界での絶頂の恍惚は、常に畏れと背中あわせです。『エクスターズ』は野外でしか成立しない作品なのではないでしょうか。
男性3人が歌う「雨」が素晴らしかった。私は「雨があがるようにしずかに死んでいこう」という境地には、まだまだ達しきれない凡人です。
「雨」 詩:八木重吉 作曲:多田武彦
歌われた曲(歌詞カードより):「庭の千草」「ふるさと」「サラスポンダ」「雨」「はるかな友に」「The Sound of Silence」「グッド・ナイト・ベイビー」
≪終演後のアーティスト・トーク≫
出演:タニノクロウ 宮城聰
SPAC「ふじのくに⇔せかい演劇祭2011」6/4(土)~7/3(日)
出演:飯田一期 森準人 山田伊久磨 小谷野桂子 杉浦南美子 鈴木久美子 長澤洋子 星出三貴 前田展子
作・演出:タニノクロウ 舞台監督:三津久 演出助手:郷淳子、森準人、海老原聡、吉野万里雄 美術助手:法龍院悠 美術協力:安部田保彦 照明プランナー:倉本泰史(APS) 照明オペレーター:根本諭(APS) 音響オペレーター:仮屋浩太郎 歌唱指導:望月智代 字幕:コーリー・タービン 制作協力:小野塚央 舞台:山田貴大、竹内舞 音響サポート:青木亮介 衣裳:竹田徹 制作:中尾栄治、伊藤尚子 協力:庭劇団ペニノ 製作:SPAC (財)静岡県舞台芸術センター
一般大人4,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
http://www.spac.or.jp/11_fujinokuni/extase
記者発表⇒http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2011/0414230505.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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SPAC『タカセの夢』06/05、19舞台芸術公園屋内ホール「楕円堂」
カメルーン出身のダンサー・振付家のメルラン・ニヤカムさんが、静岡県の中高生10名とダンスを創作しました。昨年の初演からブラッシュアップされ、SPAC「ふじのくに⇔せかい演劇祭2011」で再演を迎えました。⇒記者発表
終演後に出演者全員とSPAC芸術総監督の宮城聰さんによるトークがありました。子供たちがニアカムさんのことを「パパ」「太陽」「神様」「学校では教えてくれないことを教えてくれる人」等と満面の笑みで語っており、私もニアカムさんに会いたくなりました。
8月にシアタートラムで東京公演があります。8月11日プレトーク(開演前18:30より)にニヤカムさんが出演されますね!
⇒CoRich舞台芸術!『タカセの夢』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
タカセはクラスメイトの女の子にモテモテで追いかけ回される。しかしそれは夢で、目が覚めると現実の殺伐とした人間関係が広がっており、テレビゲームのような戦闘的なダンスが展開する。やがてタカセはそこを抜け出し、自然のなかで解放的に遊ぶ。その後、何十年か経ち、老人時代に移行する。おじいちゃんおばあちゃんになった彼らは、楽園のような場所で、かつての遊びを思い出し……。
≪ここまで≫
あらすじがあったことを知らずに拝見しました。楕円堂の奥の壁一面に映像が映るのは迫力。
セリフを「言わされてる」感が苦手で、最初は入って行きづらかったです。でも激しいダンスで頬が紅潮し、息切れして、彼らが無心になって体を動かすようになってから、みずみずしい肌と未熟な体が美しく、輝いて見えてきました。
「自分のことを大好きになったら、他人はあなたを愛してくれる」というニアカムさんの言葉。子供たちは開演前に鏡を見つめて「私ってなんて可愛いの!」と言い聞かせるそうです(笑)。それ大事!大人もやろう!
SPAC「ふじのくに⇔せかい演劇祭2011」6/4(土)~7/3(日)
出演:スパカンファン(静岡県の中高生10名) 秋山実優 猪山菜摘 櫻井奏子 高瀬竣介 南條未基 増田理子 村瀬瑠美 宮城嶋静加 宮城嶋遥加 渡澄清楓
振付・演出:メルラン・ニヤカム 振付アシスタント:木野彩子 音響デザイン:山貫憲彦 映像:ニシモトタロウ コーディネート:ヴァニナ・ソプサイサナ 制作協力:奥山緑(ame arts) 通訳:石川裕美 演出サポート:大内米治 舞台監督:浜村修司 舞台装置デザイン:鈴木里恵 衣裳デザイン:竹田徹 衣裳:市川晶子、岡村英子 照明デザイン:樋口正幸 照明操作:神谷怜奈 照明補助:松村彩香 音響操作:原田忍 映像操作:武石進衛 舞台:市川一弥 制作:大保和巳、鶴野喬子 製作:SPAC (財)静岡県舞台芸術センター 協力:東京日仏学院 後援:カメルーン大使館、フランス大使館、静岡県教育委員会、静岡県私学協会
一般大人4,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
http://www.spac.or.jp/11_fujinokuni/takasesdream
記者発表⇒http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2011/0414230505.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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SPAC『真夏の夜の夢』06/04-05静岡芸術劇場
SPAC・静岡舞台芸術センターの「ふじのくに⇔せかい演劇祭2011」が開幕しました。トップバッターは今回のフェスで最も早く前売り完売になった『真夏の夜の夢』です。野田秀樹さんと出会って演劇を志したというSPAC芸術総監督の宮城聰さんが、初めて野田戯曲を演出されました。⇒記者発表
私はこれまで何本もの野田作品を劇場で観ていながら、野田さんが、絶望の淵にいながら極限まで研ぎ澄ました言葉を発し続けている、素晴らしい詩人であることを知りませんでした。野田さんに謝りたい気持ちです。そして宮城さん、ありがとうございました!
この舞台が終わった後、『タカセの夢』を観るために舞台芸術公園に行きました。緑がいっぱいの山を歩いきながら、ここには妖精がいる、鳥のさえずりは彼らの声なんだと、本当に思いました。大の大人がそんなお人好しで夢見がちなことを本気で信じられたのは、演劇の、詩の魔法のおかげです。
たった2ステージの公演でした・・・どうか再演を!
⇒日比野啓さんの演劇批評
⇒CoRich舞台芸術!『真夏の夜の夢』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
創業130年の割烹料理屋「ハナキン」。その娘・ときたまごには許婚がいた。板前のデミである。デミはときたまごを愛していたが、彼女は板前のライに恋心を寄せていた。ときたまごとライは<富士の麓>の「知られざる森」へ駆け落ちする。それを追いかけるのはデミと、彼に恋をしている娘・そぼろ。森では妖精のオーベロンとタイテーニアが可愛い拾い子をめぐって喧嘩をしている。オーベロンは媚薬を使ってタイテーニアに悪戯をしようと企み、妖精のパックに命令する。ついでにそぼろに冷たくするデミにも媚薬を使おうと思いつく。しかし悪魔メフィストフェレスが現れ、パックの役目を盗みとる。そこに「ハナキン」に出入りしている業者の面々が結婚式の余興の稽古にやって来て、事態はてんやわんやに……。
≪ここまで≫
俳優が客席を向いてセリフを語るSPACならではの演出方法は、最初はとっつきづらいかと思います。でも徐々に「形式に沿っているからこそ、言葉が耳に届く」と思うようになりました。ダジャレも笑えましたし、小さめの声でゆっくりと心情を語る場面では、その人物の身体が透き通って、言葉だけが宙に浮かぶように感じました。
舞台にはのぼり棒のようなパイプが何本も建っていて、はしごみたいに役者さんが登れるようになっています。高い場所で静止してポーズを取ると絵画のよう。棒と身体が縦横に交わるのは二次元のグラフみたいです。立体的な衣裳をまとった妖精が現れて平面と立体が交差し、横幅や奥行以外の、いわば四次元の広がりを想像させます。
打楽器を中心とした音楽がかなり長い間流れていました。役者さんがかわるがわる演奏しているんですね。生演奏とよく練られた発声とのコンビネーションは贅沢です。ただ、宮城さんの舞台でよく感じることなんですが(⇒例)、同じリズムの盛り上がり部分が多すぎる気がしました。
原作には登場しないメフィストフェレスがパックに成り代わり、物語は予想外の方向へ。『真夏の夜の夢』とは違った物語が交わってきます。メフィストフェレス役の渡辺敬彦さんが素晴らしかった!!決まったセリフ回しと動きの“異物感”が効果的で、映画「バットマン」のジョーカーを思い出しました(ジャック・ニコルソンかヒース・レジャー)。
野田さんの作品を観る時、複雑なストーリーに追い付けなくなっても「わー、すごいなー!」と演出に魅せられて、終演時には勝手に満足していたりします(私の場合)。でも今回は、言葉遊びもストーリーも理解できました(たぶん)。物語の力、言葉の力が、世界を変え得るのだと、本気で思うことができました。ただしそれは決して目には見えないのですが。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません
そぼろが飲み込んだ「森よ滅びろ」という言葉が、メフィストフェレスと契約を結んでいました。内田樹さんのブログにもありましたよね。人間の思いは、言葉にならなくとも世界とつながっていて、現実に影響を及ぼします。
メフィストフェレスの涙が妖精たちの「姿を見せるマント」の灰を流してしまい、また妖精たちは人間の目には見えなくなります。でもその灰は地面に落ちて沁み込み、草木がそれを吸い上げて、やがて緑の葉から光とともに降り注いでくれる。彼らは木に宿っているのです。妖精たちは「木の精」。つまり「気のせい(想像力)」。
そぼろが物語を語る場面で、メフィストフェレスは何かを必死に書く動作をしていました。つまり彼は野田さんなんですね。
そぼろは森に迷い込んだ「不思議の国のアリス」で、このお話は彼女が観た夢だったという結末。ただの“夢落ち”ではなく、一人の人間の想像や意志が、どれほど豊かで力があるかを示してくださったと思います。
妖精たちの衣裳は新聞紙でできていました。震災直後、私が知りたいことを書いてくれなかった新聞。そぼろがとぐろをまいたウンコみたいな形の(本当に・笑)新聞のかたまりを両手で持ち上げて、デミとライに向かって怒る場面では、ゴミになった言葉のかたまりが武器になったように見えました。ただ、宮城さんは新聞をゴミだとは思っていらっしゃらないと思います。ゴミで妖精の全身をつつむはずはないですから。
SPAC「ふじのくに⇔せかい演劇祭2011」6/4(土)~7/3(日)
【出演】〈メインキャスト〉そぼろ:本多麻紀 ときたまご:保可南 板前デミ:菅原達也 板前ライ:泉陽二 割烹ハナキンの主人:大高浩一 仲居おてもと:布施安寿香 福助:小長谷勝彦 オーベロン:貴島豪 タイテーニア:たきいみき パック:牧山祐大 メフィストフェレス:渡辺敬彦
〈出入業者〉 氷屋:加藤幸夫 豆腐屋:関川哲生 酒屋:牧野隆二
〈妖精たち〉 夏の精かしら:いとうめぐみ 年の精:瀧澤亜美 あたしの精:赤松直美 石井萌水 木内琴子 目が悪い精:山下ともち 吉見高 耳が悪い精:佐藤ゆず 若宮羊市 妖精:眞野梨江
演出:宮城聴 原作 W・シェイクスピア 小田島雄志訳『夏の夜の夢』より 潤色:野田秀樹 音楽:棚川寛子 舞台監督:村松厚志 照明デザイン:岩品武顕((公財)埼玉県芸術文化振興財団) 照明:樋口正幸 松村彩香 舞台美術デザイン:深沢襟 舞台美術助手:鈴木里恵 西沢理恵子 佐藤洋輔 音響:小嶋純真 衣裳デザイン:駒井友美子 衣裳:満田年水 棚橋美幸 岡村英子 市川晶子 舞台:武石守正 渡辺明 ヘアメイク:梶田キョウコ 石橋芳子 許田雪恵 英語字幕翻訳作成:エグリントンみか 英語字幕翻訳協力:アンドリュー・エグリントン 英語字幕操作:岸本佳子 制作:仲村悠希 谷口裕子 協力:NODA・MAP 製作:SPAC (財)静岡県舞台芸術センター
一般大人4,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
http://www.spac.or.jp/11_fujinokuni/nightsdream
記者発表⇒http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2011/0414230505.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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松竹/Bunkamura『コクーン歌舞伎第十二弾「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」』06/06-27 Bunkamuraシアターコクーン
コクーン歌舞伎『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』は1998年に初演され、今回初めて再演されます。でも中村勘三郎さんが演じた役を息子の中村勘太郎さんが、中村福助さんが演じた役をコクーン歌舞伎初登場の尾上菊之助さんが演じますので、ほとんど新作ですね。
私は恥ずかしながら『盟三五大切』という歌舞伎の有名演目自体が初見でした。上演時間は約3時間15分(途中休憩20分を含む)。
いつもながら豪華絢爛のスタッフーワークと歌舞伎役者の芸にうっとり(主なレビュー⇒1、2、3)。歌舞伎らしい複雑な人間関係に脳みそフル回転しつつ、最後の最後は「あぁ、そうだったのか!!」と驚いて、腑に落ちて、しみじみ。忠臣蔵のサイドストーリーなんですね。
母と一緒に初日を鑑賞したところ、コクーン歌舞伎初体験の母は大満足。久しぶりに親孝行できました♪客席での飲食OKです。ロビーの売店もにぎやかで楽しいですよ~。
⇒CoRich舞台芸術!『コクーン歌舞伎第十二弾「盟三五大切」』
≪あらすじ≫
浪人の源五兵衛(中村橋之助)は芸者の小万(尾上菊之助)に入れ込んでいる。だが彼女には三五郎という夫(中村勘太郎)があった。いやな客に言い寄られる小万を身受けするために、源五兵衛は伯父からもらった大切な100両を渡そうとするが、全ては三五郎と小万が金欲しさに仕組んだ狂言だった。2人の裏切りを知った源五兵衛は・・・。
≪ここまで≫
じんわり、たっぷりと人間を見せていく演出のおかげで、歌舞伎俳優の技をとっくりと見つめて味わうことができました。静と動の差がストイックにあらわされ、落胆、絶望、恐怖に触れ激変する心情がより鮮やかに浮かび上がります。とはいえ「ここまでやるか!」とびっくりさせる豪華な大仕掛けもいっぱいです。
歌舞伎は物語の説明をあまりせずに様式美で表現することも多いですが、コクーン歌舞伎は人間関係や気持ちの変化をより具体的にわかりやすく見せる、現代劇風の演出も特徴かと思います。たとえば今回はチェロの調べが登場人物の心情に沿うように流れていました。
無言の橋之助さんがかっこ良かったですね~!源五兵衛は悪心にとりつかれたような変貌っぷりを見せますが、いかにもな変化を演じるのではなく、変わる前と後の源五兵衛として、その場に在るだけなんですよね。もちろん歌舞伎らしい所作はありますが、感情を内に込めてただじっと立っている姿にすべてが凝縮されているように思えました。
菊之助さんは夫を愛する若い妻としてもきれいでしたが、後半の母親らしい演技にも説得力がありました。だからこそ“あの場面”は壮絶!勘太郎さんの声は勘三郎さんに似てらっしゃいますね。お父様のような凄味や色気とは違いますが、涼やかな一途さが良かったです。
ここからネタバレします。
「彼(彼女)は実は誰々だった」という歌舞伎ならではの物語はさすがの面白さ。源五兵衛が大勢を殺してしまう回り舞台の場面は、スリリングで美しかったです。音がないのが怖くてイイ!
雨が降る客席に出て、傘をさしながらゆっくりと劇場通路をまわるところも、舞台の端に立って三五郎たちを見つめているところも、橋之助さんの暗い目にくぎづけ。
数ある名場面が中でも、やはり源五兵衛が小万とその息子をなぶり殺しにするところが一番でした。菊之助さんはギョっとするほどの叫び声を上げますが、コントロールした上でのものだとわかります。はらはらさせるライブ感が持続する中、突然ポーズを取って技を見せるのが歌舞伎ならでは。菊之助さんが客席に背を向けて膝立ちをして上半身を反るところは、ホ~っと見とれました。
終盤に録音のセリフが流れましたが、あれは勘三郎さんの声だそうですね。セリフの意味はわからなかったんですが、三五郎(中村勘太郎)とその父の了心(笹野高史)の関係が、勘太郎さんと勘三郎さんという実の親子と重なりました。そういえば橋之助さんのご子息の中村国生さんが、源五兵衛につかえる八右兵衛役で共演されているのも感慨深いですね。人間の恨みも悲しみも、それを描く芸術も、親子代々、ベテランから新人へと受け継がれていくのだなと思いました。
出演:中村橋之助 尾上菊之助 中村勘太郎 坂東彌十郎、片岡亀蔵、笹野高史、坂東新悟、中村国生 坂東新悟 中村勘之丞 中村小三郎 中村蝶紫 澤村國矢 澤村國久 中村山座衛門 井上隆志 中村橋弥 中村橋幸 尾上音三郎 尾上音二郎 尾上音一郎 中村仲之助 中村いてう 中村仲四郎 坂東彌七 坂東彌風 坂東彌紋 土橋慶一 もとのもくあ 山岡弘征 谷坂寛也 梶浦昭生 片岡正二郎 内田紳一郎 チェロ:坂本弘道 徳澤青弦 斎藤孝太郎
脚本:四世鶴屋南北 演出・美術:串田和美 演出・美術:串田和美 照明:齋藤茂男 附師:杵屋栄十郎 作調:田中傳左衛門 編曲:坂本弘道 音響:森本義 立師:中村橋弥 狂言作者:竹柴徳太朗 狂言作者:竹柴潤一 技術監督:センターライナソシエイツ 演出助手:神野真理亜 美術助手:原田愛 附打:山﨑哲 舞台監督:藤森條次 制作:岡崎哲也 山根成之 橋本芳孝 住井浩平 主催:松竹株式会社/Bunkamura 製作:松竹株式会社
【発売日】2011/04/24 1等席(平場/椅子)\13,500 2等席\9,000 3等席\5,000(税込)
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_11_kabuki.html
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/shusai/2011/06/post_7.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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