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しのぶの演劇レビュー
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2013年11月08日

第12言語演劇スタジオ(韓国)『多情という名の病』11/05-06新国立劇場小劇場

BeSeTo_20th.JPG
総合パンフレット

 第20回BeSeTo演劇祭の招聘演目です。第12言語演劇スタジオ(제12언어연극스튜디오 ⇒facebook ⇒ツイッター)はソン・ギウンさん(성기웅  ⇒ツイッター ⇒playDBの個人ページ)が作・演出されるソウルの劇団で、私は先日ギウンさんが脚本を書き、協力演出された『カルメギ』を観たばかり。

 ギウンさんご自身の恋愛、それも複数の男性とお付き合いをする女性“多情(タジョン)”との関係について、赤裸々に語っていきます。ドキュメンタリーを装った、凝った構成が面白かったです。東京公演初日の上演時間は約2時間40分(休憩を含む)。

 原題は「다정도 병인양하여」(⇒playDB公演ページ)。英語の題名は"Too much love, too many loves"だそうです(こちらより)。ソウル公演のチラシがこちらで見られます。ポップでおしゃれな感じですね。

 ⇒CoRich舞台芸術!『多情という名の病

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
 一夫一婦制に疑いを抱いていた「僕」は、複数の男たちと遊ぶユニークな女「タジョン(多情)」の愛人になった。特別な時間と秘密の関係を楽しむが、彼女の男女関係は不安定かつ理不尽で「僕」を混乱させた。そして「僕」はいつしか、彼女の唯一の恋人になりたいと思うようになる…。
 優れた感受性と言語への探究心にあふれた戯曲を繊細で緻密に演出。いま韓国演劇界で最も注目を集めるソン・ギウンの代表作。(日本語字幕つき)
 ≪ここまで≫

 ギウンさんは1930年代(日帝時代)の韓国を舞台にした作品を書く作家として有名だそうですが、この作品のような嘘か本当かが判別できない劇中劇構造を持つ、複雑な現代劇を書き、演出もできる方なのだと知れて良かったです。ギウンさんは日本留学経験があり、日本語が堪能でいらっしゃいます。日本語で「私はソン・ギウンです」と自己紹介されるので、よりリアルに感じられました。

 下記は韓国公演の舞台写真(公式サイトより)。東京公演では日本語字幕です。スクリーンが大きいので字幕の動き方、映像との兼ね合いも楽しめました。
20131105_the_12th_tongue_theater_studio_tajo.jpg

 ここからネタバレします。

 タジョンの過去の恋愛遍歴をグラフで分析したり、彼女と同等の立場になるために、わざと他に恋人を作ったり…主人公ギウン(ギウンさんを他の俳優が演じています)の行動は滑稽で、可愛らしいです。

 体を密着させて、男性のリードに女性が合わせていくというタンゴの技法を、タジョンの恋愛と重ね、実際に俳優がタンゴを踊る場面がたくさんあります。よくお稽古されていてかっこよかったです。映画「タンゴ・レッスン」から1人の女性が3人の男性と次々に踊っている場面が流れました(↓ニコニコ動画より)。まさにコレ!男女の性愛だと思って見ると…エロい(笑)。

 ギウンは誰かと結婚したタジョンと約2年ぶりに再会し、彼女を題材にした脚本(第一稿)の上演許可をもらおうとしますが、拒絶されます。彼女は「あなたのことを書いて。それが私も知りたかったことだから」と。その会話をiPhoneで録音していることがタジョンにばれて、ひどく非難されますが、そのやりとりも含めて劇中で録音を披露してくれました。凝ってますよね~。

 ただ、もう私はこういう時期(結婚前の成人の恋愛事情うんちゃらかんちゃら)は通り過ぎたかも~……(遠い目)。とにかく面倒そう(笑)。要はタジョンは妊娠したから結婚したんだと思うんです。子供ができたら変わらざるを得ないんですよね。

 P(ピー)と呼ばれている(ように記憶している)役を演じていたショートカットヘアの女優さんについて、「どこかで観たことがある気がするけど、気のせいだろうな~(韓国人だし)」と思っていたら、なんと『アジア温泉』で成河さん演じるアユムの恋人ヒバリを演じられていた、イ・ボンリョンさんでした!ひゃー!

 ⇒打ち上げ風景。東京デスロックの方々も一緒に。

 ⇒JUNG CULTURE『ソウル演劇祭、ソウル演劇人対象イファリョン、「40歳になったが、そのどのような変化も検出されなくて...」
 第一回ソウル演劇人大賞にて、第12言語演劇スタジオのソン・ギウンさんが演出賞、俳優のファリョンさんが演技賞、ヨン・ミンチョルさんが音響デザイン賞を受賞されたそうです。


The 12th Tongue Theatre Sutudio
出演:第12言語演劇スタジオ(オ・ヨン イ・ファリョン ヤン・ドンタク マ・ドゥヨン イ・アンナ イ・ボンリョン キム・ファヨン ソン・ギウン)
脚本・演出:ソン・ギウン ドラマターグ:キム・スルギ 美術監督:ソ・ジヨン 技術監督:ヨン・ミンチョル 照明:チェ・ボユン 衣装:ホン・ムンギ 小道具:キム・ダジョン 音楽:ビョン・ジュンソプ パク・テソン タンゴ指導:ヤン・ドンタク 舞台監督:ジョン・ジンモ 演出助手:キム・ヒョンスク オペレーター:イム・ユジョン 字幕翻訳:浮島渡 主催:BeSeTo演劇祭実行委員会
【発売日】2013/09/01 前売・当日共 一般:3,000円 学生:1,500円
http://www.beseto.jp/20th/program/tokyo_prog05.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 16:49 | TrackBack

WOWOW・産経新聞社・フジテレビジョン・ネビュラプロジェクト『ショーシャンクの空に』11/02-10サンシャイン劇場

 1994年の映画『ショーシャンクの空に』が日本で初めて舞台化されました。主演は成河(ソンハ)さんと益岡徹さん。東京公演は10日までで、その後ツアーがあります。上演時間は約3時間(途中休憩10分×2回を含む)。

 私は映画の爽快感が苦手だったので、「彼(主人公)は本当は存在しなかったかもしれない」とした喜安浩平さんの脚色のおかげで、物語に入り込むことができました。作品のテーマである“希望”を、目に見えない、形もない不確かなものと徹底して描いていたのも良かったです。虚構だからこそ信じられるってこと、ありますよね。それが演劇の力でもあると思います。

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 ⇒CoRich舞台芸術!『ショーシャンクの空に
 レビューはほぼネタバレ以降のみ。

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 暗闇でひとりペンを走らせるレッド。30年以上服役していたショーシャンク刑務所で出会った一人の男のことを思い出していた。元銀行家のアンディー。不思議な男だった。どんな劣悪な環境におかれても自らを保ち、希望を捨てず、未来を信じていた。長い囚人生活で、刑務所内で希望を持つことの怖さを知っていたレッドは、そんなアンディーをまぶしくも温かく見守ってきた。なにもかもが変わってしまったシャバには馴染めず、孤独で、またムショに戻ろうかと考えたとき、レッドは、アンディーとのある約束を思い出す──
 ≪ここまで≫

 主人公アンディー(成河)の部屋の壁には女優のポスターが貼られていました。その女優が実際に登場する演出が楽しいです。

 ここからネタバレします。

 出所したレッドはスーパーで働いていますが、一向に生活に慣れることができません。数十年もの収容所生活で起きたこと、特に冤罪で投獄され無期懲役を言い渡されたけれど、脱獄を果たしたスーパーマン、アンディーのことを書き留めることで、精神状態を保っていました。

 レッドが働くスーパーで万引きをする少年役(山崎彬)が追加され、彼と似た人物として刑務所の新入りトミー(同じく山崎彬)が登場します。シャバでの現在と、塀の中での過去(もしかすると空想)が重なり、レッドの覚書(または小説)の虚構性が強調されて良かったと思います。

 とうとう思いつめてしまったレッドは窓から飛び降りそうになりますが、実行に移す直前に、アンディーが言い残した石の下の鍵(だったかな)を思い出し、仕事も何もかも放り出して部屋を出て行きます。そして、とある木の下に石を見つけ、その下にあった赤い缶箱の中のアンディーの手紙を読みます。やがて2人はメキシコの海辺で再会するという、一見、映画と同じとも受け取れるハッピーエンドになっていました。
 でも本当はレッドは窓から飛び降りたかもしれないし、また、もし部屋から出たとしても、国境は超えられなかったかもしれない。そもそもアンディーは存在しなかったのかも…。そういう風にも受け取れる台本、演出になっていたのが良かったです。パっと明るくて、スカっとできるエンディグではなく。

≪東京、大阪、福岡、名古屋、松本≫
【出演】アンディー:成河、レッド:益岡徹、ノートン所長:粟根まこと(劇団☆新感線)、ケンドリクス:畑中智行(キャラメルボックス)、ハドリー刑務主任:筒井俊作(キャラメルボックス)、ブルックス:大家仁志(青年座)、ヘイウッド:今奈良孝行、少年/トミー:山崎彬(悪い芝居)、リタ・ヘイワース:高橋由美子、ラクエル・ウェルチ:宇野まり絵、マリリン・モンロー:新良エツ子、ルースター:山崎和如、バグズ:日栄洋祐(キリンバズウカ)、囚人他:鈴木秀明(キャラメルボックス)
『ショーシャンクの空に』スティーヴン・キング/著 浅倉久志/訳 原作:『刑務所のリタ・ヘイワース』(新潮文庫刊『ゴールデンボーイ ―恐怖の四季 春夏編―』所収 ) 脚本:喜安浩平 演出:河原雅彦 美術:松井るみ 照明:大島祐夫 音響:藤本純子 スタイリスト:高本阿友子 ヘアメイク:武井優子 殺陣:武田浩二〈アクションクラブ> ステージング:安田栄徳 演出肋手:渡邊干穂 舞台監督:矢島健 演出部:高庄優子/瀬戸元哲/五十嵐彩乃 美術肋手:中西紀恵 照明操作:片山通子/川添真里/関口大和/鶴岡大樹/勝本英志≪東京公演≫ 音響操作:藤原志都花 音響機材協力:KTO 小道具協力:高津装飾美術 犬道具製作:C-COM/拓人/オサフネ製作所 特殊効果:ギミック 衣裳部:平野遥香 衣裳制作:山中摩耶/立花文乃/ピカイア 衣裳協力:溝口貴之〈東京衣裳> ウィッグ協力:三川屋/アートネイチャー 編曲:「Put The Blame on Mame」「I Wanna Be Loved By You」 鶴来正基 「Nessun Dorma(誰も寝てはならぬ)」清水俊也 音楽協力:高岡原詞 プロデューサー:仲村和生〈ネビュラプロジェクト> 武田吉孝〈WOWOW> 山本淳子〈産経新聞社> 制作:鎌倉知香〈WOWOW> 木村友香〈産経新聞社> 金田ひろみ〈ネビュラプロジェクト> 制作助手:安井和恵 瀧見守里〈WOWOW> 和泉さなえ〈産経新聞社> 宣伝美術:柳沼博雅〈GOAT> 宣伝写真:平田光二<アボロ創研> 宣伝スタイリスト:川端恵美 宣伝ヘアメイク:伊藤麻由美〈air supply> 舞台写真:伊東和則 宣伝美術進行:小森和博〈ネビュラプロジェクト> 主催:WOWOW 産経新聞社 ネビュラプロジェクトフジテレビジョン≪東京公演≫ 制作協力:サンライズプロモーション大阪≪大阪公演≫ スリーオクロック福岡公演 制作:ネビュラプロジェクト/ナッポスユナイテッド
前売開始:9月1日(日)10:00 全席指定(税込) 7,500円
http://shawshank-stage.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 15:12 | TrackBack

M Musical Art/ぴあ/Quaras『韓国ミュージカル「Jack the Ripper ジャック・ザ・リッパー」』11/04-30KAAT神奈川芸術劇場ホール

 ミュージカル『Jack the Ripper ジャック・ザ・リッパー』はチェコ・ミュージカルを韓国版にして2009年に初演されました。それから韓国では毎年続けて上演されている人気作で、日本では昨年、青山劇場で初演されました。この作品を観て韓国ミュージカルにハマったというお知り合いがいたので、お値段高い目ですが行ってみました。上演時間は約2時間半(途中休憩20分込み)。

 韓国ミュージカルを観たことがない方は、この作品から入ってもいいんじゃないでしょうか。まずは歌唱力(声量)に圧倒されると思います。現在、プレイガイドによっては割引券も出ているようです。劇場にあったポスター↓
20131104_JackTheRipper.jpg

 ⇒CoRich舞台芸術!『Jack the Ripper

 ≪あらすじ≫ 2012年のぴあサイトより 
 1888年ロンドン。
 捜査官アンダーソンは売春婦だけを狙う、「ジャック・ザ・リッパー」と呼ばれる殺人鬼を追っていた。 アンダーソンは、その残忍な手口のため、マスコミには非公開で捜査を進めようとする。 しかしロンドンタイムズ紙の記者、モンローはジャックに関しての スクープ記事を書くため、 アンダーソンに接近する。 麻薬中毒者で金が必要なアンダーソンは、モンローの口車に乗せられ、情報提供して対価を得る取引に同意してしまう。
 4回目の殺人が起こったある日、アンダーソンの前に犯人を知っているという人物が現れる。 彼は、7年振りにアメリカからロンドンに渡ってきた外科医ダニエル。 ダニエルと元売春婦のグロリアにはジャックとの因縁があった…。
 数日後、事件がますます混迷の度合いを深めていく中、 アンダーソンは囮捜査を計画するが、ロンドンタイムズ紙の1面に「ジャック・ザ・リッパー」の殺人予告の記事が掲載される。 そして、アンダーソンと彼のかつての恋人だったポリーまでも、 予期せぬ事件に巻き込まれる…。
 果たして、殺人鬼「ジャック・ザ・リッパー」の正体とは…?
 そして本当の目的とは…?
 ≪ここまで≫

 美術も衣装も凝っていて、スター俳優の迫力の歌を存分に聴かせる娯楽大作でした。血なまぐさい凄惨なストーリーですが、悪役(ヒール)のカッコ良さを前面を出して、エンターテンメントに徹しています。照明の色使いは紫に黄色とか、原色系の対比が鮮やかで韓国っぽいですね。韓国のミュージカル俳優さんはやはり声量がすさまじいです。この作品もそうでしたが、たまに耳閉じなきゃと思うぐらい(笑)。
 
 客席は大盛り上がりでカーテンコールが始まるやいなや総スタンディング状態。日本じゃないみたい(笑)。私はこういう雰囲気が苦手なので乗れませんでしたが、お好きな方がハマる気持ちはわかります。

 初日には神奈川県知事と韓国領事館領事がいらしていたようで、開演前に場内アナウンスによる紹介とお2人が握手をされる場面もありました。客席には韓国人の一般客も大勢いらした様子で、韓国ミュージカルは日韓市民の文化交流の場になっているんですよね。

 ここからネタバレします。誤読もあるかもしれませんのでご容赦ください。

 メインの俳優さんは実力があるし、アンサンブルも豪華で、どんでん返しのあるストーリーも楽しみました。ただ、『ノートルダム・ド・パリ』ほどではなかったですが、「次はこの歌、そして次はこのシーンですよ」とシーンごとにくっきりと分け目ができてしまっているのは残念。歌謡ショーのように感じちゃうんですよね。
 私が好きだったのは、アンダーソン刑事とその元恋人の娼婦ポリーが、灰が舞うロンドンの街を歩いていく場面。ポリーが優しい声で歌うんです。どちらかというと私はこういう歌が聴きたい派。そしてアンダーソンとポリーの間に心の交流が見えるのも好きです。

 大やけどを負い、梅毒にもなってしまったグロリアを助けるため、新鮮な内臓欲しさに墓荒らしまでしてきた外科医ダニエルは、なんと自分が切り裂きジャックと化してしまいました。刑事にも新聞記者にもその真実がばれた後、自害したグロリアを抱きかかえながら、ダニエルは吐露します。自分はグロリアが憎かったのだと。ダニエルが娼婦を次々に殺していったことにも、そこに快感を覚えたことにも納得できました。愛情と責任感にさいなまれ、自分で自分を追いつめてしまう人間にも共感できます。

 ジャック役のキム・ボムレさんの「わはははは~」という笑い声はまるで漫画(笑)。歌声は別ですが、スターの存在感的には石原裕次郎さん、江守徹さんを思い浮かべました(この役の髪型が似てるだけ?)。総立ちのカーテンコールでは日本語で「これで終わりだと思うなよ」と決めてくださいました(カンペ見直してたのがキュート)。

【私が観た回の出演者】ダニエル(医師):オム・ギジュン ジャック:キム・ボムレ アンダーソン(刑事):キム・ジュンヒョン モンロー(記者):イ・ヒジョン ポリー(娼婦・アンダーソンの元恋人):ソ・ジヨン グロリア(娼婦・ダニエルと恋に落ちる):キム・ヨジン 他
主催:M Musical Art/ぴあ/Quaras 製作:M Musical Art/SM Contents Investment,Inc./CJ E&M/INTERPARK
【発売日】2013/10/19 S席 16,000円 A席 11,000円 X席 11,000円 Y席  8,000円 ※全席指定 ※未就学児童入場不可 ※X席、Y席はイス付立見席となります。
http://jack-the-ripper.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 13:59 | TrackBack

世田谷パブリックシアター『クリプトグラム(cryptogram)』11/06-24シアタートラム

 小川絵梨子さんが翻訳・演出されるので、私的には必見の舞台。『クリプトグラム(cryptogram)』は米国の劇作家デイヴィッド・マメットさんの1994年初演戯曲で、成人男女と少年が登場する三人芝居です。タイトルの意味は暗号、あるいは(神秘的な)シンボル。マメット作品のレビュー⇒ 映画の脚本家・映画監督としても有名な方ですね。

 意味深な言葉のやりとりから、3人と登場しないある人物との関係や、それぞれの真意を探っていきます。上演時間は約1時間20分と短いですが、謎解きの緊張感が保たれ、男女および親子の愛憎のドラマも濃密でした。恐ろしいお話でした…小川さんにはまたもや、非常に面白い戯曲をご紹介いただけたなぁと思います。 

 舞台を観てからチラシとパンフレット(1000円)を眺めてみると、絵図に意味が隠され、暗号になっているんですね。紙質も含めデザインが凝っていてとてもハイセンスですね~。

20131106_cryptogram.JPG

 ⇒『クリプトグラム』ニューヨーク初演をご覧になったひびのけいさんのツイート
 ⇒CoRich舞台芸術!『クリプトグラム(cryptogram)

 マメットさんが脚本を担当された映画は、アマゾンで検索して見つけた中だと下記3本は見ました。どれも面白かったです。
 ↓デ・ニーロファンだった私。

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 ↓ショーン・ペンの「忘れないため」というセリフが今でも引っかかっています。

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 ↓ブラット・パックにハマってた。中学生が観ても意味わかってなかったかも(笑)。80年代なつかしい。

きのうの夜は… [DVD]
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 ≪あらすじ≫
 もう夜遅いし、お母さんは何度も2階に行ってベッドに入りなさいって言うけど、お父さんが帰ってくるのを待ってるんだ。明日、一緒に森にキャンプに行くから、その準備をしなきゃ。楽しみで眠れない。ううん、眠れない理由はそれだけじゃない。
 ≪ここまで≫

 舞台は中央に階段がある居間。ステージ下手側にも客席があるので、客席が舞台をL字型に囲んでいます。階段の上には子供部屋があり、上手袖側に玄関と台所へと続くドア枠があります。階段は下手に向かって数段のぼると踊場があって、そこで90度折れ曲がって上手天井方向へと伸びる形状をしています。床も家具も色が白とブルーグレーのグラデーションで統一されていて、古びて薄汚れているとか、実体が希薄で憂いが支配している等の印象を与えます。
 穏やかなピアノの音色と、要所要所で威力を発揮する照明(映像?)が、上品で洗練されたストレート・プレイの空気を作ってくれました。

 ジョン(坂口湧久)はドニー(安田成美)の息子で小学校高学年ぐらいだということは、お芝居が始まってすぐにわかるのですが、デル(谷原章介)が何者なのか、2人とどういう関係なのかは、なかなかわかりません。幕開けすぐに暗号解読が始まり、ずっと集中して観ることができました。

 子役があんなに重要な役どころとは!膨大なせりふ量ですし、難解ですし、よくここまでお稽古されたなぁと感心しました。パンフレットのクレジットで、3人の出演者の中で子役が一番上になっているのにも納得でした。これは子供が見た物語なんですね。
 プレビュー初日時点の印象ですが、谷原章介さんはまだ役柄について確かなものつかんでいらっしゃらないように見えました。安田成美さんはとっても、とっても可愛らしい方だな~と思いました。たぶん真面目で素直で優しい方なんじゃないかしらと勝手に想像。ただ、ドニー役は他人から嫌われたり、怖がられたりする性質を、もっと表面に出してもいいのではないかと思いました。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 デル(谷原章介)はドニーとその夫の昔からの友人で、ずっとホテル暮らし。実はゲイだと終盤にわかります。デルは先週、ドニーの夫と1週間のキャンプに行って、そこで夫から大切なナイフをプレゼントされたと言っていましたが、それは嘘でした。本当はドニーの夫は愛人を連れてデルのホテルに宿泊していたのです。自分に嘘をついて裏切ったデルを、家から追い出すドニー。大人2人の間に起こったことを、ジョンはずっと見ていました。ジョンは「誰かが僕を呼んでる声がする」「お母さん、死んでしまいたいと思ったことある?(僕はある)」などと言い、なかなか寝ようとしません。子供の恐怖に大人が全く気付かないのが苛立たしいし、恐ろしかったです。

 ナイフという物体そのものに色んな意味が込められていると思います。デルがジョンにナイフを渡し、ジョンがそれを触る場面だけでなく、舞台中央の小さなテーブルにナイフがただ置かれているだけでも、空恐ろしさが漂います。ドニーたちは戦中、戦後を生きている人たちで、ナイフはドニーの夫にとって戦争勝利の勲章のような大切なものだったのだから(後から、ただ買っただけとわかりますが)、私個人としてはそういう時代や、戦争の空気をもっと感じたかったかな~。

 小さな子供を子供部屋で一人で寝るようにしつけるのは、日本にはあまりない習慣ですよね。私はそれが保育、教育的に良いとは思えないタイプなので、なぜドニーがあれほどまでにジョンを一人ぼっちにさせて、自分から離しておきたいのかが、ずっと疑問でした。デルが言ったように、「(夫だけが悪いわけじゃない)ドニーにも問題がある」んでしょうね。最後の最後にドニーが徹底的にジョンを拒絶するところで、ドニーの異常なまでの頑なさが感じ取れました。できればドニーのそういう性質を、もっと前の場面から観たかったと思います。

出演:谷原章介、安田成美、坂口湧久 ※ジョン役は坂口湧久くんと山田瑛瑠くんの交互出演となります。
脚本:デイヴィッド・マメットDavidMamet 翻訳・演出:小川絵梨子 [美術]二村周作[衣裳]前田文子[照明]三谷恵子[音響]尾崎弘征[舞台監督]佐川明紀[演出助手]大澤遊[技術監督 熊谷明人[プロダクション・マネージャー]勝康隆[プロデューサー]穂坂知恵子[宣伝美術]近藤一弥[イラストレーション]望月梨絵 プログラム(パンフレット)スタッフ→ 編集・発行:世田谷パブリックシアター デザイン:近藤一弥 DTP:大河原達(Kazuya Kondo Inc.) イラストレーション:望月梨絵 鼎談写真:御堂義乗 印刷:株式会社オノウエ印刷
一般 5,000円 ※プレビューは一般4,500円(友の会・アーツカード会員割引はございません。高校生以下・U24 2,250円) 高校生以下 2,500円 U24 2,500円 友の会会員割引 4,500円 せたがやアーツカード会員割引 4,700円
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2013/11/post_342.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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